2022年3月10日公開

パーパスとは?これからパーパスが必要になる理由と策定のポイントを解説

パーパス・ブランディングやパーパス・マネジメントといった、パーパスという言葉がついた用語を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?

 

近年、ソニーやネスレといった大手企業だけだなく、中小企業でもパーパスを策定する企業が増えています。そこで今回は下記の項目を中心にパーパスについて解説します。

 

・パーパスの意味や定義

・パーパスが注目を集める理由

・パーパスを策定する際のポイント

・パーパスの事例

・パーパス策定時の注意点

では、まずパーパスの意味や、ミッションとバリューとの違いについてみていきましょう。

 

パーパスとは

パーパスとは、直訳すると「目的・意図」という意味です。近年では、パーパス・ブランディングやパーパス・マネジメントというように、ビジネスの場面で使われるようになりました。 ビジネスで使われる場合はパーパス=存在意義と考えると理解しやすいでしょう。

 

パーパスに関連する用語として、パーパス・ブランディングやパーパス・マネジメントがあります。それぞれの用語の意味は下記の通りです。

 

 

パーパスに似た言葉に、ミッションとバリューそしてビジョンがあります。それぞれの違いは下記の通りです。

 

 

パーパスやミッションでは、社会において自社が何のために存在し、社会のためにどのような使命を果たすべきかを明確にする必要があります。

 

パーパスが注目を集める理由

ビジネスの場面でパーパスが注目を集める理由は下記の3つです。

 

・企業価値の向上

・ミレニアム世代の登場

・コロナウィルスによる生活者の意識変化

それぞれの理由についてみていきましょう。

 

企業価値の向上

高い収益をあげることが投資家にとって企業を評価する上で重要でした。しかし、ここ近年社会全体のサステナブル志向が強まっています。それにより、多くの投資家は企業がESGを重視しているかを重要視するようになりました。

 

ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉で、国連が投資を行う際に新たな判断基準として提唱しました。そしてESGの観点から、企業の将来性を評価分析し、投資することをESG投資といいます。

 

そしてサステナブル志向の高まりにより、ESGを推進する企業が投資先として積極的に選ばれるようになりつつあります。そのため、企業側が現在の社会問題を解決する、もしくは社会に良い影響を与える取り組みを行なっていることをパーパスでしっかりと示すことで、企業価値の向上が期待できます。

 

ミレニアル世代の登場

ミレニアル世代とは、2000年代に成人あるいは社会人になる世代を指します。ミレニアル世代を代表する経営者のマーク・ザッカーバーグ氏が母校のハーバード大学の卒業式で、ミレニアル世代にとってパーパスを持つことは当たり前であるとスピーチをしました。

 

このようにパーパスを明確に持つことは、ミレニアム世代、20代から30代の人たちの価値観と一致しています。それゆえ企業側はミレニアム世代に自社を就職先として選んでもらうためにもパーパスを明確にする必要があるでしょう。

 

コロナ禍による生活者の意識変化

コロナ禍によって生活者のサステナビリティへの意識が高まりました。電通が2020年10月に実施した『コロナ下の生活者に対してサステナビリティや企業/ブランドの“パーパス”(社会に対する志・社会的存在意義)に関する意識調査』によれば、地球環境や問題は他人事ではないと感じる人が83.0%でした。そのうち53.9%はコロナがきっかけで増加しました。このようにコロナ禍によって生活者の意識が変化しました。

 

引用元:電通報『コロナ下の生活者に対してサステナビリティや企業/ブランドの“パーパス”(社会に対する志・社会的存在意義)に関する意識調査』

 

また、博報堂が実施した『ブランドパーパスに関する生活者調査』によれば、地球環境の問題以上に、個人情報保護(83.2%)、感染症防止対策(80.4%)、安全な街づくり(80.4%)などといった暮らしに身近で、生活を左右しそうな社会問題への関心が高いことが分かりました。

 

 

引用元:博報堂『ブランドパーパスに関する生活者調査』レポート

 

