2026年11月5日公開
研究から考える ビッグファイブシリーズ第9回なぜ人前で堂々と話せる人がいるのか?〜外向性「自己主張」の研究〜
はやみ|「会議で、すぐに自分の意見を言える人がいる」「面接で、堂々と自己PRできる人がいる」「プレゼンの場でも、あまり緊張していないように見える人がいる」
同じように準備をしていても、人前に立ったときの振る舞いには大きな違いがあります。もちろん、話し方のスキルや場数の違いもあります。

しかし、ビッグファイブ※1の観点から見ると、人前で堂々と話せる背景には、外向特性の中でも特に自己主張性や活動性といったファセット(下位次元)※2が関係している可能性があります。
※1学術文献では「誠実性」「勤勉性」「外向性」「協調性」「神経症傾向」「経験への開放性」などと訳されることもありますが、LB MEDIAでは統一してそれぞれ「誠実特性」「外向特性」「調和特性」「情緒特性」「開放特性」と表記しています。
※2ファセットとは、ひとつの性格特性をさらに細かく分けた構成要素です。
ここで大切なのは、「外向特性が高い人ほど優秀」という話ではありません。人前で話す力は、目立ちやすく、評価されやすい一方で、それだけで仕事の成果やリーダー適性を判断することはできません。今回は、外向特性のファセットである「自己主張性」と「活動性」に注目しながら、人前で堂々と話せる人の特徴と、人事が評価・育成で気をつけたいポイントを考えていきます。
目次
外向特性は「明るい性格」だけではない

外向特性というと、「明るい」「社交的」「人と話すのが好き」といったイメージを持たれやすいかもしれません。しかし、ビッグファイブにおける外向特性は、単なる明るさだけを指すものではありません。
人との関わりに向かいやすいこと、場に参加しやすいこと、自分の考えや感情を外に出しやすいことなど、いくつかの側面を含んだ大きな性格特性です。
Costa & McCrae(1995)※は、NEO-PI-R(研究や臨床で用いられる性格検査)を用いた人格評価において、ビッグファイブの大きな5因子だけでなく、それぞれの因子をさらに細かなファセットに分けて理解する重要性を示しました。
※Costa & McCrae(1995)は、ビッグファイブを「大きな5つの性格傾向」だけで見るのではなく、その中に含まれる細かな特徴まで見ることで、人の行動をより丁寧に理解できると示した研究です。
外向特性には「温かさ」「社交性」「自己主張性」「活動性」「刺激追求」「ポジティブ感情」といったファセットが含まれるとされています。この記事では、外向特性の中でも、自己主張性と活動性に注目します。
はやみ|外向特性は「よく話す人」とひとくくりにされがちですが、実際にはいくつかの要素に分けて見ることができます。人前で堂々と話せる背景には、単なる社交性だけでなく、自分の考えを場に出す力が関係しているのかもしれません。
ファセット① 自己主張性 自分の考えを、場に出せる力
自己主張性とは、自分の考えや意見を相手に伝え、必要な場面で前に出る傾向です。
自己主張性が高い人は、会議で意見を述べる、質問する、議論の方向性を示す、場の沈黙を破るといった行動を取りやすい傾向があります。そのため、周囲からは「堂々としている」「リーダーシップがある」「発信力がある」と見られやすくなります。
DeYoung, Quilty, & Peterson(2007)※は、ビッグファイブの各因子をさらに中間的な側面に分け、外向特性には「自己主張性」と「熱意・快活さ」という2つの側面があると整理しました。
※DeYoungら(2007)の研究は、外向特性を単に「人と話すのが好き」という一面だけでなく「自分から働きかける力」と「人との関わりを楽しむ力」に分けて捉えるうえで参考になります。DeYoungらの整理は5因子とファセットの中間にあたる区分ですが、この記事で扱う NEO-PI-R のファセット「自己主張性」は、前者の「自分から働きかける力」に対応します。
ただし、自己主張性は「強く言い切ること」や「相手を押し切ること」ではありません。本来の自己主張とは、自分の考えを持ち、それを適切に場に出せることです。自分の意見を言えることと、周囲の意見を聞かないことは別です。
むしろ、組織の中で求められる自己主張は「私はこう考えます」「この点に違和感があります」「別の案として、こういう方法もあると思います」といった形で、チームの判断材料を増やす行動だと考えられます。
はやみ|自己主張という言葉には、少し強い印象があるかもしれません。でも、仕事の場で大切なのは、相手を言い負かすことではなく、自分の考えをチームのために差し出せることだと思います。
ファセット② 活動性 場に出る経験を増やしやすい力
もう一つ、人前で話す力と関係しやすいのが活動性です。活動性とは、物事に対してテンポよく動き、機会に参加し、行動量を増やしやすい傾向です。

活動性が高い人は、会議、発表、イベント、初対面の場、新しいプロジェクトなどに比較的入りやすくなります。その結果、人前で話す経験も増えやすくなります。最初から堂々と話せる人に見えても、実際には「話す機会が多かった」「場に出る回数が多かった」「うまくいった経験を積んできた」という背景があるかもしれません。
人前で話すことは、性格だけで決まるものではありません。経験によって慣れが生まれ、不安が下がることで次の発言もしやすくなる、という流れは起こりやすいと考えられます。
