2020年10月30日公開

KSFとは?KBFとの違いやKGI・KPIとの関係性について解説

事業活動を成功させたり、目標を達成するために必要な指標を洗い出したりするための手法に「KSF(キーワードサクセスファクター)」という言葉があります。

 

「売り上げを伸ばすには何をすればよいのだろう」
「チームで決めた目標を達成するには何をするべきなのか?」
「目標達成のために、やるべきことを洗い出す方法は?」

 

このような悩みを持っている営業部マネージャーにとって、KSFの考え方は重要です。本記事では、KSFの意味や見つけ方について、下記のポイントを中心に解説します。

 

・KSFとは「目的達成のために必要な要素」のこと
・KSFを発見することで、やるべきことが明確になる
・KSFを洗い出す方法は5つある

「営業部の売り上げ目標を達成するには何をするべきか再検討したい」「チームの抱えている問題点や弱点を克服したい」と考えている方向けに、KSFについてまとめましたので、参考にしていただけると嬉しいです。

 

KSFとは?

KSF(キーワードサクセスファクター)とは、「成功のカギを握る要素」のことです。

 

KSFが明確になると「目標を達成するための具体的な行動に移りやすい」「無駄なく効率的に業務を行える」といったメリットがあります。しかしKSFの洗い出し方は業界・企業によって異なるもの。また外部の市場動向や自社の労働環境といった点まで考慮する必要があります。

 

一般的にKSFの要素とそれを活かした主な戦略は、下記の7つです。

 

KSFを活用するには、これらの要素を検証して自社独自の強みとなる要因を洗い出してみてはいかがでしょうか。

 

KSFとKFS、CSFの違いは?

KSFはKFS(Key Factor for Success)やCSF(Critical Success Factor)ともいわれます。どちらもKSFと同じく「重要成功要因」と訳されることが多く、意味もKSFと変わりません。

以下ではKSFの理解をより深めるため、KSFと関係の深い用語についてご紹介します。

 

KSFとKGIの関係

KSFが「目的を達成するために必要な要素」であるのに対し、KGIは「達成すべき目標」そのものです。目標(KGI)を設定し、KGIを達成するために何をするべきか(KSFの洗い出し)について考える、というのが一般的な流れです。

 

KGIは「目標は具体的に、かつ定量的で100%達成を目指す」という性質を持った目標設定方法の一つ。KSFとセットで説明されることも多いマネジメント用語です。

 

「KSFと一緒にKGIの理解を深めたい」なら、『KGIとは何か?意味や使い方を詳しく解説』をご一読ください。

 

KSFとKPIの関係

KSFで「目標達成に必要な要因」を洗い出したら、次は具体的にどのような行動をおこすか決める必要があります。「KGIやKSFをもとにした、目標を達成するために必要な指標」のことをKPIと呼びます。

 

例えば、今年の目標を、売上の前年比より10%アップとした場合、KGI、KSF、KPIは下記の通りです。

 

KPIはKSFが洗い出し終わってからでないと、KGIの達成という目標からズレてしまったりするもの。KGIを活用したマネジメントを行う際は、「KGIの決定」「KSFの洗い出し」「KPIの設定」という手順で進めることをおすすめします。

 

KPIについて詳しく知りたい方は、『KPIとは?意味や設定方法、KGIとOKRの違いを解説』をご一読ください。

 

KSFとOKRの関係

OKRは目標管理方法の一つで、KGIと似ています。

 

ただし、KGIは「100%の達成を目指す」「数値目標を設定して定量的に管理する」という性質であるのに対し、OKRは「達成率は100%でなくてもOK」「組織やメンバーの成長を目指す」「定性的な目標でも問題ない」という性質があります。

 

OKRの場合でも、目標を決めた後に具体的に何を実行するか決める必要があるため、KSFによる成功要因の洗い出しが重要になります。

 

OKRはGoogleでも採用されている、有名な目的管理方法です。KSFとも関係が深いので、気になるなら『OKRとは?KPIとの違いや導入するメリット・デメリットについて解説』参考に、OKRについて理解を深めてみてはいかがでしょうか。

 

KSFとKBFの関係

KBF(Key Buying Factors)とは、「顧客が商品を購入する時に重視する要素」のこと。主なKBFには「価格の安さ」「手軽さ(お店が家から近いなど)」「品質の高さ」「ブランド」などが挙げられます。

 

KBFは、KSFを考えるうえで重要な要素の一つです。KBFとKSFの関係は、下図でうまく表されています。

 

KBFはKSFを決定する上で重要な要素です。「KSFがうまく見つからない」と悩んでいる方は、KBFを参考にしてみると、新しい発見があるかもしれません。

 

KSFを見つけるメリットとは?

