2026年7月6日公開
研究から考える ビッグファイブシリーズ第2回面接で「話しやすい人」って、本当に評価していいの……?〜外向特性と採用評価の「罠」〜
はやみ|「今回の応募者さん、ハキハキしていて印象が良かったな」
面接のあと、面接官がこんな感想を抱くことは少なくありません。明るい。話しやすい。受け答えがスムーズ。自信がありそうに見える。
たしかに、こうした印象は面接の場ではプラスに働きやすいものです。限られた時間の中で応募者を理解しようとすると、どうしても「話しやすさ」や「第一印象」は評価に影響します。
しかし、その「話しやすさ」は、本当に「入社後に活躍できるかどうか」と同じなのでしょうか?
今回は、ビッグファイブのひとつである外向特性に注目します。面接官が陥りやすい第一印象のバイアスと、採用評価で見落としてはいけない視点について、研究をもとに考えてみます。
目次
外向特性は、面接で「見えやすい」
外向特性とは、人との関わり方や、外に向かってエネルギーを出す傾向を表すパーソナリティ特性です。
※学術文献では『外向性』などと訳されることもありますが、LB MEDIAでは統一して『外向特性』と表記しています。
ビッグファイブにおける外向特性は、単に「明るい」「よく話す」という意味だけではありません。人との交流を好む傾向、自分の意見を表に出す傾向、活動的に動く傾向など、いくつかの側面を含んでいます。
採用面接との関係で特に注目したいのは、次の2つです。
・社交性: 人との交流を好み、初対面でも自然に会話を楽しめる傾向
・自己主張性: 自分の考えや意見を、積極的に周囲へ発信する傾向
※Costa & McCrae の NEO Personality Inventory では、外向特性はさらに温かさ・社交性・自己主張性・活動性・刺激追求・ポジティブ感情という6つのファセット(下位次元)※に分解されます。
※ファセットとは、ひとつの性格特性をさらに細かく分けた構成要素を指します。
本記事では、採用面接との関連が特にわかりやすい「社交性」「自己主張性」の2つに絞って解説します。

社交性が高い人は面接官との会話が自然に弾みやすく、自己主張性が高い人は自分の考えをはっきり伝えやすくなります。その結果、面接官から見ると「感じがいい」「自信がありそう」「コミュニケーション能力が高そう」という印象につながりやすいのです。
はやみ|外向特性が高いこと自体は悪い話ではありません。初対面の相手と自然に話せること、自分の考えをはっきり伝えられることは、採用面接では大きなプラスに映ります。ただし、それがそのまま「仕事で成果を出す力」と同じとは限らない。つまり、その2つを分けて考えることが大切です。
研究が示す「面接官は性格を見ている」という事実
Barrick, Patton, & Haugland(2000)※は、面接官が採用面接の中で応募者のビッグファイブ特性をどの程度判断できるのかを検討しました。
※Barrick, Patton, & Haugland(2000)は、面接官が応募者のパーソナリティをある程度推測する一方で、職務成果と関連しやすい特性を正確に見極めることには限界があると示した研究です。
この研究が示す重要なポイントは、面接官が応募者のパーソナリティを「まったく見ていない」わけではない、ということです。短い面接時間の中でも、面接官は応募者の性格的な特徴をある程度推測しています。
ここから先は、この結果をふまえたうえでの一般的な指摘です。面接官の評価では、見えやすい特性ほど、評価に強く影響しやすいと考えられます。
外向特性は、面接の場で非常に見えやすい特性です。声の大きさ、表情の明るさ、話すテンポ、反応の速さ、自己PRの上手さ、会話の盛り上がり。こうした要素は、面接官の印象に残りやすくなります。そのため、面接官が無意識のうちに「話しやすい人=仕事ができそうな人」と結びつけてしまうリスクがあります。

つまり、面接での好印象は大切だけれど、それだけで職務適性まで判断してしまうと、少し危ういということです。
はやみ|面接官は、応募者をちゃんと見ようとしています。ただ、限られた時間の中では、どうしても目立つ情報に引っ張られる。外向特性は声や表情、会話のテンポとして表に出やすいので、評価に入り込みやすいんですね。
「面接評価が高い」と「職務成果が高い」は別問題

面接で目立つ人には、いくつかの共通点があります。声が大きく、自己PRが上手、雑談が得意、反応が早い、明るく自信があるように見える。
