【ハラスメントの法律一覧】義務付けられた措置や罰則を確認しよう

ハラスメント法律一覧

2020年の労働施策総合推進法の改正・施行によって、パワーハラスメントの防止対策が法制化されました。

 

それにより事業主には、義務として雇用管理上必要な措置を講じることが求められています。

 

しかしその一方で、下記のような疑問を持っている方も多いかもしれません。

 

「具体的にはどんなことをしたらいいの?」

「罰則はあるんだろうか」

「他のハラスメントの法律はないの?」

 

そこで今回はハラスメントの法律について以下の項目についてまとめました。

 

・ハラスメントに関する法律一覧

・事業主に義務付けられている措置

・法律における罰則

 

現在定められている法律の内容や罰則についてわかりやすく解説していきます。人事や経営に関わる方はぜひ参考にしてください。

 

ハラスメントに関する法律一覧

ハラスメントの種類によって関連する法律が異なります。主なハラスメントと関連する法律は下記の通りです。

 

・セクシュアルハラスメントに関する法律

・妊娠・出産・育児休業・介護休業等のハラスメントに関する法律

・パワーハラスメントに関する法律

それぞれの法律内容やハラスメントの定義について確認しましょう。

 

セクシュアルハラスメントに関する法律

男女雇用機会均等法第11条において以下の記載があります。


引用元:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

 

要約すると、職場におけるセクシュアルハラスメントは防止を目的とする必要な体制の整備や措置を講じなければならないという旨が記載されています。

 

また講ずるべき措置は厚生労働大臣によって指針が定められており、事業主は指針に沿って取り組みを行うことが可能です。措置の内容については「ハラスメント対策として事業主に義務付けられている措置」の章で詳しく解説していきます。

 

まずは理解を深めるために「職場におけるセクシュアルハラスメント」の定義について確認しておきましょう。

 

参考:厚生労働省「職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です」

参考:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

 

法律上の「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは

法律上の「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは、どんなことを指すのかあらかじめ確認しましょう。厚生労働省から発表された文書においては以下のように定義されています。

 

・職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によって、労働条件に不利益を受けたり就業環境が害されること。

・対象となるのは異性だけでなく同性に対する行為も含まれる。

 

具体的な例を挙げると以下のような場面です。

 

①性的関係を要求し拒否されたことを理由に労働者をプロジェクトチームから外した

②職場で性的なWebサイトを閲覧し周囲の労働者に苦痛を与えた

性的な言動によって相手が感じる不快が「職場におけるセクシュアルハラスメント」であることが伺えます。また「職場におけるセクシュアルハラスメント」には、対価型と環境型の2つの種類があります。

 

対価型とは、労働者の意に反する性的な言動に対し、労働者が拒否や抵抗などの対応を取ったことで労働者が解雇や降格などの不利益を受けることです。上記で挙げた①に当てはまり、対価型は労働者が不利益な配置転換が行われる場合もあります。

 

環境型は、労働者の意に反する性的な言動によって労働者の就業環境が不快になり、能力が発揮できない状況となることです。上記で挙げた②に当てはまり、苦痛によって業務に専念できない状況が当てはまります。

 

参考:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

 

妊娠・出産・育児休業・介護休業等のハラスメントに関する法律

妊娠・出産・育児休業・介護休業等のハラスメントに関する法律には以下2つがあります。

 

・男女雇用機会均等法

・育児・介護休業法

 

これまでは2つの法律において「妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益な取扱いを禁止する」旨が定められていました。2017年には2つの法律が改正・施行され、「不利益な取扱いの禁止」に加え「事業主の防止措置の義務化」が記載されています。

 

そのため事業主は「不利益な取扱いの禁止」と「事業主の防止措置の義務化」の両方について確認する必要があり、1つずつ解説していきます。

 

まず「不利益な取扱いの禁止」に関する法律がこちらです。

引用元:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

 

2つの内容をまとめるとこのようになります。

 

・事業主は、妊娠や出産を理由に解雇や不利益な取扱いをしてはならない

・事業主は、育児休業の申出や取得に対し解雇や不利益な取扱いをしてはならない

 

もう一方の「事業主への防止措置の義務化」については、「ハラスメント対策として事業主に義務付けられている措置」の章で他ハラスメントと併せて詳しく解説していきます。まずは理解を深めるために、「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」とはどんな事柄か確認しておきましょう。

 

参考:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

 

法律上の「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」とは

「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」には2つの種類があります。

 

①制度等の利用の嫌がらせ

妊娠・出産・育児・介護に関する休暇や時短勤務などの制度利用に関して不利益な扱いを受けること

 

