BCP

2021年8月30日公開

BCP(事業継続計画)とは?初めてでもわかる!基礎知識や策定方法

予測困難な事態が多発する現代において、BCP(事業継続計画)は、企業が策定しておくべき計画です。とはいえ、下記のような疑問を感じている方も多いかもしれません。

 

「具体的にどう策定するの?」

「策定する必要性がいまいちよくわからない」

 

そこで今回はBCPについて、以下の項目を中心に解説します。

 

・BCPの基礎知識

・策定によるメリット

・策定と運用手順や注意点

・2020年における策定状況

BCPの策定を検討している方や、取り組み方に悩んでいる方はぜひお役立てください。

 

BCP(事業継続計画)の基礎知識

BCPの基礎知識として以下4つの項目を紹介します。

 

・BCPの意味と目的

・策定が推進される背景

・BCPと防災計画の違い

・国内における策定状況

理解を深め、効果的なBCP策定に備えましょう。

 

BCPの意味と目的

BCPとは「Business Continuity Plan」の略称であり、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。BCPの目的は、企業が予想外の危機的状況に直面した際でも、事業を遂行するという社会的使命を果たすことです。

 

BCPを策定しておくと、自然災害や大きなトラブルの発生時に、事業停止や損失をできる限り抑えることが可能になります。

 

参考:企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会 報告書

 

BCPの策定が推進される背景

BCPの策定が推進される背景として、4つの現状が挙げられます。

 

予測困難なリスクの多発

近年、世界各地でテロやハッキングなどの予測困難な事態が頻発しています。

 

予測困難な事態の発生は、事業復旧が困難になるリスクや、最悪の場合は事業停止というリスクも企業としては考えられるでしょう。そのため、想定されるリスクを分析し、行動計画を策定しておく必要があります。

 

自然災害のリスクが高い

世界の中でも日本は自然災害が多い国であり、過去にも幾度となく自然災害による被害に遭ってきました。

 

中小企業庁が作成した「我が国の自然災害発生件数及び被害額の推移」を見ると、被害件数・被害額どちらも増加傾向であることが確認できます。

 

引用元:中小企業庁『中小企業白書』

 

特に巨大地震による損害は大きく、人材や資産を守るための対策として、避難訓練や建物の耐震化などに取り組む企業が多いかもしれません。さらに経営の安定性を考慮し、事業の継続も視野に入れた計画を策定する必要があります。

 

情報化社会の加速

昨今では、事業の多くが、情報システムやネットワークの稼働を前提として構築されています。つまり、何らかのトラブルにより情報システムやネットワークに障害が発生すると、事業継続が困難になる可能性があるのです。

 

情報システムやネットワークに関する障害は、地震などの自然災害だけでなく、機器の故障やウイルス感染、不正アクセス行為など、さまざまな要因で起こり得ます。そのため、企業は予測される全てのリスクに対する行動計画の策定が必要です。

 

事業活動の変化

近年における事業活動は、効率化やコスト削減を徹底する傾向です。その結果、生産や物流の拠点・取引先を集約するケースが増えています。そのため、集約した拠点や取引先に障害が発生した場合には、代替策としての拠点や取引先の手配が必要となり、もし手配できなければ事業継続が困難になる恐れがあります。

 

つまり、自社の事業活動の変化に応じて、緊急事態が発生した際の行動計画も策定し、定期的に見直す必要があるのです。

 

参考:企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会 報告書

 

BCPと防災計画の違い

BCPと混同されやすいのが防災計画です。どちらも自然災害やパンデミックなどを含むあらゆるアクシデントに対策する計画ですが、以下のように目的が異なります。

 

防災計画 BCP 違い

両者は目的こそ異なりますが、アクシデントへの対策計画はどちらもなるべく早期に策定し、実現可能な体制を整えておくことが重要です。

 

参考:事業継続計画(BCP)と防災計画の違い

 

BCPの2020年における策定状況

2023年時点において、国内企業のうち18.4%がBCPを策定済みという調査結果が発表されています。

 

引用元:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)

 

引用元:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)

 

要因としては、地震や台風、豪雨などの自然災害の発生や、新型コロナウイルス感染症などの影響によって、BCP策定に対する重要性が高まっていることがうかがえます。

 

BCPの策定によるメリット

BCPを策定することで得られる3つのメリットがこちらです。

 

・緊急時の迅速な対応が可能

・事業や業務の優先順位の明確化

・市場からの信頼性向上

それぞれ解説します。

 

緊急時の迅速な対応が可能

予想外の事態が発生しても、明確な計画があれば早急な対応が可能です。あらかじめ計画を策定していなければ、まず何から取り組むべきかの検討から始めなければならず、事業復旧や継続に多くの時間がかかってしまうでしょう。

 

早急な対応が可能になると、事業停止や損害をできる限り抑え込み、トラブルに屈しない強い事業継続を実現できます。また明確かつ具体的な計画は、落ち着いた行動を促し、緊急時でも適切な対応につながるでしょう。

 

事業や業務の優先順位の明確化

計画策定の過程において優先すべき事業や業務が可視化され、経営戦略の見直しに活用できます。

 

