2020年12月8日公開
MBO(目標管理制度)とは?目的から失敗しないポイントまで徹底解説
多様化している現代社会では、会社・組織はどのように人材を採用し育成すればいいかとても悩むところです。
何を大事にすれば、従業員はやる気を持って働いてくれるのか、本当に会社に貢献意欲を持った人材を作るにはどうすればいいか、その悩みはつきません。
そこでこの記事では、MBO(目標管理制度)の本来の目的を理解し考えを整理できるように、MBOの基本から、MBOやOKRといった他の評価制度の話も交えて下記の項目を中心に解説します。
・MBO(目標管理制度)導入方法や失敗しないための考え方
・他の制度と比較した人事評価制度の今後
・自社に必要な人材を作るには
これからの人事評価制度を考えていくため、役に立つ内容をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
MBO(目標管理制度)とは?
MBOとはManagement by Objectivesの略で、日本では「目標管理」と訳され、多くの企業が人事評価制度の土台として採用してきたマネジメント理論です。
経済学者であるP.F.ドラッカーが、1954年に自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念で、個別(またはグループごと)に目標を設定し、目標に対する達成度合いで評価を決める制度のことをいいます。
MBOの導入背景・目的
MBOは1960年代に全米の企業を中心に広がっていきました。
日本でもバブル崩壊後の1990年代に導入され始めます。ちょうどその頃、日本の企業では年功序列の雇用制度が見直され、成果主義の人事が採用され始めました。その結果、評価制度として、日本国内でもMBOが浸透していきます。MBOの目的は、主にこの3つにあります。
・自主的な目標管理の意識を持たせること
・人事評価の最適化
目標管理が適切に設定されれば、誰かに指示されることなく、自分で目標を達成するために考えて行動するようになります。
この3つの目的は、人事評価制度としてだけでなく、モチベーションを上げる手法として採用する際に土台となる考え方です。
良く比較されるOKRとの違い
OKRとは「Objective and Key Result」の略で、会社の成長のために設定されます。
MBOは人事評価的な側面が強いのに対して、OKRは組織全体の全体のコミュニケーションを活性化させるための制度です。そのため、MBOとOKRでは、目的が異なるため別物だと考えていいでしょう。
OKRに関しては、詳しくは『『OKRとは?KPIとの違いや導入するメリット・デメリットについて解説』』をご覧ください。
MBO(目標管理制度)のメリット・デメリット
MBOのメリットとデメリットについて解説していきます。
MBOのメリット
まずMBOのメリットは以下の3つです。
・目標の透明性が高い
・主体性の促進
それぞれのメリットについて解説します。
能力開発
人材に適した目標設定ができれば、その目標を達成するために自主的な行動をするようなるでしょう。
自身が達成したいと思って立てた目標に向かい、試行錯誤しながら努力することでセルフマネジメント能力が開発が期待できます。
目標の透明性が高い
自分で設定した目標で、評価する側も・される側も同じ目標を共有しているため、他の人事評価制度に比べると透明性が高いと言えるでしょう。
また、MBOは個人の目標に対する結果で評価されるため、評価される側の評価に対する納得度も高いです。
主体性の促進
自主的に活動できるようになることがMBOのメリットです。自主的に活動ができる人材が増えることで、主体性が促進され自立した従業員が増えるようになっていきます。
デメリット
反対にMBOのデメリットとして考えられるのは以下の3つです。
・単なるノルマ管理になる恐れ
・時代に遅れる
それぞれのデメリットについて解説します。
公平な評価が難しい
個人が目標設定をするため、評価基準が人によって変わります。そのため共通した評価基準を作ることが難しく、公平性を保つには仕組み上の工夫が必要です。
単なるノルマ管理になる恐れ
目標管理制度の本来の意味を忘れ、単なる目標管理としてのツールとしてしまうとMBOのメリットが機能しないことも。そのため、目標・ノルマを達成することで、その先がどう繋がるのかを考えて運用しましょう。
