2026年7月6日公開
研究から考える ビッグファイブシリーズ第3回なぜチームで信頼される人がいるのか?〜調和特性とチームワークの関係〜
はやみ|「この人がいると、なぜかチームがうまく回る……」
そう感じたことはないでしょうか。
特別に目立つわけではない。強いリーダーシップを前面に出すわけでもない。それでも、会議では場の空気をやわらげ、困っている人に自然と声をかけ、対立が起きたときには間に入ってくれる。
こうした人は、単に「いい人」なのではありません。ビッグファイブ理論で見ると、そこには「調和特性」というパーソナリティ特性が関係していると考えられます。
今回は、ビッグファイブのひとつである調和特性に注目して、チームワークについて考察していきます。
目次
調和特性とは
心理学では、調和特性は英語で「Agreeableness」と呼ばれ、他者への信頼、思いやり、利他性、共感性などと関わる特性として整理されてきました。Graziano & Eisenberg(1997)※は、調和特性を人間関係や社会的行動を理解するうえで重要な性格次元として位置づけています。
※学術文献では「協調性」「調和性」などと訳されることもありますが、LB MEDIAでは統一して「調和特性」と表記しています。
※ Graziano & Eisenberg(1997)は、ビッグファイブにおける調和特性、つまりAgreeablenessの特徴を整理した文献です。調和特性とは、他者への信頼、思いやり、利他性、共感性などに関わる性格特性を指します。同文献では、調和特性が人間関係や社会的行動を理解するうえで重要な特性であることが示され、チーム内での信頼関係や対人関係を考える基礎として位置づけられています。
つまり、調和特性とは、他者と良好な関係を築き、相手の立場や感情に配慮しながら行動する傾向のことです。そのため職場においては、チームワーク・対人関係・組織適応に深く関わる特性といえます。

はやみ|「いい人」で終わらない。調和特性は、チームの土台をつくる「設計力」なんだと思います。
調和特性は「やさしさ」だけではない
「調和特性」と聞くと「人にやさしい」「争いを好まない」「周囲に合わせる」といったイメージを持つかもしれません。もちろん、それも調和特性の一部です。ただ、仕事の場面で重要なのは、単に周囲に合わせることではありません。
調和特性の高い人は、相手の状況を読み取り、チーム全体にとって必要な行動を選びやすい傾向があります。
・誰かが困っていれば手を差し伸べる
・意見がぶつかっていれば、双方の考えを整理する
・新しく入ったメンバーが孤立しないように声をかける
つまり調和特性は、チーム内の摩擦を減らし、安心して働ける関係性をつくる力として表れます。どれほど能力が高くても、周囲との関係が悪化すれば情報共有は滞り、協力も得にくくなります。その意味で調和特性は、チームの土台を支える特性です。
はやみ|調和特性は「人に合わせる力」だけではありません。チームの空気を読み、必要な人に手を差し伸べ、関係性を整えていく力でもあります。だからこそ、調和特性を見るときは、ただ「やさしい人」と見るのではなく、その人がチームの中でどんな支え方をしているのかまで見ていくことが大切です。
調和特性は、いくつかの要素に分けて見ると理解しやすい
ここまで、調和特性はチームの信頼関係を支える特性だと説明してきました。ただし、調和特性といっても、その表れ方は一つではありません。人を助ける行動として表れることもあれば、相手の気持ちをくみ取る行動として表れることもあります。
このように、大きな性格特性をさらに細かく分けた要素をファセット※と呼びます。
※ファセットとは、ひとつの性格特性をさらに細かく分けた構成要素のことです。
ファセットを見ることで「調和特性が高い」といっても、どのような形で職場に表れやすいのかを具体的に捉えやすくなります。
ここでは、調和特性の中でも職場のチームワークに関わりやすい要素として「利他性」と「共感性」の2つに注目します。
ファセット① 利他性
調和特性を理解するうえで重要な要素の一つが「利他性」です。
利他性とは、自分の利益だけでなく、相手やチーム全体の利益を考えて行動する傾向を指します。Graziano & Eisenberg(1997)※も、他者への配慮や、集団にとってプラスになる行動をとろうとする姿勢を、調和特性の中心的な側面として位置づけています。
※前掲のGraziano & Eisenberg(1997)では、利他性は調和特性の中心的な側面の一つとして位置づけられています。
・忙しそうな同僚に声をかける
・自分の担当外でも、チームに必要なら手伝う
・新しいメンバーが困らないように情報を共有する
・自分だけが得をするより、全体が進む方法を考える
