2020年10月29日公開

傾聴とは?プロが教える仕事で活きる傾聴力!ビジネスで効果を出す方法

「すぐに仕事に活かせる傾聴の基本を知りたい」
「傾聴の仕方を身につけて部下の信頼を得たい」

 

このような悩みを持っている方も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、下記の項目を中心に傾聴について解説します。

 

・傾聴とは

・ビジネスシーンにおける傾聴の2つの効果

・傾聴の実施方法と注意点

仕事で活かせる傾聴力を身につけられるよう、傾聴の基本について詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

傾聴とは

傾聴というと、耳を傾ける、じっくり聴くというイメージを持つ方も多いかもしれません。しかしながら、 傾聴とは、相手の話を積極的に聴くコミュニケーション技法です。英語では、「アクティブ・リスニング」と呼ばれます。

 

傾聴を意識しない会話では、アドバイスばかりしてしまい、ほとんど自分ばかりが話していたという結果になるケースが多々あります。

  

積極的に聴くことを意識して会話すると、話の内容をよく理解でき、相手も「聴いてもらった」という満足感を得られます。

 

また、聴くのは相手の発する言葉だけではありません。相手の表情やしぐさなど、非言語的な部分にも注意しながら聴きます。

 

つまり傾聴とは、自分が話すよりも相手に話してもらう時間が多く、相手が気持ちよく話せるような聴き方のことを指します。

 

傾聴の目的

傾聴の目的は、相手と気持ちを通じ合わせ、信頼関係を築くことです。

 

傾聴を用いて話を聴くと、相手は「この人は自分を理解してくれている」と感じます。それがお互いの信頼関係につながるのです。

 

人事・労務分野の情報プラットフォーム「日本の人事部」が実施した調査によれば、1on1成功の鍵は上司の傾聴力と回答した人が、4割を超える結果となりました。

 

引用元:日本の人事部 『1on1の導入割合は4割超。上司の傾聴力が成功の鍵に』

 

この調査からも、上司が部下を理解し、的確な指示を出したり部下の成長を促したりするためには、傾聴力がとても重要だと推測できます。

 

ビジネスシーンにおける傾聴の2つ効果

近年IT化が進み、テレワークが導入されるなど、同じ会社に勤めていても異なる場所で仕事をする働き方が社会全体に浸透してきています。その中で、個々のメンバーのコミュニケーション能力を高めることで組織力を強化しようという動きが、見られるようになってきました。

 

このような理由から、コミュニケーション技法の1つとして傾聴の重要性が注目されています。ビジネスシーンにおける傾聴の効果は、大きく分けて以下の2つがあります。

 

・仕事がスムーズに進む
・離職者が減り人材確保につながる

 

それぞれについて詳しく解説します。

 

仕事がスムーズに進む

傾聴を習得することで、仕事がスムーズに進む効果を期待できます。

 

相手の話を積極的に聴くことで得られる情報量が増え、より適切な判断ができます。

 

なんとなく話を聞いたり、自分ばかりが話してしまうと、後で振り返った時や誰かに内容を聞かれた時に、必要な情報が不足しているケースが多々あります。

 

一方で、相手の話を積極的に聴くことで、得られる情報量が増えより良い判断ができるようになるでしょう。

 

相手の話を積極的に聴くことで、相手に対する情報量が増えるので、相手の気持ちや考えに対する理解が深まります。

 

これらの理由から、傾聴には仕事がスムーズに進むようになるだけでなく、相手の気持ちや考えを理解できるようになるという効果があります。

 

離職者が減り人材確保につながる

傾聴を活用することで、離職者が減り人材確保につながるという効果があります。

 

上司に傾聴スキルがあると、部下はしっかり話を聴いてもらえるので、もっと話したくなるでしょう。その結果、部下の安心感の醸成につながります。

 

また、部下は「上司が自分を理解してくれる」と感じると、部下の承認欲求が満たされ、仕事へのモチベーションの向上が期待できます。

 

