2020年10月28日公開
DXデジタルトランスフォーメーションとは何か?コンサルタントが分かりやすく解説
「DX(デジタルトランスフォーメーション)って何?」
「IT化・デジタル化と何が違うの?」
このような疑問をお持ちではないですか?そもそも、テクノロジーに関する用語は、横文字が多くて、分かりにくいですよね。
そこで、この記事ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と聞いてもピンとこない人のために、下記の項目を中心に解説します。
・DXを推進したら企業がどう変わるか
・なぜ必要なのか
・具体的な推進方法
・DXの課題点について
この記事では、DXの具体例を上げながら解説しますので、ぜひ、参考にして下さい。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要
経産省ではIDC Japan 株式会社によるDXについての概要を取り上げ、以下のように定義しています。
DXとは企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
引用:経産省HPより
つまり、DXとは急激に進む社会の変革・デジタル技術の進化に適したシステムに会社を変革して新たな商品価値・サービスを生み出すことによって新たなデジタル社会で戦う競争力を身につけることです。
DXが求められる3つの理由
平成30年9月に経産省から出されたDXレポートにおいて、日本の企業の置かれている状況・問題点が提起されています。その中からDXが必要とされる主な3つの理由を上げていきます。
理由1:迫る「2025年の崖」
理由2:急激な技術革新
理由3:国際的競争力の低下
参考:DXレポート
日本の企業にはDXが必要である理由をそれぞれ紹介します。
理由1:迫る「2025年の崖」
2025年には、ハード面・ソフト面で急激に資源が失われる試算がされています。
2025年の崖
・21年以上経過した老朽化している既存のシステムが全体の6割になる
・IT人材不足 25万人
・会社の基幹となるシステムを作ってきた人材が高齢化・退職を迎える
・国内企業2000社が採用する基幹システム(SAP ERP)のサポートが終了する
これに対策できなければ2025年以降に、最大12兆円/年の損失が発生する試算がされています。「これが2025年の崖」問題です。
まとめると2025年には企業の既存のシステムの老朽化によって、大規模なシステム改変が必要になります。その上、IT人材不足が深刻化し、日本企業の国際市場での競争力が低下が予測されます。
その結果、経済に莫大なダメージを与える可能性があるということです。
理由2:急激な技術革新
私達の生活にも浸透している最新技術を5つ上げてみましょう。
5つの最新技術
・あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」
・多くのデータを処理できる「AI」
・ネットワークを利用してデータをやり取りできる「クラウド」
・仮想の現実空間「VR」
・4Gの20倍の高速通信を可能とする通信規格「5G」
このように次々と新たなデジタルサービス・規格が設定されています。こういった変革は破壊的な革新といわれ、これらの技術を活用できる会社体質への変換が求められています。
理由3:国際的競争力の低下
スイスのIMD世界競争力センターが発表した「IMD World Digital Comeptitive Ranking 2019」では日本のデジタル競争力のランキングで63カ国中23位でした。1位はアメリカ、アジアでの1位はシンガポールでした。
参考:TECHWAVE
この調査結果から、進化するデジタル技術に適応できず国際市場での競争力が低下している日本の企業の現実が浮き彫りとなっています。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するメリット|企業はこう変わる
DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進したらどんなことができるようになるか?具体例をあげて見ていきましょう。
最新のデジタル技術を活用した新たな商品・サービスを提供できる
最新のデジタル技術を活用することで、膨大なデータを処理してその中から最適な情報を取り出すことが可能です。それにより、自社にある製品・サービスと組み合わせて新たな価値・商品を創出できます。最新のデジタル技術を活用すれば、顧客の行動を変革することも可能。
例えば、アメリカのオンラインショップのアマゾンは創業当時、書籍とCDを扱うオンライン書店でした。そこから顧客情報の嗜好を集めてECサイトに、レコメンド機能やレビュー機能を搭載してマーケティング実施しました。
更に、システムの自動化による人件費削減することによって、価格破壊をして文字通り流通小売業界を変革させました。最新のデジタル技術を活用することで、顧客のショッピングの概念を変革させたのです。
