2025年12月22日公開
ビッグファイブと心理的安全性で「働くことが楽しい」組織へ『人が育ち、売上が倍増する!最強の組織を作るたった1つの方法』著者 米倉氏インタビュー
「社員が育たない」「離職が止まらない」
この悩みの原因は「人」ではなく「環境」にある。そして環境は、適切なメソッドで整えることができる。
こう語るのが、受講生総数2,200名を指導し、現在は株式会社ロジック・ブレインのセミナー教育部門で取締役を務める米倉三枝氏です。
2025年10月に、現場で培った組織課題解決のノウハウを体系化し、明日から実践できる具体的手法をまとめた『人が育ち、売上が倍増する!最強の組織を作るたった1つの方法』を出版しました。
そこで今回は、執筆の背景や本書に込めた思い、そして組織変革の手法について、詳しくお話を伺いました。
目次
ロジック・ブレインのメソッドを現場で実践してきた経験
はやみ|まず、米倉さんのこれまでのご経歴について教えていただけますか?
米倉 氏|パーソナル分析の分野で協会理事を務め、支部長15名を育成しました。受講生総数は2,200名を超え、講師として高い評価をいただきました。現在は「働くことが楽しいと思える組織構築をお手伝いします」をモットーに、株式会社ロジック・ブレインのセミナー教育部門で取締役として、HRコンサルタント養成講習やISO30414人的資本認定講習を運営しています。
はやみ|多くの方を指導されてきたんですね
米倉 氏|はい。私自身もリーダーとして「なぜ伝わらないんだろう」「どうして動いてくれないんだろう」と苦しんだ経験があります。だからこそ、経営者やリーダーの悩みが痛いほど分かるんです。
はやみ|ちなみに米倉さんの強みはどこにあるとお考えですか?
米倉 氏|私の強みは「なんとなく」ではなく「データに基づいた」組織づくりができることです。ロジック・ブレインが開発したビッグファイブ性格診断と心理的安全性を組み合わせたメソッドを活用し、多くの企業の離職率削減と組織活性化をサポートしてきました。
職場を「我慢の場」ではなく「輝ける場」へ 執筆に込めた願いとは
はやみ|では、今回の書籍を執筆しようと思われたきっかけを教えてください。
米倉 氏|私がずっと目指しているのは「働くことが楽しいと思える組織を作る」ということです。1日の大半、7〜8時間も過ごす職場が「我慢の場」であったり、「自分にはここは合っていないのではないか」「もっと自分らしくやりがいを持って働ける場所があるんじゃないか」と不安に感じる場所であっては悲しいですよね。
はやみ|人生の3分の1以上を過ごす場所だからこそ、その環境は重要ですね。
米倉 氏|そうなんです。それは私だけでなく、企業の規模を問わず、多くの経営者が「働くのが楽しいと社員が思えることが、一番大事だよね」と考えています。
しかし現実は厳しく、多くの経営者や人事の方とお話すると「人が育たない」「離職が止まらない」という悩みを抱えていらっしゃいます。つまり、社員が働くのが楽しいと思える環境が作れていない、理想は分かっているけれど、実現できていない状態の会社が多いようです。
はやみ|理想と現実のギャップに悩んでいらっしゃるんですね。
米倉 氏|その通りです。多くの経営者が「社員のやる気がない」「能力が低い」と嘆かれるのです。つまり人に原因があるようにお考えのようですが、よくよく話を聞いて見ると「環境が整っていないだけ」というケースが非常に多いです。
はやみ|人ではなく、環境に原因があるということですか?
米倉 氏|しかし、この「環境を変える」という考え方に出会い、身を持って実感しました。だからこそ、働く人が「ここにいて良かった」と心から感じられる場所を作る。その思いを多くの方と共有したくて出版することを決めました。
目指すべき「働くことが楽しいと思える組織」とは
はやみ|タイトルにもある「最強の組織」とは、具体的にどのような組織を指すのでしょうか?
米倉 氏|「最強の組織」と聞くと、強力なリーダーシップによるトップダウン型の組織をイメージされる方も多いかもしれません。しかし、私が考える最強の組織とは「チームワーク」が機能している組織、つまり「働くことが楽しいと思える組織」です。
はやみ|チームワークが機能する組織ですか?
