2025年11月25日公開

最低賃金1,500円時代を乗り越える!助成金で実現する「負担ゼロ」の人材育成戦略

「賃上げしたい。けれど、賃上げする余力がない」

 

そんなジレンマを抱えていませんか? 国は2030年までに最低賃金1,500円への引き上げを目指しています。 特に飲食業やサービス業にとって、人件費の上昇は経営を大きく圧迫する要因です。

 

けれど、助成金制度を上手に活用すれば、従業員の賃上げだけでなくスキルアップの実現が可能です。そこで 今回は、累計94億円の助成金申請支援実績を持つ HelpTech株式会社 代表取締役 高橋 延明氏に、 人事担当者が今すぐ知るべき助成金活用の実践ノウハウを伺いました。

 

※2025年9月下旬にインタビューした内容に基づき、記事にしております。

 

基本情報

会社名:HelpTech株式会社

本社所在地:福岡県福岡市

事業内容: デジタル人材育成・DX教育研修の提供・DXコンサルティング・補助金・助成金コンサルティング・システム開発・経営コンサルティング

公式サイトURL:https://helptech.jp/

コロナ禍を機に、飲食業からデジタル人材育成事業へ転換

 はやみ|高橋社長には、現在、弊社ロジック・ブレインと一緒に飲食店向けのセミナーを開催していただいていますが、まずはご経歴とHelpTech株式会社の事業内容について教えていただけますか?

 

 高橋社長|学生時代に起業し、主に飲食や宿泊、美容などの事業を展開してきましたが、コロナ禍を機に自分自身がデジタル人材になる必要性を強く感じ、今の会社を立ち上げました。

 

 はやみ|そうだったんですね。ちなみになぜこのタイミングで、デジタル人材になる必要性を感じたんですか?

 

 高橋社長|実はコロナ以前から、社内でシステムを作ろうとした際に、自分たちがITを理解していないために失敗した経験があったんです。外部に丸投げして、結局自分たちに必要のないシステムができてしまう、というよくある失敗を経験して…アナログ的な手法しか分からないままでは、この先厳しいと感じていました。

 

 はやみ| 問題意識は以前からお持ちだったんですね。そこからどのように行動されたのですか?

 

 高橋社長|そこでエンジニア養成学校に入ってITスキルを習得し、デジタルを活用した中小企業の補助金・助成金活用支援を始めました。現在は経済産業省のリスキリング関連事業で累計94億円分の申請支援を行っています。また、自社も採択事業者として、47の教育訓練機関と連携し、1,722種類以上の研修プログラムを提供しています。

 

元々は補助金の活用支援のサポートから入ったのですが、現在は、リスキリングの事業をさせていただいています。

 

 はやみ|なるほど!そこから今のHelpTech株式会社の事業へと繋がっていくんですね。

 

補助金vs助成金ー採択率が3倍違う理由とは

 はやみ|補助金と助成金という言葉をよく耳にしますが、まずは違いについて教えてください。

 

 高橋社長| 大枠で説明すると、助成金は主に厚生労働省が管轄しているもので、補助金は経済産業省が管轄しています。

 

 高橋社長|補助金は法人を対象としており、財源も法人税などから成り立っています。企業の業績を審査して、主に設備投資などに対して支給されます。審査は中小企業診断士などの専門家が行い、かなり厳格です。そのため採択率は低めの傾向にあります。また、公募期間が限定されていて、その期間内にしか申請できません。

 

一方、助成金は会社ではなく、そこで働く従業員を対象としています。財源は雇用保険料で、原則として雇用保険加入者向けのものです。審査は労働局の職員が行い、補助金のような外部専門家による審査ではありません。そのため、ルール通りにきちんと実行していれば支給される仕組みになっており、採択率は高めです。

 

 はやみ| なるほど、補助金と助成金は全く別物ですね。

 

企業が選ぶべきは補助金?それとも助成金?

 はやみ|違いはわかりましたが、企業はどちらを選ぶケースが多いのでしょうか?

