2021年5月5日公開

PDCAサイクルとは?もう古い?メリットや問題点やOODAについて解説

チームの成績を上げるため、PDCAサイクルの導入を考えている人もいるのではないでしょうか?

 

有名な改善手法なので、やり方についてもなんとなく知っている人もいるかと思います。しかし「PDCAサイクルって具体的にどうやるのか忘れた」「そもそも本当にPDCAサイクルって意味があるの?」と悩んでいる人もいるでしょう。そこでここでは、下記の項目を中心に、PDCAサイクルと、それに代わる新しい概念、OODAループについてご紹介します。

 

・PDCAサイクルの手順とメリットおよびデメリット
・OODAループの概念と実行手順
・PDCAサイクルとOODAループ、どちらを利用するべきか

OODAループは、PDCAサイクルに代わる新しい改善手法として注目されているフレームワークです。とはいえPDCAサイクルが有効な場面もまだまだあります。両者の特性や実行手順を把握し、適切に使い分けて、自社の業務効率改善に役立ててみましょう。

 

PDCAサイクルとは

PDCAサイクルとは、品質改善のフレームワークです。

 

「作業効率が悪い」「期待していた成果が得られていない」など、作業手順に課題点が感じられるときにPDCAサイクルを行えば、業務の効率化や成果の向上(成果物の品質アップなど)が期待できます。PDCAサイクルの具体的な実行手順は、以下のとおりです。

 

上記1から4までの手順を繰り返し実行することを「PDCAを回す」とも呼ばれます。次は、PDCAを回す、具体的にどのようなメリットを見ていきましょう。

 

PDCAサイクルのメリット

そもそもなぜPDCAサイクルを導入するべきなのか、詳しく知らない人もいるでしょう。そこで以下では、導入するメリットについてご紹介します。

 

目標や課題が明確になる

PDCAサイクルを導入すると、達成すべき目標や現状の課題点が明確になります。

「チーム全体の大きな目標はあるけれど、個人レベルで目指すべき具体的な目標のイメージが湧かない」
「目標に向かって頑張っているけれど、以前と同じことを繰り返しており成果が変わらない」

このような課題を抱えている現場にPDCAサイクルを導入すれば、具体的な目標設定や業務プロセスの改善を行いやすいです。

 

やるべきことが分かりやすい

PDCAサイクルを導入すると、実行すべき具体的なアクションをイメージしやすくなります。PDCAサイクルを作るときは、数値化できる定量的な目標を活用するものです。よって「数値目標を達成するために、自分は何をするべきか」が具体的にイメージしやすくなります。

 

作業フローを改善しやすい

PDCAサイクルでは必ずAct(改善)を行うため、現状の課題点や問題点を検証し、作業フローを改善します。このため「計画通りに実行した」だけが目的にならず、改善点を提案したり計画を修正したりする機会を設けることで、時間が経過するほど作業フローが効率になるというメリットがあります。

 

PDCAサイクルの例

「PDCAサイクルをどのように実務で活用すべきか」と悩んでいる方へ向けて、簡単な例を挙げてご紹介します。もしあなたが営業部の課長で「営業部の成績を伸ばしたい」と考えていると仮定して、PDCAサイクルを作成してみましょう。

 

1.Plan(計画):具体的に目標を設定する

半年後までに、売り上げを昨年度同月比1.3倍に伸ばす。そのために「1人あたり1日3件ほど新規開拓を行う」「既存取引先との取引を増やす」など、具体的な目標を決める。

 

2.Do(実行):計画を実行する

このとき後ほど業務フローを検証しやすいよう、具体的にいつ何をしたのか日報に残すと良いでしょう。

 

3.Check(評価):計画時に予想していた成果と実行した結果の成果を比較・評価する

事前に「いつ評価を行うか」を決めておくことが大切です。「予想よりも売り上げが伸びなかった」「売り上げ目標は達成したが、製品の出荷が追いつかないなど別の問題が発生した」など、結果を検証します。

