2021年7月27日公開
ロイヤルカスタマーとは?優良顧客との違いや育て方について徹底解説
さまざまなサービスや商品が溢れる現代において、競合のないビジネスというのは考えられないといっても過言ではありません。
競合することで各企業が切磋琢磨し、より上質なサービスや商品が消費者へと届けられることは理解できます。しかし競合の結果、利益を削り顧客を獲得できても、投入した労力に見合わず疲弊してしまうケースもあるでしょう。そのような経験から、以下のような疑問を持っている方も多いかもしれません。
・もう少し効率的にサービスを届けることはできないだろうか?
・どうすれば利益を確保できるだろうか?
そこでこの記事では、下記の項目を中心にロイヤルカスタマーについて解説しま
・ロイヤルカスタマーと優良顧客は何が違うの?
・ロイヤルカスタマーを作れると売り上げは変わる?
・どうすればロイヤルカスタマーを作れるのか?
この記事がサービスや商品を届ける際のヒント、売り上げアップのヒントへとつながれば幸いです。
目次
ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーとは、自社のサービスや商品に対する「忠誠」とも取れるような高い愛着心を持った顧客を指します。つまりロイヤルカスタマーが多いということは、それだけ自社のサービスや商品が好きな顧客が多いといえます。
というのも、「繰り返し商品を購入する」「自社のサービスを人にすすめる」といった行動を取ってくれる顧客が多いため、他社との競合が生じにくくなるからです。
単なる優良顧客との違い
ロイヤルカスタマーと優良顧客の一番の違いは、その動機です。
優良顧客は確かに、自社の製品を買い続けたり、単価の高い商品を購入してくれたりと、企業に対して支払っている金額が多いため「優良」な顧客として扱われます。
しかし優良顧客の定義に、「サービスを利用する理由」は含まれません。端的に、どれだけお金を使ってくれているかが重視されます。
好きで自ら進んで買ってくれる顧客と、感情面は関係なく必要だから買い続けている顧客は、購入金額やリピート率が高いのであればどちらも優良顧客です。
上記の表の通り、ロイヤルカスタマーと優良顧客との動機の違いは「必要性で選んでいるかどうか」という点です。ロイヤルカスタマーは、必需品であろうとなかろうと関係なく、この商品が好き、このブランドが好きという、ほかと比較できない絶対的な価値観に基づいて選んでいます。
ロイヤルカスタマーがもたらすものとは
ロイヤルカスタマーは、自社のサービスや商品に、発展や成長をもたらしてくれます。
他者へ自ら拡散してくれる可能性があるだけでなく、そのサービスや商品自体の愛好家でもあるので、自分たちがより快適に活用できるよう、時には改善案まで提案してくれます。建設的な意見やクレームは、単発的な売り上げよりも価値があるといえるでしょう。
これらの行動に共通しているのは、顧客が自分の意思で好んで行っているという点です。ロイヤルカスタマーは単に売り上げをもたらすだけでなく、自社のサービスや商品の信頼性をも高めてくれています。
ロイヤルカスタマーの定義
ロイヤルカスタマーの定義に必要なのは、以下の2つです。いくら自社の製品を好きでいてくれたとしても、具体的なアクションがないようでは、ロイヤルカスタマーとはいえません。
・良い意味で商品のリピーターである
・他者に紹介してくれる
購買行動につながるこのようなアクションがあるかどうかを把握しましょう。
良い意味で商品のリピーターである
「良い意味」のリピーターというのがポイントです。
悪い意味でのリピーターは、リピートしている理由が非常に薄く、主に機能面、利便性、価格面といった、「誰が提供している」という要素に関係なく買い続けています。
具体例
・長期契約という縛りがあるため、やめたくてもやめられない
・解約条件、行動が面倒でやめていないだけ
・支払い続けるコストが安く、利用者本人も気づかずに払い続けているだけ
このような顧客でも、表面上はリピーターとして購入を続けてくれています。ですが、ちょっとしたきっかけで即終了してしまう危うさがあります。それだけでなく「やめたいのにやめられなかった」という感情を持たれてしまうと、他者にすすめるどころか、検討している人を止めてしまうでしょう。