これらは、面接の場では確かに強みです。しかし、職場で成果を出すために必要な力は、それだけではありません。たとえば、次のような力も仕事では重要です。
・複雑な情報を整理する力
・期限を守って継続する力
・ミスを防ぐ正確性
・顧客や社内の課題を深く理解する力
・目立たない改善を積み重ねる力
・相手の話を丁寧に聞き取る力
・慎重に判断し、安定して業務を進める力
特に、短時間の面接では「見えやすい能力」と「見えにくい能力」に差が出ます。外向特性は見えやすい一方で、継続力・正確性・粘り強さ・思考の深さ・責任感などは、面接の場だけでは見えにくい場合があります。
はやみ|「面接ではとても良かったのに、入社後は思ったほど成果が出なかった」というケースの背景には、面接時の印象評価が強く働いていた可能性があります。逆に、面接では控えめで目立たなかった人が、入社後に着実に信頼を積み上げて、数年後にはチームに欠かせない存在になっていることもあります。面接での評価と入社後の活躍は、いったん分けて考える必要があるのです。
見逃したくない「静かなる活躍人材」
「静かな人=能力が低い」ではありません。面接で強く自己PRをしない人の中にも、入社後に大きな価値を発揮する人材はいます。
システムエンジニアの場合
面接では口数が少なく、自分を強くアピールしなかった人が、入社後は要件の抜け漏れを防ぎ、障害の原因を粘り強く調査し、品質改善を継続的に提案する存在になることがあります。
経理・財務担当の場合
面接では印象に残りにくかった人が、数字の異常値にいち早く気づき、ミスを未然に防ぎ、正確な業務を積み重ねることで、組織を支えることができます。
研究開発職の場合
面接では言葉を慎重に選ぶため積極性が低く見える人が、情報収集・仮説検証・専門知識の蓄積を地道に続け、新製品や新技術の開発に貢献することもあります。
面接で目立つ力と、職場で成果を出す力は別のものです。特に、専門職・バックオフィス職・分析職・研究職では、自己主張の強さよりも、正確性・継続力・思考の深さ・責任感が成果につながる場面も多くあります。
はやみ|「面接A評価、入社後B評価」というケースは、実は珍しくありません。面接では声が小さく、自己PRが控えめ、雑談が苦手だった人が、入社後には納期遅延ゼロ、ミス率が部署内で最少、マニュアル整備を主導するようなケースです。第一印象だけで判断してしまうと、こうした人材を見逃してしまう可能性があります。「その場で目立つ人」だけでなく、「時間をかけて信頼を積み上げる人」にも目を向ける必要があります。
バイアスを防ぐために、人事が見たい2つの視点
では、面接官は何を意識すればよいのでしょうか。ここでは2つの視点について解説します。
評価基準を「印象」ではなく「行動」に落とし込む
「コミュニケーション能力が高い」という評価は、一見わかりやすいようで、実はかなり曖昧です。面接官によって、意味が変わることもあります。だからこそ、評価基準はできるだけ行動に落とし込む必要があります。
× コミュニケーション能力が高い
→ ○ 過去に、相手の考えや行動を変えるために、どのような伝え方をしたか
× 積極性がある
→ ○ 自分から課題を見つけ、周囲に働きかけた経験があるか
× リーダーシップがある
→ ○ 意見が分かれた場面で、どのように合意形成したか
× 明るくて感じがいい
→ ○ 困難な相手や状況に対して、どのように関係を築いたか
大切なのは「感じがいいか」ではなく、過去にどのような行動を取り、どのような結果につながったかを見ることです。
面接の構造化で、評価のブレを減らす
面接官ごとに質問内容や評価基準が違うと、どうしても第一印象に左右されやすくなります。構造化面接の考え方が有効です。
・全応募者に同じ質問をする
・回答後すぐに評価メモを残す
・評価項目ごとに基準を決める
・「印象が良い」ではなく「根拠となる発言」を記録する
・複数面接官で評価をすり合わせる
・面接後に「何を根拠にそう評価したのか」を言語化する
はやみ|面接官の直感を完全に否定する必要はありません。直感には、経験からくる大切な気づきも含まれています。ただ、その直感がどの情報に影響されているのかを確認することが大切。「話しやすかったから良い」ではなく、「どの発言から、どの行動特性が見えたのか」まで言語化できると、面接評価の精度はかなり変わってくるはずです。
外向特性のファセットを見ると、活躍場面が見えてくる
同じ「積極的に話す人」でも、中身は同じではありません。

社交性が高い人は、初対面の相手との関係づくりや、場の空気を和らげることに強みを発揮しやすいでしょう。営業・接客・カスタマーサクセス・社内調整など、人との接点が多い仕事で力を発揮しやすい可能性があります。
