2021年6月24日公開
RPAでできることとは|デジタルテクノロジーで働き方改革を実現しよう!
「RPAとは何」
「RPAで何ができるの」
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)の導入を検討中で、業務が効率化できるツールであることが分かっていても、導入することで起こりうる問題に不安があるのではないでしょうか。また実際にビジネスの現場でどう役に立つのかが見えにくいと思います。
そこでこの記事では下記の5点を中心にまとめました。
・RPAとは何か
・RPA導入による効果とは
・RPAの注意点
・RPAの選び方
・RPAの活用例
ビジネスの現場でRPAを活用できれば、従業員はバックヤード作業や単純入力作業から解放されます。その結果クリエイティブな業務や直接顧客と関わる業務に時間をとることができ、顧客のユーザー体験を向上させることも可能です。RPA導入、活用のため参考にして下さい。
RPAとは何か
RPAとは何なのか、基本と機能、RPAで何ができるかについて解説します。
RPAの基礎知識
RPAは「Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)」の略語です。コンピューターで行う日常的で反復的な手動タスクを自動化するソフトウエアロボットのことをいいます。
RPAは、人が手動で処理していた事務的な業務を自動で行います。それゆえ実体があるわけではありませんが、働く様子がロボットのようなためロボティックと言われています。
RPAの仕組み
RPAは実際どのように運用するのか、RPAの仕組みの流れを解説します。次の3つのステップで実行可能です。
①RPAで何を実行するか決める
②シナリオ化
③RPA実行
具体例と合わせて見てみましょう。
①RPAで何を実行するか決める
RPAで何を実行するのかを決めます。RPAで実行できるのは変更がなく、同じ方法で何度も実行する作業です。
例えばフォーム入力・情報収集・照会・データの処理・データベース作成ができます。
ここではオンラインショップの返品作業を例に挙げます。返品作業では、返品の受領を確認するメッセージの送信、在庫システムの更新、顧客への支払い調整、内部請求システムの更新の確認があります。これらの作業をRPAで自動化すると考えます。
②シナリオ化
RPAで実行するための事務作業のルールを作ります。業務を構成する各作業を分解して手順や使用するソフトウエアの流れを書き出します。これをシナリオ化といいます。シナリオ化にはプログラミング知識は不要です。トレーニングは必要ですが、非ITの担当者でも作成できます。
返品作業の例でいうとメッセージの送信、在庫システムの更新、顧客への支払い調整、内部請求システムの更新の確認といった作業を行うための段取りを文書化します。
③RPA実行
作業をシナリオに基づき実行します。RPAが単純作業を自動で代行します。そのため、ホワイトカラーの事務負担を軽減できます。さらに、RPAは24時間可動するので残業の削減にも繋がるでしょう。
返品作業はルールに基づいた単純作業で、オンラインショップでは頻繁に発生します。RPAならシナリオに基づき返品作業を自動で24時間対応可能です。
RPAと人工知能(AI)・Excelマクロの違い
人工知能(AI)はレベルにもよりますが経験を積むほど学習しながらイレギュラーにも対応できます。ただし、運用には専門知識が必要です。
RPAは、最初にルールを設定しますが、人工知能(AI)のように学習しません。そのため自動化された作業内容を変更した場合、対応できないため注意が必要です。
RPAとよく比較されるのがExcelマクロで、Excelを自動で動かすシステムです。RPAと同じくグラフ作成やデータベースを自動で作成できますが、Excelマクロを稼働するためのVBAの知識が必要です。また動作範囲はOfficeソフトのみに限られます。一方で、RPAはPC内すべての機能を稼働できます。
RPAを取り巻く社会環境
なぜ今RPAなのか。RPAを取り巻く環境を整理してみましょう。
働き手不足、働き方改革
社会問題として高齢化があり、働き手不足の課題があります。
日本の人口は2010年を境に減少し始め、人口の高齢化率は右肩上がりになっています。これが高齢化社会の問題です。
生産人口の割合は1990年の約70%から2020年頃には60%を割るところまで減少しています。さらに2050年代では生産人口の割合は50%まで減少する試算がされています。
この問題に対して日本政府では働き方改革を推進しています。そのためさまざまな分野で業務の効率化が求められ、ホワイトカラーの業務を効率化するRPAが注目されています。
IT化の進展によるデータのデジタル化
PCの普及と共にPCスペックが向上し処理速度が格段に高速になりました。このようにITが発展してさまざまなものがPC上でデジタルで処理されるようになっています。