 

4.Act(改善):評価した結果を考慮して、改善案をつくる

「新規開拓を1日3件から5件にする」「既存取引先との取引を伸ばす余地があるのか検証する」などの改善案を作ります。

 

1から4のサイクルを繰り返し実行することで、目標達成率の向上や業務効率の改善が期待できます。ただし、PDCAには実は問題点もあります。どのような問題があるのか見てみましょう。

 

PDCAサイクルの問題点とは

PDCAサイクルは実際のビジネスの現場では「使いにくい」「うまく活用できなかった」という声もあります。どのような問題点があるのか見てみましょう。

 

柔軟な発想や対応ができない

PDCAサイクルの問題点は、前例主義になりがちなことです。改善方法を分析する対象が「過去の実行した内容」のため、市場環境や社内環境が大きく変わったときに、柔軟に対応しにくいというデメリットがあります。

 

スピード感がない

Plan、Do、Check、Actの工程を何度も回すのが、PDCAサイクルの手法です。ただし環境が移り変わりやすい現代のビジネス環境において、PDCAサイクルを回す時間がかかりすぎると感じている人もいるでしょう。スピード感をもって市場の変化に対応することが求められる職場・職種では、PDCAサイクル導入はあまり魅力的で無いと考えている人もいます。

 

「PDCAサイクルを回すこと」が目的になりがち

PDCAサイクルは業務効率を改善するために有効な手段ですが、中には「PDCAサイクルを回すこと」が目的になっていることも、少なからずあるようです。

 

「PDCAサイクルを回してさえいれば、なんとかなる」
「PDCAサイクルで決まったこと以外には関心が無い」

工場の作業員ならともかく、営業や総務といったホワイトカラーで上記のマインドを持ってしまうのはリスクです。PDCAサイクルを回す目的は「売り上げを伸ばす」「業務効率を上げる」などのはずです。PDCAを過度に重視する姿勢は、かえって組織の成長を阻害するリスクがあります。

 

サイクルの設定・検証方法が不明瞭

PDCAサイクルは、各サイクルの評価設定や検証方法が不明確になりやすいです。どういうことなのか、具体的に見てみましょう。

 

1.Plan(計画)

目標達成のための具体的な工程を描けていない。個人レベルの行動目標に落とし込めていない。

2.Do(実行)

目標が曖昧な場合、具体的な行動に移りにくい。長期的な目標の場合、短期目標に集中できないリスクがある。

3.Check(評価)

目標が数値化できていない場合、評価基準が人によって変わる。

4.Act(改善)

「よりよい成果をあげよう」という意識が乏しく、多様な視点から考えた改善案を出したり検証したりすることをしない。ある程度の成果で満足してしまう。

 

PDCAサイクルの実行には、具体的な数値目標の設定と多様な視点から考えた改善案の実行が不可欠です。

 

サイクルを回すだけでなく、設定・検証方法にも注意しましょう。メリット・デメリットともにあるPDCAサイクル。最近ではPDCAに代わる新しい業務改善の方法として「OODAループ」という考え方が注目されています。具体的にどのようなものなのか、以下で確認しましょう。

 

PDCAに代わる「OODAループ」とは?

実は最近、PDCAサイクルに代わる新しい業績改善の手法として「OODA(ウーダ)ループ」が注目されています。OODAループとは、より直感的で柔軟に対応できる業績改善の手法です。なぜOODAループが注目されているのか、具体的に何を実行するのかについて、以下でご紹介します。

 

なぜOODAループが求められているのか

OODAループが注目されている主な理由は、PDCAサイクルの抱えている問題点をカバーできる業績改善の手法だからです。

 

PDCAサイクルは、一度計画を作成したら検証するまで改善を行いにくいなど、スピード感がないことが欠点とされています。一方で、OODAループの場合は「仮説→実行→検証」のサイクルが早いため、より柔軟に問題解決に取り組むことが可能です。ビジネス環境が変化しやすい現代では、PDCAサイクルよりもOODAループの方が柔軟に対応できるため、注目が集まっています。