自己主張性が高い人は、自分の考えを伝え、議論を前に進める場面で力を発揮しやすいでしょう。提案・交渉・プロジェクト推進・会議運営などで存在感を発揮しやすいかもしれません。
一方で、外向特性が高くない人にも、別の強みがあります。相手の話をよく聞く、情報を整理する、慎重に判断する、深く考えてから発言する、一人で集中して作業する、目立たない部分を丁寧に整える。こうした力が求められる仕事も多くあります。
はやみ|外向特性は「高いほうが良い」「低いほうが悪い」という単純なものではありません。見るべきなのは「外向特性が高いか低いか」ではなく「その特性がどの場面で成果につながるか」。そこまで見られると、採用と配置の精度が一段と上がると思います。
採用で本当に見たいのは「話しやすさの奥にあるもの」
面接で話しやすい人は、評価されやすい傾向があります。しかし、評価されやすい人と、入社後に活躍する人は、必ずしもイコールではありません。外向特性は面接で見えやすい特性だからこそ、面接官はその影響を自覚しておく必要があります。
「ハキハキしているから良い」
「明るいから安心」
「話が盛り上がったから合いそう」
こうした印象を大切にしながらも、そこで評価を止めないこと。過去の行動、成果につながる力、職種との相性まで掘り下げること。それが、第一印象のバイアスを超えた採用につながります。
外向特性について考える時に、注意しておきたいことがあります。本記事は、外向特性が高い人を否定するものではありません。
外向特性は、営業、接客、広報、チーム調整、プレゼンテーション、顧客対応など、人との関わりが多い場面では大きな強みになります。初対面の相手と関係を築く力。 自分の考えを言葉にして伝える力。場を前に進める力。これらは、多くの仕事で必要とされる大切な能力です。
一方で、採用面接では、その強みが「見えやすい」からこそ、評価に影響しやすい点には注意が必要です。明るい、話しやすい、受け答えがスムーズ、自信がありそうに見える。こうした特徴は面接官に好印象を与えます。ただし、それだけで入社後の成果まで判断することはできません。 面接での印象は、あくまで判断材料の一つです。
その人が過去にどのような行動をしてきたのか。
職務で求められる力と合っているのか。
配属後にどのような環境で力を発揮しやすいのか。
そこまで見ていくことが、採用評価では重要になります。
はやみ|第一印象だけで判断せず、過去の行動や職務との相性まで見ていきたいですね。
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はやみ|面接での印象は、あくまで判断材料の一つです。「話しやすい人」だけでなく「入社後に力を発揮できる人」を見極めるには、一人ひとりのパーソナリティや行動傾向を、より客観的に把握する視点が必要になります。
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「この人は、面接では控えめだったが、どんな場面で力を発揮しやすいのか」
「このポジションには、どのような行動特性を持つ人が向いているのか」
「チームの中で、外向特性の高い人と低い人をどう組み合わせると機能しやすいか」
こうした視点を持つことで、第一印象に頼りすぎない採用・配置の判断がしやすくなります。
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「面接で見えなかったもの」を可視化し、入社後の活躍につなげていきませんか?
参考文献
Barrick, M. R., Patton, G. K., & Haugland, S. N.(2000). Accuracy of interviewer judgments of job applicant personality traits. Personnel Psychology, 53, 925–951.
Costa, P. T., Jr., & McCrae, R. R.(1992). Revised NEO Personality Inventory (NEO-PI-R) and NEO Five-Factor Inventory (NEO-FFI): Professional manual. Odessa, FL: Psychological Assessment Resources.
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