2021年5月25日公開

【NDA(秘密保持契約)】締結時の注意点やひな形を確認しよう

企業間における取引や交渉の際には様々な契約書が交わされますが、中でも重要なのが「NDA(秘密保持契約)」です。NDAは早期に締結することで、自社が持つ秘密情報の漏洩を防ぐ効果が期待できます。とはいえ、下記のようなお悩みを持っている方も多いかもしれません。

 

「NDAってどんな内容を書いたらいいの?」
「なんとなく作成し締結してるけどこれでいいんだろうか」

 

そこで今回はNDAに関して以下の項目を紹介します。

 

・NDA(秘密保持契約)の概要
・必要となる場面
・作成や締結時の注意点
・経産省が公開するひな形

NDAの作成や締結にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

 

NDA(秘密保持契約)とは?

NDAとは秘密保持契約を意味し、取引や交渉の際に自社が持つ秘密情報を第三者に開示しないことを求める契約です。ルールを定めておかなければ、外部パートナーへ取引に必要な秘密情報を提供した際に第三者に情報が漏れてしまう可能性もあります。

 

NDAは相手方と民事上の契約が締結されるため、違反があった場合には損害賠償の請求や民事訴訟を起こすことも可能です。

 

企業が持つ秘密情報を守る契約

NDAは「情報漏洩」と「不正利用の防止」の2つの目的によって企業の秘密情報を守ります。

 

情報化社会が進む現代において企業は様々な情報を抱えています。中には自社だけでなく顧客に関わる情報も多く、情報漏洩が発覚した際には顧客からの信頼が失われる可能性もあるでしょう。

 

また漏洩先において情報が不正利用された場合には危害や損害などの被害に遭う可能性もあり、企業存続につながりかねません。

 

NDAは自社が持つ秘密情報を守るために締結するべき契約です。

 

NDA(秘密保持契約)が必要な場面

NDAには情報漏洩と不正利用の防止の目的以外にも、契約締結が必要な2つの場面があります。それがこちらです。

 

・特許の出願
・不正な競争の防止

それぞれ詳しく解説します。

 

特許の出願

秘密情報について特許申請の予定がある場合には、NDAの締結が必要となります。特許申請の際には「公然に知られた発明」では、特許を受けることができないと定められているためです。

 

特許庁では「特許権が付与される発明は新規な発明でなければならない」とし、「公然に知られた発明」は新規性を有していない発明とみなされます。

 

秘密情報に関して外部者と取引が行われる場合、情報漏洩や不正利用のリスクは高まるため、特許申請予定がある場合はNDA締結を忘れず行いましょう。

 

参考:特許庁「新規性・進歩性(特許法第29条 第1項・第2項)

 

不正な競争の防止

秘密情報の不正利用による不正競争は、NDAによって防止が期待できます。不当競争防止法では、秘密情報を不正に持ち出され被害に遭った場合に民事上・刑事上の措置を取ることが可能です。

 

例えば、秘密情報を利用して競合他社から同じような製品やサービスが売り出された場合、相手方に民事責任や刑事責任を問うことができます。

 

ただし、ここにおける秘密情報とは「営業秘密」として管理されていることが必要です。「営業秘密」とは以下3点の要件を満たすことが定められています。

 

・秘密として管理されていること
・有用な営業上または技術上の情報であること
・公然と知られていないこと

NDAは秘密情報が第三者に渡らないよう管理されることを示す証となります。そのためNDAの締結によって秘密情報を営業秘密として捉え、不正競争を防ぐことに期待できるでしょう。

 

参考:経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」

 

NDA(秘密保持契約)の作成や締結における重要項目

NDA作成や締結において特に重要となる項目が以下5点です。

 

・秘密情報の定義や範囲
・秘密情報の取り扱い
・秘密保持期間の設定
・契約終了後の対応
・違反への措置

それぞれ内容を簡潔に紹介します。

 

秘密情報の定義や範囲

秘密情報の定義や範囲は厳格に定める必要があります。定義や範囲が明確でなければ曖昧になるため、情報漏洩のリスクが高まってしまうためです。

 

また定めた定義や範囲以外で情報が漏洩された場合は違反に問うことはできません。情報が外部や第三者に公開されるケースを想定しながら入念に検討しましょう。

 

秘密情報の取り扱い

相手方が秘密情報をどのように取り扱って良いかを定めましょう。

具体的には、使用方法としてコピーやデータ化の可否や、管理方法として保管場所などを明確にします。使用方法としてコピーを認めた場合は、情報として扱いやすい一方で漏洩リスクは高くなります。

 

そのため「原則としてコピーは禁止だが承諾がある場合のみコピーを認める」といったように、制限を設けるという形で設定することも可能です。

 

秘密保持期間の設定

秘密情報を保持しなければならない期間を定めます。

 

具体的には、契約内容の効力が有効である「有効期間」と、契約終了後も効力が持続する「残存条項」を設定します。

 

「有効期間」は契約が終了すると秘密保持の義務がなくなるため、契約終了後に漏れたとしても問題のない情報である場合に設定しましょう。「残存条項」は契約終了後も効力が持続する規定であるため、顧客や当人の個人情報が含まれる場合などに有効です。

 

