2021年5月5日公開
ビジネスにおける「コミットメント」とは?例文やメリットを紹介
部下や上司との会話中、あるいは顧客との商談中に、「コミットする」「コミットメントを求める」など、突然「コミットメント」という単語が飛び交う経験をしたことがある人も多いと思います。
「結果にコミットする」という某CMが有名ですが、「コミット(コミットメント)」という言葉について、詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。そこで、下記の項目を中心に「コミットメント(コミット)」についてご紹介します。
・コミットメントの意味や使われ方
・コミットメントを高める方法
・コミットメントが注目されている背景
ビジネスで利用される基礎的な用語は、正しい意味で利用しないと恥をかいたり、大きなミスやトラブルにつながったりするリスクがあります。まずはコミットメントの意味について、理解を深めましょう。
ビジネスで利用される「コミットメント」の意味とは?
コミットメント(commitment)とは、ビジネスでは主に「約束する」「責任を持って関与する」といった意味合いで使用される言葉です。
短縮して「コミットする」などと用いるケースもあります。ただし利用シーンによっては、意味合いが変わる場合もあります。
例えば英会話や受験、英語の資格試験において、コミットメントは「委託、言質、参加」という意味で用いられるケースが多いでしょう。また経済学で利用される「コミットメント」も、ビジネスシーンで利用する場合とは異なる意味を持ちます。
多様なシーンで利用される「コミットメント」という言葉ですが、ここでは主にビジネスで利用する場合のコミットメントの使われ方についてご紹介します。
【注意】正しい意味で使わないと信用を失うことも
なんとなく「コミットメント(コミット)」という言葉を多用するビジネスマンもいます。ただし、なんとなく「コミットメント」という言葉を使うのは、避けた方がよいでしょう。
コミットメントは、「責任」「約束」「確約」といった意味合いを持つ言葉です。なんとなく「頑張ります」といった感じの意味合いで利用すると、場合によってはクライアントからの信頼を失ったり、トラブルにつながったりするリスクがあります。あやふやな使い方をしないよう、正しい意味に対する理解を深めましょう。
文脈ごとの「コミットメント」の使われ方
コミットメントにはさまざまな意味合いがあるため、使い方が多様すぎて、どのように使えばよいのか悩んでいる人もいるでしょう。そこでここでは、異なる文脈におけるコミットメントの使い方についてご紹介します。コミットメントの使い方に迷っている方は、ぜひご一読ください。
コミットメント力
コミットメント力とは、「結果を出すために必要な責任と能力」といった意味で使用されます。
例えば、あるプロジェクトのリーダーを決める場合に、「彼はコミットメント力があるので推薦します」といった使い方が考えられます。これを言い換えると「彼はプロジェクトを遂行・達成するための能力と責任感を備えているため、おすすめです」といった意味です。
コミットメントが高い
コミットメントが高いという表現は、「成果を出せる」「予想以上の成果を上げられる」といった意味合いで使われます。
「彼はコミットメントが高いから、プロジェクトを任せても安心だ」のように使うことが可能です。言い換えると「彼はしっかり成果を出せるから、仕事を任せても安心だ」といった意味になります。
フルコミット
フルコミットは、「全責任を負う」「約束する」といった意味合いで使われます。
「このプロジェクトにフルコミットする」と表現する場合、「プロジェクトの全責任を負う」といった意味に、「仕事にフルコミットする」であれば、「仕事を全力で頑張ることを約束する」といった意味に解釈できるでしょう。
「頑張る」といった意味合いで、なんとなく利用されるケースもあります。しかしフルコミットには「責任を持つ」「約束する」といった意味合いも含まれているので、安易に使用しないよう注意しましょう。
結果にコミットする
結果にコミットするは、「結果を出すことを約束する」「結果に対して全責任を負う」といった意味合いで使われます。
CMなどで「結果にコミット!」と謳われた影響もあり、なんとなく気楽に使ってしまいがちな言葉です。しかし「責任を負う」「約束する」といった意味合いを含んでいるため、安易に使用しないよう注意しましょう。
オーバーコミットメント
オーバーコミットメントとは、「自分の担当範囲を越えて介入すること」という意味です。具体的には以下の通りです。
・他部署の仕事内容に口出しする
・権限もないのに独断で指示を出す
このような行為は、オーバーコミットメントといえます。また似たような言葉に「オーバーコミットメント状態」があります。具体的には以下の通りです。
・仕事に対して大きなプレッシャーを感じている
・仕事のことが頭から離れない
このような状態を指すものです。微妙にニュアンスが異なるため、使い分ける際には注意しましょう。
なぜ今「コミットメント」が注目されているのか
