2021年7月26日公開
経営力向上計画とは?認定のメリットや注意点をわかりやすく解説!
国からの優遇や支援が受けられる経営力向上計画の認定は、全国約115,502件(2023年3月31日時点)の中小企業者等が認定されている注目度の高い制度です。
しかしその一方で、下記のような悩みをお持ちの方も多いかもしれません。
「具体的にどんなメリットがあるんだろう」
「認定を受けるまでの手順を詳しく知りたい」
そこで今回は、経営力向上計画について以下の項目を中心に解説します。
・経営力向上計画の基礎知識
・認定のメリット
・認定までの流れ
・申請書の作成や申請におけるポイント
まだ経営力向上計画の策定を行っていない方や、取り組んでみようかと考えている方はぜひ参考にしてください。
経営力向上計画とは?
経営力向上計画について、制度の内容や利用におけるポイントを紹介します。計画の策定や認定をスムーズに行うために、制度の概要から理解を深めましょう。
中小企業者等が利用できる経営力向上制度
経営力向上計画とは、中小企業者等が人材育成やコスト管理などのマネジメント向上や設備投資などによって、自社の経営力向上を実施するために掲げる計画です。
中小企業者等は策定した計画を国に提出し認定を受けると、税制優遇措置や金融支援などのサポートが受けられます。
経営力向上計画については、2016年7月1日に施行された「中小企業等経営強化法」で定められています。施行から約4年が経過した2023年3月31日時点では、155,502件が計画の認定を受けました。
計画の認定により受けられる優遇は、経営の改善を目指す中小企業者等にとって有効な施策であるため、この機会にぜひ活用することをおすすめします。
中小企業者等の範囲
経営力向上計画の認定を申請できるのは中小企業者等で、その範囲は以下の通りです。
・認定を受けられる中小企業者等の規模(中小企業者等経営強化法第2条第2項)
ただし、支援や措置の内容によっては、対象となる規模要件が異なる場合があります。支援や措置ごとの詳しい要件は「中小企業等経営強化法に基づく 支援措置活用の手引き」を参考にしてください。
また「中小企業者等」に該当する法人形態には以下の9つがあります。
引用元:経営力向上計画 策定の手引き
自社が中小企業者等に当てはまるか確認し、申請に取り組みましょう。
制度利用におけるポイント
経営力向上計画の認定に向け書類を提出する際には、以下の2点を押さえておきましょう。
・申請書の様式は3枚程度
・計画策定のサポートを受けられる
1つずつ詳しく解説します。
申請書の様式は3枚程度
申請書様式は3枚程度あり、内容を大きく分けると以下の5つになります。
①企業の概要
②現状認識
③経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標
④経営力向上の内容
⑤事業承継等の時期及び内容(事業承継等を行う場合のみ)
企業情報や現状に加え、目標や計画内容を記載し提出すると認定を受けることができます。ただし、受けたい支援によって必要書類は異なるため、誤ることのないよう気をつけましょう。
計画策定のサポートを受けられる
計画を策定する際には、認定経営革新等支援機関から支援を受けることができます。認定経営革新等支援機関として、商工会議所・商工会・中央会や士業、地域金融機関等が挙げられます。
経営力向上計画の策定には「手間や時間がかかりそう」と、躊躇している方もいるかもしれません。
しかし、日頃から中小企業者等を支えている専門機関から策定についてサポートを受けられるため、大きな手間をかけずに認定に近づくことができるのです。
初めて取り組むにあたって不安があるという方でも、安心して策定を行うことが可能です。
経営力向上計画の認定メリット
計画の認定を受けた事業者には、計画実行の支援措置として以下の3種類が用意されています。
・税制措置
・金融支援
・法的支援
それぞれの具体的な内容や注意点を紹介します。
税制措置
税制措置は大きく分けて3つあります。
認定計画に基づき取得した一定の設備に係る法人税等の特例
法人税について即時償却または取得価額の10%の税額控除が選択適用できます。
注意点としては以下3点があります。
・個人事業主の場合には所得税
