2026年7月2日公開
研究から考える ビッグファイブシリーズ 第1回なぜ「真面目な人」は仕事で成果を出しやすいのか?〜誠実特性と仕事成果の関係〜
はやみ|「真面目にコツコツやっているのに、なぜか評価されない……」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
一方で、職場では「真面目な人ほど損をする」「地道にやる人より、目立つ人の方が評価されやすい」と感じる場面もあります。
たしかに、発言力がある人、アピールが上手な人、場を盛り上げられる人は、評価の場面で目立ちやすいかもしれません。
しかし、パーソナリティ心理学の研究では、仕事の成果と一貫して関係しやすい性格特性として「誠実特性」が注目されてきました。
今回は、ビッグファイブのひとつである「誠実特性」について調べてみました。
目次
誠実特性とは?
誠実特性とは、英語では Conscientiousness と呼ばれる性格特性です※。
※学術文献では「誠実性」「勤勉性」「良識性」などと訳されることもありますが、LB MEDIAでは統一して「誠実特性」と表記しています。
ただし、ここでいう誠実特性は、単に「いい人」「優しい人」という意味ではありません。人に親切かどうか、協調的かどうかは、ビッグファイブでは主に「調和特性」と関係する領域です。
誠実特性とは、簡単に言えば、目標に向かって、自分を律し、計画的に物事をやり遂げる力のことです。

たとえば、次のような行動に表れます。
・目標を決める
・計画を立てる
・途中で投げ出さずに続ける
・期限を守る
・一定の品質を保つ
・責任を持って最後までやり切る
つまり、誠実特性が高い人は「気分が乗るかどうか」だけで動くのではなく、自分の役割や目標に対して安定して行動できる傾向があります。
はやみ|「誠実特性が高い=真面目」ではなく「目標に向かって自分を律することができる人」誠実特性について考える場合、この定義、最初にちゃんと押さえておきたいポイントです。
データで見る誠実特性の影響力
パーソナリティ心理学の分野で代表的な研究として知られる Barrick & Mount(1991)※のメタ分析では、ビッグファイブの中でも、誠実特性が職務成果と一貫して関連することが示されています。特に、専門職・管理職・営業職・警察職・技能職など、複数の職務領域において関連が確認されている点が特徴です。
※Barrick & Mount(1991)は、ビッグファイブと職務成果の関係を検討した代表的なメタ分析です。誠実特性が、複数の職種において仕事の成果と一貫して関連しやすいことを示しました。
これは「真面目だから必ず成功する」という単純な話ではありません。
仕事の成果には、スキル・経験・職場環境・上司との相性・本人の動機など、さまざまな要因が関係します。それでも誠実特性が注目されるのは、どの職種でも比較的共通して求められる「継続する力」「責任を持ってやり抜く力」と関係しているからです。
はやみ|派手な才能や瞬発力だけでなく、日々の行動を積み重ねられることも、仕事の成果を支える大切な力。研究がそれを裏付けているのは、地道に頑張る人の背中を押してくれる気がします。
誠実特性を構成する力
誠実特性は、ひとつの性格特性ですが、その中には複数のファセット(下位要素)※があります。NEO-PI-Rなどの代表的な性格検査では、誠実特性は主に以下の6つのファセットで捉えられます。
※ファセットとは、ひとつの性格特性をさらに細かく分けた構成要素のことです。
この中でも、仕事の成果と結びつけて考えるうえで特にわかりやすいのが、次の3つです。

ファセット① 責任感・義務感
チームや自分の役割に対して責任を持ち、期待に応えようとする力です。
「自分がやると言ったことは、最後までやる」
「周囲に迷惑をかけないように行動する」
「任された役割を軽く扱わない」
こうした姿勢に表れます。
※学術的には、NEO-PI-R のファセットでは Dutifulness にあたります。「責任感」だけでなく「義務感」と表現すると、より文献に近い表現になります。
ファセット② 自己規律
気分や誘惑に流されず、やるべきことを続ける力です。
仕事では、常にやる気が高い日ばかりではありません。疲れている日もある。面倒に感じる作業もある。すぐに成果が見えない時期もある。それでも、必要な行動を積み重ねられるのが自己規律です。
ファセット③ 達成志向
ただタスクを終わらせるだけでなく、より良い成果や高い基準を目指す力です。
「これで十分」ではなく、「もっと良くできないか」「質を高めるにはどうすればいいか」と考えられる傾向です。
Dudleyらのメタ分析※でも、誠実特性を大きな1つの特性として見るだけでなく、こうした狭いファセットを見ることで、仕事成果の予測に追加的な意味があることが示されています。
※Dudley ら(2006)は、誠実特性の下位要素に注目したメタ分析です。誠実特性を一括りに見るだけでなく、責任感、自己規律、達成志向などの細かな要素を見ることが、仕事成果の理解に役立つことを示しました。
はやみ|同じ「真面目な人」でも、計画が得意な人・責任感が強い人・質を追い求める人では、仕事での表れ方が少しずつ違う。ファセットで見ると、「どんなふうに真面目か」が見えてきます。
なぜ誠実特性は仕事の成果につながるのか?
誠実特性が仕事の成果につながりやすい理由は、行動の流れで考えるとわかりやすくなります。