 

 高橋社長|金額規模で言えば補助金の方が大きいです。先ほどお話した94億円の支援実績も、ほとんどが補助金で、1社あたり3〜4億円規模のものもあります。ただし、助成金には独自のメリットがあります。

 

助成率が高いんです。人材開発支援助成金なら75%、業務改善助成金なら80%という高い助成率が設定されています。そのため、私たちが申請支援する件数としては助成金の方が多いですね。どちらを選ぶかで言えば、実際には助成金を活用する企業の方が多いというのが実態です。

 

 はやみ| 助成金の方が出やすいというイメージは正しいですか?

 

 高橋社長|その通りです。補助金は3〜4億円という大きな金額が出る分、採択率が10%など非常に低いケースもあり、なかなか通らないイメージがあります。一方、助成金は要件をしっかり満たしていれば支給されやすいので、そのイメージは正しいと思います。

 はやみ|補助金は競争率が激しいということですね?

 

 高橋社長|そうですね。金額が大きい分、多くの企業がチャレンジしますし、支給側も採択企業数を絞りますから。現在、補助金全体の採択率は50%を切るものがほとんどです。補助金と助成金では競争の激しさと取りやすさは全然違います。

 

 はやみ| まずは助成金から活用する方が、ハードルが低そうですね!

 

リスキリング時代の最適解!人材開発支援助成金とは

 はやみ|数ある助成金の中で、人材開発支援助成金を特におすすめされている理由は何でしょうか?

 

 高橋社長|ここ近年、テクノロジーに発展やAIの普及などにより、これまでと同じ仕事を続けていくのが難しくなる中で、さまざまなスキルを身につける必要があります。それらの新しいスキルを多くの人に身につけてもらうことを目的として作られたのが、人材開発支援助成金です。そのため、今の実態にとても合っているだけでなく、制度の内容がとても充実しているんです。

 

 はやみ| そうなんですね。高橋さん的おすすめポイントはありますか?

 

 高橋社長|まず1つ目が、1社あたり上限1億円という助成金としては破格の金額設定だということです。次に、75%という高い助成率も魅力です。他にも支払った経費に対する助成だけでなく、研修を受講している従業員の賃金に対しても、1時間あたり例えば1,000円といった賃金助成がつくところがおすすめポイントです。

 

 はやみ|研修中の賃金までお金が出るのは、経営者にとっても助かりますね。

 

 高橋社長|さらに、要件を満たしていれば採択されやすいという点も、おすすめしたい理由の一つです。これらの理由から、まだ活用できていない企業の方も、活用していただきたいと思います。

 

 はやみ| 人材開発支援助成金は、従業員だけでなく経営者にとってもWin-Winな制度ですね!

 

1,700種類から選べる!実践的な研修プログラム

 はやみ|企業にとって魅力的な制度ですが、ちなみに実際に対象となる研修にはどのような種類がありますか?

 

 高橋社長|デジタル人材向けの研修が中心です。AIやDXといった、将来デジタル人材になれるような研修が主なラインナップになっています。それ以外にも、マネジメント関係の研修も人気が高いですね。また、飲食、福祉、保育といった業界特化型の研修もあります。数にすると1,700種類以上の研修プログラムが提供されています。

 

 はやみ|1,700種類という数もすごいですが、幅広い分野の研修が対象となるのもいいですね。どの分野の研修が人気ですか?

 

 高橋社長|やはり今はAI研修が圧倒的に人気です。その中でも、社内でのAI活用度を高めたいというニーズや、そもそもAIを社内で使えていないという入り口段階の企業向けの基礎研修が最も人気ですね。

 

他にもDXの文脈では、Excelやデータベース関連の研修も人気です。AIを使うにしても必要な知識なので、一緒に受講していただくケースが多いです。また、ノーコード・ローコードツールの研修も好評です。例えば、ノーコードコールでもあるkintoneやNotionといった身近なツールの研修から始める企業も多いですね。

 

 はやみ|今、kintoneやNotionなどのツールのお話が出ましたが、そういった実用的なツールを学べるのは嬉しいですね。AIだと受講者のレベル差は大きいと思うのですが、レベル毎に研修が用意されているのですか?

