2021年6月24日公開

【人事向け】複業・副業解禁のメリットや注意点、企業事例の紹介

2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が厚生労働省より公表され、働き方改革を踏まえた柔軟な働き方の実現が進められています。

 

しかしその一方で、下記のような疑問を感じる人事や経営陣も多いかもしれません。

 

「会社にとってはデメリットなのでは?」

「どのように受け入れたらいいんだろう」

 

そこで今回は複業・副業について、人事担当者が押さえておくべき以下項目を解説します。

 

・複業・副業の基礎知識

・企業が行う対応や注意点

・複業・副業を解禁した企業事例

複業・副業の解禁や促進を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

複業・副業の基礎知識

まずは複業・副業の定義や、国内での捉え方について紹介します。基礎知識として改めて確認しておきましょう。

 

そもそも複業・副業とは

一般的に副業とは、収入を得るために携わる本業以外の仕事を指します。一方で複業とは複数の本業を持つことを指す場合が多く、複業社員として新たな人材を雇用する会社もあります。

 

法律や公的文書においてはそれぞれの定義は定められていません。

 

国内における副業の現状として、エンジャパン株式会社による「副業実態調査」では、41%が副業を希望しており、32%が副業経験があることが報告されています。希望する理由としては「収入を増やしたい」、「キャリアを広げたい」という回答が多く挙がっています。

 

労働者は本業だけに囚われず、「もっと収入を得たい」、「活躍できる場を広げたい」などの理由で複業・副業に取り組み始めているのです。そのため複業・副業は新たな働き方の1つとして注目が集まるようになっています。

 

時代や環境が変化する中で「収入を増やしたい」、「活躍できる場を広げたい」などの理由で複業・副業を始める労働者が増え始め、注目が集まるようになった働き方の1つです。

 

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の発表

厚生労働省では「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。そこで、企業の対応方法や法令のもと気をつけるべき事柄についてまとめたものとして「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。

 

2018年に発表されたこのガイドラインでは、労働者が安心して副業・兼業に取り組めるように企業が行うべき管理方法を具体的に記載しています。

 

政府は、「人生100年時代を迎える日本において個々が希望する働き方を選べる環境が必要」という考えのもと、副業・兼業を促進し企業に適切な対応を求めているのです。

参考:副業・兼業の促進に関するガイドライン

 

複業・副業承認のメリット・デメリット

複業・副業を承認によって得られるメリットとデメリットを紹介します。企業にとってどんな影響があるのか確認していきましょう。

 

複業・副業承認のメリット

複業・副業の承認によって得られるメリットがこちらです。

 

・労働者が主体的にキャリアを形成できる

・労働者はリスクを抑えたまま起業や転職の準備を整えられる

・外部からの知識やスキルの習得が社内業務に活かされる

・優秀な人材の獲得や社員同士の競争力を促せる

労働者にとっては本業以外の興味がある分野に挑戦できる環境が整うため、自分が望むキャリアを形成できる機会となります。また本業の仕事と並行した挑戦が可能であるため、リスクを抑えながら起業や転職などのキャリアアップも実現できるでしょう。

 

企業にとっては、副業をする労働者が社外で学んだ知識やスキルの活用によって業務効率の改善や生産性向上に期待できます。反対に労働者の挑戦や意思を抑え禁止するような職場環境では、離職という道を選択される可能性もあるでしょう。

 

副業という形で承認することによって幅広いスキルを持つ優秀な人材の定着率が高まり、社員同士が互いに高め合える職場環境が望めます。

 

複業・副業承認のデメリット

複業・副業の承認によるデメリットがこちらです。

 

・労働者自身で時間や健康の管理をしなければならない

・職務専念義務や秘密保持義務、競業避止義務を確保する体制が必要

副業は本業と並行して行われるため、過労を防ぐために就業時間や健康への管理が欠かせません。副業を承認する企業には、「労働者からの申告によって就業時間を把握し長時間にならないよう配慮することが望ましい」という旨が厚生労働省のガイドラインに記載されています。

 

また同ガイドラインには、労働者には「職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務を意識することが必要」という旨が留意点として挙げられています。

 

そのため副業を承認する企業には、それらの義務を確保できる体制を整えておくことが求められるのです。

 

例えば秘密保持義務の確保のために、業務上秘密となる情報の範囲や秘密情報の漏洩しないことについて注意喚起するなど、リスクを考慮しルールを制定すると良いでしょう。

参考:副業・兼業の促進に関するガイドライン

 

複業・副業承認に関する企業の対応

複業・副業を承認する際に企業が行うべき対応方法がこちらです。

 

・複業・副業承認のルールを設定する

・複業・副業承認について従業員に共有する

・従業員から届出を受け取る

1ずつ内容を確認していきましょう。

 

複業・副業承認のルールを設定する

複業・副業を承認する際には守るべきルールを明確に設定しましょう。ルールが曖昧な場合、本業に専念できていない働き方や長時間労働による心身への悪影響も考えられ、企業と労働者の双方にとってデメリットを生みやすいためです。

 

具体的には、本業と副業の就業時間が重ならないスケジュールを立てることや、本業の労務提供に支障をきたさないよう副業の業種を制限することなどがルールとして挙げられます。

 

また違反した場合の対応も定めておくと、ルールが守られやすく適切な働き方を実現できるでしょう。

 