さらに、ブランドパーパスに共感した生活者は、ブランドのことを調べる(31.8%)、少しぐらい値段が高くても購入する/利用する(20.0%)、定期的にブランドの情報を得る(19.0%)などの行動をとっていることが分かりました。

 

引用元:博報堂『ブランドパーパスに関する生活者調査』レポート

 

ブランドパーパスに共感した生活者は、値引きがなくても購入意欲があります。さらに自らブランドの情報を取得し、周りの友人や家族に勧めるといった行動を自発的にとってくれる可能性が高いと考えられます。

 

これらの調査結果から、マーケティングにおいてパーパスは重要な役割を果たすといえます。

 

パーパスを策定する際の5つのポイント

ここではパーパスを策定する際に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

 

現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与える

パーパスを作成する際には、現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与えるかどうかが重要です。

 

また自社の投資家や従業員、そして消費者に対して共感してもらうことも大切です。ESGを重視して投資する『ESG投資』が増えていることや、前述の調査からも、サステナビリティへの意識が高まっていることが分かります。

 

また、電通が2020年10月に実施した『コロナ下の生活者に対してサステナビリティや企業/ブランドの“パーパス”(社会に対する志・社会的存在意義)に関する意識調査』によれば、社会全体で共通の目的に向かって力をあわせることが重要だと感じている人が全体の76.5%でした。

 

 

引用元:電通報『コロナ下の生活者に対してサステナビリティや企業/ブランドの“パーパス”(社会に対する志・社会的存在意義)に関する意識調査』

 

このことからも現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与える内容にすることで、より自社のパーパスを自分ごとと捉え、共感してもらえると考えられます。

 

自社の利益につながるもの

パーパスは現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与えるものにすることと同時に、自社の利益につながるものにする必要があります。

 

なぜなら、企業は非営利団体ではなく、あくまでも営利団体だからです。もし、利益をあげることができなければ、投資家や従業員といったステークホルダーに対して、不安や不利益を与えてしまう結果になります。

 

ステークホルダーとは

企業が活動することで影響を受ける利害関係者。具体的には、株主、従業員、顧客、取引先などを指します。

このような理由からもパーパスの内容は自社の利益につながるものにしましょう。

 

合理的な理由がある

パーパスは本当に自社が取り組むべき内容がどうか確認しましょう。事業内容とかけ離れているようなパーパスは、株主や従業員といったステークホルダーから理解を得られない可能性が高いです。

 

ステークホルダーから理解を得られなければ、パーパスを策定した意味が半減してしまいます。このような理由から、パーパスは自社の事業内容と近く、かつ自社が行う合理的な理由があるものにしましょう。

 

実現可能かどうか

パーパスが実現可能かどうかも重要なポイントです。パーパスを実現するために取り組むことで株主や従業員、顧客といったステークホルダーから共感を得られます。

 

形だけのパーパスで、パーパスの実現に向けた取り組みが見えなければ、共感を得られないどころか、信用すら失う可能性があるでしょう。

 

従業員のモチベーションの向上につながる

パーパスを策定することで、自社で働く意義を明確に示すことが可能です。それにより、従業員の帰属意識や忠誠心が高まり、その結果モチベーションの向上が期待できます。

 

事実、博報堂が実施した『ブランドパーパスに関する生活者調査』によれば、従業員が会社のパーパスに共感すると、勤続意向やモチベーションが高まることが分かりました。

 

引用元:博報堂『ブランドパーパスに関する生活者調査』レポート

 

このような理由からパーパスを作成する際には、従業員に対して働く意義が感じられる内容にしましょう。

 

パーパスの事例

ここでは、パーパスの実例を紹介します。

 

パーパスといえば、ソニーグループ株式会社の『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』や、ネスレ日本株式会社の『ネスレは、創業者アンリ・ネスレの精神を受け継ぎ、栄養を中心としたネスレの価値観に導かれ、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高める製品、サービス、知識を個人と家族の皆さまにお届けするためにパートナーとともに取り組みます』といった、大手企業のものが有名です。

 