 

 高橋社長|レベルに応じて幅広くバリエーションがあります。例えば、AIと他のツールを組み合わせるものや、画像生成に特化したもの、プロンプトエンジニアリングのような基礎的なものまで幅広く揃っています。また、RPAツールを使った業務自動化など、目的に応じた研修を選ぶことができます。

 

 はやみ| 目的やレベルに合わせて、今、学びたいものを学ぶことができるですね!

 

飲食業界でも活用できる!業界特有の課題解決に

 はやみ|AIとDX向けの研修として活用される企業が多いとのことですが、飲食業界でも活用できるんでしょうか?

 

 高橋社長|もちろんです。例えば、献立作成、シフト作成、お客様とのコミュニケーションなど、さまざまな場面で活用している事例があります。

 

さらに、今後の方向性としては、この研修を受けた企業向けに設備投資の助成も認める方向で話が進んでいます。つまり、研修を受けた後、業務効率化につながる設備を導入する際にも、さらに補助を受けられるようになる可能性があるんです。飲食店は特に設備も重要ですから、いろんな面でプラスになると考えています。

 

 はやみ|社内で新しいことを取り入れたり改革を進めたい時に、高橋さんに相談すれば、助成金を活用して、最適な研修を組み立てていただけるってことですね。次に、この制度を活用することで、どのようなメリットがあるか教えてください!

 

 高橋社長|まずは、従業員のスキル向上です。国は2030年までに最低賃金を1,500円に引き上げる目標を掲げています。賃金を上げるためには、働く人のスキルを底上げする必要があります。この制度を活用することで、従業員がスキルアップできることがまず一番のメリットだと思います。

 

次に、企業としては研修にかかる費用を国が負担してくれる点です。つまり、人材開発支援助成金を活用することで、賃金と同時に従業員の生産性も上げていくことができるんです。

 

 はやみ|これは今すぐ、取り入れたいですね!

 

なぜ落ちる?1円のズレも許されない現実

 はやみ|とても魅力的な制度ですが、申請が面倒だとか、結局通らなかったという声も聞きます。ちなみに失敗しないためのポイントとかありますか?

 

 高橋社長|まず、研修を実施した記録をしっかり残すことが重要です。出席記録、実施内容、受講時間など、実態をきちんと記録しておかないと、当然支給されません。これが最も基本的ですが、意外と漏れが多いため注意が必要です。

 

 はやみ|記録を確実に残すことが大事なんですね。

 

 高橋社長|次に、研修を最後まで完了していただくことです。予定通りに受講してもらえれば問題ないのですが、病気や怪我、離職などで受講できないケースもあります。そういったことも想定した上で計画を立てる必要があります。

 

 はやみ|たしかに、予期せぬ理由で、計画通りに進まないことがあるからこそ、リスケできるよう準備が必要ですね。

 

 高橋社長|そして最も重要なのが、給与を正確に支払っているということです。残業代も含めて、日々の給与計算が正しく行われている必要があります。

 

 はやみ|それは当たり前のことでは…

 

 高橋社長|理屈ではそうなんですが、実は難しいケースもあるんです。たまに「うちはちゃんと残業代を払っているから大丈夫」とおっしゃる企業でも、手動で計算しているところでは、わずかな計算ミスで1円単位のズレが生じていることがあるんです。

 

 はやみ|1円でもダメなんですか?

 

 高橋社長|はい。1円単位でも間違っているという事実があれば、支給されないという判定になってしまいます。だから、できているつもりでも実際にはできていない企業が意外とあるんです。私たちもサポートしていて驚くことがありますし、企業側も驚かれることが多いですね。

 

 はやみ|その辺りを専門家にしっかりサポートしていただくことで、確実に受給できるようになるわけですね。

 

 高橋社長|その通りです。私たちは多くの企業をサポートした経験から、見落としやすいポイントを把握しているため、しっかり確認しながら、確実に受給できるようにお手伝いさせていただいています。

 

 はやみ|それはとても心強いですね!