このように新たな技術を活用して、新たなサービス・商品を生み出すことができます。
新たな仕組みを常に最適化
DXを推進することで、破壊的ともいわれる急激に変化する市場の中でも対応できます。なぜなら、企業にはその変化に対応するシステムの基盤が揃っているからです。
先程あげたアマゾンの例のように、DX企業が生み出す商品・サービスが急激な市場の変化をもたらすこともあります。
コストを削減できる
DXを推進することでコストを削減できるポイントを4つ紹介します。
・古い基幹システムを捨て去ることで維持管理に割かれていた人的・資金的コストを削減
・DXに取り組み企業全体のデジタル化が進行すると業務内容が可視化
・社内のリソースを投入すべき箇所を明確化
・経営者の目が届きにくかったところの無駄を削減
DXを推進することで、コストの削減が期待できます。
働き方が変わる
DXを推進すれば仕事の効率がよくなり働き方も変わります。
・企業内全体がデジタルでつながることによって、分散化していたシステムを統合
・企業内の縦軸・横軸でデータを共有・活用することで効率アップ
・社内をデジタル化することによって人の手で行われていたことを自動化
・無駄を省くことで社員の生産性が上がる
例えば、残業が常態化している場合は、残業時間が削減され、結果残業しないのが当たり前になるでしょう。このように、社員の働き方が変わります。
このように、DXを推進することで、業務の効率化に繋がり、生産性の向上が期待できます。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進方法
具体的なDXの取り組みを順番にみていきましょう。DXの推進ステップは以下の通りです。
DX推進に向けての5ステップ
ステップ1:経営方針を定める
ステップ2:基盤となるデジタルツールの導入
ステップ3:企業の生産体制を変換
ステップ4:新たな商品・サービスの価値を生み出す
各ステップについて順番に紹介していきます。
ステップ1:経営方針を定める
急激な変化に適応するため自社の強みを活かしながら新たにサービス・商品を生み出すビジョンを明示する必要があります。経営方針を定める際のポイントは3つです。
・経営陣によるビジョンの明示
・経営陣が直接関わること
・DXを推進するための体制を整備する
単なるIT化・デジタル化ではないことを経営陣が認識しなければいけません。IT分野へ長期にわたり投資することになるので、経営陣が直接DXに関わることが大切です。
ステップ2:基盤となるデジタルツールの導入
企業を新しいデジタル技術に最適化していくために、下記の技術を導入していきます。
・AI (Artificial Intelligence)
・IoT(Internet of Things)
・クラウド (cloud computing)
・5G(5th Generation)
これらのデジタルツールを利用して、データを集め分析します。
ステップ3:企業の生産体制を変換
既存の生産方式を見直しデジタル社会に適した生産方式に移行していきます。ソフトウエア開発で採用されている手法は、下記の通りです。
・アジャイル手法
・マクロサービス手法
DXを推進するためには、これらの手法が適しているとされています。
ステップ4:新たな商品・サービスの価値を生み出す
顧客のデータを分析して、自社のできる新たなサービスを提示します。
アマゾンの例をあげるとオンライン書店で顧客の購買行動やレビューでデータを集め、求められる需要を分析の結果、キンドル(電子書籍)を生み出し読書の新しい形を示しました。さらに、月額定額の読み放題サービスを提供しています。
このようにアマゾンはDXを推進することで、新しい価値(読書体験)の形を示しました。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の課題
DXを推進するためには乗り越えなければならないさまざまな課題があります。ここではどの企業にもあてはまる課題を4つ上げていきます。
DX推進にむけての4つの課題
課題1:DXの目標設定が難しい
課題2:DXを活用できる人材不足
課題3:既存のシステムが負担になる
課題4:IT分野への長期間の投資が必要
それぞれの課題点について、見ていきましょう。
課題1:DXの目標設定が難しい
新たなデジタル技術を駆使して、何ができるのかが分かりにくいです。
例えば、インターネットが登場した当時は、それでなにができるのか自分にはピンはきませんでした。しかし、インターネットが普及した結果、検索、オンラインショッピング・SNSを便利に活用できるようになりました。
DXを推進する企業は、これらの新しい価値を生み出す側にならなければなりません。
課題2:DXを活用できる人材不足
IPA情報処理推進機構によるとDX推進には次の6つの役割を担う人材が必要とされます。具体的に必要な人材は下記の通りです。
引用先:IPA情報処理推進機構