つまり、傾聴できる上司がいるチームなら、部下は活き活きと働けるでしょう。それだけでなく、コミュニケーションが活性化することで、職場全体に活気が生まれます。

 

このように、安心感、モチベーション向上、職場の活性化により、離職者減少・人材確保につながります。

 

傾聴の実施方法と注意点

傾聴の具体的な実施方法について解説します。

 

傾聴の基本的姿勢は「受容・共感・自己一致」

傾聴の基本姿勢は下記の3つです。

 

・受容

・共感

・自己一致

 

受容とは、相手に興味・関心を持って、肯定的な態度で聴くことを指します。

 

皆さんが会話する時に、相手が自分に興味がなく否定的な態度だった場合、あなたは話したいと思えるでしょうか?

 

つまり受容により、相手は「この人なら話を聴いてくれそう」と思い、それが信頼関係構築の第一歩になります。

 

共感とは、聴く側が相手の体験を共有し、もし自分が相手の立場だったら同じような感情や思考を体験するだろうという考えで話を聴くことを指します。

 

同感と共感は同じだと考えている方も多いかもしれませんが、同感と共感は別物です。

 

同感は、相手と自分が同じ意見である状態を指します。共感は、相手の気持ちを体験し共有することです。

 

例えば「私は殺したいほど憎い人がいる」と言われた時に、「私も同じ意見だよ」と伝えるのが同感で、「そんなに憎いと思う人がいるんだね、苦しいね」と伝えるのが共感です。つまり、共感なら相手と同じ意見でなくても、話を聴くことができます。

 

自己一致とは、相手の話を聴きながら、自分の気持ちや感情も理解しながら聴く姿勢を指します。身構えることなく、自然体で素直に誠実に話を聴くことです。

 

もしくは、自分の斜め上にもう一人の自分がいて第三者のように俯瞰して、自分を見ている状態と言い換えることもできます。

 

このように、受容・共感・自己一致を基本姿勢として話を聴くのが、傾聴の基本です。 

 

傾聴の具体的な方法

傾聴においては、本人に考えさせ、気づきを促すことがとても重要です。そのため傾聴では、本人に考えさせ内省を深められるような聴き方をします。

 

具体的には、オープンクエスチョン(開かれた質問)を上手に活用するといいでしょう。オープンクエスチョンとは、以下のような回答に制約を設けないタイプの質問を指します。

 

【オープンクエスチョンの具体例】

もう少し詳しく状況を聴かせてほしい

具体的にどう楽しかったの?

 

このように、相手が自由に話せるような問いかけをすることで、自然に考えるように促せます。「なぜ、どうして」と答えを求める聴き方ではなく、「どう思っているか」と聴くことで、より自由に考えられるように促すといいでしょう。

さらに、傾聴では相手の話をさえぎらずに聴き、自分の興味や関心に基づいた質問はしません。

 

相手が話し終わらないうちに自分が話しだしてしまうと、相手は話をさえぎられた、最後まで聴いてもらえなかったと感じるだけでなく、気づきの妨げになります。

 

また、話の本質に関係のない自分が興味・関心のあるポイントについてだけ質問するのも、会話の流れを聴き手が変えてしまう行為です。

 

このように、相手が自由に話せる質問方法や、会話をさえぎらない聴き方をすることで、本人に考えさせ、気づきを促す結果につながります。

 

リフレクション(言い返し)を行う

リフレクション(言い返し)は、傾聴でよく使う技法で、相手の言葉をそのまま伝え返したり、話の途中で要点をまとめたり、感情に関する言葉を拾ったりする手法を指します。

 

リフレクションを取り入れながら聴くと、会話が相手主体で進んでいきます。また、相手によっては、リフレクションだけで内省が十分に深まり、自分なりの答えが出る場合もあります。

 

聞き手にとっても、リフレクションは、話を理解する上でとても重要です。

 

相手の話を遮らずに聴いていると、相手が自分のペースでどんどん話を進めてしまう場合があります。このような時に、感情に関する言葉を聞き流してしまうと、その感情の裏にある考えや価値観に、本人も気づかないままになる可能性があります。