 

賃上げ時代を生き抜く!今、企業がすべきこととは?

 はやみ|一般的に企業が抱える課題において、助成金や補助金をもっと活用した方が良いと感じる場面はありますか?

 

 高橋社長|最低賃金引き上げが進んでいく中で、こうした制度は企業にもっともっと活用してもらうべきだと思います。

 

特にサービス業や飲食業では、最低賃金引き上げが事業に与えるインパクトが大きいです。賃金を上げる分、しっかりと受け取れる制度がたくさんあります。

 

例えば、賃金引き上げに合わせて業務改善助成金という制度を使えば、最大で600万円の助成を受けることもできます。単に賃金を引き上げるだけでなく、使える制度を一緒に活用しないと、もったいないですよ。

 

 はやみ|たしかに使えるものは、しっかり使うことで、企業だけでなく、従業員の方にとってもプラスになりますね!

 

 高橋社長|賃上げや人手不足で、苦しいという状況になる前に、きちんと制度を活用してほしいと思っています。

 

挑戦する企業を支える「黒子」として成果報酬型だからこそできる伴走支援とは

 

 はやみ|最後に、高橋さんが今の事業を通じてどのような思いで日々お仕事に臨んでいらっしゃるのか、教えてください。

 

 高橋社長|当社では「挑戦者支援」という理念を掲げており、挑戦する人たちの「一番の理解者」でありたいと常に考えています。私自身、飲食業などで挑戦し、コロナ禍で大変な経験もしました。その時、私自身は制度に助けられた経験がある一方で、制度があることを知らずに活用できないまま終わってしまう人も多いです。

 

だからこそ、挑戦者がただリスクを追いすぎるのではなく、活用できる制度を最大限に活用してリスクを下げ、安心して挑戦できるような環境を支援したい。挑戦者目線で寄り添い、共に歩んでいきたいという思いで事業を行っています。弊社の支援は基本的に成果報酬型です。お客様が成果を出してくださるからこそ、私たちも存在意義があると考えています。お客様の成功が私たちの喜びであり、報酬になるという形で、お客様と伴走しながらサポートさせていただいています。

 

 はやみ|成果報酬型だからこそ、お客様と一体となって取り組めるんですね。まさに伴走型の支援というわけですね。

 

 高橋社長|そうですね。私は日頃から黒子のような存在でありたいと思っています。本当は表に出るのは少し苦手なので(笑)裏方でしっかりと支えることで、挑戦する企業様が輝けるようにサポートしていきたいと考えています。

 

 はやみ|高橋さんは黒子を自認されていますが、TOiTOiとのセミナーではぜひ前に出て、まだ制度を知らない多くの企業様に向けて、助成金活用の重要性を発信していただきたいです。

 

「面倒そう」「難しそう」といったイメージを払拭し、高橋さんならではの視点で「こうすれば活用できる」「会社はもっと成長できる」というメッセージを、これからも共に届けていければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

あなたの会社でも、今日から始められる!

 はやみ|挫折を経験した起業家だからこそ分かる、経営者の苦しみ。制度に救われた当事者だからこそ伝えられる、助成金の価値。高橋社長の言葉には、そんな重みがありました。

 

最低賃金引き上げが進む中、多くの企業が人材育成と賃金対応の両立に悩んでいます。しかし、人材開発支援助成金をはじめとする制度を適切に活用すれば、国の支援を受けながら従業員のスキルアップを実現し、持続的な企業成長につなげることができるのです。

 

特に飲食業界のように最低賃金引き上げの影響を大きく受ける業界では、こうした制度の活用が企業存続の重要な鍵となります。制度を知らずに苦しむのではなく、使える支援を最大限活用して、従業員と共に成長する企業を目指しませんか?

 

株式会社ロジック・ブレインでは、定期的に講師として高橋社長をお迎えし、セミナーを開催しています。詳しくは、下記までお問合せください。

 

 

 

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