2022年9月9日公開
顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違いから測定方法や高め方のポイントまで紹介
マーケティングの分野では、顧客が特定の企業やブランドに対して感じている信頼や愛着のことを「顧客ロイヤルティ」といいます。自社やブランド、商品やサービスなどに対して信頼や愛着を感じてくれている顧客は、企業にとって重要な存在です。そのため多くの企業では顧客のロイヤルティを高めるために、色々な施策を行っているのではないでしょうか?そこで今回は、下記の項目を中心に顧客ロイヤルティについて解説します。
・顧客ロイヤルティの意味と顧客満足度との違い
・顧客ロイヤルティを高める4つのメリット
・顧客ロイヤルティを高めるため3つのステップ
・顧客ロイヤルティを高めるための3つのポイント
まずは、顧客ロイヤルティの意味と顧客満足度との違いについて確認しましょう。
顧客ロイヤルティとは
「ロイヤルティ(Loyalty)」を日本語に訳すと、忠誠、忠義、忠実、誠実、愛情、愛着などの意味になります。そこから派生し、マーケティングでは、顧客が特定の企業やブランドに対して感じている信頼や愛着などを指します。
心理ロイヤルティと行動ロイヤルティ
ロイヤルティには、心理面と行動面の二つの側面があります。
心理ロイヤルティは、企業やブランド、商品やサービスに対して愛着や信頼感を持っている状態です。その一方で行動ロイヤルティは、商品やサービスをリピート購入する行動を指します。
行動ロイヤルティが高い顧客が、必ずしも商品やサービスに対して愛着や信頼感を持っているとは限りません。それゆえ顧客ロイヤルティを高める施策を実施する際には、顧客をセグメント化する必要があります。
顧客ロイヤルティの4つの段階
心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの2軸によって、顧客ロイヤルティの段階を把握できます。
真のロイヤルティ
心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方が高い状態です。企業にとって最も大切にすべき顧客です。つまり、信頼や愛着といったポジティブな感情を持ちながら商品やサービスをリピートするだけでなく、ほかの人にも紹介してくれる状態です。
見せかけのロイヤルティ
心理ロイヤルティが低く、行動ロイヤルティが高い状態です。リピート購入してくれるなどロイヤルティの高い行動が見られるものの、信頼や愛着といった特別な感情を持っていない状態です。
例えば、通勤途中にあるからその店で購入するというように、特別な思い入れがありません。だからこそ、通勤経路が変わってしまうと利用しなくなるというように、状況の変化によって行動が左右されます。
そのためこの段階の顧客に対しては、心理ロイヤルティに対してのアプローチが必要になります。
潜在的なロイヤルティ
心理ロイヤルティが高く、行動ロイヤルティが低い状態です。企業やブランド、商品やサービスに対して好意的な感情を持っているが、何かしらの理由から行動を起こしていない状態を指します。
具体的には、いつか欲しいと思っているが高額すぎて購入できない状態です。そのためこの段階の顧客に対しては、購入を促すようなアプローチが必要になります。
ロイヤルティなし
心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方が低い状態です。企業やブランド、商品やサービスに対して興味や関心がない、もしくは認知していない段階です。この段階の顧客に対しては、心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方からアプローチを行います。
顧客満足度との違い
顧客ロイヤルティと混同されやすいのが、「顧客満足度」です。顧客満足度とは、商品やサービス、キャンペーン、アフターフォローといった施策に対する満足度を指します。
顧客ロイヤルティが商品やサービスを含めた全体に対する評価なら、顧客満足度は商品だけ、価格設定だけというように、一部に対する評価です。
このように評価対象が異なるため、顧客満足度が高いからといって、顧客ロイヤルティが高いとは限りません。
上記のように、顧客ロイヤルティが高く、顧客満足度が低いケースも考えられるため、別途調査が必要です。
顧客ロイヤルティを高める4つのメリット
顧客ロイヤルティを高めることによるメリットは4つです。
リピート率の向上
顧客ロイヤルティが高い顧客は、企業やブランド、商品やサービスに対して愛着や信頼感をを持っています。