例えば、妊娠・出産休暇の取得を申請すると「そんなに休むなら今後昇進は難しい」と上司から忠告される状況が挙げられます。

 

②状態への嫌がらせ

妊娠や出産した状態に対して不利益な扱いを受けること

 

例えば、上司や同僚から「妊婦には仕事を任せられない」と繰り返し告げられ仕事をさせない状況となっている場合が挙げられます。2つの種類はどちらも防止措置が必要なハラスメントとして定義付けられており、事業主には適切な対応ができる体制の整備が求められています。

 

パワーハラスメントに関する法律

2020年にパワハラ防止法とも呼ばれる労働施策総合推進法が改正・施行され、パワーハラスメント防止対策が法制化されました。

 

実際の改正内容はこちらです。


引用元:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」

 

要約すると以下のような内容です。

 

・職場において優越的な関係で行われる業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(パワーハラスメント)によって労働者の就業環境が害されないよう、事業主は防止措置を講じなければならない

・事業主への相談などを理由とした不利益な取扱いを禁止する

このような内容の改正法が2020年6⽉1⽇に施行され、事業主にはパワーハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられました。ただし中小事業主は2022年4月1日からの義務化であり、それまでは努力義務となります。

 

義務付けられた防止措置の詳しい内容については、「ハラスメント対策として事業主に義務付けられている措置」の章で他ハラスメントと併せて詳しく解説していきます。

 

まずは「職場におけるパワーハラスメント」の定義を確認し理解を深めていきましょう。

 

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」

 

法律上の「職場におけるパワーハラスメント」とは

「職場におけるパワーハラスメント」とは、職場において行われる以下①〜③の要素を全て満たす行為です。

 

①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③労働者の就業環境が害されるもの

当てはまらない行為としては、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導が挙げられます。

 

パワーハラスメントは6種類に分類される

パワーハラスメントとは状況によって様々な状態が考えられますが、代表的な言動として6種類に分類されます。

 

ただし条件として優越的な関係を背景として行われる言動であり、限定列挙ではないことを留意して確認してください。

 

パワーハラスメントは6種類に分類

 

中には個々の状況によって判断が異なることもあります。

 

そのため事業主は客観的判断ができるよう、当事者だけではなく広く相談に応えるなどの適切な対応を心がけましょう。

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」

 

ハラスメント対策として事業主に義務付けられている措置

事業主がハラスメント防止のために雇用管理上講ずべき措置内容がこちらです。

 

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

④併せて講ずべき措置

これらの措置は厚生労働大臣が指針として定めており、事業主は必ず講じなければなりません。対象となる3つのハラスメントにはそれぞれの対応が必要です。

 

・セクシュアルハラスメント

・妊娠・出産・育児休業等のハラスメント

・パワーハラスメント

ただし、妊娠・出産・育児休業等のハラスメントには上記の措置内容に加え、「原因や背景となる要因を解消するための措置」が必要です。

 

次の章では、それぞれの措置内容における事業主が行うべき具体的な対応を紹介してきます。事業主は義務付けられた措置内容について抜け漏れがないよう確認しておきましょう。

 

各法律の内容は以下の通りです。

【男女雇用機会均等法第11条】セクシュアルハラスメント

【男女雇用機会均等法第11条の2】妊娠・出産・育児休業等のハラスメント

【育児・介護休業法第25条】妊娠・出産・育児休業等のハラスメント

【労働施策総合推進法第30条の2】パワーハラスメント

 

引用元:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」

引用元:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」

 

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

まず事業主はハラスメントの内容や原因、行ってはならない旨の方針を周知徹底します。組織の方針を明確に伝え労働者と意識を統一することで、ハラスメントの発生を抑制する効果が期待できます。

 

具体的には行動マニュアルや社内ルールなどを制定し共有すると、労働者にとって理解しやすく確実な周知につながるでしょう。

 

また研修や講習を実施する際には、役職や職階ごとに立場に適した内容で行うとより効果的です。

 

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口の設置し柔軟な対応ができる体制を整えることで、ハラスメントの予防につながります。

 

職場の人間関係を考えると、被害を受けた労働者はもちろんハラスメントを見かけた労働者もなかなか相談できる相手はいません。そこで相談窓口を利害関係のない第三者が担当することで、相談や苦情に応じやすい体制が整います。

 

ハラスメントの事実だけでなく可能性のある場合についても柔軟に対応できると、被害を抑えられる可能性もあるでしょう。

 

