
2021年12月9日公開
ティーチングを活用し部下を成長させる!今すぐ実践できるポイントを解説
部下や後輩の指導を担当する際に、どうティーチングすれば良いか悩んだ経験はありませんか?
『人に教える』行為を私たちは学ぶ機会のないまま大人になります。教えるというとまっさきに学校等の教育現場でのティーチングがイメージできますが、子どもに教えるのと大人に教えるのは違いがあります。
今までの生活で培った経験や知識のある大人の部下や後輩に教えるには、ティーチングのポイントを押さえて関わることが大切です。この記事では、下記の項目を中心にまとめました。
・ティーチングとはなにか
・ティーチングの効果
・ティーチング力をアップさせる方法
・ティーチングの実践方法
会話形式での事例をあげながら具体的なやり方をお伝えしますので、部下や後輩のティーチングにお役立てください。
ティーチングとはなにか
ここではティーチングとはなにか、またよく比較されるティーチングとコーチングの違いについて説明します。
ティーチングとは”人に教える技術“
ティーチングとは人に教える技術のことです。
スポーツの世界で名選手が必ずしも名監督にならないように、知識や技術を持ち教える内容がわかっていても、それだけでは上手く教えることはできません。なぜなら、教える技術がないと相手に効果的に伝えることができないからです。
教える技術は訓練しないと身につきません。
記事の後半で具体的な実践方法をお伝えしますので、ぜひ参考にされてくださいね。
ティーチングとは“相手の学習を手助けすること”
ティーチングとは『学習』の手助けです。相手の学ぶ機会をサポートします。部下や後輩の学びを隣で手助けするのがティーチングの役割です。
では『学習』とは何でしょうか。ここでは学習について『獲得』『参加』『変化』の3つの要素でみていきます。
以上3つの要素に対し手助けをするのがティーチングです。
ティーチングとコーチングの違い
ティーチングと比較されやすいスキルにコーチングがあります。ティーチングとコーチングの違いは下記の通りです。
コーチングは『相手の持っている力を引き出すスキル』、対して『ティーチングは知識やアドバイスを教えるスキル』です。部下や後輩の成長に合わせて使い分けるのが効果的です。コーチングについては『コーチングとは?初心者でもすぐに取り入れ成果をだせる基本ポイントを解説』も参考にしてください。
ティーチングの3つの効果
ティーチングを身につけることで、あなたにとって良い効果があります。具体的には以下3つです。
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- ・良好な人間関係を築ける
- ・無駄な労力を省けるので自分の仕事に力を注げる
- ・教えることはコミュニケーションの1つ
- それぞれの効果についてみていきましょう。
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効果1 良好な人間関係を築ける
ティーチングの効果1つ目は良好な人間関係を築ける点です。ティーチングスキルが身につき部下や後輩にうまく教えられるようになると、教わる側も教わった通りに実行することで成功体験を積み重ねられます。
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自分の教えた通りにやってくれる ⇔ 教わった通りにやればうまくいく
このような状態になるとお互いに信頼関係がうまれ自然と良好な人間関係を構築できます。
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効果2 無駄な労力を省けるので自分の仕事に力を注げる
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ティーチングの2つ目の効果は無駄な労力が省けるので自分の仕事に力を注げる点です。ティーチングスキルが高まると教える労力を最小限にでき、無駄なエネルギーを使わずに済みます。
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ティーチングは相手を尊重する手法なので、こちらの話を聞き入れてもらいやすくなるのです。また効果1に示した通り良好な人間関係を築けるのでコミュニケーションもスムーズになります。その結果、無駄な労力を省け自分の仕事に力を注げるようになります。
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効果3 教えることはコミュニケーションの1つ
教えるという行為には必ず相手が存在するので、ティーチングはコミュニケーションの1つです。
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コミュニケーションが上手な人は教えるのも上手です。言い換えれば、教え方が上手になるとコミュニケーションも上手になると言えます。『コミュニケーション』と『ティーチング』は密接に関係しており、下表のように対応しています。
このように上手なコミュニケーションと上手な教え方は密接に関係しています。ティーチングはコミュニケーションの1つと認識し、相手と関わっていきましょう。