こうしたデジタル環境の普及と進展が、これまで人の手で行っていた作業を自動化する流れにつながっています。自動化はプログラミングを使って行われていましたが、RPAを使うことで作業の自動化を非IT部門でも活用できるようになるため、RPAの普及が進んでいます。
単純作業の自動化はこれから人工知能(AI)と連携が進み、学習してイレギュラーにも対応できるRPAへの発展が期待されます。
RPAに任せたい業務
RPAはこれまで人が行ってきたPCを使ったルールが決まった単純な業務を実行できます。RPAが実行できる作業には次の4つの原則があります。
・実行する作業はルールベースであること
・作業は定期的に繰り返すか、事前定義された合図があること
・作業には、決められた入力と出力があること
・作業量は十分な量があること
参考元:THE ENTERPRISERS PROJECT 『平易な英語でロボットプロセスオートメーション(RPA)を説明する方法』
上記の原則に基づいて考えてみると、下記の作業を実行します。
・フォーム入力・情報収集・照会・データの処理・データベース作成・グラフ作成
・会計の処理、在庫管理
・定型的な電話・メールの送受信
RPAはこのような作業を実行して人間の業務の負担を軽減します。
RPA導入による効果とは
RPAを導入したらどんな効果を得られるでしょうか。そのメリットを解説します。
従業員は価値を生み出す仕事に注力できる
従業員は価値を生み出す仕事に時間と手間をかけることができます。これまで時間がかかっていたバックヤード作業や、単純作業をRPAによって自動化可能です。
RPA導入によって従業員の働き方が変わり、顧客満足度、新しいアイデア、拡張性など、企業価値を高める業務に多くの時間を費やすことに繋がるでしょう。また、RPAが業務の一端を担うことで働き手不足の解消にもなります。
RPAの得意分野ではヒトよりも効率が良い
RPAが得意とするルールベースの単純作業では、ヒトよりも早く、エラーなしで業務の処理が可能です。つまりRPAの導入により時間の短縮と精度の向上のメリットがあります。顧客対応にRPAを活用するなら、対応の素早さから、ユーザー体験を向上させることができます。
RPAの注意点
RPA導入と運営する上で気をつけておきたいポイントを解説します。
RPAの管理に追われて非効率的になるリスクがある
RPAを導入してすぐに軌道に乗るとは限りません。実装には当初考えていたよりも多くの負担が必要になる可能性があります。例えばシステムの導入初期にはエラーが出ることもあります。
RPAはエラーを検出してもその原因を提示しません。エラーが出た場合作業を実行できなかった結果のみが表示され、なぜ実行できなかったのかは人の手で調べる必要があります。このように予想外のケースへの対応が負担になることがあります。
RPAを扱う人材が必要
RPAにはプログラミングの知識は必要ありませんが、自動化に関する専門的な知識は必要です。そのための人材確保または育成が欠かせません。またRPAに必要な技術を理解していても、他人が作成した自動化のシナリオを修正するのは困難です。修正に対応できない場合にはRPAはブラックボックス化する可能性があります。
その対策として自動化のシナリオを文書化して社内で共有すること、RPAの運用ルールを設定しておくことが有効です。
RPAによる自動化のコストをどう見るか
RPA導入にはコストがかかります。それだけでなく維持メンテナンスのために継続にもコストがかかります。
確かにRPAがホワイトカラーの事務仕事を代行するので人件費は削減できます。しかし運用や定期的なメンテナンスのためにはある程度の知識は必要です。また外注すればコストがかかりますし、人材を獲得するにはやはりコストがかかります。
効率を求め高度な自動化を求めるとかなり高額になるケースもあります。既存のシステムを活用しながらRPAを組み入れるのがおすすめです。
RPAでどんな価値を得られるか具体的に考えてみましょう。例えば、銀行の窓口で預金口座を開設の際には手書きで何枚も書類に住所氏名を記入する必要があり、時間もかかっていました。
これをRPAで自動化すると署名はデジタル入力で一度だけ記入すればよくなります。このように口座開設の時間短縮と顧客の負担が減り、ユーザー体験を高めることに繋がるでしょう。同時に口座開設の銀行側のデータ処理も自動化できます。結果として、RPAを導入することで銀行側にも顧客側にもベネフィットがあるといえます。
導入の際には、RPAによって自社と顧客にどんな価値をもたらし、恩恵が得られるのかを想定して、それに対してどれくらいのコストを割くのかを考慮する必要があるでしょう。
RPAの選び方
RPAの市場規模は2ケタ成長で拡大し、世界のRPA市場は約15.8億ドルに達しています。そのため市場の拡大と共にコストは下がっていくでしょう。