米倉 氏|そこで重要になるのが「心理的安全性」です。「私はここにいていいんだ」「この発言をしても大丈夫だ」とメンバー全員が安心できる環境のことです。
いくら個人の能力が高くても、ビクビクして意見が言えないような「我慢の職場」では、その力は発揮されません。心理的安全性が確保されて初めて、人は本来の力を発揮し、変化することができるのです。
KEY WORD 心理的安全性とは
メンバー全員が「自分の意見を言っても否定されない」「失敗しても責められない」と感じられる組織風土のこと。Googleは「プロジェクト・アリストテレス」と名づけられた実験で、「効果的なチーム(目標を達成しやすいチーム)を作る条件は何か」というリサーチを行いました。その結果、チームの効果に影響を及ぼす要素として「誰がチームのメンバーか」ではなく「チームがどのように協力しているか」が重要であることが判明しました。そこから、ビジネス界で注目され、現代の組織マネジメントにおいて最も重要な概念の一つとされています。
組織を変える鍵は「ビッグファイブ」と「心理的安全性」の組み合わせ
はやみ|本書では、組織を変える手法として、先ほどお話いただいた心理的安全性とビッグファイブを挙げられていますが、ビッグファイブとはどういったものですか?
米倉 氏|ビッグファイブとは、性格分析の理論です。本書で紹介しているのは、たった10問、5分もあれば終わる「ショートビッグファイブテスト」というものです。
これをやるだけで、自分の得意分野や苦手な特性がデータとしてはっきりと分かります。「あ、私ってこういうところが強いんだ」「だからこの仕事は苦手だったんだ」と、自分自身のことや仕事との相性がすごく腑に落ちるんです。
はやみ|5分で自己理解が深まるのは、忙しい現場でも取り入れやすいですね。
米倉 氏|そうなんです。そしてもう一つの鍵が、心理的安全性です。自分の特性を知り、それを安心して発揮できる土台(心理的安全性)がある。この2つを組み合わせることで、働くことが楽しいと思える組織に変わっていきます。本書のタイトルにある「たった1つの方法」とは、この2つを組み合わせた1つのメソッドのことなんです。
KEY WORD ビッグファイブとは
1980年代に心理学者のルイス・ゴールドバーグ氏が提唱した性格分析理論です。ビッグファイブ理論では「人間が持つさまざまな性格は、5つの要素の組み合わせで構成される」と考えます。世界中で最も信頼性が高いとされる性格診断手法の一つで、学術的な裏付けがあり、企業の人材配置や組織開発に広く活用されています。ビッグファイブ理論では、誠実特性、調和特性、開放特性、外向特性、情緒特性の特性5因子の高低差によって性格を分析します。
本書の特徴:「4つの不安」と「5因子」の関係性
はやみ|本書ならではの特徴はどこにありますか?
米倉 氏|本書では、心理的安全性の「4つの不安」とビッグファイブの「5因子」の関係性に注目しています。これが本書の大きな特徴です。
はやみ|4つの不安と5因子の関係性、ですか?
米倉 氏|はい。心理的安全性が不足すると「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔だと思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」という4つの不安が生まれます。ただ、同じ「4つの不安」でも、ビッグファイブの5因子によって感じ方がまったく違うんです。
はやみ|具体的にはどういうことでしょうか?
米倉 氏|例えば「無能だと思われる不安」ひとつ取っても、外向特性が高い人と低い人では感じ方が違いますし、情緒特性が高い人と低い人でも反応が異なります。つまり、同じ不安に対しても、その人の特性に合わせたアプローチが必要なんです。
本書では、この「4つの不安×5因子」の組み合わせに着目し、特性ごとの具体的な対処法を紹介しています。一律の対応ではなく、一人ひとりに合った関わり方ができるようになるの
最強のチームワークとは「凹凸を補い合う」こと
はやみ|ビッグファイブと心理的安全性を組み合わせることで、具体的にどのような変化が組織に生まれるのでしょうか?
米倉 氏|多くの現場で起きている問題は「適材適所」ができていないことです。得意なことをやらせてもらえず、苦手なことを無理してやっている。これでは本人も辛いですし、会社も伸びません。
ビッグファイブの結果をチームで共有すると、それが「見える化」されます。例えば、私が細かい事務作業が苦手だというデータが出たとします。すると、それが得意なメンバーが「私やりますよ」と手を挙げてくれる。逆に、そのメンバーが苦手な企画立案やプレゼンテーションを、私が率先して引き受ける。
はやみ|なるほど!弱点を克服させるのではなく、強みを組み合わせる発想なんですね。
米倉 氏|まさにその通りです。個人の苦手を無理に克服させるのではなく、お互いの凹凸をパズルのように補い合う。そして、それを「手伝って」と気軽に言い合える心理的安全性がある。これこそが、生産性を向上させるチームワークなんです。
勘や経験に頼らない「データ活用」のすすめ
はやみ|なぜ、今この手法が必要なのでしょうか?