BCPの策定は、緊急事態が発生した際に、まず何に取り組むべきか検討する過程を踏むため、事業の優先順位が明確化されます。

 

事業の優先順位が把握できると、経営戦略において特に注力や見直しが必要な業務を確認できるでしょう。BCPの策定は、さらなる成長を目指す経営戦略においても活用できる、企業にとって重要な取り組みです。

 

市場からの信頼性向上

緊急時の対策が整えられている企業は、取引先や株主からの信頼を得られやすくなります。反対に、対策を検討していない企業には、事業の継続能力に不安を抱かれ、信頼が高まることはありません。

 

適切なBCPを策定している企業であれば、トラブルの発生時も社会的責任を果たすことを期待できる企業として取引を依頼したくなるでしょう。

 

さらには、信頼できるポイントとして投資家からも評価を得られ、選定されやすい企業となり得るのです。

 

BCPの策定と運用手順

BCPの策定と運用の手順を紹介します。内容を1つずつ紹介するので、自社における取り組みの参考にしてください。

 

参考:企業における情報セキュリティガバナンスのあり方に関する研究会 報告書

 

基本方針の立案

まずはBCPにおける基本方針を立案しましょう。具体的には以下のような内容を検討し、基本方針を定めます。

 

対象 体制 遵守すべき法令や関連法規 違い

 

優先する事業や業務の選定

全ての事業を俯瞰して、継続もしくは早期の復旧が求められる事業や業務を選定し、優先順位を付けます。この時、緊急事態で停止した際の影響度合いを考慮する必要があります。次に、優先順位に基づいて、復旧に取り組む順序を決定し、必要な資源配分を行いましょう。

 

選定や決定は経営判断であるため、経営層からの意見や了承を得ることが必要です。

 

BCPの策定

事業の優先順位を付けたら、計画の策定を行いましょう。計画の内容の具体例としては、目標復旧時間や計画を発動させる基準の設定が挙げられます。

 

目標復旧時間とは、事業の中断によって重大な影響が生じないように、いつまでに事業の復旧や再開を行うかという目標を指します。言い換えれば、どの程度まで中断が許容できるかという指標です。そのため、中断によるリスクを分析した上で決定するとよいでしょう。

 

また計画の発動基準は、自然災害など予測できないリスクに対しては、自動発動を設定します。緊急事態の発生に応じて自動的に計画が発動されることで、より迅速な対応が可能です。

 

従業員への共有

BCPの運用は全ての従業員が対象であるため、決定され次第、内容を共有し参加意識を高めましょう。共有の際には従業員が確実に行動できるよう、わかりやすく的確に伝えることを心がけます。

 

また、トラブル発生時に即座に行動できるよう、行動内容を記載したカードサイズの資料を配布し、常に携帯するよう指示するのもよいでしょう。一度共有しただけでは周知徹底できない可能性もあるため、定期的に共有の機会を設けることも重要です。

 

見直しや改善

BCPは一度策定したらそれで終わりではなく、必要に応じて見直しや改善に取り組みましょう。見直しや改善を行う機会としては、以下のようなものが挙げられます。

 

・人事異動や組織の大幅な変更

・取引先や拠点の変動

・事業やシステムの変更

・新たなリスクやトラブルの発生

・定期的な見直しの機会

BCP策定の注意点

BCPの策定における2つの注意点がこちらです。

 

・実現可能な計画にすること

・従業員への教育が必要

それぞれ詳しく解説します。

 

実現可能な計画にすること

BCPの策定内容は、あくまでも実現できる範囲で設定しなければ、適切に運用されません。目的である事業継続や早期復旧にばかり注目して計画を策定すると、実際のトラブル発生時に対応が困難になる恐れがあります。

 

反対に、策定内容が大まかであったり、他社の事例をそのまま採用したような内容では、事業継続や早期復旧は難しいでしょう。

 

それゆえ、BCPの策定時には、自社における現状や環境を考慮した実現可能な内容の検討が欠かせません。

 

従業員への教育が必要

BCPは原則的に全ての事業・業務・施設・人員が対象のため、有効に機能させるためには、全従業員の理解が必要です。従業員に対する内容の共有に加えて教育を行うことで、深い理解や知識によって確実な実行につながります。

 

緊急事態の発生を想定した上で策定された行動を取るよう指示することで、従業員は手順を経験でき、対応力の強化を期待できます。従業員に対する教育を通して、BCPの社内における浸透度も向上するでしょう。

 

まとめ

今回はBCPについて、以下の項目を中心に紹介しました。

 

・BCPの基礎知識

・策定によるメリット

・策定と運用手順や注意点

・2020年における策定状況

BCPの策定には入念な準備や検討が必要であり、容易に完成できるものではありません。しかしながら、トラブルに対する適切な行動が策定された計画は、自社の経営や事業の保守だけでなく、市場からの信頼向上にもつながります。

 

まずは、緊急事態が発生したケースにおける自社のこれまでの行動を振り返り、改めて適切な行動や対応を検討しましょう。

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