2021年5月5日公開
スマートワークとは|推進のメリットと新たな働き方の提案
「スマートワークでどう変わる?」
「スマートワークにするメリットは何?」
最近「スマート〇〇」が多いですね。スマートワークはICTを活用した新しい働き方のことです。「働き方改革」の法律やIT環境が整い働き方の多様化が認められつつあります。
企業の中でも「テレワーク導入」や「副業の許可」などさまざまな取り組みをされています。実際スマートワークを導入したらどうなるのかが気になるところですよね。この記事では、下記の項目を中心にスマートワークについてまとめました。
・スマートワーク導入のメリット
・スマートワーク導入のポイント
・スマートワークの導入事例
スマートワークのメリットを理解して導入できれば企業側・従業員双方に利点がある働き方です。働き手不足や労働時間の適正化などの社会問題を解消する方法でもあります。ぜひスマートワーク導入の参考にして下さい。
目次
スマートワークとは
スマートワークとは何か、その言葉の意味やスマートワークの取り組み、スマートワークを取り入れた働き方の形を説明します。
スマートワークとは何か
平成27年当時の首相官邸が提唱した一億総活躍社会実現の取り組み方法として、働き方改革を大きなポイントとしています。その働き方改革の一つの形がスマートワークです。
厚生労働省所管の労働政策研究・研修機構によればスマートワーク(smart work)とは、労働者が勤労時間の全てまたは一部を、自宅もしくは使用者が提供する別の事務室、または特定されない場所で、情報通信機器を利用するなどの方法で勤務する働き方
参考元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「スマートワークガイドラインを発表」
つまりスマートワークとはICTを活用した時間や場所を選ばない新しい働き方のことです。少子高齢化による労働人口の減少、人生百年時代、ポストコロナの社会情勢に対して、IT環境が発展し、法律が整備され、テレワーク導入のための補助金が出るなど、企業にとってスマートワークを導入しやすい環境になっています。
スマートワークの取り組み
実際にスマートワークを推進する具体的な取り組みを見てみましょう。
テレワーク
テレワークとは「tele=離れた」「work=働く」を組み合わせた造語で、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。
テレワークには大きく分けて2つあります。
テレワークの方法には次のような形があります。
このようにテレワークといってもさまざまなスタイルがあります。
テレワークでは、育児や介護との両立・障害があって通勤が困難な人・遠隔地などさまざまな条件の人が、場所、時間の制約を受けない働き方ができます。
ペーパーレス化
ペーパーレス化とは紙媒体で行っていたビジネス文書のやりとりや保存をデジタル化することです。テレワークが難しい業態の場合、業務効率を向上できる手段です。
2005年に電子文書法が施行されデジタルでの文書保存が認められるようになりました。さらに2016年の電子帳簿保存法により電子媒体での文書保存の条件が緩和されました。
参考元:国税庁「電子帳簿保存法の概要」
企業における書類は膨大な量です。受領した見積書、契約書、請求書・社内文書などこれらの書類をデジタルで保存できれば業務の効率化が図れます。ペーパーレスのメリットは次の6点です。
・電子文書なら検索が容易
・文書共有が便利
・必要に応じてドキュメントファイルにアカウントロックをかけることができる
・紙・印刷コストを削減
・エコロジー
例えば、新たなプロジェクトを立ち上げる場合には、プロジェクトの目的・理由・予算・期間・規模・内容をまとめた稟議書(ひんぎしょ)を作成します。紙ベースの稟議書に関係者が印鑑をおして承認することで、会議の前に社内の関係者でプロジェクトの内容を共有する仕組みです。
これをペーパーレス化(デジタル化)すれば、アクセス制限したファイル文書を関係者がチェックすることで、プロジェクトの社内共有が可能です。コストと時間の節約ができるので、業務効率化が期待できます。
スマートワークのワークスタイル
スマートワークで実現する働き方のスタイルを紹介します。
フルフレックス制
フレックス制とは、従業員が働く時間を自由に定めることができる変形労働時間制の働き方です。
例えば就業時間が一週間に四十時間と定められている場合、決められた時間の中で就業時間を自由に伸ばしたり縮めたり休日を設定可能です。個人や家庭の事情に柔軟に対応できます。自由に設定できる時間帯のことを「フレキシブルタイム」、会社にいるように定められた時間帯を「コアタイム」といいます。