複業・副業承認について従業員に共有する

複業・副業のルールや承認する目的を従業員に周知徹底する必要があります。せっかく労働者のスキルアップや社内活性化といった狙いを持って副業承認を決定しても、活用されなければ目的は達成されないためです。

 

共有する際には、承認に至った経緯や具体的な目的、労働者にとってのメリットなどを伝えると興味を引きやすく副業の促進に期待できます。

 

あらかじめ明確なルールを伝えておくと認識のズレやトラブルが起きにくくなるため、併せて共有するよう心がけましょう。

 

従業員から届出を受け取る

従来は複業・副業を許可制としていた企業も多かったものの、届出制とする企業が増えています。なぜなら労働基準法では副業について禁止規定はなく、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由」と定められているためです。

 

企業にとっては労働者から届出を提出してもらうと複業・副業の有無が確認でき、就業時間や健康の管理が行いやすくなります。

 

複業・副業を承認する際には従業員から届出を提出させるフローを設定すると、制度としてより良い機能を発揮するでしょう。

参考:副業の導入にあたっての注意点を労務問題に詳しい弁護士が解説!

 

複業・副業承認の注意点

複業・副業承認における2つの注意点は以下の通りです。

 

・基本的に会社は社員の複業・副業を禁止できない

・禁止の会社で複業・副業が発覚した場合、懲戒処分が行われる場合もある

それぞれあらかじめ理解を深めておきましょう。

 

基本的に会社は社員の複業・副業を禁止できない

労働者の兼業や二重就職について、法律上これを禁止する規定はありません。法律上では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由であることが規定されています。

 

しかし以下3つ副業に関しては本業に悪影響を及ぼす可能性があるため、就業規則や社内ルールとして禁止するよう定めると良いでしょう。

 

・複業・副業の疲労によって本業の業務に支障が出る

・競合会社における複業・副業

・複業・副業の内容が会社の信用問題に影響する

企業は法律上労働者の複業・副業を禁止できませんが、あらかじめ規則として定めトラブルを防ぐよう努めましょう。

参考:【社労士監修】会社として従業員(サラリーマン)の副業を認めるべき?その問題点について!

 

社員の労働時間の把握が必要

本業と副業の労働時間は通算されることが定められており、事業主は副業先での就業時間を含めた労働時間を管理し長時間労働とならないよう注意しなければなりません。

 

労働時間に関して労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。

 

「事業場を異なる」とは事業主が異なる場合も含まれるため、副業を行う労働者は本業と副業を合わせた時間が労働時間として該当します。

 

法定労働時間を超える場合には割増賃金を払わなければならないため、事業主は労働者の労働時間を正確に把握する必要があるのです。

 

割増賃金を支払う義務は後から契約した会社に発生するため、新たに人材を採用する際には他企業との契約の有無を確認するよう注意しましょう。

参考:副業の導入にあたっての注意点を労務問題に詳しい弁護士が解説!

 

複業・副業を解禁した企業事例

複業・副業を解禁した企業事例を2つ紹介します。

 

・オイシックス株式会社「年齢や性別の偏りのない副業促進を実現」

・株式会社フューチャースピリッツ「社員と企業双方の成長機会として取り組む」

取り組み内容や得られた成果を確認してみましょう。

 

参考:兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集

 

オイシックス株式会社「年齢や性別の偏りのない副業促進を実現

食品・食材の販売を行うオイシックス株式会社では、副業を従業員の成長として捉え幅広い促進に取り組んでいます。背景としては、副業や兼業が優秀な人材の取り込みや従業員のモチベーションアップが可能であることを考え承認に踏み切ったといいます。

 

そのため副業を認める基準の1つとして、スキル形成につながるかどうかを重視することを設定しました。

 

また代表や役員が率先して実践することで、会社が副業を容認していることを従業員に伝わりやすくしているのです。

 

そのため従業員にとってはなかなか言い出しにくい副業が、自身の成長として前向きに捉え実践しやすい職場環境として実現されています。

 

その結果、年齢や性別の偏りなく従業員個々が自身のスキルアップとして副業・兼業に取り組む環境を生み出しています。

 

株式会社フューチャースピリッツ「社員と企業双方の成長機会として取り組む」

ITインフラやクラウドサービス事業を行う株式会社フューチャースピリッツでは、独自の制度を導入し副業を促進しています。背景として従業員の成長が企業の成長につながるという意識のもと、会社で与えられた業務だけでは従業員の更なる飛躍は難しいと考えました。

 

そこで従業員の興味や挑戦したい気持ちをサポートするために、業務務時間内に自社業務と関係のないことを行える「会社公認”働かない制度”」を導入しました。

 

従業員にとっては制度の活用によって副業に取り組みやすい環境が整い、社外においても成長機会を得られるようになっています。

 

副業を従業員と企業双方の成長機会として捉えサポートする仕組みを設定することで、社内全体で推進される取り組みを実現しています。

 

まとめ

今回は複業・副業について以下の項目を中心に紹介しました。

 

・複業・副業の基礎知識

・企業が行う対応や注意点

・複業・副業を解禁した企業事例

政府からも推進される副業は、労働者の希望もあり今後増えていくことが予想される働き方です。そのため企業としては副業を承認するメリットを十分に得られる新たな体制が必要となります。

 

まずは他社の事例を参考にしながらルールを検討し、企業の成長につながる仕組みとなるよう取り組みを始めましょう。

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