良い意味でのリピーターというのは、ロイヤルカスタマーとして定義する上で外せない要素です。
他者に紹介してくれる
自らが利用者として他者へすすめてくれる活動は、次のロイヤルカスタマーとなる可能性が高い新規顧客を作り出すきっかけとなります。ロイヤルカスタマーが次のロイヤルカスタマーを育ててくれるのです。
掛け値なしの評価、レビューによる宣伝は、自社のスタッフにはできない宣伝手法です。顧客が自らの意思で紹介してくれる活動と、紹介料〇〇円といった理由から紹介されるのとでは、紹介された側の意思決定に与える影響は大きく異なるでしょう。
真のロイヤルカスタマーとは
真のロイヤルカスタマーとは、自社に対する愛着や信頼を持った上で購買量が多く、次のロイヤルカスタマーになりえる顧客を作り出してくれる存在です。
すべてのサービス提供者にとって、ロイヤルカスタマーが重要であることはいうまでもないでしょう。
そしてその価値は、これから人口減少の影響を受ける市場が多い中、さらに増していくと考えられます。ロイヤルカスタマーの創出と、自社のロイヤルカスタマーであり続けてもらうための満足度向上が、今後も自社が生き残る上での鍵となるでしょう。
ロイヤルカスタマーの判断指標
真のロイヤルカスタマーと見抜く上では、自社への愛着度や忠誠度が可視化されなければ判断が難しいでしょう。ここでは、そのために役に立つ指標を解説します。
・NPS
・CRMとCEM
・RFM
・LTV
これらの指標を、自社の状況に合わせて使い分けるといいでしょう。
NPS
NPSとはNet Promoter Scoreの略称です。顧客が企業に対して抱いている信頼度や愛着度がどれほどあるのかを判断する指標として、多くの企業で採用されています。
NPSは下記の流れで算出します。
・回答者に、自社のサービスや商品について、友人や同僚にすすめる可能性があるかどうかを0~10点で評価してもらう
・回答を下記の3つに分類する
11段階で評価された属性を批判者、中立者、推奨者に分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPS値です。
CRM・CEM
CRM(Customer Relationship Management)とCEM(Customer Experience Management)は、主にロイヤルカスタマーの育成方法として活用されています。この「育成」とは、一般顧客をロイヤルカスタマーに育て上げていくという意味です。
CRMは購買データから顧客を分析し、データに基づいたアプローチを仕掛け、CEMは顧客の「体験」に焦点をあて、他社よりも良い体験をさせることで差別化を図ります。
CRMの分かりやすい例としては、ネットショップでよく見るレコメンドやオススメ商品の表示、ダイレクトメールなどが挙げられます。
CEMでは、百貨店やモールのような大型商業施設にある、休憩スペースの作り方を工夫した例があります。奥まった場所にある休憩スペースには自動販売機を置き、買い物に疲れた顧客がゆっくりと休める場所を作ったことで「良い体験」が生まれ、結果的に来店数や売り上げの増加につながっています。
このような顧客を育成する方法を用いて、自社にどれだけロイヤルカスタマーがいるかを知るための指標とすることが可能です。
RFM
RFMとはRecency Frequency Monetaryの略で、最終購入日、購入頻度、購入額という3つの軸で顧客を分析します。
顧客のグループ化によく用いられる方法で、3つの要素にランクやスコアをつけ、その組み合わせによって仕分けます。
例えば、最終購入日の数値は低いが、購入頻度と購入額が高いという結果だと、過去には優良顧客だった可能性があります。なぜそうなったのかを突き詰めていくことで、ロイヤルカスタマーを見つけるヒントになるでしょう。
LTV
LTVとはLife Time Valueの略で、生涯顧客価値ともいいます。一人の顧客がどの程度の利益をもたらしたかを測る指標です。
LTVが高いほど顧客のロイヤリティが高いと見られ、ロイヤルカスタマーである可能性が高くなりますが、LTVのみではNPSのような信頼度や愛着心を図ることはできません。
したがって、LTVが高い=ロイヤルカスタマーと断定してしまうと、前述した「悪い意味でのリピーター」である可能性が残ってしまいます。
ロイヤルカスタマーを創出するためには?