このようにフレックス制には、コアタイムが定められているフレックス制と、コアタイムのないフルフレックス制があります。
つまりフレックス制を導入することで、個人の時間の価値観を尊重する働き方が実現可能です。
ワーケーション
ワーケーションとは 「work(働く)」と「vacation(休暇)」を組み合わせた言葉です。休暇を取りながら業務を行う働き方です。オフィスから離れた休暇先でテレワークを活用して業務を行います。
例えば家族旅行でリゾート地に出かけて子供が外で遊んでいる間に半日だけ仕事をすることが可能です。環境が変わるので気分転換になり発想の転換が期待できます。長期休暇になっても業務が滞らないので休暇を取りやすくなります。ワーケーションには次のメリットがあります。
・家族サービスができる
・長期休暇であっても業務が滞らない
・有給休暇取得が推進できる
・地方が活性化する
従業員が自ら観光地やリゾート地など行き先を設定できることがポイントです。実際に政府も新しい働き方、旅行のスタイルとしてワーケーションを提案しています。
パラレルワーク
パラレルワークとはパラレル(並行)+ワーク(働く)で2つ以上の仕事を並行して行うことです。本業と合わせて兼業や副業する働き方です。
パラレルワークの考え方は、経営学者ピーター・ドラッカー氏が提唱した人生設計の柱を一つにしないパラレルキャリアという概念が、元になっています。大手企業で安定して働きながらベンチャー企業で自分の力を試すなど柔軟な働き方ができます。この他にもサラリーマンをしながら不動産投資やYouTube、ブログ、アフィリエイトなどに取り組むケースもあります。
複数の仕事に取り組むことでスキルを磨いたり、収入が増加するメリットがあります。その一方で会社の機密事項の管理などに関して注意が必要です。
サテライトオフィス
サテライトオフィスとは衛星のように本社以外に設置したワーキングスペースのことです。従業員に快適な仕事場を提供する企業の試みでもあります。
自社でサテライトオフィスを設置する企業もありますが、コワーキングスペースやシェアオフィスを利用することで、設備投資をおさえてサテライトオフィスを持つことが可能です。
大きな取引先企業の近くにサテライトオフィスをおいて、物理的に距離を近づけて関係性を強化するなど戦略的な使い方もできます。それだけでなく育児中の人のために保育室が併設しているものもあります。本社と別にサテライトオフィスを持つことで災害などに対するリスク分散にも繋がります。
その他のメリットは下記の3点です。
・通勤時間の削減
・営業所への移動の途中にサテライトオフィスがあると移動時間も有効活用できる
・地方在住の人材を確保できる
働き方の多様化を推進する厚生労働省委託のサテライトオフィスもあります。
フリーアドレスオフィス
フリーアドレスオフィスとは、オフィスの中でどの席で仕事をしても良いというオフィス環境のことです。フレックス制など働き方が多様化するなかでオフィスに固定の机を置く必要性が低下しています。
IT環境が十分整っていることから、オフィスを自由に使う働き方で業務の効率化を図ることが可能です。フリーアドレスオフィスのメリットは下記の4点です。
・自由な雰囲気から生まれる新たな発想に期待
・他部門との交流からうまれるコラボレーション
・プロジェクトでグループを作るのに柔軟に対応可能
テレワークで必要とされるICTの発展やペーパーレス化が自由なオフィスづくりを可能にします。
スマートワーク導入のメリット
スマートワークを導入することで得られるメリットを解説します。
時間や場所にとらわれずに働くので幅広い人材の確保が可能
時間や場所にとらわれずに働く環境であれば育児や介護で離職をしないで働く選択肢を選べます。離職者が減ることは企業にとって大きなメリットです。テレワークであれば地方在住の優秀な人材を確保可能です。さまざまな立場や境遇の才能をとりこんで社内が活性化することで企業力を高めることに繋がるでしょう。
業務効率があがり生産性向上
労働人口が減少する社会では、仕事の質の向上が必要とされます。ペーパーレスの採用で社内手続きを短縮できます。その他資料の変更にも柔軟に対応可能です。ICTによりデータの共有を自動化することで無駄を減らし、業務効率をあげ労働時間を短縮できます。
テレワークやサテライトオフィスの採用で移動の時間とコストがなくなり生産性の向上が期待できます。
ワークライフバランスの実現
ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和のことです。
このように企業と従業員がWIN-WINの関係です。
下記のグラフを見ると実際にワークライフバランスが実現した環境での仕事への意欲の高さが分かります。
