2020年10月29日公開

従業員エンゲージメントとは?概要や今後重視される理由について解説

国内では、これまで当たり前とされてきた雇用形態が見直されつつあり、年功序列や終身雇用といった制度の維持は難しくなっています。

 

これまでの常識を疑わずに取り組み続ければ、離職率は上昇し人材不足が深刻化していくでしょう。

 

このような問題に目を向け取り組みだしている企業は増えており、人材確保を企業経営の安定化の最重要課題として捉え、解決に向けた施策の中で従業員エンゲージメントが注目度を増しています。

 

そこで本記事では、そんな従業員エンゲージメントに着目し、以下の3つ項目を中心に解説していきます。

 

・従業員エンゲージメントが重視される理由
・従業員エンゲージメントが低い会社の原因
・従業員エンゲージメントを高めるために必要なこと

従業員エンゲージメントの概要や背景、また、低いことで懸念される点と向上させるポイントまで紹介するので、参考にしていだだけると嬉しいです。

 

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従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、ロイヤリティ(忠誠心)と同義で考えられがちですが、正確には貢献意欲のことを表しています。

 

忠誠心と貢献意欲は同じだと思われてしまいですが、別物です。そこで、ここでは、従業員エンゲージメント概要について解説します。

 

貢献意欲とは?

忠誠心と貢献意欲の違いは、一方通行か双方向かです。

 

忠誠心は従うもの(従業員)が雇う側(雇用主)に尽くすのに対して、貢献意欲の高い従業員は言いなりになるのではなく、雇う側へ信頼を寄せ、目指す目的を果たすために自主的に活動をします。

 

このような数値化しにくい、会社への愛着や信頼の度合いを可視化・数値化したものが従業員エンゲージメントです。貢献意欲を育むためには、雇用条件だけでは満たせない従業員との良好な関係作りが求められます。

 

従業員満足度との違い

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員満足度を上げようと思われてしまいがちです。もちろん、従業員の満足度を高めることは大切なことですが、ただ単に居心地の良い会社と認識されるだけでは、業績が上がることに繋がりません。

 

大事なのは双方向での信頼関係です。

 

企業側は、従業員が働きやすくなる環境を作ったり、やり甲斐を持てるように、自社の理念をしっかりと浸透させたりする必要があるでしょう。

 

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員満足度をアップした先に、業績の向上を目指す必要があります。

 

日本は世界的に低水準

従業員エンゲージメントが高いほど、貢献意欲の高い従業員が増え、その結果業績が上がるのですが、残念ながら日本は世界的に見て熱意ある従業員が非常に少ないと言われています。

 

クリフトンストレングスといった自己分析ツールを提供していることで有名な米ギャラップ社が、2017年に調査した「熱意あふれる社員」という調査で日本は139カ国中132位という最下位レベルの結果でした。

参考記事:Ideal leaders「米国ギャラップ社「熱意あふれる社員」の割合調査」

 

この結果からもわかるように、国内企業の多くは従業員の貢献意欲を上げ、従業員エンゲージメントを高めることで、業績向上に繋がる可能性があるでしょう。

 

従業員エンゲージメントが重視される理由

従業員エンゲージメントが重視される理由は、下記の通りです。

 

・モチベーションが上がる
・業績が上がる
・離職率が下がる

ここでは、それぞれの理由について解説します。

 

モチベーションが上がる

従業員エンゲージメントは、双方向の信頼によって生まれる自発的な貢献意欲のことです。その土台となるのが、自分達の働いている会社が社会に貢献をしているかどうかです。

 

自分達の働いている企業を誇りに思うことが、自分の仕事は価値のあるものだと自覚することに繋がるでしょう。そして、その結果、仕事に対するモチベーションは上がります。

 

業績が上がる

モチベーションが上がり、与えられた業務をこなすだけでなく、自発的に提案、改善を行う従業員が増えることで、会社が提供する商品やサービスの質が向上していきます。

 

その結果、顧客満足度が上がり、業績向上に繋がるでしょう。

 

ある研究では、従業員エンゲージメントが「1ポイント上昇すると営業利益率が0.35%上昇する」ことが分かりました。この調査は2018年に行われています。このように従業員エンゲージメントが上昇することで、業績に繋がるということが数字で証明されています。

 

参考記事:モチベーションエンジニアリング研究所

離職率が下がる

従業員エンゲージメントの高い社員は、貢献意欲も高く会社への帰属意識も高いです。そのため、転職したいと考えることが少ないでしょう。

 

