2022年6月8日公開

IoTは未来へのカギ!基本から理解して活用しよう

「IoTって何のこと?」
「IT・ICTとの違いは何?」

 

と疑問を抱いている人もいるかもしれません。そもそもテクノロジーに関する用語は、似たようなワードが多すぎますよね。

 

「IoT」は、モノとモノをネットワークでつなぐことですが、それにより何ができるのかイメージできない人も多いと思います。そこでこの記事では、下記の項目を中心に「IoT」について解説します。

 

・IoTとは何か

・IoTの仕組みと活用の流れ

・IoTの具体例

・IoTとM2Mの違い

・IoTがもたらすメリットとデメリット

・IoTの未来

実際の活用例を挙げながら解説するので、参考にしてください。

 

IoTとは何か

IoTとは何か、言葉の意味・基本について確認しましょう。

 

IoTの基本

IoTとは「Internet of Things」の頭文字を並べた語で、日本語では「モノのインターネット」と訳します。

 

総務省による『平成27年版情報通信白書』では、IoTについて次のように表現しています。

 

IoTのコンセプトは、自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというものである。これにより、製品の販売に留まらず、製品を使ってサービスを提供するいわゆるモノのサービス化の進展にも寄与するものである。

引用元:総務省『平成27年情報通信白書』

 

スマホやPCだけでなく、家自体や、鍵・窓・扉・カーテンなど、これまで電気が通っていなかったモノから、照明機器・冷蔵庫などの家電や車・道路まであらゆるモノをネットワークにつなぎます。

 

 

それによって、データ収集・遠隔操作・遠隔モニタタリングが可能になります。

 

IoTの具体例

IoTの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

 

・スマートウォッチから人の行動データを収集して可視化

・スマート家電を遠隔で操作・制御

 

あらゆるモノがネットワークによってつながり、相互通信・制御ができるようになれば、私たちの生活の利便性は格段に上がる可能性があるでしょう。さらに、ネットワークにつながったIoTデバイスから収集したデータは、ビッグデータとして活用され、新たなサービスの基盤となることが期待されます。

 

IoTとM2Mの違い

M2Mとは「Machine to Machine」のことで、機器から機器への通信を指します。具体的には、スマート・デバイスが結ばれるネットワークです。一方でIoTは、あらゆるモノがネットワークにつながる、現代のIT環境がベースになった考え方です。

 

IoTの「あらゆるモノがネットワークにつながる」の中に「機器と機器」も含まれるので、厳密にはM2MはIoTの一部であるといえます。

 

IoTの歴史

IoTの歴史について確認しましょう。

 

 

IoTの概念は、1980年代に提唱されました。

 

日本では1984年、当時東京大学の助手だった坂村健氏が、TRONプロジェクトを開始しました。TRONプロジェクトとは、マイコンを組み込んだモノ同士を結ぶシステムを構築する、ハードとソフトの研究です。一般向けには「どこでもコンピュータ」と紹介されました。

 

その研究の中で国産OSのトロンが生まれました。しかしTRONプロジェクトを具現化するには、当時のコンピュータのスペックやネットワーク環境が整っていませんでした。

 

TRONプロジェクトの研究成果は、オープンデータとして開放され、誰でも活用できるようになっています。ここまでの歴史を見ると、2010年代にモバイル機器を1人1台持つようになって、IoTが急速に発展したのが分かります。

 

IoTの仕組みと活用の流れ

IoTは、モノをネットワークに接続してデータをやり取りする仕組みです。

ここでは、IoTの活用の流れを押さえましょう。

 

センサー付きデバイスからデータを収集する

「モノ」とは、PCやスマホだけでなく家電・家の窓・鍵などあらゆる物を指します。「モノ」にセンサーを取り付け、センサーが物の動きや状態を検知してデータ化します。センサーとして、以下のようなものが挙げられます。

 

 

私たちの身近にあるモノの中に、たくさんのセンサーが組み込まれているのが分かるでしょう。

 