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

職場でハラスメントが発生した際には速やかに事実の確認を行います。その後行われる、被害者への配慮の措置、行為者への措置、再発防止に向けた措置についてもあらかじめ方針や内容を決定しておきましょう。

 

また事実確認は当事者だけでなく周囲の人間などの第三者からも聴取を行うと正確な情報を確認できます。

 

注意点として、この取り組みは事案の発生後に対応方法や担当者などを検討すると対応に時間を要することとなります。

 

対応が遅れると事実があやふやになることや、業務への支障も考えられるため事前に明確な方針を定めることが重要です。

 

職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

妊娠・出産・育児休業等のハラスメントには他の措置に加え、原因や背景となる要因を解消する措置を行います。要因が解消されなければ妊娠・出産・育児等の休暇制度の利用を請求しにくい職場風土が根付き、更なるハラスメントの発生につながる恐れがあります。

 

そもそも制度利用が可能であることが組織に周知できているのか、実際に利用されている割合はどれくらいなのか改めて現状を確認してみましょう。

 

併せて講ずべき措置

他にも併せて講ずべき措置として以下のような内容が挙げられます。

 

・相談者や行為者のプライバシー保護

・ハラスメントの相談や事実確認への協力を理由に不利益な取扱いをされないよう定める

プライバシーが守られない環境では労働者は安心して相談ができません。ハラスメントに関する相談は個々のデリケートな情報も含まれるため、プライバシー保護に必要な取り組みを行いその旨を労働者に周知しておきましょう。

 

またハラスメントの相談や、事実確認への協力を理由に新たなハラスメントが発生する可能性もあります。行為者が発覚や責任を恐れ嫌がらせを行うことも考えられるため、不利益な取扱いを禁止するルールを定め周知させることが重要です。

 

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」

 

ハラスメントに関する法律の罰則

ハラスメントに関する法律の罰則について、法律ごとに紹介します。また民事上の責任についても解説するので1つずつ確認していきましょう。

 

男女雇用機会均等法と育児・介護休業法

男女雇用機会均等法と育児・介護休業法は、職場におけるセクシュアルハラスメントと妊娠・出産・育児休業・介護休業等のハラスメントについて記載がある法律です。どちらの法律にも罰則については以下の内容が記載されています。

 

・厚生労働大臣はこの法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対し報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる(男女雇用機会均等法第29条 / 育児・介護休業法第56条)

 

・勧告を受けた者が従わなかった場合には厚生労働大臣はその旨を公表することができる(男女雇用機会均等法第30条 / 育児・介護休業法第56条2)

 

・報告をせず又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する(男女雇用機会均等法第33条 / 育児・介護休業法第68条)

 

参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

6.育児休業・介護休業とは 

 

場合によっては社会的に企業名が公表されることや、20万以下の過料に処することが示されています。法律内容をよく確認し組織として正しい対応を行いましょう。

 

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)

労働施策総合推進法は、職場におけるパワーハラスメントについて記載がある法律です。罰則については以下の内容が記載されています。

 

・厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる(第33条)

 

・勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(第33条2)

 

・厚生労働大臣は、事業主から雇用管理上の措置や、不利益取扱いの禁止等の施行に関して必要な事項について報告を求めることができる(第36条)

 

・規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(第39条)

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

 

違反した場合には、懲役又は50万円以下の罰金と大きな罰則があります。2020年に改正された内容について抜け漏れのないよう取り組みましょう。

 

法律違反以外にも民事上の責任に問われる可能性がある

職場で起こるハラスメントは、法律違反に当てはまらなかったとしても民事上の責任に問われる可能性があります。具体的には加害者が不法行為に基づいて損害賠償を請求することや、場合によっては雇用主に対しても損害賠償責任を負う可能性があるのです。

 

行為者だけでなく組織も責任を問われ組織の存続を及ぼしかねないハラスメントは、組織全体で一丸となって対策に取り組む必要があります。

 

自社における現状を確認し、今一度ハラスメント対策について検討してみましょう。

 

参考:弁護士法人三宅法律事務所「パワーハラスメントは雇用主の責任?」

 

まとめ

今回はハラスメントの法律について以下の項目についてまとめました。

 

・ハラスメントに関する法律一覧

・事業主に義務付けられている措置

・法律における罰則

ハラスメントは法律によって禁止や講ずるべき措置が定められている悪質な行為です。そのため2020年にはパワーハラスメントに対する防止対策が新たに義務付けられました。

 

事業主は義務化された措置を確認し、自社において適切な取り組みを検討してみましょう。

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