さまざまな使い方をする「コミットメント」ですが、なぜ多くのビジネスシーンで使用されるのでしょうか。その理由は、コミットメントの概念が、多くのビジネスパーソンに強く求められているからです。コミットメントが注目されている理由は、以下の通りです。
・生産性の向上
・離職率の低下
コミットメントという言葉を使う目的として、これらの要素が挙げられます。それぞれ具体的にどういうことなのか、見ていきましょう。
会社への帰属意識を高めるため
仕事へのコミットメントを高めることは、会社への帰属意識の向上に役立ちます。上述のとおり、仕事へコミットするとは、「仕事に対して責任を持つ」「責任感を持って仕事に取り組む」ということです。会社の仕事に対して深く関与することで、愛社精神や仕事への愛着を育む効果が期待できます。
生産性を上げるため・目標を達成させるため
従業員を仕事にコミットさせることで、生産性や目標達成率の向上が期待できます。仕事にコミットする(責任を持つ)ことで、より熱心に仕事に取り組むようになり、その結果として生産性アップが期待できるでしょう。ただし「常に仕事のことが頭から離れない」といったオーバーコミットメント状態にならないよう、注意する必要があります。
離職率を下げるため
コミットメントを高めることで、「会社への帰属意識向上」や「生産性アップ」といった効果が期待できます。これによって、会社の離職率低下にもつながるでしょう。仕事にコミットさせることで、従業員は自分の仕事に対してやりがいや手応えを感じられます。
そして従業員満足度が向上し、離職率の低下が期待できるでしょう。ただし仕事のことが頭から離れない「オーバーコミットメント状態」になると、逆に離職率の上昇リスクがあります。これを防ぐためには、以下のような対処が有効です。
・本人の能力や適性、希望にできるだけ合った業務を割り振る
・分からないことや悩んでいることをすぐに相談できる仕組みの構築
離職率の低下を一番に目指す場合、以下で後述する「功利的コミットメント」「情緒的コミットメント」といった考え方も参考にしましょう。
「組織コミットメント」の活用方法
組織コミットメントとは、従業員の会社に対する帰属意識で、「忠誠心」「愛社精神」などと言い換えることも可能です。
「仕事にコミットさせると会社への帰属意識が高まる(組織コミットメントが高まる)」ことは、上述のとおりですが、では具体的にどのようにコミットを促すべきか迷うかもしれません。
そこで以下では、組織コミットメントを高める2つのアプローチについてご紹介します。
功利的コミットメント
功利的コミットメントとは、簡潔に説明すると「従業員に十分な報酬を与えて満足させる」アプローチのことです。具体的には、従業員が以下のような感覚を抱くように導く手法を指します。
・この会社よりも良い労働条件で働ける会社はなかなかない
・転職しても、今より良い条件で働ける職場は見つかりそうにない
給料や年間休日、有休の取得がしやすいなど「魅力的な労働条件」を従業員に提供することで、離職率の低下を目指すのが「功利的コミットメント」です。とはいえ同業他社より良い報酬を出すのが難しいというケースもあるでしょう。そのような時は「情緒的コミットメント」を提供してみましょう。
情緒的コミットメント
情緒的コミットメントとは、「職場の人が好き」「この会社が好き」といった、従業員の心情に働きかけて離職率を低下させるアプローチ手段です。
・職場の人間関係が良好で働きやすい
・うちの会社は従業員のことをよく考えてくれている
このように従業員に思ってもらうことで離職率の低下を狙うのが、「情緒的コミットメント」です。情緒的コミットメントを高める具体的な方法は以下の通りです。
・悩みを聞いてもらいやすく、問題解決や改善まで会社が積極的に対応してくれる
・従業員を大声で怒鳴ったり威圧したりしない
・定期的に褒めてくれる
このように心情に働きかけることで愛社精神が育まれます。功利的コミットメントよりも多くの会社で実践しやすいため、従業員の離職対策としておすすめです。ここまでは「組織コミットメント(愛社精神)」を高めるための方法についてご紹介しました。
しかし「コミットメント(仕事への責任や能力)を高めるにはどうすれば良いのかについても知りたい」と考えている人もいるでしょう。そこで以下では、コミットメントを高める方法についてご紹介します。
コミットメントを高める方法
このように心情に働きかけることで、愛社精神が育まれます。功利的コミットメントよりも多くの会社で実践しやすいため、従業員の離職対策としておすすめです。
ここまでは「組織コミットメント(愛社精神)」を高めるための方法についてご紹介しました。しかし「コミットメント(仕事への責任や能力)を高めるにはどうすればよいのかについても知りたい」と考えている人もいるでしょう。そこで以下では、コミットメントを高める方法についてご紹介します。
・経営ビジョンの共有
・顧客目線の徹底
・個々人に合った役割を与える
・周りに相談できる体制の構築
・職場環境の見直し
具体的にどういうことなのか、以下でご紹介します。
将来のビジョンを共有する
コミットメントを高めるには、将来のビジョンを共有することが有効です。ビジョンの共有には2種類あります。