ネットワークを通じてデータを送信する

物理的にネットワークに接続する方法には、有線と無線がありますが、ほとんどの場合において、無線が採用されます。無線には、設置の手間が省けるというメリットがあるからです。

 

また、センサーが作成するデータは小さいので、高速で大量のデータを送る必要もありません。IoTに採用されるネットワークには、インターネットのほかに次の例があります。

 

Wi-Fi

無線LANの規格を統一したIEEE 802.11規格に準じた、2.4GHz を中心とした無線通信技術の方式です。異なるメーカーの機器を接続できるので、汎用性が高いです。

 

デバイスをインターネットに接続する方法として広く認知されており、IoTにも活用されています。さらに、Wi-Fi技術の進歩により、通信速度は高速化・安定化しています。

 

移動通信システム

国際電気通信連合(ITU)が定める無線通信システムです。身近なものとしては、携帯電話の回線に使用されています。移動しながらの無線通信に優れているため、車やバスなどのIoTに活用されます。

 

LPWA

LPWAは消費電力を抑えた通信方式です。IoTで活用されることを想定して設計されています。

 

Wi-Fiや移動通信システムよりも低速なナローバンド(狭帯域)を使用しているので、消費電力を抑えながら長距離通信が可能です。そのため、インフラの整っていない地域や洋上などで活用されています。

 

Bluetooth

Bluetoothは、2.4GHzを中心とした無線通信技術の1つです。一般的なスマホやPCと、周辺機器を接続するのに使われています。

 

Wi-Fiと比べて省エネ、低速なのが特徴です。Bluetoothなら複数のデバイスを経由して、広い範囲からデータを収集できるメッシュネットワークの構築が可能です。そのため、工場や農場など、限られた広い空間で使うIoTのネットワークに採用されています。

 

NFC

モノを近づけることでデータ通信が可能になる短距離無線通信です。身近なところでは、キャッシュレス決済で活用されています。

 

事前にペアリングを設定しないで利用できるのが特徴です。家の鍵などスマートホームのIoTデバイスから、会社の勤怠管理などさまざまな面で利用されています。NFCは、私たちの生活の利便性を向上してくれるネットワークといえるでしょう。

 

データサーバーでデータを管理

インターネットに接続されたデバイスのデータは、直接クラウドに送信されます。その他のネットワークから送られたデータは、「ゲートウェイ」というインターネットに接続したデバイスを介して、クラウドに送られます。

 

さまざまなネットワークから送られるデータを回収するために、クラウドを使用します。

 

これらの仕組みをゼロから構築するのは、コスト的、時間的に現実的ではありません。そのため、IoTの導入を簡略化するために、IoTプラットフォームが提供されています。代表的なIoTプラットフォームを紹介しましょう。

 

AWS IoT(Amazon Web Service)

公式サイト:AWS

IoTデバイスとAWSクラウドクラウドを、AWSが提供するサービスを使って結び、データを管理・分析するシステムを構築できます。データを安全にやり取りする仕組みにより、IoTを実現します。

 

Azure IoT (Microsoft)

公式サイト:Microsoft Azure 

 

Microsoftが提供するAzureのサービスを組み立てて、IoTのプラットフォームとして提供するシステムです。メニューがあらかじめ決まっていて、それをベースにカスタマイズします。

 

収集されたデータをもとに、これらのプラットフォームを活用して、データの可視化、デバイスの制御、モニタリング、人工知能(AI)による分析・予測を行います。

 

IoTでできること

IoTによってできるようになることは、3つに分類できます。

 

遠隔モニタリング

IoTで、離れた場所にあるモノから状況(位置、気温、動きなど)に関するデータを収集します。

 

そのデータを観察したり、監視したりすることが可能です。IoTを活用した機械の保安システムは、機械の動作をモニタリングし、機械の現状を把握します。その上で必要な保全作業を促し、致命的な故障を防ぐことで機械の稼働寿命を延ばします。