つまり、活動性の高さは、単に「元気に動く」ということではなく、発言や発表の経験量を増やす土台になる可能性があります。
はやみ|堂々と話せる人を見ると、「もともと自信がある人」と感じるかもしれません。でも、よく見ると、話す機会を重ねてきたから堂々として見える場合もあります。性格と経験は、切り離さずに見たいところです。
自己効力感が「話せる感覚」を支える
人前で話す行動には、自己効力感も関係します。自己効力感とは、「自分はこの行動を実行できる」という感覚です。Bandura(1977)※は、自己効力感を、ある状況に必要な行動をうまく実行できるという自分の能力への信念として説明しました。
※ Bandura(1977)は、自己効力感という概念を広く知られる形で提示した代表的な研究です。

人前で話す場面でいえば、 「自分は会議で意見を言える」 「準備すればプレゼンできる」 「質問されても対応できる」 という感覚です。
自己効力感が高い人は、難しい場面でも挑戦しやすくなります。反対に、自己効力感が低いと、能力があっても「失敗したらどうしよう」「うまく話せないかもしれない」と感じ、発言や発表を避けてしまうことがあります。
Stajkovic & Luthans(1998)※は、114件の研究を統合したメタ分析を行い、自己効力感が仕事上の成果と関連することを示しました。
※ Stajkovic & Luthans(1998)は、多くの研究を統合して、自己効力感と仕事のパフォーマンスの関係を検討した研究です。ただし、この研究が示したのは両者の関連であり、自己効力感を高めれば成果が上がるという因果関係を検証したものではありません。発信力やプレゼン力を育てるうえでも、「本人ができると思える経験」をどう積ませるかが重要だと考える根拠になります。
自己主張性が高い人は、最初の一歩を踏み出しやすいかもしれません。活動性が高い人は、場数を増やしやすいかもしれません。そして、成功体験を重ねることで、自己効力感が育ち、さらに人前で話しやすくなる。この循環が、「堂々と話せる人」をつくっている可能性があります。
はやみ|「自信があるから話せる」と考えがちですが、実際には「話してみたらできた」という経験が、自信を育てていることもあります。発信力は、性格だけでなく、経験の設計によって育てられるものでもあります。
面接では「堂々としている人」が印象に残りやすい
人事にとって注意したいのは、面接場面です。面接では、自己主張性が高い人や活動性が高い人ほど、印象に残りやすいと考えられます。

声がはっきりしていて、表情が明るく、質問への反応も速い。自分の経験を自信を持って話せる。こうした要素は、面接官に「優秀そう」「リーダーシップがありそう」「コミュニケーション力が高そう」という印象を与えやすくなります。
Barrick, Patton, & Haugland(2000)※は、面接官が応募者のビッグファイブ特性をどの程度判断できるかを検討しました。研究では、面接官は応募者の性格特性をある程度判断しようとするものの、面接という限られた場面で性格特性を正確に見抜くことには限界があることが示唆されています。
※ Barrick, Patton, & Haugland(2000)は、採用面接で面接官が応募者の性格をどの程度正確に判断できるのかを検討した研究です。この研究が示したのは面接官の判断精度に関する知見であり、「堂々と話せる応募者が高く評価される」ことを直接検証したものではありません。面接では、話し方や態度などの印象が目立ちやすいため、「堂々と話せること」と「入社後に成果を出せること」を分けて見る必要があります。
ここで押さえたいのは、面接で見えやすいものと、仕事で必要なものは必ずしも同じではないということです。
面接で見えやすいのは、話し方、表情、テンポ、自信のありそうな態度です。一方で、仕事で必要なのは、再現性、周囲との協働、課題に向き合う力、成果につなげる行動です。
堂々と話せることは、一つの強みです。しかし、それだけで「仕事ができる」「リーダーに向いている」と判断してしまうと、評価が印象に引っ張られてしまいます。
はやみ|面接では、話し慣れている人がどうしても目立ちます。でも、人事が見たいのは「話が上手いか」だけではなく、「その人が実際にどんな行動をしてきたか」です。印象と行動事実を分けることが大切です。
外向特性はキャリア機会にも関係しやすい
人前で話せることは、面接だけでなく、キャリア上の機会にも影響する可能性があります。
たとえば、自分の考えを発信できる人は、会議で存在感を示しやすいかもしれません。新しいプロジェクトに手を挙げたり、上司や周囲に自分の希望を伝えたりする機会も増えやすいかもしれません。
Judge, Higgins, Thoresen, & Barrick(1999)※は、ビッグファイブと一般知的能力が、人生を通じたキャリア成功とどのように関係するかを検討しました。この研究で外的なキャリア成功と一貫した関連が示されたのは、主に誠実特性(正の関連)と、情緒面の不安定さ(負の関連)でした。外向特性については、収入や昇進といった外的な成功との関連は限定的だったと報告されています。