目標を持つ → 計画を立てる → 継続して行動する → 期限を守る → 品質を維持する → 仕事の成果につながる
仕事では、単発のひらめきや一度の頑張りだけではなく、継続的な行動が求められる場面が多くあります。報告を続ける。顧客対応を丁寧に行う。期限までに資料を仕上げる。改善を重ねる。ミスを減らす。一見すると地味です。しかし、組織の成果は、この地道な行動の積み重ねによって支えられています。
はやみ|成果って、たいていの場合「一度の頑張り」じゃなくて「続けられたかどうか」で決まる。誠実特性は、その「続ける」を支えている特性です。
志望者の誠実特性を採用面接ではどう見極める?
誠実特性は、履歴書や職務経歴書の文字だけでは見えにくい特性です。「私は真面目です」と自己申告してもらうだけでは、見極めとしては不十分です。大切なのは、結果だけではなく、そこに至るまでのプロセスを聞くことです。たとえば、面接では次のような質問が有効です。
・計画通りに進まなかったとき、どのように調整しましたか?
・誰にも見られていない状況で、どのように仕事の質を保ちましたか?
・途中で投げ出したくなった経験はありますか?そのとき、どう乗り越えましたか?
・期限に間に合わせるために、どのような工夫をしましたか?
・周囲から任された役割を果たすために、意識していることはありますか?
こうした質問を通じて、候補者の「責任感」「自己規律」「計画性」「達成志向」が具体的な行動として見えてきます。
はやみ|「頑張りましたか?」ではなく「どう続けましたか?」を聞く。この一問の違いで、見えてくるものが全然変わります。
評価制度にどう活かす?
誠実特性の高い人は、目立つアピールよりも、日々の行動や安定した成果で貢献することが多い傾向があります。そのため、評価制度では最終的な成果だけでなく、行動プロセスも見えるようにすることが大切です。
たとえば、次のような観点です。
・期限を守れているか
・報告・連絡・相談が安定しているか
・計画を立てて進めているか
・品質を維持しているか
・周囲からの信頼を得ているか
・改善行動を継続しているか
成果だけを見る評価制度では、短期的に目立つ人が評価されやすくなることがあります。プロセスを丁寧に見る評価制度にすることで、誠実特性の高い人が持つ「安定して成果を支える力」が見えやすくなります。
はやみ|地道な人が「損をしない」仕組みをつくること。それって、組織が誠実特性をちゃんと活かせているかどうかのバロメーターだと思います。
注意点|誠実特性が高ければ高いほど良いとは限らない
ただし、誠実特性が高ければそれだけでよい、というわけではありません。
Leらの研究※では、性格特性と仕事成果の関係について、「高ければ高いほど常に良い」とは限らず、職務の複雑さなどによって関係の出方が変わる可能性が示されています。
※Le (2011)は、性格特性と仕事成果の関係が、必ずしも「高いほど良い」とは限らないことを示した研究です。誠実特性も、職務内容や環境によっては、過度に高い場合に効果が弱まる可能性があり、適切な発揮環境が重要だと考えられます。
誠実特性が高すぎる場合、次のようなリスクが指摘されることがあります(推測ですが、Le et al.(2011)が示した曲線的関係を踏まえた一般論であり、個々のリスクについて直接の実証研究があるわけではありません)。
・完璧主義になりやすい
・細部にこだわりすぎる
・人に任せるのが苦手になる
・変化への対応が遅れる
・抱え込みやすい
・ストレスやバーンアウトにつながるにつながる可能性がある
つまり、誠実特性は「高いほど無条件に良い」のではなく、適切な環境で、健全に発揮されることが大切です。
はやみ|「真面目さ」は強みですが、強みは使いすぎると負担にもなる。だからこそ、本人の努力だけでなく、上司や組織のサポートも大切です。
誠実特性の活躍ゾーン
誠実特性は、低すぎると計画や継続が苦手になりやすく、高すぎると完璧主義や抱え込みにつながることがあります。その中間にあるのが、仕事で力を発揮しやすい「活躍ゾーン」です。