しかしながら、今後は大手企業だけではなく、中小企業でもパーパスは必要になってくるでしょう。そこでここではLB MEDIAの運営会社でもある、株式会社ロジック・ブレインのパーパスを紹介します。

 

株式会社ロジック・ブレインのパーパスは下記の通りです。

 

 

株式会社ロジック・ブレインが、「人間理解」を追求してウェルビーイングな社会を作るというパーパスを実現可能かどうか?合理的理由があるかどうか?みていきます。

 

株式会社ロジック・ブレインは、クラウドマネジメントツール【TOiTOi】とクラウドマーケティングツール【LBA】を開発、提供する企業です。

 

【TOiTOi】は、社員の個性をAIで分析して行動傾向を把握し、それぞれの特性にあわせて最適なマネジメントをするための「クラウドHRMシステム」です。

 

株式会社ロジック・ブレインが以前実施したアンケート調査によれば、適性検査システムに対して「結果を基にどうすれば良いのか解決策まで示してくれる」や「パーソナリティまで正確に診断できる」といったことを求めている人が多いことが分かりました。

 

そこで、【TOiTOi】は人事担当者が適性検査システムに対して求めていることをテーマに開発を行っています。そのため【TOiTOi】を使うことで、社員の表面的な部分だけでなく、本音や行動傾向、意思決定の癖だけでなく、マネジメント方針やコミュニケーションの改善案まで知ることができます。

 

このように株式会社ロジック・ブレインは、人間を理解するためのサービスを提供しているため、「人間理解」を追求してウェルビーイングな社会を作るというパーパスは、合理的な理由があり、かつ実現可能だといえます。

 

パーパスを実現することで、現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与えるかどうかは重要な要素です。

 

先進国の中でも日本の幸福度は低く、社会的にも問題になっています。そのため、大手企業を中心に、従業員の幸福を維持・向上させるという取り組みを行う企業が増えています。このようにウェルビーイングな社会を作ることは現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与えるものだといえます。

 

株式会社ロジック・ブレインのパーパスは、現在の社会問題を解決するもの、もしくは社会に良い影響を与えるというポイントや、自社の利益や取り組む合理的理由があるというポイントを押さえているといえます。このように企業規模に関係なく、パーパスの策定は可能です。

 

パーパスを策定する上での注意点

自社でもパーパスを策定しようと考えている方も多いのではないでしょうか?ここではパーパスを策定する上での注意点を解説します。

 

パーパスは策定したら終わりではありません。パーパスを策定したら、まずは社内に浸透させることが大切です。前述の博報堂が実施した『ブランドパーパスに関する生活者調査』結果からも、従業員が会社のパーパスに共感すると、勤続意向やモチベーションが高まることが分かりました。

 

さらに、経営理念への共感が強い従業員は、仕事の楽しさや自分の成長を、働き続ける理由としてあげています。このようにパーパスを策定するだけでなく、従業員に理解をしてもらい浸透させることで、パーパスを策定した目的を達成できるといえます。

 

パーパスを従業員に浸透させるためには、実際の仕事や世の中への価値提供活動と直結させて従業員に示していくことが欠かせません。そのため、パーパスを策定後は実際の取り組みまで落とし込む必要があります。

 

また、パーパスが単なるお題目ではなく、実際の業務に反映させることで、従業員だけでなく、株主や顧客といった外部に対しても発信することになります。その結果、自社に対する中長期的な信頼感や愛着の醸成につながるでしょう。

 

このような理由からも、パーパスは策定するだけでなく、パーパスに基づいた取り組みを行うことが重要だといえます。

 

まとめ

今回は下記の項目を中心にパーパスについて解説しました。

 

・パーパス意味や定義

・パーパスが注目を集める理由

・パーパスを策定する際のポイント

・パーパスの事例

・パーパス策定時の注意点

今後、マネジメントだけでなく、マーケティングの分野においても、パーパスは必要不可欠になってくるでしょう。パーパスを策定するのには大きな労力がかかります。しかしながらパーパスを策定する恩恵は大きいです。そのため、ぜひこの機会にパーパスの策定に取り組んでみてはいかがでしょうか?

この記事のすべてのタグ