・会社のビジョンを従業員と共有する
・従業員のビジョン(キャリア)を会社と共有する
会社のビジョンを従業員と共有するには、採用段階で見極めるのがおすすめです。従業員に対しては、朝礼や社内報、面談などを通じて、ビジョンの共有を図る必要があります。
一方で従業員のビジョンを会社と共有する場合は、面談などを通して「従業員が将来どうなりたいか」をヒアリングする必要があります。「将来自分はこうなりたい」というビジョン(キャリア)を会社に話して共有することで、会社側は従業員のコミットメントの向上、従業員側は自分の要望を伝えたという満足感を得られます。
顧客目線に立つ
仕事へのコミットメントを高めることは、顧客にコミットすることとほぼ同義です。
・お客様を満足させるには、どのような提案が求められているのか
・より売上を伸ばすには、どのような商品が求められているのか
このように顧客目線に立つことで、売上が伸びて結果が出るため、コミットメントの向上につながります。
個々の特性を活かした役割を与える
「従業員のビジョンを会社と共有する」という話に通じる点ですが、従業員の特性を活かせる役割を与えるのも、コミットメント向上に効果的です。
従業員のビジョンを会社と共有することで、従業員は満足感が高まり、会社としてはコミットメントの向上が期待できるのは、上述したとおりです。そこからさらに一歩踏み込んで、ヒアリングした従業員のビジョン(キャリア)に合うような役割を与えることも、コミットメント向上に貢献します。
一人で抱え込まない
コミットメントを高める上で重要なのは、「一人で抱え込まない」「一人に押しつけない」という点です。コミットメントを高めようとしても、うまく仕事を進められずにいると、離職率の悪化リスクが高まります。
また同様に、一部の人に仕事が集中するのも不公平感の増長につながり、コミットメントの低下につながるでしょう。このため会社としては、以下の解決策を実行するといいでしょう。
・従業員が安心して相談できる場所の確保
・相談内容をもとに実際に改善するためのアクションの実行
これらの解決策は、トップダウンで実施する必要があります。
環境を整備する
職場環境を整備することも、コミットメント向上に効果的です。会社側は「オフィス環境の見直し」「働き方の見直し」、従業員側は「部署異動を希望する」「新しいアイデアを発表する場所を設ける」などが挙げられます。このような施策により、従業員のコミットメント向上が期待できます。
コミットメントの使われ方
最後に、コミットメントの使われ方について補足したいと思います。本記事ではコミットメントについて、主にビジネスでの利用を前提として解説しました。しかし金融業界や経済学では、コミットメントは別の意味で利用されます。
以下では、コミットメントの使われ方について「ビジネス」「経済学」「金融業界」の3つの視点からご紹介します。「コミットメントは利用シーンによって意味が異なる」という点を理解していただけると幸いです。
ビジネスでの使われ方
まずは、ビジネスシーンでの「コミットメント」の使われ方について復習します。ビジネスにおけるコミットメントとは、「責任を持つ」「約束する」といった意味合いで使われます。どのように使われるのか、またどういう意味なのか見てみましょう。
なんとなくコミットメントには「頑張る」といったニュアンスを抱きやすいですが、実際には「責任」「約束」といった意味を含みます。ビジネスシーンで「コミットメント」という単語を使う場合は、十分に注意しましょう。
経済学的な意味でのコミットメント
経済学におけるコミットメントとは、「特定の行動しかとれないような、具体的な仕組みを作る」ことを指します。
私たちが日常生活で遭遇しがちなこれらのシーンは。経済学的な意味での「コミットメント」を活用した仕掛けだったのです。
金融業界で耳にする「コミットメントライン」とは
金融業界にはコミットメントではなく、「コミットメントライン」という言葉があります。
コミットメントラインとは、銀行融資枠のことです。つまり、銀行が顧客に対してお金を融資するときに使う契約のことをコミットメントラインと呼びます。
あらかじめ銀行側が「返済期間・金利・融資枠」を事前に設定することで、条件を満たせば手軽にお金を借りることが可能です。ビジネスシーンで利用される「コミットメント」とは大きく意味合いが異なるので、注意しましょう。
まとめ
今回は以下のポイントを中心に、コミットメントについて解説しました。
・利用シーンによって意味合いが異なる
・ビジネスでは「約束する」「責任を持つ」といった意味合いで利用される
・仕事へのコミットメントを高めるには、4つのポイントがある
従業員のコミットメントを高めれば、「生産性の向上」「離職率の低下」といったメリットが期待できます。ただし「仕事のことが頭から離れない」といったオーバーコミットメント状態に陥らないよう、会社側は配慮が必要です。
従業員のコミットメントを高めるには「ビジョンの共有」や「仕事環境の見直し」「相談できる体制の構築」など、会社側としてできる対策があります。この機会に従業員のコミットメントを高めて、組織力の向上や業績アップを目指してみませんか?