米倉 氏|従来のマネジメントは、リーダーの「勘」や「経験」に頼りがちでした。しかし、それだけでは説得力がありませんし、人によってバラつきが出ます。
大切なのは、チーム全体で特性をデータとして共有することです。「この人はこういう特性があるから、この仕事が向いている」と客観的に判断できれば、説得力も増し、メンバーも納得して仕事に取り組めるようになります。
はやみ|データの裏付けがあれば、配置転換などもスムーズに進みそうですね。
米倉 氏|その通りです。特に中小企業の小規模な組織ほど、導入の効果は早く現れます。トップの決断ひとつで、組織は変わります。「うちの社員はやる気がない」と嘆く前に、その人が輝ける場所をデータに基づいて用意してあげてほしいと思います。
はやみ|実際に、この手法で成果を上げた企業はあるのでしょうか?
米倉 氏|はい、多くの企業で成果が出ています。例えば、ある保育園では導入前の離職率が50%でしたが、導入1年目で0%に改善し、事業規模も2倍になりました。4年目には事業規模が6倍に拡大しています。
また、ある建設会社では新入社員の1年以内の早期離職率が100%だったのが、導入後は0%になり、粗利も12.2%アップしました。心理的安全性を高め、適材適所を実現することで、メンバーの生産性が向上し、それが目に見える成果につながるんです。
本書では、これらの事例について詳しく紹介しています。
HRコンサルタント養成講習について
はやみ|米倉さんが運営されている「HRコンサルタント養成講習」についても教えてください。
米倉 氏|本の中では理論や事例について紹介していますが、実際のコンサルティング現場で使うより深いノウハウをお伝えするのがこの講習です。
パーソナル分析と組織稼働率の可視化で、一人ひとりの個性を活かした働きがいのある組織づくりをサポートする。この実践的メソッドを習得し、企業の未来を創造できるコンサルタントの育成を目指しています。
はやみ|具体的には、どのようなことを学べるのでしょうか?
米倉 氏| 一例ですが、ロジック・ブレインが開発・提供しているTOiTOiというクラウドHRMシステムを活用し、書籍でも紹介している組織分析機能※を使って、どのようにコンサルティングをすれば良いかを学びます。
※組織分析機能
TOiTOiの組織分析を活用することで、組織稼働率を調べることが可能です。組織稼働率とは、組織やチームが特性の期間内でどれだけ効率的に動作しているかを示す指標です。組織稼働率が高いチームほど効率的な運営や生産プロセスの最適化ができていると推測できるため、組織の成果を最大化することにつながる場合があります。また、リーダーを中心にして、円の外側にいる人ほど、親密にコミュニケーションをとった方がいい人として表示されます。

はやみ|組織の状態が数値で見えるんですね。
米倉 氏|はい。組織稼働率を見れば、その組織が良好な状態なのか、改善が必要なのかがパーセンテージで明確になります。講習では、単に数値を算出するだけでなく、具体的なアドバイスや改善策の提示、さらには相手の性格に合わせた褒め方・指導の仕方といった実践的なマネジメント手法まで習得していただきます。
環境を変えるのはトップの決断
はやみ|最後に、今回の出版を通じて、どのような方にメッセージを届けたいですか?
米倉 氏|特に読んでいただきたいのは、経営者やリーダーの方々です。なぜなら、組織を変えることができるのはトップの決断だからです。
「人が育ち、売上が倍増する」組織は、適切な環境を整えることで実現できます。ぜひ本書を手に取って、実践していただきたいと思います。
はやみ|本日は貴重なお話をありがとうございました。
ビッグファイブと心理的安全性で組織は変えられる!
はやみ|今回のインタビューを通じて見えてきたのは、「人が育たない」のは決して人の問題ではなく、環境の問題だということ。
ビッグファイブで個人の特性を可視化し、心理的安全性でそれを発揮できる土台を作る。そして、同じ「4つの不安」でも5因子によって感じ方が違うという視点から、一人ひとりに合った対応ができるようになる。
「この2つを組み合わせることで、働くことが楽しい組織を作ることができる」米倉氏の言葉には、現場での試行錯誤から生まれた確信がありました。
皆さんも新入社員の頃を思い出してください。やる気に満ち溢れ、目を輝かせていたはずです。トップの決断ひとつで、組織は変わります。その輝きを持ち続けられる職場を、あなたの手で作ってみませんか?
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