2021年2月17日公開
人と人、人とモノをつなぐICTとは何?IT・IoTとの相違点や活用方法まで徹底解説
「ITなら知ってるけどICTって何?」
「ICTとITの違いは?」
テレビを見ていても「ICT」という言葉を聞くことがあります。ICTとは情報通信技術のことですが、情報通信技術とは何かが不明確で分かりにくいですよね。
なんとなく分かっているけど解釈がむずかしく感じませんか?
そこでこの記事では、下記の項目を中心にICTについて解説します。
・ICTとIT・IoTとの違い
・ICTの活用例
・ICTの問題点と対策
・ICTの未来
日本において、ICTはますます重要度を増すでしょう。事実、日本政府では総務省が活用を推進しています。そこで今回は、DXに取り組むためにも知っておきたいICTについて、具体例を挙げながら解説します。
目次
ICTとは?
ICTとは何かをより良く知るためにその定義・語源・歴史を見ていきましょう。
ICTの定義
ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の頭文字をとった略語です。日本語に訳すと情報通信技術です。
オールドメディアと言われるテレビ・ラジオ・固定電話からメール・チャット・SNS・最先端技術である人工知能・ロボット工学など「人と人」「人とモノ」を結ぶコミュニケーションとそれを実現する技術を含めて「ICT」といいます。
それに対して、IT(情報技術)はコンピューターを使ってデータを処理したり、検索・送信・操作することとそのハードウエア・ソフトウエアのことです。
ICTはより広い分野・時代を含む言葉ですが、国内ではほぼ同義語として使用されています。
すべてのネットワークに接続するシステムやデバイスによって「人と人」「人とモノ」がつながるICTが生み出す新たな価値の創造が、世界中で模索されています。
ICTの歴史
Information and Communication Technology(情報通信技術)という言葉は、1980年代から学者によって使用されていました。
・1997年 デニス・スティーブンソンが英国政府に提出した報告書
・2000年 イングランド、ウェールズ、北アイルランドのナショナル・カリキラム
において「ICT」という言葉が使用されたのが語源です。
1980年代 以前
このころICT(情報通信技術)は、テレビ・ラジオの電波・家庭用電話回線がありました。出先での通信手段は公衆電話です。1980年代後半になると、パソコン通信でクローズドのネットワークにつながってデータ通信ができるようになりました。
1990年代
ICT(情報通信技術)はデジタル回線を使用した携帯電話が普及しました。携帯電話のおかげでいつでもどこでも通話が可能となります。
1990年代半ばにインターネットが開放されてオープンネットワークにつながるようになりました。このころのインターネットはダイヤルアップで電話網を使用したネットワークに接続していました。
2000年代
情報通信技術はインターネットの常時接続が一般家庭に普及しました。このころの携帯電話は第3世代移動通信(3G)で長文のメールで文章のやり取りができます。2001年からネットワークの構築に国からの補助金が出るようになって光回線・ブロードバンドの整備が進みました。
2010年代
インターネット回線は光回線が主になり安定した高速インターネットが整備されました。
携帯端末はスマートフォン・タブレットになり通信技術は第4世代移動通信(4G)となり手元で高速でインターネットに接続できました。
このころ新たな人とつながる手段としてSNS(フェイスブック・ツイッターなど)が、利用されるようになりました。スマホの普及によりSNSがより身近になりモバイル機器で人とつながることが多くなりました。
2020年代
安定したインターネットの環境の元これからはモノとモノが連携する時代(ICT)を迎えています。
ICTとIT・IoTとの相違点と特徴
「ICT」に似た用語に「IT」・「IoT」があります。それぞれの違いについてICTの特徴と比較しながら説明します。
ICTとIT
ICTとITは同義に解釈されていますが、2つの言葉の中心に違いがあります。
ICTの中心はコミュニケーションです。
データをやり取りしてコミュニケーションをする方法とそのシステムのことを表します。コンピューターが一般的でなかったころのラジオやテレビ・固定電話・もっとアナログな回覧板からコンピューターを使ったチャットやAI(人工知能)までもがICTであるといえます。ICTは政府の中で総務省の管轄です。
ITの言葉の意味は「情報技術」です。ITの中心はコンピューターです。コンピューターを活用して情報処理することその技術、ネットワーク、ソフト・ハード・データ通信技術のことを表します。政府の管轄は経産省です。
コンピューターとネットワークの進化によってコミュニケーションの方法は劇的に進化しました。
ICTを構成するものがコミュニケーションの方法とそのシステムのことです。現代ではITはコミュニケーションに必須の要素になっていますのでICTの構成要素にITが含まれています。
ICTの進化=ITの進化と考えられるようになって、その区別があいまいなものになっています。
ICTとIoT
IoTは、「Internet of Things」の頭文字をとった略語です。「モノのインターネット」と訳します。
「モノ」は冷蔵庫や洗濯機といった家電や車などのことです。今までは通信機能がなかったこれらのモノに通信機能をつけることによってインターネットに接続して遠隔操作や遠隔制御・モニタリング可能になります。
例えば、スマート家電のエアコンの場合、インターネット回線を通じて出先から部屋の温度を確認(モニタリング)して温度調節(遠隔制御)できます。
安定したIT(インターネット環境)を土台として、「人と人をつなげる」ICT(情報通信技術)の次の世代の技術としてIoT(モノのインターネット)があります。
ICTの活用例