※ Judgeら(1999)は、キャリア成功を考えるうえで、能力だけでなく性格特性も関係することを示した研究です。ただし、外向特性とキャリア成功の関連はこの研究では強く確認されていません。「発言できる人が機会を得やすい」という構造は、この研究から直接導かれるものではなく、現場で起こりやすい傾向として分けて考える必要があります。
ただし、ここでも注意が必要です。発言が多い人、前に出る人だけが、組織に貢献しているわけではありません。
慎重に準備する人。
少人数の場なら深く意見を出せる人。
こうした人たちの力も、組織には欠かせません。
人事が見るべきなのは、「誰が目立っているか」だけではなく、「誰がどのような場面で力を発揮できるか」です。
はやみ|前に出る人は、どうしても機会を得やすくなります。でも、組織の中には、まだ見えていない力を持つ人もいます。人事には、目立つ人を評価するだけでなく、目立ちにくい人の力を引き出す視点も必要だと思います。
リーダー候補は「声の大きさ」だけで見ない
自己主張性が高い人は、リーダー候補として目に留まりやすい傾向があります。
会議で発言し、周囲に働きかけ、場を前に進めようとする。こうした行動は、リーダーシップのサインとして見えやすいからです。
Judge, Bono, Ilies, & Gerhardt(2002)※は、性格特性とリーダーシップの関係をレビューし、メタ分析を行いました。その中で、外向特性はビッグファイブ5特性のうち、リーダーシップと最も一貫した関連が示された特性でした。ただし内訳を見ると、周囲からリーダーとして認識される「リーダー出現」との関連の方が、実際の「リーダー有効性」との関連よりも大きくなっています。
※ Judgeら(2002)は、ビッグファイブとリーダーシップの関係を整理した代表的なメタ分析です。外向特性は「リーダーらしく見えること」との関連がより強く出ています。周囲からリーダーとして認識されやすいことと、リーダーとして実際に機能することは、同じではありません。
しかし、ここにも注意が必要です。
Ames & Flynn(2007)※は、自己主張性とリーダーシップの関係が単純な直線ではなく、曲線的であることを示しました。自己主張性が低すぎると目標達成に必要な働きかけが不足しやすくなりますが、高すぎると対人関係を損ないやすくなる可能性があります。
※ Ames & Flynn(2007)は、自己主張性が「高ければ高いほどよい」わけではないことを示した研究です。リーダーに必要なのは、強く主張する力だけではなく、主張の強さを場面に合わせて調整する力だと考えられます。
つまり、自己主張性は「高ければ高いほどよい」わけではありません。

自己主張性が低すぎると、必要な場面で意見を出せない。一方で、自己主張性が高すぎると、周囲の意見を聞かずに進めてしまう。どちらも、リーダーシップ上の課題になり得ます。
さらに、Grant, Gino, & Hofmann(2011)※ は、外向特性の高いリーダーの有効性が、部下の主体性によって変わることを示しました。部下が受け身の場合には外向特性の高いリーダーが効果を発揮しやすい一方、部下が主体的に動く場合には、外向特性の高いリーダーのもとでは業績との関連がむしろ負に転じる可能性があるとされています。
※ Grant, Gino, & Hofmann(2011)は、外向特性の高いリーダーが常に有利とは限らないことを示した研究です。部下が主体的に動くチームでは、リーダーが前に出すぎることで、かえってメンバーの自発性を妨げる場合があります。
人事が見るべきなのは、声の大きさではありません。自分の意見を出せるか。周囲の意見も扱えるか。場を前に進められるか。この3つをセットで見てください。
はやみ|リーダー候補というと、前に出る人が選ばれやすいかもしれません。でも、本当に大切なのは、自分の意見を出す力と、周囲の声を活かす力の両方です。強い発信力が、必ずしもよいリーダーシップになるとは限りません。
プレゼン機会は「得意な人だけ」に偏らせない
人前で話す機会は、得意な人に集まりがちです。
会議での発表も、顧客向けの提案も、社内プレゼンも、最初から話すのがうまい人に任されやすくなります。その結果、得意な人はさらに経験を積み、苦手な人はますます経験を積めないという差が広がっていきます。しかし、人前で話す力は、生まれつきの性格だけで決まるものではありません。
少人数で共有する。
事前に話す内容を整理する。
短時間の発表から始める。
発表後に具体的なフィードバックを受ける。
こうした設計によって、自己効力感は少しずつ育っていきます。特に、自己主張性が低い人には、いきなり大きな場を任せるよりも、段階的な機会設計が有効です。
たとえば、最初は1on1で自分の考えを言語化する。 次に、3〜4人の小さなチームで共有する。その後、会議で1分だけ意見を述べる。慣れてきたら、資料をもとに短い発表を行う。
このように、話す場面を小さく分けることで、「自分にもできる」という感覚が育ちやすくなります。
発信力の育成とは、話し方を教えることだけではありません。安心して話せる場をつくり、少しずつ成功体験を積めるようにすることです。
はやみ|プレゼンが得意な人に機会が集まるのは自然なことです。でも、それだけでは、まだ前に出ていない人の力が見えにくくなります。人事や管理職には、話すのが得意な人を活かすだけでなく、話す経験が少ない人に小さな機会を渡す役割もあります。
人事が見るべきポイント
