HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは?概要と基本を徹底解説

「研修やOJTを充実させているなのに、なぜか従業員のパフォーマンスが向上しない」
「特定の部署でミスが頻発しており、悩んでいる」

 

組織のレベルアップを図るため、人材教育に力を入れている企業も多いです。しかし上記のように、なぜか思ったほどスキルアップの効果が現れていないと感じている人もいるのではないでしょうか?

 

この場合、人材教育以外のところで従業員のパフォーマンスを低下させている要因があります。しかし多くの場合、社員教育の徹底や研修のみで問題を解決しようと試みている企業もあるでしょう。そこでここでは、期待している成果と実際の成果のギャップ(パフォーマンス・ギャップ)を解消する手段として注目されている、「ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント(以下HPI)」について、以下の項目を中心にご紹介します。

 

・HPIがなぜ重要なのか
・パフォーマンス・ギャップはなぜ発生するのか
・HPIを活用したパフォーマンス・ギャップの特定方法

「社員研修をしっかり行っているはずなのに、期待していたほど効果が確認できない」と悩んでいる管理職・マネージャーの方は、ぜひこの機会にHPIについての理解を深めてみましょう。

 

HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)とは?

HPIとは、人間が原因となって発生している、予想と実際の成績の差(パフォーマンス・ギャップ)を解消するためのアプローチ方法です。

 

「仕事を教えても、部下の生産性が上がらない」と悩んだ経験をした人もいるかと思います。HPIは、この「なぜ部下の生産性が上がらないのか(パフォーマンスを低下させている要因は何か)」を明らかにするのが目的です。

 

「部下の生産性が良くない」という問題が発生した場合、多くの上司は叱咤激励を飛ばしたり、OJTや研修を通してスキルアップを促そうとするものです。しかし、思ったほど効果が確認できなかったというケースも決して少なくありません。HPIでは、期待している成果と実際の成果の差のことを「パフォーマンス・ギャップ」と呼びます。ではなぜパフォーマンス・ギャップは発生するのでしょうか?

 

パフォーマンス・ギャップが発生する原因

期待している成果と実際の成果の差(パフォーマンス・ギャップ)はなぜ発生するのか?

 

まずは、パフォーマンス・ギャップが発生する主な要因を見てみましょう。

 

 

実際に仕事をしていると、上記のような問題にぶつかり、モチベーションが下がったりと、仕事のパフォーマンスが低下したりした経験をした人も多いのではないでしょうか?このような問題にぶつかったとき、適切な解決策をとればパフォーマンス・ギャップは解消します。

 

しかしどの要因からパフォーマンス・ギャップが発生しているか正確に把握していないと、問題の解決につながりません。誤った解決策の実施は、従業員のさらなるモチベーション低下や、パフォーマンスの低下に繋がり、退職者を増やしてしまう恐れがあります。パフォーマンス・ギャップの発生原因を正確に把握する方法として、HPIが注目されています。

 

HPIはなぜ重要なのか

HPIを実施する目的は、従業員のパフォーマンスを向上させて仕事効率を上げ、自社の業績を向上させることです。

 

従業員のパフォーマンスを低下させる要因には、スキル不足の他にも業務プロセスの問題やインセンティブ設計の問題など、様々な要因があります。上司や経営者は、パフォーマンス・ギャップの発生原因を突きとめて改善して、従業員の生産性を向上させ、業績改善を目指す必要があります。一方で多くの場合、パフォーマンス・ギャップの発生原因を「スキル不足」「モチベーション不足」と決めつけて、研修やOJTで問題を解決しようと試みるケースも少なくありません。

 

そうすると当然問題は解決せず、さらなるパフォーマンスの低下や従業員の離職、生産性の低下といった悪循環が発生します。このようなケースを防ぐため、「従業員のパフォーマンス・ギャップはなぜ発生するのか」を冷静に見つめ直す必要性が生まれました。

 

これがHPIが重要視されている理由です。ここまで読んで「なら社員研修やOJTは、パフォーマンス・ギャップ解消には役立たないのか」と思っている人もいるでしょう。本当に社員研修は無意味なのか、以下で解説します。

 

なぜ社員研修はパフォーマンス・ギャップを解消しないのか

社員研修やOJTは、パフォーマンス・ギャップの発生要因の1つである「スキル不足」を解決するのに有効な手段です。

 