仮に競合他社の商品やサービスが値下げやキャンペーンを行ったとしても、価格やスペックなどが理由ではなく、愛着や信頼感から自社の商品やサービスを選んでいるため、他社に乗り換える可能性はほぼないでしょう。このように価格競争に巻き込まれることなく、自社を選び続けてもらえます。つまり顧客ロイヤルティを高めることは、リピート率の向上につながるのです。
顧客単価の向上
ロイヤルティが高い顧客に対しては、アップセルやクロスセルが成功しやすいといえます。アップセルは、既存顧客に対して上位商品やサービスを提案する手法で、クロスセルは、購入時に関連商品やサービスを提案する手法です。
具体的には、パソコンを購入する顧客に対して、上位モデルを提案するのがアップセル、マウスやパソコンのメンテナンスサービスなどの関連商品も提案するのがクロスセルです。
すでに企業やブランド、商品やサービスに対して愛着や信頼感があるため、アップセルやクロスセルが上手くいきやすいでしょう。つまり、顧客ロイヤルティを高めることには、顧客単価が向上するというメリットがあります。
解約率の低下
ロイヤルティが高い顧客は、商品やサービスの継続率が高い傾向があります。「NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2021【動画サービス】」によれば、推奨度(自社製品・サービスの他者への推薦度合い)が高いほど、継続利用の意向も高いことが分かりました。
引用元:NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2021【動画サービス】
また、「NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2022【生命保険】」によれば、動画サービスと同じく生命保険においても、推奨度が高いほど継続利用の意向も高いことが分かりました。
引用元:NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2022【生命保険】
このように商品やサービスの価格帯に関係なく、推奨度が高い=ロイヤルティが高い顧客は、解約せずに長く利用し続けてくれます。そのため顧客ロイヤルティを高めることにより、解約率の低下が期待できます。
口コミや紹介の増加
ロイヤルティが高い顧客は、友人や知人に商品やサービスを口コミしてくれる傾向が高いとされています。「NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2021【通販化粧品部門】」によれば、「推奨者」の肯定的な口コミは平均1.7件と、批判者の約5倍の発信量でした。
引用元:NTTコムオンラインNPSベンチマーク調査2021【通販化粧品部門】
このように、ロイヤルティが高い顧客が増えるほど、自社に関する口コミや紹介が増えると予測できます。
顧客ロイヤルティを高めるため3つのステップ
企業にとって、ロイヤルティの高い顧客を増やしていくことは、収益アップにつながります。ここでは、ロイヤルティを高める施策を行う際の3つのステップを解説します。
ステップ1:現状を把握する
まずは、顧客ロイヤルティの現状を把握することから始めます。顧客ロイヤルティを把握する方法は、主観的感情を計測する指標と客観的行動を計測する指標の2つに大別できます。
顧客ロイヤルティを計測する主な方法は下記の通りです。
NPS(ネット・リピーター・スコア)
NPSとは「ネット・プロモーター・スコア」のことで、顧客ロイヤルティを計測する代表的な方法です。まずは下記の質問に対して、11段階で回答してもらいます。
そして回答結果を点数によって、下記の3つに分類します。
「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引くことで、NPSスコアを算出します。
NRS(ネット・リピーター・スコア)
NRSとは「ネット・リピーター・スコア」のことで、下記の質問をし、回答者に継続的に利用したいかどうかを5段階で回答してもらいます。
選択肢
5.積極的に継続利用していきたい
4.今と同じ程度に継続していきたい
3.その時になってみないと分からない
2.できれば継続したくない
1.絶対継続したくない
NRSスコアは、リピーター(5もしくは4と回答した人)から、離反リスク者(3、2もしくは1と回答した人)引いた数値です。このようにNRSは、顧客の継続利用意向を把握するのに最適な方法です。
CES(カスタマー・エフォート・スコア)
CESとは「カスタマー・エフォート・スコア」のことで、顧客努力指標(顧客が購入・利用など目的を達成するのに要した「手間」や「労力」を測定する指標)を指します。
CESを把握することで、顧客が商品やサービスを利用する際に、どの程度ストレスや手間を感じているのかを計測します。CESは、負担感やストレスなどの言葉が入った質問に対して、7段階もしくは11段階で回答してもらうことで測定できます。