参考元:『ガートナー、世界におけるRPAソフトウェアの売上高が2021年には20億ドル近くに達する見通しを発表』
さまざまなRPAツールがあり豊富な機能の中から、どのようにRPAツールを選択すれば良いのかを解説します。
実装のしやすさ
RPAの優れた特徴の一つは操作の容易さと既存のシステムとの適応です。そのメリットを壊さないように実装が簡単で既存のシステムとの適応が良いシステムを選択することがポイントです。効率や多機能だけでなく基本となる部分を考慮します。
必要な機能から選択する
RPA導入の目的を明確にして必要な機能が実装されているRPAを選びます。多機能であれば良いわけではありません。機能がシンプルな方が分かりやすいです。それだけではなく機能がシンプルなほうが処理のスピードが早いケースもあります。処理スピードはRPA導入の目的の一つであることが多いので重要です。
カスタマイズと拡張性
カスタマイズ性が高ければ、企業のニーズに合わせて機能をカスタムできます。また、新しいテクノロジーが出てきた場合にも柔軟に対応できます。現代でもAIとの連携が進んでいます。未来のテクノロジーの可能性も十分考えられます。拡張性もRPA選択の一つのポイントです。
サポート体制
RPA導入する基準の一つはサポート体制です。サポートが充実していれば実装から運営までスムーズに展開できます。技術的なアドバイスや適切なトレーニングを受けて、RPAの安定的な運用を継続的に行うことができます。信頼できるベンダー企業を選択しましょう。
RPAの活用例
RPAを導入してどんなメリットが得られたのかを実際の活用例からみてみましょう。
金融庁
金融庁は金融機能の安定と円滑な運営を図ることを目的とした行政機関です。行政機関の中でいち早くRPAを導入しています。
■課題
金融庁が担当する分野が従来の金融機関に加えて仮想通貨を扱うFinTech企業やプラットフォーマーまで急激に拡大しています。その中で次の課題がありました。
・業務負担が急激に増加している
・働き手不足
・若手職員が単純作業に時間をとられる
上記の課題を解決するために、RPA導入してグラフや表の更新作業、集計表への転記作業を自動化しました。
■結果
・大幅な時間節約
・不要な作業の見直し
・人事異動時の引き継ぎの負担が軽減
・自動化により人的ミスが排除され成果物の品質が向上
RPAの導入により業務効率が向上し、職員は分析・企画など価値の創出できる業務に取り組めるようになりました。
参考元:日経 xTECH『RPA導入に燃える金融庁が挑む、日本の省庁「初」の取り組みとは?』
経産省のRPA活用事例
経産省は経済・産業の発展とエネルギーや鉱物資源に関連することを担当する行政機関です。経産省では働き手不足の対応としてデジタルテクノロジーを活用した生産性向上を呼びかけています。働き方改革を推進する中で経産省自らDXに取り組んでいます。その経産省の人事と働き方改革を担当する秘書課では次の課題がありました。
■課題
・単純ながらミスが許されない人事資料の作成と登録
・毎年人事異動があり、そのたびにデータ入力を手作業で行っていた
(全職員4000人中年間1300人異動する)
・特にピーク時には業務が集中して他の業務を妨げる
RPA導入し、900人分自動で入力しました。
■結果
・150時間節約
・登録作業の精度があがり、確認作業の負担が軽減
経産省秘書課では人事登録作業を完全に自動化する見込みです。
参考元:内閣官房内閣人事局『霞が関働き方改革推進チーム 平成30年度 議論の成果』
三菱東京UFJ銀行のRPA活用事例
三菱東京UFJ銀行は3大メガバンクの一つであり、資本ベースの主要ランキングで、資本金1,440億ドルの世界第10位の銀行です。
■課題
・銀行業務には多くの手作業が残っている
・負担が大きくはないが一日に何度も繰り返す必要がある物理的作業が行員を束縛している
コンプライアンス部門でRPAを導入し、物理的な手順をふむ必要がある業務を自動で行うようにしました。また、情報収集の自動化も行いました。
■結果
・専門的な業務に従事する社員の業務の6~7割を占めていた仕事を圧縮
三菱東京UFJ銀行ではリテールや法人部門でもRPA導入を推進しています。
参考元:INNOVATION HAB『三菱東京UFJ銀行が可能性を拡げる、金融機関でのRPA導入による業務効率化』
このようにさまざまな分野でRPAは活用され事務作業が自動化されています。
まとめ
この記事ではRPAについて下記の5点を中心にまとめました。
・RPAとは何か
・RPA導入による効果とは
・RPAの注意点
・RPAの選び方
・RPAの活用例
RPAを活用すると業務を効率的に処理できます。それは働き手不足の問題に対する一つの回答になります。またその労力を、価値を生み出す業務に振り分けることができれば新たなサービスや商品を生み出すことにつながります。RPA導入と運営の参考にして下さい。