・入社したばかりで業務知識や商品に対する理解が足りない
・経験不足のため業務のノウハウを知らない

このような要因でパフォーマンス・ギャップが発生している場合、社員研修やOJTはギャップを解消する有効な手段となります。一方で下記のような問題でパフォーマンス・ギャップが発生している場合、社員研修やOJTでは解消できません。

 

・パソコンがフリーズしてばかりで仕事が進まない(社内リソースの問題)
・仕事内容に対して報酬が明らかに安すぎる(インセンティブ設計の問題)
・上司からの指示が曖昧で、どのように行動するべきか混乱している(曖昧な基準およびフィードバック)

しかし現実には、パフォーマンス・ギャップの発生原因を「従業員のスキル不足・モチベーション不足」と信じて疑わず、ギャップが解消しないケースがあります。そこでパフォーマンス・ギャップの発生原因を分析し、正確な改善策を実施する方法として、いまHPIが注目されています。

 

HPIはパフォーマンス・ギャップ解消に有効なアプローチ方法

HPIについて、ここまでの内容をまとめて確認します。

 

以上が、パフォーマンス・ギャップの要因把握と改善方法の立案・実行までできる「HPI」についての説明でした。

 

HPIを活用すれば従業員のパフォーマンスの向上に繋がります。経営者側から見ると生産性の向上が期待できますし、労働者側から見るとパフォーマンス向上によって仕事の成果を実感できるため、モチベーションの向上といった効果が期待できます。

 

ここまで読んで、「さっそくHPIの考え方を仕事に取り込みたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。そこで以下では、HPIの分析方法について具体的にご紹介します。必ずしも高額な投資を必要とせず、サイクルを繰り返し実行すればパフォーマンス・ギャップを大きく解消できるのがHPIの魅力です。この機会にHPIの手法を学び、自社の業績改善や自分が任されている部署の成績向上を目指してみてはいかがでしょうか?

 

HPIの分析方法

パフォーマンス・ギャップを解消するために、HPIでは具体的にどのようなプロセスを経て問題解決を図るのでしょうか。そこで以下では、HPIの分析方法について手順をご紹介します。先に概要を把握したいという人に向けて、まとめを用意しました。

 

 

各工程で具体的に何をすべきなのか、詳しく見てみましょう。

 

ビジネスの分析

パフォーマンス・ギャップを解消する場合、まずは自社のビジネスを分析し、その上で「目指すべき姿や目標」を明確にする必要があります。

 

 

パフォーマンス・ギャップを解消するには、まずは「どのような状態になれば、ギャップが解消された」といえる状態なのか、明確にする必要があります。目指すべきゴールがあやふやだと、どのような改善策を実施しても効果を実感しにくいです。

 

必ず最初に「目指すべき姿」を明確にしてから、解決策を考えましょう。

 

誤った目標設定に注意

「ゴールを設定するなんて簡単だ」と思われがちですが、実際のビジネスでは目標そのものが適切でないケースがあるものです。

 

例えば「従業員があいさつしないから改善したい」と上司やクライアントが考えている場合、あなたは相手が抱えている「本当の課題点」を明確にする必要があります。「あいさつの回数」を問題にしている場合に、詳しくヒアリングすると「退職率が上昇しているから、辞める人を少なくするため、あいさつを活発にして社内の雰囲気を良くしよう」と考えていることが判明しました。

 

よってこの場合の本当の課題は「退職率を低くすること」であって、「あいさつの回数」が問題ではないことが分かりました。このようなケースはよくあるため、ビジネスの分析を行う時は「誤った目標設定」をしないよう注意しましょう。

 

パフォーマンスの分析

「ビジネスの分析」で目指すべきゴールの姿を明確にできたら、次は現時点での実際のパフォーマンスを調査し、どの程度のパフォーマンス・ギャップが生じているか明らかにしましょう。

 

パフォーマンスの分析をするときにまずやるべきことは、成果や業務結果を確認することです。

 

例えば、あるタスクを処理するのに理想の時間を1分とした場合、実際に従業員がタスクをこなすのに3分かかった場合、ここに2分のパフォーマンス・ギャップが存在が分かります。

 

「行動」ではなく「タスク」で分析するべき

パフォーマンス・ギャップを分析するとき、「タスクにかかる時間」の他に「どのような行動をとったか」にも注目しがちです。ただしパフォーマンスの分析では、まず先に「タスク」に注目するべきです。

 