「サービスを利用するときにはどれくらいストレスを感じましたか?」
「サービスを利用するときに負担感がありましたか?」
CESによって、顧客ロイヤルティを高めるために、何を改善すべきかを把握できます。
LTV(ライフタイムバリュー)
LTVは「ライフタイムバリュー」のことで、顧客生涯価値を意味します。
LTVとは、ある顧客が取引を開始してから終えるまでの間に、その企業にもたらした利益の総額です。LTVは下記の計算方法で算出できます。
このようにLTVは、購入単価・頻度・回数など顧客の行動から算出するため、客観的行動を計測する指標に該当します。
顧客ロイヤルティを高める目的は、真のロイヤルティを増やすことです。ただし客観的行動を計測する指標だけだと、真のロイヤルティと見せかけのロイヤルティを見極められないため注意が必要です。
ステップ2:ターゲットと目標を決める
心理ロイヤルティと行動的ロイヤルティを高めるためのアプローチ方法は異なります。また、真のロイヤルティを維持するためのアプローチも異なるでしょう。まずは、以下のように心理ロイヤルティと行動的ロイヤルティの2軸でセグメント化していきます。
施策を実施する前に、調査結果を元にターゲットと目標を決めます。ただし顧客ロイヤルティを高める目的は収益アップです。そのため、まずは低コストで、高い収益アップが期待できる対象を、ターゲットとして設定するといいでしょう。
また、施策の成果が出ているかを把握するために、定量的な目標を設定してください。
ステップ3:施策を計画し、実施
施策を計画し、実施する際には、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」を意識するといいでしょう。
カスタマーエクスペリエンスとは、顧客体験価値のことで、顧客が商品やサービスを知り興味を持ってから、購入後にアフターフォローを受けるまでの全ての体験を指します。
自社と顧客との接触機会を洗い出し、ロイヤルティを高めるのに効果的なカスタマーエクスペリエンスを設計します。カスタマーエクスペリエンスのそれぞれのプロセスの中で、最も顧客ロイヤルティに影響を与えるのが購買直後です。
購入直後の記憶は、最も顧客の印象に残りやすいと考えられています。どこから手をつけていいのか判断できない場合は、購買直後の顧客に対する施策から検討するといいでしょう。
顧客ロイヤルティを高めるための3つのポイント
ここでは顧客ロイヤルティを高める際の3つのポイントを解説します。
自社について発信する
自社や商品、サービスに対する想いやストーリーを積極的に発信することで、自社のファンになってくれる顧客が集まりやすくなります。そのためまずは、コーポレートサイトで企業理念やパーパスを、自社のECサイト内で商品開発の過程や思いを発信することから始めるといいでしょう。
またSNSの公式アカウントを作成し、顧客と直接コミュニケーションを取りながら、自社について発信するのも効果的です。
数値化し定量評価する
全ての顧客に対して同じ施策を打っても、必ず成果が出るとは限りません。顧客の状況に合わせて施策を実施することで、ロイヤルティの向上が期待できます。
だからこそ施策を実施する際には、顧客ロイヤルティを数値化し、セグメント化した上で、それぞれのセグメントごとに施策を行う必要があります。また、施策の成果が出ているか把握するためにも、数値化と定量評価が欠かせません。
このような理由から、顧客ロイヤルティを数値化することと、その仕組みを作ることが重要だといえるでしょう。
顧客情報を管理する
顧客情報を管理することも、顧客ロイヤルティを高めるポイントです。顧客情報は営業部、マーケティング部というように複数の部署で別々に管理されている恐れがあります。そのためまずは、自社が所有する全ての顧客情報や分析結果を一元化し、どの部署でも閲覧、検索できるようにしておきましょう。
こうすることで、顧客の状況の把握が容易になるだけでなく、業務の属人化も防止できます。顧客情報の管理は、情報量が多くなればなるほど手作業での管理が困難になります。そのためMAツールやCRMツールなど、顧客管理システムを活用するといいでしょう。
まとめ
今回は、下記の項目を中心に顧客ロイヤルティについて解説しました。
・顧客ロイヤルティの意味と顧客満足度との違い
・顧客ロイヤルティを高める4つのメリット
・顧客ロイヤルティを高めるため3つのステップ
・顧客ロイヤルティを高めるための3つのポイント
顧客ロイヤルティを高めることは、自社の売上や業績に直結します。だからこそ、自社やブランド、商品、サービスなどに対して信頼や愛着を感じてもらう施策は、ますます重要になってくるでしょう。
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