ICTは私たちの日常生活の中に浸透しています。ICTの具体的な活用例を紹介します。
ICT×教育
文部科学省では情報活用能力を学習の基盤の一つにする新学習指導要領を定め、学校のICT環境の整備を進めています。具体的には、下記の通りです。
・動画を活用
・学校同士の交流
・学習方法の共有
・オンライン授業の取り組み
ICTを活用することによって、教師の資料作りなどの負担を減らし効率的に指導効果を高めます。教育をICT化することにより、将来のIT技術に適応する人材育成を目標にしています。
ICT×医療
医療現場でも次のようなICT技術が導入されています。
・病院同士の情報共有
・遠隔診療
電子カルテのネットワークが整備されると年齢や受診歴・既往歴や薬の服用状況が共有できるため、医師にとっても患者にとっもメリットがあります。
医療のICTがすすめば近所の診療所でオンライン診療を受けることができるので、通院の負担が減ります。近所の診療所は総合病院と連携しているのでより良い健康管理が可能です。
ICTで医療従事者の負担が減り、患者は効率的に最適な医療を享受できるようになるでしょう。効率的な医療のICTで高齢化がすすむ現代社会において問題となっている医療費を削減できます。
ICT×農業
農林水産省ではスマート農業を推進しています。スマート農業とはICTやAI(人工知能)などの最先端技術を活用して高品質生産・省力化をする農業のことです。ICTを活用した具体例は下記の通りです。
・田んぼの水管理
・ドローンを活用 農薬散布 圃場センシング
・農業用アシストスーツ
・熟練ノウハウの見える化
ICTにより田畑をモニタリングすることで収穫の安定化・高品質化をはかり制御できない天候へ対応します。農業の現場では高齢化で重労働が負担になっています。また後継者不足で熟練の経験の継承が難しくなっているのが大きな課題です。
ICTを活用することでこれらの問題を解消します。
ICT×環境
総務省では「グリーンICTプロジェクト」に取り組んでいます。これはICTを活用して地球環境問題に取り組むことです。具体的には次の2つの例を挙げます。
ICTシステムのグリーン化
ICTが活用されるようになって電力の消費が多くなっている問題があります。そこでICTのシステム自体を省エネにするのがICTシステムのグリーン化です。具体例は下記の通りです。
・外気や雪水を使った空調方式
・効率的な給電方法
ICTの活用によるグリーン化
社会全体で省エネに取り組んでいます。具体的な例は下記の通りです。
・HEMS ホームエネルギーマネジメントシステム
このようにセンサーなどを使って空調を制御して効率的に電力を使う取り組みです。
ICTの問題点と対策
ICTの活用が広がって便利になる一方で、課題がみえてきました。ここでは、ICTの活用による課題を紹介します。
機会の均等化の課題
ICTは、地域によって均等ではない問題があります。
例えば、都会と田舎ではインフラの整備は同じではありません。インフラの整備は人口に応じてされることが多いためどうしても地域差がでてしまいます。
一般的にいえば都会の方がインターネットの通信スピードやICTの対応が早い傾向があります。都会に住む人の方がICT の利点や機会を活用できる環境です。こうした地域差の対策のために公衆端末の設置を推進しています。
また、高齢者は新しいモノへの対応が難しいケースがあるので、世代によってもICTのメリットを平等に享受できません。
例えば、キャッシュレス決済で割引されるケースでは、キャッシュレス決済に対応できない高齢者は割引をうけることができません。
世代格差を埋めるために、ICT対応機器の使用方法を教える仕組みが必要です。
セキュリテイの問題
ICTでさまざまなものがつながって便利になった一方で、ICT関連のセキュリテイ関係の問題が増えています。企業のICTの活用が進むとサイバー攻撃の影響が大きくなります。
例えば、ハードウエアまたはソフトウエアの障害・サービス拒否攻撃、ランサムウェア攻撃ファーミング、フィッシング攻撃、人的ミスなどでICTサービスが利用不能になるケースがあります。
これに対応するために、セキュリテイにコストをかける必要があります。特に、ICTの観点でみるとなりすましの防止のために、本人確認を厳しく行う対策が重要です。
ICTの未来
さまざまな分野でICTの進化が進んでいます。政府は民間と協力して研究を推し進め、補助金を出してICTの研究・普及の後押しをしています。2つ具体例を挙げます。
テレイグジスタンス
現代のICTでは動画やメールを使って離れた場所に視覚・聴覚を伝えることができます。テレイグジスタンスは離れた場所から触覚を伝える技術です。
「圧覚、低周波振動覚、高周波振動覚、皮膚伸び覚、冷覚、温覚、痛覚という7種類の感覚を組み合わせることにより、すべての触感を再現する“触原色原理”というコンセプトを応用して、遠くのものを本当に触っているかのような感覚を得る」
五感の情報通信技術としてロボットを使って触覚を伝える技術です。遠隔医療や厳しい環境での遠隔作業への応用が期待されています。
3次元映像技術
ICTの視覚のコミュニケーションの未来の技術として電子ホログラフィ(その場にいるかのような体感を実現する立体映像表示技術)の研究を推進しています。
3次元映像技術の研究により、3Dテレビや臨場感ある3Dゲーム(メガネなし)また、車や家等を立体映像で体感できる3Dショールームなどが実現します。
まとめ
この記事では、ICTに関して下記の6点についてまとめました。
・ICTとIT・IoTとの相違点・特徴
・ICTの活用例
・ICTの問題点と対策
・ICTの未来
ICTはIT・IoTの進化とともに活用の幅が広がっていきます。政府ではICTをベースとした社会として「Society 5.0」超スマート社会の実現を目指しています。コミュニケーションは社会の基盤です。デジタル社会においてICTはこれからの社会の基盤です。正しく理解して活用しましょう。