優秀な人材が継続して働いてくれることで、無理して新規採用を増やす必要がありません。その結果、採用コストに余裕ができ、その分の資金を、別のことで有効活用できます。

 

離職率を下げることができれば会社の力は強固なものになり、ライバルの会社が人材の問題に悩んでいる中、自社は結果を出し続けることができます。

 

このように、間接的ですが競争力の向上にも繋がるといえるでしょう。

 

従業員エンゲージメントが低い会社の特徴

従業員エンゲージメントの低い会社の特徴は、下記の通りです。

 

・業績が悪い
・コミュニケーション・意思疎通が上手くいっていない
・評価・インセンティブ制度が悪い

それぞれの特徴について、みていきましょう。

 

業績が悪い

従業員エンゲージメントが高いと業績が上がります。

 

業績が伸び悩んでいる会社は、マーケティングや戦略に問題があるのではなく、それを実行する従業員が自発的な貢献意欲を生み出せていない=従業員エンゲージメントが低い可能性があります。

 

コミュニケーション・意思疎通が上手くいっていない

意思疎通の基本はコミュニケーションです。オフラインでもオンラインでも環境に関係なく、従業員との適切なコミュニケーションが図れていないと、従業員エンゲージメントを上げることは不可能でしょう。

 

会社側が率先して、従業員に合ったコミュニケーションの取り方を提案しなければなりません。

 

コミュニケーションが上手くいかないのは、組織の中で主に部下から上司への意見が言い辛くなっている状況を放置している時に起りやすいからです。そのような状況が改善されなければ従業員エンゲージメントは低いままでしょう。

 

評価・インセンティブ制度が悪い

適切な評価、インセンティブ制度は重要です。会社側は一度決めた評価制度を、作り替えることが大変だから、と言う理由で後回しにしていないでしょうか?

 

年数の長い企業ほど陥りやすい可能性がありますが、働く世代が変われば価値観も変わるので、昔は良かったが今の従業員には合わない制度を行使していると危険です。

 

成果に見合った評価がされない状況が続いてしまうと、従業員エンゲージメントが低くなっていくでしょう。

 

人事評価制度に関しては、こちらの記事を参考にしてください。

 

従業員エンゲージメントを高めるには

従業員エンゲージメントを高めるために、必要なポイントは4つです。

 

・ビジョン・理念を明確に
・社内のコミュニケーションを活性化させる
・適切な人事評価とインセンティブ制度
・ワークライフバランスの尊重

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

 

ビジョン・理念を明確に

会社のビジョンや理念は、社内ではなく外部に向けてばかり発信してませんか?

 

従業員にとって、社会へどれだけ貢献できているかは非常に大きな要素です。

 

そのため、従業員エンゲージメントを高めるという意味では、社内への告知、インナーブランディングが重要。従業員一人ひとりへ会社がどういう方向性を持って、何を実現したいのかを浸透させていく努力が必要でしょう。

 

そのため、ヒアリングや研修などを行うことで、企業内に理念を根付かせる地道な活動をしていきましょう。

 

社内のコミュニケーションを活性化させる

コミュニケーションを活発化させることは、従業員同士が助け合いお互いを尊重し合える社内文化を作ることに繋がります。

 

従業員エンゲージメントを高めるためには、会社側から従業員に働きかけるだけでは不十分です。従業員同士が、自分達で自発的に意識を高め合うようにならないと、高いモチベーションは持続しません。

 

そのため、会社側は、様々な世代や個性を理解し合える仕組みを考え、従業員同士がコミュニケーションを活発に行える環境を整えましょう。

 

適切な人事評価とインセンティブ制度

評価制度がしっかりしていれば、従業員は「自分を正当に評価してくれる」という意識を持つようになるため、自発的な貢献意欲に繋がります。

 

どれだけ従業員のことを思っていたとしても、具体的な評価や報酬といったところに反映されなければ、詭弁にしか聞こえません。人事評価、インセンティブ制度は全従業員の働く目標の一つにもなります。

 

そのため、評価制度の見直しは欠かさず、しかるべきタイミングで調査を行い貢献した人材が評価される仕組みを作り、透明性の高い制度を目指しましょう。

 

評価基準を可視化することで、従業員は自分の取り組んだ成果が、客観的に見ても評価される働きだったと自覚できます。その結果、自発的な取り組みや、貢献意識の醸成に繋がるでしょう。