 

遠隔操作

IoTによりモノ同士がネットワークでつながります。自動運転技術では、信号機と車がデータをやり取りし、速度を制御する研究が進んでいます。将来的には標識や道路などにもセンサーを取り付け、相互にデータ通信することで、より安全で渋滞のない交通状況を作り出すことが期待されています。

 

モノ同士の連携

IoTでモノ同士がネットワークでつながります。自動運転の技術では、信号機と車がデータをやり取りし、速度を制御する研究が進んでいます。将来的には標識や道路などにもセンサーを取り付け、相互データ通信することでより安全で渋滞のない交通状況を作り出すことが期待されています。

 

IoTの活用事例

IoTのさまざまな分野での活用事例を紹介します。

 

IoT×交通

バスや電車などの公共交通機関でもIoTが活用されています。JR東日本ではIoT技術によって列車の運行状況をモニタリングしています。

 

公式サイト:JR東日本アプリ

モニタリングによって故障の予兆を察知し、トラブル時には素早い復旧が可能です。また、IoTデバイスにより収集したデータをもとに、運行状況を知らせるアプリがあります。これによって、ユーザーは混雑具合や運行の遅れなどを知ることができます。

 

IoT×農業

IoT化された農場では、農場内にセンサーを設置して、農場の土や水・気候などをモニタリングしデータ化するために、IoT技術を活用しています。

 

それによって、作物にとって最適な環境を作ることが可能です。さらに、品質が安定したり、農場管理の負担が減ったりするメリットがあります。

 

IoT×製造業

製造業の分野では、IoTを活用して人・機械・モノの動きをセンサーで収集・データ化し、製造工程を可視化しています。これによって、業務効率の向上やエネルギー配分・設備投資の最適化が可能です。

 

IoT×建設現場

建設現場のデジタル化にも、IoTが一役買っています。建設現場の課題は、人の動きが見えづらいこと、材料の状況が現場全体で共有できていないことです。

 

そこでIoT技術を活用して人やモノの動きを可視化し、人員配置や材料の在庫を最適化することで、効率的な現場の構築を可能にしています。

 

IoT×物流

物流の現場では、商品の仕分けを自動で行う仕組みや、荷物についたバーコードをスキャンしてデータ化する倉庫管理システム、配送工程を管理するシステムに、IoTの技術が活用されています。

 

IoTがもたらすメリット・デメリット

IoTがもたらすメリットとデメリットを確認します。

 

IoTがもたらすメリット

まずはIoTのメリットを整理します。

 

遠隔操作で利便性があがる

IoTにより実行可能になる遠隔操作により、生活の利便性が上がります。

 

IoTを搭載した家電のことをスマート家電といいます。例えばスマート家電の一例として、スマートリモコンが挙げられます。

 

スマートリモコンにより、赤外線リモコン対応の家電を、家の外からでも操作が可能です。外出先から家のエアコンの操作をし、帰宅時に適温にしておくといった使い方ができます。ペットを飼っている人におすすめの機能です。

 

データを可視化でき効率化につながる

IoTを活用すると、今までは見えなかったデータを可視化できます。

 

例えばスマートウォッチには多様なセンサーが内蔵されていて、睡眠時や運動時など、装着した人に関する多くのデータを可視化できます。それによって運動不足や過労を認識したり、必要なカロリーを把握したりすることで、健康への意識を高められます。

 

効率が上がることで働き手不足の課題に対する対策になる

IoTはビジネスの現場でも活用されています。工場内のデータを集めて分析することで、人員の配置や在庫の量を最適化できます。業務効率が上がって無駄がなくなり、さらにロボット技術を活用することで、人手不足による課題の解消も可能です。

 

新たなビジネスのヒントとなる

IoTのセンサーにより、収集できるデータが増加しています。データが多ければその分、判断材料が増えます。多くの視点から状況判断できれば、ビジネスチャンスを拡大できます。