 

OODAループの実行フロー

OODAループは具体的にどのような手順で実行するのでしょうか。以下で詳しくご紹介します。

 

観察(Observe)

観察(Observe)では、業務内容を観察し、問題点や改善点を発見したり、データを集めたりするプロセスです。営業部の場合、部下の仕事ぶりを実際観察したり行動履歴や成果を数値で確認したりすることで、業務プロセスの改善点を発見することなどが挙げられます。PDCAのP(計画)に当たる部分ですが、OODAループでは実際に現場の状況を確認することを重視します。PDCAサイクルがトップダウン型だとすれば、OODAループはボトムアップ型の改善方法といえるでしょう。

 

状況判断(Orient)

状況判断(Orient)では、観察(Observe)で収集した「生のデータ」をもとに、仮説を立ててから具体的な行動プランを考えるプロセスです。

 

「今は想定よりも景気が悪いから、売り上げを伸ばすよりも経費削減を徹底した方が良いかもしれない」
「新人のスキルアップが早いから、売り上げ目標をもう少し高くしても良いかもしれない」

このように「情報を集める⇒仮説を立てる⇒行動プランを考える」ことで、具体的かつ実態に即した計画を立てやすくなります。このとき、行動プランは複数あげても問題ありません。

 

意思決定(Decide)

意思決定(Decide)では、状況判断で挙げたいくつかのプランの中から、どれを実行に移すかを決定するプロセスです。OODAループでは、「仮説をもとに」計画を立てるため、どのアイデアがより本質的で優先度が高いか見極める必要があります。

 

実行(Act)

実行(Act)では、意思決定(Decide)で決めた行動プランを実行します。そしてまた観察(Observe)に戻り、OODAループを繰り返し実行することで業務プロセスの改善をおこないます。

 

PDCAサイクルは意味がないのか

注目が集まっているOODAループですが、ではPDCAサイクルは今から導入するメリットはないのでしょうか。どのような場面でどの改善手法を採用すべきか、見ていきましょう。

 

環境が変わらない状況ではPDCAがおすすめ

工場作業や現場作業など、仕事環境が大きく変わりにくい職場ではPDCAサイクル導入がおすすめです。

 

OODAループの魅力は「短期間で改善サイクルを回しやすい」こと。しかし作業手順や環境が大きく変わりにくい工場などでは、PDCAサイクルの方が作業フローを改善しやすいです。仕事内容にもよるので一概には言えませんが、一般的にブルーカラーの人が多く働く職場では、PDCAサイクルが向いています。

 

営業や経営企画などはOODAループがおすすめ

一方で営業や企画部など、「市場環境の変化に合わせて柔軟に対応する必要がある」仕事では、OODAループがおすすめです。例えば災害や金融危機の発生など、仕事の環境そのものが大きく変わることもあるでしょう。そのときに「仕事を進める上でどのような障害が発生しているか」「既存取引への影響はあるか」などを迅速に調査・分析・計画立案までできるのがOODAループです。変化に合わせつつ柔軟に計画を立案・修正する必要がある場合は、OODAループの導入を考えてみませんか。

 

まとめ

今回は下記のポイントを中心に、PDCAサイクルとOODAループについて解説しました。

 

・業績改善のおすすめ手法は「PDCAサイクル」または「OODAループ」
・PDCAは工場作業など、環境が固定されているときにおすすめ
・OODAループは営業など、環境の変化に柔軟に合わせる必要があるときにおすすめ

工場での不良発生率を低減させたり時間あたりの製品生産量を伸ばしたりする場合には、作業フローを改善しやすいPDCAサイクルがおすすめ。一方で景気変動や業界の構造変化といった環境変化に柔軟に対応する必要がある場合は、OODAループがおすすめです。業務効率化の方法について悩んでいた方は、PDCAサイクルやOODAループを導入してみてはいかがでしょうか?

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