・資本金3,000万円超1億円以下の法人は取得価額の7%
・設備投資の税制措置を受けるためには、計画申請時に工業会等の証明書や経済産業局の確認書等が必要なケースがある
認定計画に基づき行った事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例
他者から事業を承継するために、土地・建物を取得する場合、登録免許税・不動産取得税の軽減措置を利用することができます。
ただし、軽減の対象となる事業承継の条件や手続きが定められているため、内容を確認しておきましょう。
認定計画に基づき行った事業承継等に係る準備金の積立(損金算入)の措置
中小企業者が、適用期間内に事業承継など事前調査に関する事項が記された経営力向上計画の認定を受けた場合、当該計画に基づき株式などを取得し、かつこれを事業年度末まで引き続き有している際には。株式などの取得価額として計上する金額の一定の割合の金額を準備金として積み立てた時は、その積み立てた金額をその事業年度において損金算入できます。
金融支援
認定を受けた中小企業者等は、金融支援として、政策金融機関の融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることが可能です。具体的な金融支援は、以下の7つから選択できます。
・日本政策金融公庫による融資
・中小企業信用保険法の特例
・中小企業投資育成株式会社法の特例
・日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
・日本政策金融公庫によるクロスボーダーローン
・ 中小企業基盤整備機構による債務保証
・食品等流通合理化促進機構による債務保証(食品製造業者等のみ対象)
金融支援を受けるためには、計画申請時に関係機関に相談をしておく必要があります。
また、金融機関や信用保証協会による融資や保証の審査は、計画認定審査とは別に行われます。そのため、認定を取得しても必ず融資や保証が受けられるわけではない点に注意が必要です。
法的支援
法的支援には大きく分けて、以下の3つがあります。
①許認可承継の特例
②組合発起人数の特例
③事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例
「①許認可承継の特例」を受ける場合には、認定までに長い期間を要する場合がある点に注意が必要です。円滑に認定を受けるためにも、事前に所管行政庁に相談しておくとよいでしょう。
経営力向上計画の認定までの流れ
経営向上計画の認定を受けるまでに事業者が取り組む内容がこちらです。
・活用したい制度を検討する
・経営向上計画を策定する
・経営向上計画を提出する
あらかじめそれぞれの内容を理解し、スムーズに取り組みましょう。
活用したい制度を検討する
まずは税制措置・金融支援・法的支援から活用したい制度を決定します。
決定する際には、経営力向上を目指す上でこれまでネックになっていた部分や、さらなる成長に寄与すると考えられる支援や優遇を検討しましょう。
3つの支援はそれぞれ要件や手続きが異なり、適用対象者が設けられている場合もあります。そのため、活用したい制度を決定する際には、要件や対象者も併せて確認しておくことが重要です。
経営向上計画を策定する
続いて、希望する支援内容に適した経営向上計画を策定します。策定には、事業分野ごとに定められた指針を踏まえる必要があります。
計画の事業分野に該当する「事業分野別指針」を、事前に確認しておきましょう。「事業分野別指針」が策定されていない事業分野の場合、「基本方針」を踏まえた計画の策定が必要となります。
「事業分野別指針」や「基本方針」は、中小企業庁のWebサイト上の「事業分野別指針及び基本方針」から確認できます。
経営向上計画を提出する
策定できた計画を基に必要書類を作成し、事業分野ごとに定められた主務大臣に提出します。提出先は事業分野ごとに異なるため、間違えないよう注意しましょう。提出先の確認については、「経営力向上計画の申請で気をつけたい注意点」にて解説しています。
書類の提出後、認定を受けると計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。