 

ワークライフバランスの尊重

従業員には守るべき家庭など、働き続けるためのバックボーンがあります。

 

会社のため、自分のため、家族のため、それぞれのバランスがしっかり保たれるように制度を整え、ワークライフバランスができるだけ満たされるようにしましょう。

 

ただし、やり過ぎる必要はありません。前述した通り従業員エンゲージメントは従業員満足度とは違います。

 

従業員エンゲージメントを高める目的は満足度の向上のみではなく、業績を上げ、結果、自分達にも恩恵が得られる組織作りです。

 

従業員エンゲージメントの調査方法

ここでは具体的な従業員エンゲージメントの調査方法を2つご紹介します。

 

・eNPSによる調査
・クラウドツールを使った調査

それぞれの調査方法をみていきましょう。

 

eNPS調査

eNPS とは、Employee Net Promoter Scoreの略で、従業員ロイヤリティを数値化する指標に使われている調査です。この調査の目的は、職場への愛着・信頼の度合いを数値化することにあります。

 

米大手企業のAppleをはじめ、多くの企業が導入している従業員エンゲージメントの調査方法です。

引用元:Emotion Tech「eNPS℠とは?」

eNPSの計算方法は、「あなたは現在の職場で働くことをどの程度親しい友人や家族にすすめたいと思いますか?」という質問に対する回答を、画像のように、批判者、中立者、推奨者に分類し、推奨者から批判者の割合を引くことで、従業員エンゲージメントの度合いを測ります。

 

クラウドツールを使った調査

社内向けSNSとして使われる「Talknote」と呼ばれるクラウドツールがあります。このツールは組織のエンゲージメントを可視化するための「組織活性スコア機能」というものを備えています。

引用元:Talknote

Talknoteはコミュニケーションを通じて、従業員エンゲージメントの高い状態を独自に定義し、その定義に基づいて6つの指標を設定し計測、スコア化します。

 

定番のeNPS調査だけでなく、このように社内SNSツールを利用した計測の仕方もあります。どちらがおすすめということではなく、自社にあった調査方法を採用してください。

 

従業員エンゲージメントの好事例

最後に、従業員エンゲージメントを高めた好事例を2社ご紹介します。

 

理念の共有でマニュアルなし スターバックス・コーヒーの事例

スターバックス・コーヒーは、家や会社とは違う居心地の良い場所「サード・プレイス」を作るという明確なビジョンがあり、全従業員がそのビジョンを共有しています。

 

その結果、マニュアルらしいものは作らずに、それぞれが自発的に考え動く文化が浸透しているようです。

 

また、アルバイトやパートタイマーのことを従業員ではなく、パートナーと呼ぶことで互いが肯定感を持って認め合い、働く従業員にとっても居心地の良い場所を作っています。

 

自主性を育てる文化が根付いているからこそ、従業員エンゲージメントが高まっている好事例です。

 

退職率30%を改善 ラクスルの事例

印刷シェアリングプラットフォームを軸に事業を大きくし続け東証マザーズにも上場を果たしたラクスル株式会社の事例です。

 

2014年に15億円という大きな資金調達から急激に会社が変わっていく中、即戦力の中途採用をほぼ毎月実施した結果、ついてこられない人がでてきてしまい退職率30%という事態になったと言います。

 

その当時、退職率が高くなってしまった原因は、ビジョン・ミッション・バリューの浸透にあると考え、4~5ヶ月かけて考え抜き再定義を行いました。さらに、そのパワーを持ってメンバーに伝えるということに着手しました。

 

具体的には1泊2日の合宿形式を取り、その中でワークシップも取り入れ伝達と対話することです。そうすることで「やらないこと」が明確に浸透し会社と従業員のギャップがなくなったと言います。

 

まとめ

今回は、下記の内容を中心に、従業員エンゲージメントについて解説しました。

 

・従業員エンゲージメントが重視される理由
・従業員エンゲージメントが低い会社の原因
・従業員エンゲージメントを高めるために必要なこと

従業員エンゲージメントを高めることは、企業価値を高めることに直結します。なぜなら、会社は従業員で成り立っているからです。

 

今後、コロナのような危機にまた見舞われることがないとはいいきれません。その時に文字通り一致団結して、乗り越えられるかどうかはそれまで積み上げてきた双方向の信頼があるかにかかっています。

 

この機会に、従業員エンゲージメントを高める取り組みを行ってみませんか?

 

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