ロイヤルカスタマーを作るために大切なことは、以下の4つだと考えられます。
・ロイヤルカスタマー像の設定
・顧客分析を行う
・コミュニケーション・接点の作り方
・カスタマーエクスペリエンスを高める
順番に解説していきます
ロイヤルカスタマー像の設定
まずは自社にとってのロイヤルカスタマー像を明確にしましょう。
自社の商品・サービスをリピートしてくれることと、他人にも紹介してくれることがロイヤルカスタマーの定義として大切だと述べてきました。
例えば顧客がリピートした回数や期間で判断するなど、ある一定の基準を満たしたらロイヤルカスタマーとして見るといった、具体的な「像」を作るところから始めましょう。
顧客分析を行う
明確な像や基準が決まったら、分析が必要です。接触した顧客がどういった理由で訪れたのか、どんな商品を買ったのか、いくら分の買い物をしたのかなど、直観ではなくデータをもとに現状を正しく理解しましょう。
分析は、NPSやLTVによる手法や概念を用いて行います。分析する上では「客観性」が重視されますが、ロイヤルカスタマーかどうかを判断するには、忠誠心や愛着心といった顧客の主観が必要です。その点は気をつけましょう。
そしてロイヤリティを把握するために蓄積されていくデータは、その場だけでなく、その後も役に立つ貴重な資産となります。
コミュニケーション・接点の取り方
数値から見えてくるものは、現状を正しく知るために重要な情報です。数値から傾向が見えてくるので、PDCAを回しながら実際の接点作りに役立てましょう。
そして、ロイヤルカスタマーを育てるために必要な接点の作り方、適切なコミュニケーションの取り方を考えます。SNSの活用は必須ではなく、コミュニケーションを図る手段の一つに過ぎません。なぜそれが必要なのかという点が重要です。
顧客とどうやってつながるのかという点は、分析した数値をもとに検証を繰り返し、ロイヤルカスタマーを作るために必要だと思うアクションを実行し続けていきましょう。
カスタマーエクスペリエンスを高める
カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)はCXとも表現され、顧客体験価値と訳されます。その名の通り、顧客が体験したことを数値化し評価するものです。
顧客が自分の想像を超える良い体験をすれば数値は高まるので、いかにして顧客に良質な体験をさせるかが重要といえます。
顧客のカスタマーエクスペリエンスを把握するために重宝するのが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客が満足度を感じる一連の流れを把握できます。すべてのやり取りを総合的に評価することで、自社への信頼や愛着心を高める結果につながります。
ロイヤルカスタマーを作ったスターバックスコーヒーの事例
ロイヤルカスタマーを作るために必要な魅力的なカスタマーエクスペリエンスとして、スターバックスコーヒーの事例を紹介します。魅力的な体験を実現するためにスターバックスコーヒーがしているのは、利便性の向上です。
スターバックスコーヒーでは、専用のスマホアプリによって、注文から決済までできるサービスを提供しています。ただ単に注文できるだけではなく、甘さ、ミルクの種類、濃さなどの細かいカスタマイズにも対応し、それぞれの顧客のニーズに応えているのです。
利便性に加えて、アプリから購入するとスターがたまるという楽しめる要素も作っています。スターがたまることで、限定プレゼントや割引が手に入ったり、新商品の先行購入ができたりという施策を実施しています。
使いやすく、そして買い続けることで顧客にメリットが生まれる仕組みがあるからこそ、スターバックスコーヒーは多くのロイヤルカスタマーを獲得し、今に至るのです。
米国でも日本でも、コーヒーを飲むことは多くの人にとって日常的な活動です。スターバックスコーヒーはその日常的な活動を、より満足感のあるものへと変えていきました。
ロイヤルカスタマーを作る意味
今後人口が減少していくとされている中では、ロイヤルカスタマーを作る意味は大きいといえるでしょう。
ロイヤルカスタマーと似た表現として、「ファン」があります。「これからは企業のファンを作ることが重要だ」といわれると、ロイヤルカスタマーを作れといわれるよりも、直観的でわかりやすいかもしれません。
サービスや商品を繰り返し購入してくれるファンをしっかり作るために必要なのは、顧客への届け方に対するこだわりです。ロイヤルカスタマーやファンを作ることを意識しないと、どの業界でもサービス提供者が生き残っていくのはますます厳しくなるでしょう。
まとめ
ロイヤルカスタマーの概要や、作るために必要な考え方から具体例まで解説しました。
誰でもいいというサービスではなく、この会社、この人から欲しいと思えるような価値を作ることが、最終的な自社の売り上げへとつながっていくのは間違いありません。
単なる値引きなどではなく、顧客の心をしっかりとつかむための施策を考えて、ロイヤルカスタマーを増やしていきましょう。