申請から認定までの期間は約30日です。支援や措置内容によってはさらに長期間となる場合もあるため、余裕を持った提出を心がけましょう。
経営力向上計画の書類作成におけるポイント
書類作成時のポイントを2つ紹介します。いずれも知っておくことで円滑な作成につながるため、ぜひ参考にしてください。
中小企業庁の手引きを活用すると便利
中小企業庁のWebサイトには、申請書の書き方が掲載されています。国へ提出する書類となると、複雑な項目や難しい内容をイメージされる方もいるかもしれません。
中小企業庁が公開している手引きでは、書類ごとの項目に沿ってわかりやすく解説されています。実際の書類と照らし合わせながら確認できるため、初めて取り組む方でも安心です。
また支援ごとに必要な提出書類についても記載があるため、書類作成時に併せて確認しておきましょう。
申請方法は紙と電子の2種類がある
申請方法には2種類あり、紙での申請と電子申請から選択できます。紙での申請の場合は、「提出先窓口への提出」と「郵送での提出」が可能です。一方、電子申請の場合は提出先が限定されています。
具体的には、経済産業部局や一部省庁(警察庁、総務省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、環境省、文部科学省)宛ての申請のみです。
また電子申請ができない場合でも、「経営力向上計画申請プラットフォーム」にて申請書を作成することが可能です。その際はPDFに出力し郵送等での申請となりますが、手書きとタイピングから作成しやすい方法を選択できます。
経営力向上計画の申請で気をつけたい注意点
申請における3つの注意点がこちらです。
・提出先は事業分野ごとに異なる
・申請には期限が定められていない
・計画の実施期間の延長が可能
事前に内容を確認しておきましょう。
提出先は事業分野ごとに異なる
経営力向上計画の申請書類の提出先は、事業分野ごとに異なるため注意しましょう。提出先は中小企業庁Webサイト内の「経営強化法による支援」にて確認できます。
また該当する事業分野についても、中小企業庁Webサイト内の「事業分野別指針及び基本方針」から確認が可能です。該当する事業分野における指針は、計画の策定時に確認が必要なので、計画策定に取り組む前に内容をチェックしておきましょう。
申請には期限が定められていない
計画の申請自体には、特に期限は定められていません。ただし新たな設備を取得する計画の場合には、原則として設備の取得前に計画の認定を受ける必要があります。
併せて、申請から認定までは約30日の期間がかかるため、その点を考慮した上で計画の策定が必要です。
申請や計画の策定に不安がある場合には、認定経営革新等支援機関の支援を受けることも可能です。あらかじめ支援機関に相談しておくと、余裕を持った申請や認定が可能になるでしょう。
計画の実施期間の延長が可能
既に認定を受けた計画の実施期間満了前には、変更申請を行うことによって実施期間の延長ができます。
計画の認定による優遇や「中小企業等経営強化法」の施行から3年が経過し、計画実施期間の終了が予想されたことから、延長可能が決定されました。ただし条件として、実施期間の満了前に変更申請を行うことと、5年を超えないものであることが求められます。
具体的には、実施期間を「3年」から「4年」もしくは「5年」に延長、または「4年」から「5年」に延長といった変更申請です。
実施期間の満了後である場合には、新たな計画を策定し認定を受ける必要があるため、既に認定を受けていて延長を希望する際には注意しましょう。
参考:経営力向上計画の実施期間が満了する場合の取扱いについて
まとめ
今回は経営力向上計画について、以下の項目を中心にまとめました。
・経営力向上計画の基礎知識
・認定のメリット
・認定までの流れ
・申請書の作成や申請におけるポイント
経営力向上計画の認定は、中小企業者等にとって大きな成長を目指せる有効な施策です。計画の策定や書類作成の手間を考えると、なかなか申請に至らなかった方もいるかもしれません。
しかし支援機関のサポートや手引きの公開など、認定までの取り組みには手厚いフォローが用意されています。まずは受けられる優遇や措置の内容を確認し、経営向上を目指して第一歩を踏み出してみましょう。