「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の 機能と役割のあり方に関する調査」によれば、すべての人材が不足しているため、育成・確保が急務であるとされています。
引用先:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の 機能と役割のあり方に関する調査
このように、DXの推進には活用できる人材不足している問題があります。
問題3:既存のシステムが負担になる
企業の業務と並行してDXを推進させるためには既存のシステムを維持管理していかなければなりません。老朽化・複雑化している既存のシステムにコストをかけるのはDXを推進する企業にとって大きな負担です。
DXレポートによれば、実際に7割の企業が既存のシステムがDXの足かせと感じています。
引用先:経済産業省DXレポート
この調査から、DXの推進において、既存のシステムが足かせとなっている現実が浮き彫りになりました。
問題4:IT分野への長期間の投資が必要
DXには2つの原則があります。
①失敗を恐れず挑戦を始める
②成功するまで挑戦を続ける
引用:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の 機能と役割のあり方に関する調査
DX推進に投資をして成果が保証されるわけではありません。いつ成果がでるのかもわかりません。それでもDXを推進する以上は成功するまで、IT分野への投資を続ける必要があります。つまり、短期で結果が出すのは難しいです。
経営戦略もありましたが1994年に創業したアマゾンは、2001年に初めて利益を計上しています。
このように、DXを推進するには、IT分野への長期間の投資が求められます。そのため、企業側には、長期間の投資に耐えられるだけの体力が必要です。
経産省が主導するDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進政策
経産省では日本の企業の国際市場での競争力が低下していることに危機感を持って対応しています。ここでは経産省のDX推進政策を3つご紹介します。
経産省のDX推進政策
経産省のDX推進政策その1:「DX推進ガイドライン」を作成
経産省のDX推進政策その2:デジタル経営改革のための評価指数の策定
経産省のDX推進政策その3:DXに役立つIT導入補助金を設定
経産省が推進するDXの取り組みを3つ紹介します。
経産省のDX推進政策その1:「DX推進ガイドライン」を作成
国際市場での競争力の低下に危機感を持っている経産省はDX推進の指針とするために、下記の2つの目的を持って「DX推進ガイドライン」を作成しています。
・DXを推進していく経営者が知っておくべきことを明確にすること
・経営陣がDXを推進していくうえでチェックするのに活用できる指標になること
参考:DX推進ガイドライン
「DX推進ガイドライン」には、DX推進の仕組み・経営陣のあり方、DX推進の基盤となるITシステムの構築について示されています。
経産省のDX推進政策その2:デジタル経営改革のための評価指数の策定
経産省は「DX推進ガイドライン」に基づいてDXの経営面・ITシステムの構築の2つの面からDXの進捗具合を企業が自己評価をすることができる指標を策定しました。
経営陣をはじめDXに関わるすべての部署で共有をして自己評価に回答をして問題点を洗い出し議論を促すことを目的としています。
DX推進指標の詳しい内容は、経済産業省が作成しているDX推進ガイドライン推進指標のPDFを確認してください。
経産省のDX推進政策その3:DXに役立つIT導入補助金を設定
DXの基盤となるIT化を進めるうえで多額の設備投資が必要になります。その経費の負担を軽減してくれるのがIT導入補助金です。
DXを推進する対象となる企業は、IT導入支援事業者と相談しながら最適なデジタルツールを導入する支援を受けることができます。
IT導入補助金に関しては、IT導入補助金2020のサイトを確認してください。
参考:IT導入補助金2020
まとめ
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは急激に進む社会の変革・デジタル技術の進化に適したシステムに会社を変革して新たな商品価値・サービスを生み出すことによって新たなデジタル社会で戦う競争力を身につけることです。
この記事では、下記の6項目について説明しました。
・DXを推進したら企業がどう変わるか
・DXが必要な理由
・具体的な推進方法
・DXの問題点
・経産省のDX推進政策
すべての分野でおこる急激な変化の中にあって企業は生き残るために変革が必要です。企業の体質を変革するためには経営陣が直接DXに関わることが大切になります。
また、それぞれの企業にあってDXの形はさまざまです。最新のデジタル環境に最適化しながら新たなサービス・価値を創出することを求められています。
ぜひ、この機会にDXについて、知識を深めていきましょう。