外向特性の自己主張性や活動性は、人前で話す力と関係しやすい特性です。しかし、それをそのまま評価に使うのではなく、行動として丁寧に見る必要があります。
面接では、堂々とした話し方に引っ張られすぎないこと。
リーダー候補育成では、発言量だけでなく、周囲への影響の出し方を見ること。
プレゼン機会の設計では、得意な人だけでなく、経験の少ない人にも段階的な場を用意すること。
人前で堂々と話せる人は、組織の中で大きな力になります。場を動かし、意見を出し、周囲を前に進める存在になり得ます。一方で、静かに考える人、慎重に言葉を選ぶ人、少人数なら深く話せる人の中にも、重要な視点を持っている人はいます。
だからこそ、人事に求められるのは、「堂々と話せる人」を高く評価することだけではありません。誰が、どのような場面で、どのような形なら力を発揮できるのかを見極めることです。
はやみ|評価の場では、どうしても「見えた人」が先に思い浮かびます。でも、見えていないのは、その人に力がないからではなく、力が出る場面がまだ来ていないだけかもしれません。人事の仕事は、順位をつけることよりも、力が出る場面を用意することだと思います。
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「この人は、前に出る力があるのか」
「発言は少ないが、考えを持っているタイプなのか」
「いきなり大きな場より、小さな共有から始めた方がよいのか」
「リーダー候補として、自己主張と傾聴のバランスはどうか」
こうした視点を持つことで、発信力を単なる印象ではなく、育成可能な行動として捉えやすくなります。堂々と話せる人を活かす。まだ前に出ていない人の声も引き出す。その両方ができる組織ほど、多様な人材の力をチームの成果につなげやすくなるのではないでしょうか。
参考文献
Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.
Barrick, M. R., Patton, G. K., & Haugland, S. N. (2000). Accuracy of interviewer judgments of job applicant personality traits. Personnel Psychology, 53(4), 925–951.
Costa, P. T., & McCrae, R. R. (1995). Domains and facets: Hierarchical personality assessment using the Revised NEO Personality Inventory. Journal of Personality Assessment, 64(1), 21–50.
DeYoung, C. G., Quilty, L. C., & Peterson, J. B. (2007). Between facets and domains: 10 aspects of the Big Five. Journal of Personality and Social Psychology, 93(5), 880–896.
Judge, T. A., Higgins, C. A., Thoresen, C. J., & Barrick, M. R. (1999). The Big Five personality traits, general mental ability, and career success across the life span. Personnel Psychology, 52(3), 621–652.
Judge, T. A., Bono, J. E., Ilies, R., & Gerhardt, M. W. (2002). Personality and leadership: A qualitative and quantitative review. Journal of Applied Psychology, 87(4), 765–780.
Ames, D. R., & Flynn, F. J. (2007). What breaks a leader: The curvilinear relation between assertiveness and leadership. Journal of Personality and Social Psychology, 92(2), 307–324.
Grant, A. M., Gino, F., & Hofmann, D. A. (2011). Reversing the extraverted leadership advantage: The role of employee proactivity. Academy of Management Journal, 54(3), 528–550.
Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (1998). Self-efficacy and work-related performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 124(2), 240–261.
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