 

IoTのデメリット

IoTのデメリットを整理します。

 

IoTデバイスはセキュリティ対策が不十分

IoTデバイスのセンサーは、セキュリティ対策が十分でないケースがあります。

 

総務省による調査報告で、IoTデバイスにおいてID・パスワードの管理が不十分だったとされる案件は、調査数9000万件のうち約31,000~約42,000件ありました。

参考元:総務省『脆弱なIoT機器及びマルウェアに感染しているIoT機器の利用者への注意喚起の実施状況』

また、その数の多さから、すべてのIoTデバイスのセキュリティを手動で更新するのは困難です。データに優劣はありませんが、自動運転や医療機器に関係するIoTデバイスは、悪意に基づいて操作されると大きな事故に直結するため、セキュリティ対策は重要です。

 

プライバシーの問題

IoTはカメラやセンサーからデータを取得できます。企業はそのデータを活用することでサービスを提供します。

 

例えば、電気の使用状況のデータから、その人の生活リズムをある程度まで把握が可能です。

 

それに加えて、水道やガスの使用状況・防犯カメラの画像などを組み合わせることで、個人の生活のかなりの部分が特定可能になります。当初の想定以上に、データからプライバシー侵害につながる可能性があります。

 

災害によるシステムダウンに弱い

IoTは電気を使った技術です。その根本である電源が落ちてしまうと、すべての機能が使えなくなります。IoTが発展してIoTへの依存度が高くなるほど、システムダウンによるダメージは大きくなってしまうでしょう。

 

IoTの未来

IoTの技術は他の最先端技術とリンクしながら進化します。

 

IoTとAIの進化

IoTの進化は、ネットワーク環境の向上やセンサーのさらなる小型化・高性能化を伴う増加、人工知能の発展による社会の最適化(効率化・在庫減少)によって進みます。さらに、ロボット技術が発展することで、さまざまな物事が自動化します。

 

それによって、経済発展と少子高齢化などの社会的課題の解決を両立する「Society 5.0」が実現します。

 

 

 

Society 5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立させる、人間中心の社会(Society)を指します。

 

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会で、『第5期科学技術基本計画』において、我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

引用元:内閣府『Society 5.0とは』

 

そしてその先には、モノが自主学習して「モノが自律して行動する」未来が訪れるかもしれません。

 

Internet of Human

Internet of Humanは「人のインターネット」といわれます。頭文字から「IoH」と呼ばれています。IoHは、人とインターネットをつなぐことで新たな価値を見出す研究です。

 

一例として、人にセンサーを取り付けて状態を可視化する研究があります。例えば、社内会議でプレゼンテーションをした時、センサーを取り付けた会議参加者の反応や動きをデータ解析して、理解度を可視化できます。それにより、もし理解されないプレゼンであれば、方法を変えるといった対策が可能です。また、人の姿勢や行動を解析して、その日の体調を推測し、無理をさせない労働の最適化なども考えられます。

参考元:ASCII.jp『「Internet of Human」の未来を体験――de code 2019のEXPOエリアで衝撃を受けた』

 

ほかにも、動画配信サービスだったらどうなるでしょうか?

 

IoHが発達した世界では、人と映像サーバーがつながった状態で動画を視聴して、感情の動き(感動)などに応じて課金されるサービスが、可能となるかもしれません。このように、IoTはこれからも進化を続けるでしょう。

 

まとめ

この記事では、IoTに関して下記の点を中心にまとめました。

 

・IoTとは何か

・IoTの仕組みと活用の流れ

・IoTの具体例

・IoTとM2Mの違い

・IoTがもたらすメリットとデメリット

・IoTの未来

IoT技術の進化は、人材不足の解消や業務の効率化に寄与します。そのため、今後企業のデジタル化の推進には、IoTの技術が欠かせないでしょう。ぜひ、この機会に自社でIoTが活用できないか、検討してみるといいでしょう。

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