目標を達成するために、KSFを見つけるメリットは下記の通りです。

KSFを見つける3つのメリット

・KPIを設定するのに役立つ
・やるべきことが明確になる
・なぜそれをやるべきかが分かる

精度の高い目標設定をするうえで重要な要素となるKSFですが、実は目標設定した後もKSFが役に立つシーンがあります。では、それぞれのメリットについてみていきましょう。

 

KPIを設定するのに役立つ

「目標(KGI)が決まったけれど、うまくKPIが設定できない」と悩んでいる人もいるかと思います。目標がシンプルなら、KPIも設定しやすいですが、複雑な目標になるほどKPIの設定も難しくなりますよね。

 

そこでおすすめなのが、KSFの洗い出しです。「目標を達成するために必要な要素は何か」を考える事で、効果的なKPIの設定につながります。

 

「立派な目標ばかりだけど、具体的にどのように業務に落とし込んだら良いのか分からない」なら、まずはKSFの洗い出しをやってみてください。

 

やるべきことが明確になる

「会社から目標(KGI)を与えられたけど、具体的に自分は何をしたら良いのか分からない」と、途方に暮れている経験をした人もいるでしょう。目標が立派でも、具体的にどのような行動をとるべきか分からないとモチベーションも下がりますよね。

 

そんな時にKSFが見つかっていると「目標達成のために自分は何をするべきか」がイメージしやすくなります。目標が抽象的になるほど具体的にどう行動するべきか迷ってしまうもの。

 

マネジメント側は、部下に目標を課す場合は、KSFもセットで伝えると部下が具体的な行動を起こしやすくなります。

 

そのため、目標設定をする際には、一緒にKSFを決められるようにサポートしたり、助言するといいでしょう。

 

なぜそれをやるべきかが分かる

組織力を強化しようとKGIやOKRを導入したもの、目標が達成できない部下がいる場合、設定された目標の意図や狙いが分からず、モチベーションが湧かない状態になっているかもしれません。

 

このような場合は、KSFを明確することで、「なぜその目標を達成する必要があるのか」を理解させるようにするといいでしょう。

 

目標管理でよくある失敗例が、目標と指標の乖離です。

 

例えば「売り上げを伸ばす」のが目標であるのに対して「営業車の利用を控えてガソリン代を節約する」がKPIになると、指標と目標がズレてしまい、目標達成できないのはもちろん、メンバーのモチベーション低下につながります。

 

言い換えると「なぜそれをやる必要があるのか」を明示していれば部下はやるべきことが分かり、モチベーションもアップするでしょう。

 

KSFは「KPIの設定が済めば使うことはない」と思いがちですが、上記のような使い方も可能です。部下の説得材料や後の見直しのためにも、洗い出したKSFは残しておくことをおすすめします。

 

KSFを見つける方法とは?5つの方法を解説

ここでは、KSFを見つける5つの方法についてご紹介します。

 

・SWOT分析
・バリューチェーン
・3C分析
・5F分析
・PEST分析

それぞれの方法について、見ていきましょう。

 

SWOT分析

SWOT分析とは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つを分析する、マーケティングや意思決定を行う際のフレームワークの一つです。

 

SWOT分析は、KSFを見つけるうえで重宝します。自社を取り巻く競争環境を「外部環境と内部環境」、「プラス要因とマイナス要因」に分けることで状況を客観的に把握し、KSFを発見しやすくなります。

 

KSFの洗い出しに行き詰まりを感じているのであれば、SWOT分析を活用してみてはいかがでしょうか?

 

 

バリューチェーン

バリューチェーンは、企業の活動を製造や販売などの「主活動」と人事や研究開発といった「支援活動」に分けて、どの工程でどれほどの付加価値が生み出せているかを可視化するためのフレームワークです。

 

主に内部分析で利用するフレームワークですが、KSFの洗い出しにも応用できます。

 

各工程の強みと弱みが分かるので、KSFを見つけやすくなるでしょう。「各工程で発生している付加価値を可視化したい」と考えているのであれば、バリューチェーンを活用して自社分析を行ってみるのがおすすめです。

 

3C分析

3C分析は「顧客・市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3要素を分析する方法です。

 

この3つの要素を分析することで、KSFが見つけやすくなります。「この機会に市場環境の調査や競合サービスとの差別化を測りたい」と考えているのであれば、3C分析を実行してみてはいかがでしょうか?