時代に遅れる
長期的な目標設定の場合、業界の変化が早い時に対応できなくなる場合が考えられます。
特に長期的になればなるほど「ここまで頑張ったのに」という気持ちが強くなり、頭では時代遅れだと感じていても、途中から修正がきかなくなってしまう可能性があります。
MBO(目標管理制度)の導入方法
ここからはMBOの導入方法について解説します。基本的にはPDCAサイクルのフレームワークに基づいて管理をしていきます。
・計画・実行
・進捗確認
・評価・フィードバック
次は、以下の4つのポイントに分けて解説します。
目標設定
MBOにおいてもっとも大切なのが目標設定です。組織の目標と個人の目標を明らかにし整合する必要があります。
目標が簡単すぎると単なる目標管理ツールになってしまうことも。そのため、難しすぎず簡単すぎない丁度良い目標設定を自分で立案することが重要です。
計画・実行
個人の力量に合わせた目標が決まったら、目標達成のためにどのような行動をすればいいか計画を立て実行していきます。
計画を立てる際には、できるだけ数字を使い具体的な行動目標を立てるようにすると、目指すものが明確になるので実行しやすくなります。
進捗確認
実際に目標達成に向けての行動をスタートしたら、週や月に一度、面談や書類による報告など進捗を確認する場を作りましょう。
管理者の立場であれば、なおさら進捗確認する機会を積極的に作り、実行者が失敗しないよう導いていかなければなりません。ただし、あくまで自主性を尊重したうえで、サポートしていく姿勢で行うのがポイント。
管理者が答えを出すのでなく、ヒントを与えて答えは自分で考えさせるなど、MBO本来の効果が得られるようにしましょう。
評価・フィードバック
目標設定から実行し、何らかの結果が出たら評価・フィードバックを必ず行いましょう。
評価のされ方によって、部下が成長できるかどうかが変わります。成功しても失敗しても、何が理由でそのような結果に至ったのかを、できるだけわかりやすく伝えるような評価とフィードバックを実施してください。
そうすることで、次はこうすれば失敗しないという対策に繋がったり、上手くいった時は応用して次も成功させようという意識が身につき、本人の知識・経験となって蓄積されていきます。
MBO(目標管理制度)の失敗しないための4つのポイント
MBOの目的は「組織の目標と個人の目標を結びつけ、自主的な目標管理の意識を持たせることと、人事評価の最適化することです。そのために、失敗しないためのポイントは以下の4つです。
・本人による目標設定
・目標値の設定基準
・プロセスを度外視しない
コミュニケーション
個人の目標設定に応じて評価をしていくため、従業員とのコミュニケーションはかかせません。評価する側の人間は結果だけを見て、目標に向かって取り組むプロセスを度外視してしまうと、評価される側に不満を持たれてしまいます。
対面して話すことだけがコミュニケーションではないので、お互いが円滑なやり取りやフィードバックをするためにはチャットツールなどを活用するのもいいでしょう。
本人による目標設定
MBOによって育つのが個人能力と自主性です。その自主性を育てる一番大事な行動は本人が自分で目標設定をすることにあります。
会社の経営目標としっかりとすり合わせをしておき、その後の具体的な目標は自分で決めるように促しましょう。先に繋がらない単なるノルマのような目標では、モチベーションは低下するだけです。会社が目指している目標の共有が欠かせません。
目標値の設定基準
目標を決める時の基準を間違えないようしましょう。自身の成長と会社への貢献がしっかりとリンクすることが大切です。
目標達成までの方法を明確にし、無理難題ではなく努力すれば達成できるという難易度で設定します。あわせて期限を設けることで進捗管理への責任感が育つので「いつまでに」という考え方も重要です。
プロセスを度外視しない
MBOは最適な人事評価として活用するため行っていることを忘れてはいけません。人事評価の項目で情意(行動)評価という点があります。これは仕事への意欲や勤務態度といった行動に対する評価を行うものです。