契約終了後の対応

契約終了時において情報を受け取った側が行うべき情報への対応を記載します。

 

例えば、情報自体の破棄やデータの返還などが挙げられます。秘密情報が保持されたままにならないよう、明確に定めましょう。

 

違反への措置

情報漏洩や不正利用が発覚した場合やその疑いがある場合に、適切な対応を行えるよう措置内容を定めます。

 

具体的には、疑いがある場合には調査を行うことや、漏洩があった場合には必要な措置を検討し講じることなどが挙げられます。あらかじめ措置を行うことを定めることで、違反への防止にもつながるでしょう。

 

NDA(秘密保持契約)への署名・押印ルール

NDA締結には、署名または記名押印が必要となります。押印のルールは契約によって異なるため、今一度改めて確認しておきましょう。

 

押印のルール

契約書の押印には、実印と認印どちらでも使用できますが重要な契約である場合は実印が良いでしょう。

 

実印は印鑑登録や印鑑証明書によって押印した当事者が本人であることを確認できるため、重要な契約において求められやすいです。実印に加え当事者による署名を行うことで、書類が当事者の意思によって作成されたことが証明されます。

 

しかし法的効果においては契約書に押す印は実印と認印で優劣はありません。

そのため重要度の高くない契約では認印でも可能です。

参考:行政書士古川紀夫事務所「実印と認印について」

押印の方法は、契約書の仕様に応じて「割印」と「契印」があります。

 

契約書の仕様に合わせて押印することで、文章の抜き出しや改ざんを防ぐ効果があります。

参考:印鑑うんちく事典「契印とは」

 

NDA(秘密保持契約)の締結における注意点

NDA締結において押さえておきたい注意点が以下2点です。

 

・締結前に秘密情報を開示しない
・完全に情報漏洩を防げるわけではない

それぞれあらかじめ確認しておきましょう。

 

締結前に秘密情報を開示しない

一般的には締結前に相手方に開示した秘密情報に関しては、契約違反などの措置は取れません。締結がなければ契約内容の効力はないため、締結前に秘密情報を開示しないよう注意が必要です。

 

しかしスムーズな打ち合わせのために、秘密情報を示すことが必要となる場面もあるでしょう。そのため契約の締結は取引や交渉段階において行うことがおすすめです。

 

あらかじめ内容に合意することで、安心してスムーズな打ち合わせができるでしょう。

 

完全に情報漏洩を防げるわけではない

NDAの締結によって完璧に情報漏洩や不正利用を防げるわけではありません。契約内容や違反への措置を適切に定めていても、人によっては秘密情報欲しさに違反を犯し逃れようとする可能性もあります。

 

そのため契約書の作成や締結だけに注力し安心するのではなく、情報漏洩によるリスクの周知や相手方への締結促進を行いましょう。社内においては従業員に対しNDAの目的や情報漏洩のリスクの共有によって、自身が扱う情報の重要性を実感させることが可能です。

 

また相手方へはNDA締結を含めた取引や交渉を行うことで、その後の打ち合わせも行いやすくなります。

 

経営陣や人事、管理職はもちろんですが、情報を取り扱う全社員が情報漏洩防止に取り組めるよう環境を整えましょう。

 

NDA(秘密保持契約)には経産省が公開するひな形がある

NDAの作成時におすすめしたいのが経済産業省が公開するひな形です。ひな形はダウンロードするだけで簡単に書類を作成することができるため、利用されている方も多いかもしれません。

 

その一方でNDAのひな形には様々な種類があり、どれを選択するべきか悩む場合もあるでしょう。

 

経済産業省が公開しているひな形は、最低限の項目がまとめられた標準的な内容です。そのため初めて作成する方は取り組みやすく、作成経験のある方は改めて内容を見直す際に参考になります。

 

実際にひな形を活用する方法について詳しく解説します。

 

経済産業省が公開するひな形の活用方法

経済産業省が公開するひな形の活用手順がこちらです。

 

1.経済産業省より発表されている「秘密情報の保護ハンドブック」を開く
2.「秘密情報の保護ハンドブック」内にある「参考資料2 各種契約書等の参考例」を開く
3.参考例の第4項目である「第4 業務提携の検討における秘密保持契約書の例」をPDFからwordに変換に入力

手順3において示した「第4 業務提携の検討における秘密保持契約書の例」が外部企業との業務提携を行う際に活用できるNDAのひな形です。

 

契約書の内容は全7条とシンプルにまとめられているため、初めてひな形を活用する場合でも比較的記載しやすい内容でしょう。NDA作成を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

まとめ

今回はNDA(秘密保持契約)について、以下項目を中心に紹介しました。

 

・NDA(秘密保持契約)の概要
・必要となる場面
・作成や締結時の注意点
・経産省が公開するひな形

NDAは、企業の財産である情報が外部に漏れることを防ぐ重要な契約です。そのため外部パートナーと業務を行う際には、できる限り締結することがおすすめです。契約書と伺うと少し手間のかかる作業と感じてしまうかもしれません。

 

しかしNDAの契約書は国からもひな形が用意され、作成しやすい書類となっています。自社における契約書内容とひな形を照らし合わせ適切な内容を検討してみましょう。

この記事のすべてのタグ