こうした行動は、評価制度上は見えにくいことがあります。しかし、現場では確実にチームの動きを支えています。
誰かがつまずいたときに早めに助ける人がいるだけで、業務の遅れは小さくなる。情報を抱え込まず共有する人がいるだけで、チーム全体の判断は速くなる。小さな気配りの積み重ねが、組織の安定感につながっていくのです。
はやみ|数字に出ない貢献が、実は一番チームを動かしている。利他性が高い人がいるチームは、じわじわ強いはず。
ファセット② 優しさ(共感性)
もう一つ重要なのが優しさ(共感性)です。優しさ(共感性)とは、相手の気持ちや立場を想像し、配慮しながら関わる傾向です。(以降は共感性と略して表記します)「相手に同情する」という意味ではありません。
職場では、相手が何に困っているのか、どこで不安を感じているのか、どのような伝え方なら受け取りやすいのかを考える力として表れます。
同じ指摘をするにしても、共感性の高い人は相手を責める言い方より、改善に向かいやすい伝え方を自然に選びます。
「なぜできないの?」ではなく「どこで詰まっている?」と聞く。
「ちゃんとやって」ではなく「ここだけ一緒に確認しよう」と伝える。
このような関わり方は、心理的安全性を生みます。安心して相談できる関係があると、ミスや違和感が早めに共有され、問題が大きくなる前に対処しやすくなります。
チームで信頼される人は、必ずしも大きなことをしているわけではありません。日々の小さな言葉選びや関わり方の中で、「この人には話しても大丈夫」という感覚を周囲に与えているのです。
はやみ|言葉ひとつで、相手が「話せる」か「話せない」かが変わる。共感性って、チームの空気を決める力だと思います。
研究から見る、調和特性がチームワークに与える影響
チームの成果は、個人の能力の足し算だけで決まるわけではありません。Barrick ら(1998)※は、チームメンバーの能力だけでなく、パーソナリティがチーム内のプロセスやチームの有効性に関係することを検討しています。
※ Barrick, Stewart, Neubert, & Mount(1998)は、チームメンバーの能力やパーソナリティが、チーム内のプロセスやチームの有効性にどのように関係するかを検討した研究です。同研究では、個人の能力だけでなく、メンバー同士の関わり方や性格特性が、チームの働き方や成果に影響する可能性が示されました。チーム編成を考えるうえで、スキルだけでなくパーソナリティにも目を向ける必要があることを示唆しています。
また、Peeters ら(2006)のメタ分析※でも、パーソナリティ特性とチームパフォーマンスの関係が整理されています。
※ Peeters, van Tuijl, Rutte, & Reymen(2006)は、パーソナリティとチームパフォーマンスの関係を整理したメタ分析研究です。メタ分析とは、複数の研究結果を統合し、全体としてどのような傾向があるかを検討する研究方法です。同研究では、個人の性格特性がチーム全体の成果や協働のしやすさに関係することが示され、チームワークを理解するうえでパーソナリティが重要な視点であることが示唆されました。
どれほど優秀な人が集まっていても、互いに協力できなければ成果は出にくくなります。反対に、一人ひとりの能力が突出していなくても、情報共有や助け合いが自然に起こるチームは、安定して成果を出すことがあります。つまり、調和特性の高い人は、チーム内の「関係の摩擦」を減らす役割を担いやすいと考えられます。
・意見が対立したとき、感情的にならず整理する
・発言しにくそうな人に話を振る
・忙しい人に業務が偏っていないか気づく
・チーム内の小さな違和感を早めに拾う
・相手に合わせた伝え方を工夫する
一見すると目立ちにくい行動ですが、チームが継続的に成果を出すうえでは欠かせません。調和特性は、組織の中で「信頼の流れ」をつくる特性ともいえます。

はやみ|チームが「なぜかうまくいく」ときって、たいてい調和特性の高い人が摩擦を拾ってくれてる。見えてないだけで、ちゃんと機能しているんですね。
注意点|調和特性は「都合のよい人」になりやすい
調和特性が高ければそれだけでよい、というわけではありません。

調和特性の高い人は、周囲の状況に気づきやすく、困っている人を放っておけない傾向があります。チームにとっては非常に頼もしい存在です。しかし、その特性が強く出すぎると、本人に負担が集中してしまうことがあります。
・周囲の仕事を引き受けすぎる
・自分の意見より、場の空気を優先してしまう
・本当は困っていても「大丈夫です」と言ってしまう
・対立を避けるために、必要な指摘を控えてしまう
・チームの調整役を任され続け、疲弊してしまう
これは本人の問題というより、組織側が調和特性の高い人に頼りすぎている状態ともいえます。