 

相手の話や感情がわからないまま話がどんどん進んでいく場合や、内容が理解できず一旦話を整理した場合には、リフレクションを使うといいでしょう。具体的には、下記のように伝えるといいでしょう。 

 

「ここまでの話って、◯◯◯ということで合ってるかな?」
「イライラしたというのを、もう少し詳しく聴かせてくれるかな」

この際、聴き手の解釈が間違っていてもいいので、必ず確認することが大切です。

間違っていれば、相手は訂正したり言い換えたりしてくれるので、聴き手が話の内容を理解しないまま話が進んでしまう事態を防げます。

このように、傾聴ではリフレクションを使いながら話を聴いていきます。

 

傾聴する際の注意点

傾聴する際の注意点は、下記の3つです。

 

・質問を繰り返さない

・聴き手が勝手に話題を変えない

・アドバイスや意見をしない

 

それぞれについて解説します。

 

質問を繰り返さない

適度な質問は必要ですが、質問ばかり繰り返さないようにします。

 

聴き手が質問ばかりしてしまうと、相手は「質問に答えなくては」と考え、質問に答えることに注力します。それでは傾聴になりません。なにを話すかは相手が決めることです。

 

もっと詳しく話してもらうことで相手に気づきを与えたい、という意図を聴き手が持っている場合は、下記のように質問するといいでしょう。

 

「あなたはその時どう感じたの?」

 

傾聴を行う場合には、決して質問攻めにならないよう注意しましょう。 

 

聴き手が勝手に話題を変えない

話題を変える主導権は、話し手側にあります。そのため、話し手は自分の意思で話題を自由に決められますが、聞き手が勝手に話題を変えないようにしましょう。

 

相手がまだ話しているのに別の話題を振ったり、話がそれるような質問をすると、話の流れが変わってしまいます。勝手に話を変えられると、話し手側は話を遮られたと感じ、話す気を失ってしまう恐れがあるのです。

 

このような事態を避けるためにも、聴き手が勝手に話題を変えないようにしましょう。 

 

アドバイスや意見をしない

傾聴においては、相手から「どうしたらいいと思いますか?」などと聞かれても、求められるままにアドバイスや意見を伝えるのは避けます。

 

例えば、上司と部下で話していると、「どうしたらいいと思いますか?」「◎◎課長ならどうしますか?」といった、助言や回答を求める質問をされるかもしれません。

 

そこで助言や回答をしてしまうと、自分で考え、気づきを得る機会を失ってしまいます。だからこそ傾聴では、相手が答えを求めていても、まずは相手に考えてもらう、気づきを促すという意識を持って関わります。

 

このような場合は、「どうしたらいいか、これから一緒に考えよう」「どうしたらいいか考えているんだね」といった返答にとどめ、アドバイスや意見は控えるようにしましょう。 

 

まとめ

今回は以下の内容を中心に、傾聴についてお伝えしました。

 

・傾聴とは

・ビジネスシーンにおける傾聴の2つの効果

・傾聴の実施方法と注意点

ポイントを押さえれば、どなたでも傾聴力はアップします。今回、紹介した内容はすぐに実践できるので、ぜひ仕事に活かしてみてくださいね。

監修

浜田 千史
有限会社ロココスペース代表取締役

浜田 千史

1990年に短期大学卒業後、大阪の電鉄系シティホテルに入社、宴会予約課にて会計業務に従事。結婚、出産後、IT スクールや専門学校でパソコンのインストラクターや講師業に携わり、企業や官公庁への IT 導入サポートなども経験。2001年より派遣事業を主とした有限会社ロココスペースを設立し、延べ 3,000 人の登録スタッフと面接、面談を行う。2014年に人材育成サービス事業を立ち上げ、企業人材のキャリア支援、研修企画・運営に携わる。その後キャリアコンサルタント資格を取得し、組織開発を目的とした企業支援に関わり、現在も企業内のリアルな人事課題と向き合っている。