引用元:両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が 企業等に与える影響に関する報告書概要
スマートワーク導入のポイント
スマートワークを導入するために知っておきたいポイントを押さえておきましょう。
コスト
スマートワークはICTを活用した働き方なので勤怠や業務管理システム・ICT関連のチャットツール・クラウド・セキュリティへの設備投資は必要です。反対に通勤等の交通費、オフィスの賃料、光熱費や事務費の削減が考えられます。
スマートワークの目的は業務の効率化です。そのためコストとのバランスも考慮しましょう。
業務管理
これまでの働き方では部署ごとに机を並べて管理者が部下を監督していました。部下の取り組みや仕事の過程をみることができたので、結果だけでなく仕事の過程も人事評価に反映できました。
スマートワークでは、ネットワークを通じて仕事の管理やコミュニケーションを行うため、結果のみを評価しがちです。そのゆえスマートワークでも働き方が見えるプラットフォームの導入やシステムの構築が必要です。
スマートワークの導入事例
実際スマートワークによって何が変わるのかスマートワークに取り組む実例を見てみましょう。
総務省行政管理局
総務省行政管理局は、電子政府の推進や独立行政法人の管理・行政サービスの公正・透明性確保のために、法律の適正な運用を行う部署です。行政機関においても業務の効率化が求められており、総務省行政管理局ではスマートワークに取り組んでいます。
その1:ペーパーレス化
・デジタルでのデータ保存で 情報の保管・共有・検索が効率向上
・文書が減ってデスク回りがスッキリする
その2:個人デスクを撤廃してフリーアドレス制を採用
フリーアドレス制を採用することで、その日の仕事で一番関連する人のそばに座ることで業務が円滑に行えるようになりました。
紙の資料を保管するスペースがなくなってオフィスを広く使えるようになり、見通しの良いオフィスを実現しました。個人デスクがない見通しの良いオフィスなので用途によって柔軟にレイアウトが変更できます。こうした取り組みによって下記のことが成果として表れました。
・カラーコピー・プリント量が約半分に減少
・職員間のコミュニケーションが活性化
実際に総務省行政管理局では答弁の作成を効率化して残業時間を短縮、関係者の待ち時間や帰宅時間を大幅に改善することに成功しています。スマートワークに取り組むことで業務に取り組みやすい職場になりました。
サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社は女性やシニアの活躍を促す仕組み作りや在宅勤務などの制度を整え、多様で柔軟な働き方を実現したことが評価され2年連続で日経Smart Work大賞を受賞しました。
サントリーホールディングスでは「生産性の向上」「ワークライフバランスの実現」「健康・活き活きの実現」を通じた競争力向上を目的とし、働き方改革に取り組んでいます。
生産性の向上
生産性の向上のために下記のような取り組みを実施しました。
・女性やシニア、外国人など幅広い人材を支えるキャリア研修などを実施
ワークライフバランスの実現
フレックス勤務の拡充やテレワーク勤務の推進とともにさまざまな年代の従業員を支援する仕組みがあります。
・介護関係 介護による休職の適用条件を緩和
これらの取り組みの結果、女性の育児休暇取得率100% 、そして復職率100%を実現しています。
健康・活き活きの実現
社外プログラムを積極的に活用し従業員のヘルスケアのサポートを行っています。具体的には下記の通りです。
・健康セミナー・ウォーキングイベント
・オンライン保健指導
・ラインケアセミナーやセルフケアEラーニングなどのメンタルケアなど
これらの取り組みによって、健康的に働く環境作りを行っています。
このようなスマートワークへの多角的な取り組みと在宅勤務に理由を問わないなどといった、テレワークや育児休職制度を活用しやすい仕組みが育児休職からの復職率100%の結果につながっています。
参考元:SYNTORY「日経スマートワーク大賞で2年連続大賞を受賞」
まとめ
この記事では、スマートワークに関して下記の点を中心にまとめました。
・スマートワーク導入のメリット
・スマートワーク導入のポイント
・スマートワークの導入事例
スマートワークは企業と従業員の双方がメリットを得られる仕組みです。社会問題である労働人口減少の対策にもなります。働き方の改革の形は業種によってさまざまですが、これからの時代を生き抜くどの組織・企業にとっても取り組むべき課題です。スマートワークに取り組む際の参考にして下さい。