低い場合: 柔軟性がある、臨機応変に動ける。ただし、計画や継続が苦手になりやすい。
活躍ゾーン: 責任感がある/継続力がある/計画性がある/品質を保てる
高すぎる場合: 完璧主義になりやすい/抱え込みやすい/変化が苦手になりやすい/バーンアウトにつながることがある(推測ですが、実証研究というより一般的傾向としての整理です)
はやみ|「高ければ高いほど良い」じゃないのが、パーソナリティ特性の面白いところ。強みと負荷は、いつもセットで考えたいですね。
管理職ができるサポート
誠実特性の高い人には、次のような関わり方が効果的です。
1. 優先順位を一緒に整理する
誠実特性の高い人は、すべてをきちんとやろうとしがちです。上司が「今回はここまでで十分」「この業務は優先度を下げてよい」と伝えることで、抱え込みを防ぎやすくなります。
2. 完璧よりも完了を評価する
質を高めることは大切ですが、すべての仕事で100点を目指すと負担が大きくなります。「まずは期限内に出す」「改善は次の段階で行う」という考え方を共有することも重要です。
3. 権限委譲を促す
責任感が強い人ほど「自分がやらなければ」と考えやすい傾向があります。上司が意識的に役割分担を設計することで、誠実特性の高い人が無理なく力を発揮しやすくなります。
はやみ|「任せられない」のは、信頼していないからじゃなくて、責任感が強すぎるから。そこを理解して関われるかどうかが、マネジメントの質を分けると思います。
性格特性は変わらないものなのか?
採用や育成で誠実特性を見るときに、もうひとつ大切なのが「性格は固定されたものなのか」という視点です。
パーソナリティ特性は比較的安定した傾向として捉えられますが、まったく変化しないものではありません。Robertsら※のメタ分析では、誠実特性は特に若年成人期に高まる傾向があることも示されています。
※Roberts ら(2006)は、パーソナリティ特性の生涯発達を検討したメタ分析です。誠実特性は特に若年成人期に高まりやすい傾向が示されており、性格特性は安定性を持ちながらも、経験や環境によって変化しうるものだと考えられます。
つまり、採用時に特性を見ることは大切ですが、それだけで人を決めつけるのではなく、環境や経験によって発揮のされ方が変わるものとして捉える必要があります。
はやみ|診断結果は「決めつけるため」ではなく、「その人が力を発揮しやすい環境を考えるため」に使うもの。そこは、LB Personalityを使ううえでも大切にしている視点です。
真面目さを、成果につなげるには
「真面目な人」が仕事で成果を出しやすいのは、偶然ではありません。
目標を持ち、計画を立て、継続して行動し、期限を守り、品質を維持する。この一連の行動が、組織の中で安定した成果につながっていくからです。
ただし、真面目さは放っておけば必ず成果になるわけではありません。
評価される仕組みがなければ、地道な努力は見えにくくなります。優先順位が整理されていなければ、抱え込みにつながります。完璧を求めすぎれば、バーンアウトのリスクも高まります。
だからこそ、人事や管理職には、誠実特性の高い人材を見極めるだけでなく、その力を健全に発揮できる環境を整えることが求められます。
採用では、結果だけでなくプロセスを見る。評価では、成果だけでなく行動の積み重ねを見る。育成では、努力を続けられる環境と、無理をしすぎない支援を用意する。
それが、真面目さを「報われない努力」で終わらせず、組織の成果につなげる第一歩になるのではないでしょうか。
はやみ|こうした視点を、実際の組織づくりにどう落とし込めるか。最後にご紹介します。
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はやみ|誠実特性の高い人材は、組織の中で確実に成果を支えています。しかし、その貢献は数字に表れにくく、見えにくいまま終わってしまうことも少なくありません。

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「この人は、誠実特性が高いがゆえに抱え込んでいないか」
「地道に成果を支えている人を、どう正当に評価するか」
「誠実特性の高い人が力を発揮しやすい環境が、このチームに整っているか」
こうした視点を持つことで、真面目さを「見えない貢献」で終わらせず、組織の成果として活かす仕組みづくりがしやすくなります。
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参考文献
Barrick, M. R., & Mount, M. K.(1991). The Big Five Personality Dimensions and Job Performance: A Meta-Analysis. Personnel Psychology, 44(1), 1–26.
Costa, P. T., & McCrae, R. R.(1995). Domains and Facets: Hierarchical Personality Assessment Using the Revised NEO Personality Inventory.
Dudley, N. M., Orvis, K. A., Lebiecki, J. E., & Cortina, J. M.(2006). A Meta-Analytic Investigation of Conscientiousness in the Prediction of Job Performance: Examining the Intercorrelations and the Incremental Validity of Narrow Traits. Journal of Applied Psychology, 91(1), 40–57.
Le, H., Oh, I.-S., Robbins, S. B., Ilies, R., Holland, E., & Westrick, P.(2011). Too Much of a Good Thing: Curvilinear Relationships Between Personality Traits and Job Performance. Journal of Applied Psychology, 96(1), 113–133.
Roberts, B. W., Walton, K. E., & Viechtbauer, W.(2006). Patterns of Mean-Level Change in Personality Traits Across the Life Course: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies. Psychological Bulletin, 132(1), 1–25.
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