人事や管理職は、調和特性の高い人を「便利な人」として扱わないことが大切です。その人がどれだけ周囲を支えているかを見える化し、評価する。同時に、負担が偏っていないか、1on1などで定期的に確認する必要があります。
調和特性の高い人ほど、対立や違和感を表に出しにくい場合があります。だからこそ、管理職はもう一歩踏み込んだ問いを投げかけることが重要です。
「最近、誰かのフォローに時間を使いすぎていませんか?」
「本当は言いたいけれど、言えていないことはありますか?」
「チームのために我慢していることはありませんか?」
このような問いによって、本人が抱えている負担や違和感が見えやすくなります。
調和特性は、チームに安心感を生む大切な特性です。それを本人の我慢や自己犠牲にしてしまってはいけない。チーム全体で支え合える仕組みに変えていくことが、人事・マネジメント上の重要な視点になります。
はやみ|「大丈夫です」が口癖の人ほど、実は一番大丈夫じゃないことがある。頼りにするのと、頼りすぎるのは全然違う。
チーム編成では「関係を整える人」を見る
採用や配置では、スキルや経験・成果実績に注目が集まりがちです。しかし、チームで働く職場では「周囲とどう関わるか」も重要な判断材料になります。特に次のような職場では、調和特性の視点が役立ちます。
・複数部署との連携が多い仕事
・新人・若手の育成が必要なチーム
・チーム内の情報共有が成果に直結する仕事
・顧客対応や社内調整が多い仕事
・変化が多く、メンバー同士の支え合いが必要な職場
チーム編成を考える際には、「能力の高い人を集める」だけでなく、関係性を整えられる人がいるかを確認することが大切です。
はやみ|「できる人」を集めるだけじゃチームは機能しない。「整えられる人」がいるかどうかが、実は編成の肝だと思う。
1on1ミーティングでは「遠慮」と「抱え込み」を見逃さない
調和特性の高い人は、周囲から信頼されやすい一方で、自分の困りごとを後回しにしやすい傾向があります。
「大丈夫です」
「私がやっておきます」
「特に問題ありません」
こうした言葉が多い人ほど、実は負担を抱えている場合があります。1on1では表面的な受け答えだけで判断せず、次のような問いを使うとよいでしょう。
・最近、誰かのフォローで時間を使っていることはありますか?
・本当は誰かに頼みたいけれど、頼めていないことはありますか?
・チームの中で、少し気になっていることはありますか?
・自分の業務と周囲のサポートのバランスは取れていますか?
・言いにくいけれど、改善したほうがよいと感じていることはありますか?
ポイントは、本人のやさしさや責任感に頼りすぎないことです。調和特性の高い人がいるから大丈夫、ではなく、その人が無理をしていないかを確認する視点を持つことが大切です。
はやみ|1on1で「問題ありません」って言う人に、もう一問だけ深く聞く。それだけで、見えてくるものがある。
信頼される人は、チームの「見えない成果」をつくっている
調和特性は、成果として数字に表れにくい特性です。しかし、チームの中では確実に機能しています。
相談しやすい空気。助け合える関係。意見を言っても否定されない安心感。誰か一人に負担が偏らないようにする配慮。
こうした「見えない成果」があるからこそ、チームは安定して動くことができます。職場で信頼される人は、特別な言葉で人を引っ張る人だけではありません。周囲をよく見て、相手の立場を考え、チーム全体が前に進むように関わる人です。
人事や管理職に求められるのは、調和特性の高い人を「便利な人」として使うことではありません。その人の関係構築力を正しく評価し、チーム全体で支え合える仕組みをつくること。それが、これからの組織づくりに求められる視点です。
はやみ|信頼って、積み重ねでできてる。その積み重ねを見える化して、ちゃんと評価できる組織が強い。
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はやみ|チームの信頼関係は、感覚だけでつくられるものではありません。一人ひとりの特性を理解し、どのような関わり方をすると力を発揮しやすいのかを知ることで、チームづくりの精度は高まります。
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「この人は、周囲に配慮しすぎていないか」
「このチームは、特定の人に調整役が偏っていないか」
「メンバー同士が、互いの違いを理解して関われているか」
こうした視点を持つことで、調和特性の高い人に頼りきるのではなく、チーム全体で支え合う組織づくりがしやすくなります。
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