例えば、本来は1分でこなすのが理想の作業に対して、実際は3分の作業時間がかかっていた場合、2分のパフォーマンス・ギャップがあることは、すぐに発見可能です。しかしここで行動にも注目すると、「2分のパフォーマンス・ギャップ」という問題点が見えにくくなり、誤ったデータを収集する原因になります。

 

ただし「行動」にも注目することは重要です。つまり、まずは「タスク」に注目して、そこでパフォーマンス・ギャップが確認された場合は「行動」に注目すると良いでしょう。

 

原因の分析

「原因の分析」では、なぜパフォーマンス・ギャップが発生しているのか、原因を明確にする必要があります。まずは、ギャップが発生する要因について、改めて確認しましょう。

 

理想の作業時間より2分余計に現実の作業時間がかかっている場合、まずは情報収集を徹底して行い、論理的に因果関係を検証する必要があります。

 

原因を従業員のせいにしない

原因の分析を行っていると、「ここでパフォーマンス・ギャップが発生するのは、従業員の仕事ぶりが悪いからだ」と思ってしまいがちです。しかし原因分析で大切なのは「だれが失敗したか」ではなく「なぜ失敗したのか」「どうすれば失敗を未然に防げるのか」という考えを持つことです。

 

「従業員に問題があってパフォーマンス・ギャップが発生している」という考えから一歩踏み込み、「なぜギャップが発生しているのか」という根本原因を探さないと、根本的にパフォーマンスを向上させることは難しいでしょう。

 

手段の選択

「手段の選択」では、複数ある改善案(手段)のうち、何を優先して実行するか選択するプロセスです。実はこの工程は、「ビジネスの分析」や「原因分析」が正確に行われていれば、難しくありません。パフォーマンス・ギャップとその発生原因が正確に把握されていれば、正しい選択肢をとることは難しくないでしょう。

 

例えば単純に従業員がスキル不足の場合はセミナーを実施したり、マネジメント方法の問題であれば業務プロセスを見直したりする必要があります。

 

手段の実施

「手段の実施」では、パフォーマンス・ギャップ改善のための手段を実行する工程です。

 

この工程では、「定量的なゴールの設定」「パフォーマンスを測定するための具体的な指標」を設定しましょう。例えば「作業時間を3分から1分に短縮」することをKGIとして実施する場合、KPIは「決められた手順通りに仕事をこなしているか」「まずは1カ月後に2分まで作業時間を縮まるか」など、中間目標を設定すると良いでしょう。

 

 

結果や成果を評価

手段を実行したら、次は結果や成果を評価する必要があります。ここで注意点ですが、HPIにおける「評価」プロセスは「手段」が実施された時点からスタートします。

 

例えば3分の作業時間を1分まで短縮する場合、初日では「定められたプロセスを守れているか」、途中経過では「KPIを達成できているか」などを評価します。これによって「KGIは達成できそうか」「パフォーマンス・ギャップは改善できそうなのか」を早期に把握可能です。

 

現状の把握

もし手段を実施中もしくは実施後に「パフォーマンス・ギャップを解消できない」となった場合、まずは現状を把握し、あらたにHPIの分析を行う必要があります。

 

評価プロセスを経てパフォーマンス・ギャップの有無を再調査し、もし解消されていない場合は、現状を把握して「ビジネスの分析」まで戻り、問題点を再度検証してみましょう。このサイクルを繰り返すことによってパフォーマンス・ギャップが解消。従業員の生産性向上や業績アップといったメリットが期待できます。

 

まとめ

今回は以下のポイントを中心に、HPI(ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント)について解説しました。

 

・HPIとは、人間が原因となって発生している予想と実際の成績の差
・多くの場合、パフォーマンス・ギャップに対して「教育・研修」で対応している企業が多い
・HPIの分析方法は7つのステップに分けられる

パフォーマンス・ギャップを明確にすれば、問題を洗い出しやすくなります。そのためにも「理想的な状態の設定」を明確に決める事と「現状のパフォーマンスを調査」することが重要です。またHPIを活用する場合は、KGIやKPIといったフレームワークを活用することで、よりギャップ改善の精度を上がります。

 

「期待していた成果がなかなか出てこない」
「研修をしても社員がなかなか成長しない」

 

このようなお悩みを抱えているなら、HPIの考え方にもとづいて、パフォーマンス・ギャップとなっている原因を洗い出してみてはいかがでしょうか?

 

参考文献:『HPIの基本~業績向上に貢献する人材開発のためのヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント~ 』

SHARE