目標を達成するために本人がどのような行動を取り、また、どのような姿勢で取り組んでいるかというプロセスも見て評価しないと、信頼の得られる評価として捉えられず、従業員のモチベーションの低下に繋がってしまいます。
MBO以外の評価制度
MBO以外の評価制度を4つご紹介します。
今は働く人の世代間ギャップなど価値観は多様化しているので、1つ制度にとらわれずに柔軟に対処できることが望ましいです。今回、人事評価制度は以下の通りです。
・コンピテンシー評価
・バリュー評価
それぞれの評価について、解説していきます。
360度評価
360度評価は、評価者は上司だけでなく同僚、部下、時には取引先のクライアントまで巻き込み、複数人からの評価によって判断する制度です。
一方的な立場で評価されるわけではないため、公平な評価が期待できるのが特徴で評価される側も納得しやすいと言われています。さらに、様々な目線による評価を得られることで、今まで自分が意識したことのなかった強みや特徴に気づける可能性があるのも360度評価のメリットと言えるでしょう。
上司部下、分け隔てなく評価するためメリットも大きいですが、上手く運用しないと人間関係の悪化に繋がってしまいます。
360度評価に関しては、『360度評価とは?効果的な方法や事例から失敗しない導入を目指そう!』を参考にしてください。
コンピテンシー評価
継続的に成果を上げることができる社員には、その結果を裏付ける行動特性があり、その行動特性をコンピテンシーと言います。コンピテンシーを評価の軸として考え、社員全体の能力を向上させるために用いるのがコンピテンシー評価です。
社内に実在する優秀な人物をコンピテンシーモデルとし、そこに会社が理想とする人物像に必要とされる要素を加えることで、全ての従業員にとって意味のあるコンピテンシーモデルができます。
コンピテンシーモデルは定期的に見直すことが重要です。市場の変化に合わせて成果を出すための行動も変化するため、常に優秀な行動特性とは何か?をチェックしていく必要があります。
コンピテンシー評価に関しては、『コンピテンシーとは?基礎から人材評価・採用に活かす方法まで解説』を参考にしてください。
バリュー評価
バリューとは価値観を表しており、社内の価値観や行動規範に沿った行動ができているかを評価する制度です。従業員一人ひとりが自社のバリューを理解し、自分たちのすべき仕事が何かを考えて行動できるようになります。
価値観や行動規範自体が抽象的で、どう行動して良いかが掴みにくい場合は、評価の対象となる行動とは具体的にどういったものかを明確にしましょう。抽象的なものを何となく運用していてはまともな評価に繋がりません。
MBO(目標管理制度)についての考察
MBOやOKRなど人事評価に関わる制度や手法は、ビジネスの進化とともに多くの経済学者や、現場で働く人々が時代に合わせて生み出してきたものです。MBOは提唱されたのが1954年ということを考えると、60年以上の歴史がある制度です。
確かに人の行動特性や習性というものは、時代を超えても変わらない部分があるため60年も前の制度でも適用できるかもしれません。しかし、現代のビジネスはITの進化など外的な刺激を多く受け、情報も溢れているため、人々の多様性は益々増しています。
MBOも本来はマネジメント手法として提唱されたものを、適切な人事評価を下すために利用され現代に至ります。今後、ビジネスの世界で生きていく私たちは、MBOやOKRやコンピテンシー評価など、先人たちが築きあげた制度や手法の意味を考え、現代に適合するように工夫をしていかなければいけないでしょう。
これからの人事評価はMBOをはじめ、それぞれの評価制度の特徴を知り、自社に合った制度の導入を目指すことが求められます。
まとめ
今回は、MBOに関して下記の項目を中心に解説しました。
・MBO(目標管理制度)のメリットとデメリット
・MBO(目標管理制度)の導入方法
・MBO(目標管理制度)の失敗しないためのポイント
P.F.ドラッカーはMBOを単なる目標管理のためのツールとして提唱していません。自分で決めた目標を管理することによって、自己マネジメント力を向上させるために提唱しています。
自己マネジメント力、自主性を持って働く人材が増えればそれだけ組織の力も強くなっていきます。この機会に、MBOの考え方を見直し、自社にあった評価制度や手法を見つけてみるのもいいでしょう。