 

3C分析について詳しく知りたいなら、『3C分析とは?マーケティングの基礎を理解して営業戦略を立てよう!』を参考にしてください。

 

5F分析

5F(ファイブフォース)分析とは、以下で挙げる5つの要素から業界の構造を把握するためのフレームワークです。5F分析を実行することで、自社が属する業界の現状分析はもちろんKSFの洗い出しもできます。

 

これら5つの要素から業界分析を行うことで、業界の現状を把握したりKSFの洗い出しに活用することができます。「現在の市場環境について、改めて状況を調査したい」と考えているのであれば、KSFの洗い出しには5F分析がおすすめです。

 

PEST分析

PEST分析とは、自社を取り巻く環境をマクロな(大きな)視点で分析する方法です。下記の4要素をもとにPEST分析を行います。

 

PEST分析は「自社ではどうすることもできない外部要因を分析」するのに適したフレームワークです。各要因の自社への影響を想定することで、KSFの発見にもつながります。

 

「消費行動の変化や法改正リスクなどを一度洗い出したい」と考えているのであれば、PEST分析がおすすめです。

 

KSFの具体的な事例とは?

KSFの必要性については理解しているものの、具体的にどのようなKSFがあるのかイメージしにくいという人もいるでしょう。そこで以下では、KSFの具体例を、百貨店・化粧品・自動車の各業界ごとにご紹介します。

 

百貨店業界のKSF事例

百貨店業界のKSFは「商品の品ぞろえ」および「品質」です。

 

百貨店を訪れる人は「百貨店に行けば欲しいモノが手に入る」「百貨店なら質の良いものが手に入る」と思っている人が多いものです。よって百貨店が成功する上で必要な要素は「品揃えの豊富さ」と「品質の良さ」だと分かります。

 

また近年ではインターネット通販と差別化するため、「丁寧な商品説明」や「店内の上質な雰囲気」をKSFに設定することも。競争環境の変化によってKSFが変化する可能性がある、ということを意識しましょう。

 

化粧品業界のKSF事例

化粧品業界のKSFは「ブランド力」や「広告」です。

 

同じような効果のある化粧品が数多くある中で、自社の化粧品を売るためには「ブランド力」や「認知力」といった、顧客から選ばれる要素が重要だといえます。ブランドや広告の力で、

 

「A社の販売しているブランドはイメージが良いから、友だちにも自慢できる」
「B社の化粧品は最近コマーシャルでよく見るから、試しに買ってみよう」

 

このように顧客に思わせることが、購買に繋がります。化粧品の成分や効果による差別化が難しいといわれる化粧品業界でモノを売るには、イメージ戦略を実行して「顧客に認知」してもらうことがKSFといえるでしょう。

 

自動車業界のKSF事例

自動車業界のKSFは「アフターサポートの充実」や「安心感」です。

 

見た目の良さや燃費の良さも重要な要素ですが、それよりも顧客が重視するのは「安心して車を利用できるか」ということ。見た目が良かったり燃費が良かったりしても、故障したときに十分なサポートを受けられなかったり、壊れやすかったりする車を利用したいとは思いませんよね。

 

自動車業界で成功するためには、「故障しにくく安心して車を利用できる」「不具合があってもカーディーラーに持ち込めば対応してくれる」という安心感を顧客に持たせることが重要です。

 

まとめ

今回は下記のポイントを中心に、KSFについて解説しました。

 

・KSFは「成功に必要な要因」のこと
・KSFを明確にすることで、精度の高い目標(KPI)設定ができる
・KSFの洗い出しにはフレームワーク活用がおすすめ

「KGIやOKRを導入したものの、思うように効果が上がっていない」「目標は設定されているものの、達成するための具体的な行動が実行できていない」という悩みを抱えている方は、KSFの洗い出しがおすすめです。

 

フレームワークを活用してKSFを洗い出せば、目的を達成するために何をするべきかが明確になります。KSFを活用すれば、より精度の高い目標を設定可能。これによって業務の効率化やメンバーのモチベーションアップといった効果が期待できます。

 

「成功するためには具体的に何をするべきか分からない」と悩んでいるのであれば、この機会にKSFを洗い出してみてはいかがでしょうか?

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