ティーチング力をアップさせる方法
それでは皆さんのティーチング力をアップさせるための具体的な方法は下記の通りです。
- ・目標を明確にし「行動」で表現する
- ・できたことをほめすぎない
- ・できなかったとしても叱責しない
- ・教える過程で相手にイライラしたら、それは期待が裏切られたから
それぞれ具体的にみていきます。
目標を明確にし「行動」で表現する
あなたが部下や後輩に対し『約束時間に遅刻しないでほしい』という願いがあったとします。この願いをそのまま相手に伝えても相手は具体的にどうしたら遅刻しないか、具体的な行動がわかりません。そのため、あなたの願いを具体的な行動で表現します。
「行動」で表現するコミュニケーション例
上司|最近打ち合わせで遅刻が多いみたいだけど、どうしたのかな。みんな心配しているよ。
部下| すみません、気を付けます。
上司| 遅刻してしまう原因ってなにか思い当たるかな。
部下|予定がたくさんあり覚えていられないのと、メモしてもメモを失くしたり忘れてしまいます。
上司| そうなんだね。例えば、手帳やスマートフォンのアプリとか、自分の使いやすいスケジュール帳を使ってみたらどうかな。アラーム機能も使うとさらに忘れにくくなるよ。
部下| そうですね。以前は手帳を使っていたんですが手帳を忘れてしまい使わなくなりました。アプリを使ってみようと思います。
上司|アプリなら〇〇が使いやすいけど、それ以外にも自分の使いやすいものを試してみてね。
部下| ありがとうございます。早速試してみます。
このように相手が遅刻しないための具体的な行動を伝え、目標を明確にします。
できたことをほめすぎない
できたことをほめすぎない関わりも大切です。部下や後輩へのティーチングにより相手のできることが増えていきます。人はほめられるとうれしいですし、やる気につながりますね。その反面、ほめすぎると失敗を恐れるようになります。例えば、「すごいじゃないか!これからは安心してまかせられるよ」と言われた部下や後輩は、「次も絶対失敗できない」と思うでしょう。そのようになってしまわないように、できたことをほめすぎないようにしてください。
できたことをほめすぎないコミュニケーション例
部下| このまえ教えていただいた方法で資料を作ってみたのですが確認いただけますか。
上司| 資料作成ありがとう。うん、OKだね。
部下| ありがとうございます。
上記のやり取りのように、状況をそのままフィードバックしていきます。
できなかったとしても叱責しない
部下や後輩が教えた通りにできない場合もあると思いますが、できなかったとしても叱責することは避けます。「こんな簡単なこともできないのか!」といった言葉や、頭を小突くなどの行為はしません。叱責は相手のやる気を失わせ、無力感を植えつけるだけです。
ティーチングの目的は相手を否定したり無力感を教えることでありません。そのためできなかったとしても、叱責しないようにしましょう。
できなかったとしても叱責しないコミュニケーション例
部下|教えてもらった通りにやろうとしたんですが、失敗しました。
上司|そうか。うまくできなかったんだね。どこでつまづいたのかな。
部下|全体的によくわからなくて‥‥すみません。
上司|そうか、じゃあ、もう少し簡単なことからやってみようか。
上記のやり取りでは、部下が自分のわからないことを明確にできないため、また同様の失敗をしてしまう可能性があります。その場合は少し課題のハードルを下げてスモールステップで成功体験を積めるように支援します。
教える過程で相手にイライラしたら、それは期待が裏切られたから
部下や後輩に教える過程で『全然できるようにならないし、返事もしないし、なんかイライラするなぁ』『〇〇になってほしいのに真逆のことばかりする』というような、怒りやイライラと言った負の感情が生まれることがあるかも知れません。
負の感情が生まれるのは、あなたが相手に持つ『こうなってくれたらうれしい』という期待やイメージが裏切られたからです。わたしたちは、相手の行動が自分の期待やイメージを裏切ったときに負の感情を持ちます。
そんなときは自分の期待やこうあってほしいというイメージを相手に伝え、共有することが大切です。
教える過程で相手にイライラした時のコミュニケーション例
上司| 今の職場のやり方や環境に慣れてほしいと思っているよ。
部下|自分は中途採用なので、今までの経験をとにかく活かさなくてはと思っていました。今までのやり方でいいと思ったことを皆さんに伝えなくてはと…
上司| そうだったんだね。今までのやり方にこだわっているのかと思っていたよ。
部下| いえ、早くみなさんの仕事のやり方を覚えて、チームの一員になりたいです。
上司| うん、そうだね。少しずつ慣れていってくれるとうれしいな。
自分が相手にこうなってほしいとはっきり伝えることで、相手もあなたの考えを共有できます。
ティーチングの実践方法
ティーチング力をアップさせる方法を学んだところで、次はティーチングの実践方法をお伝えします。実践方法でお伝えするのは以下4点です。
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- ・教える前に相手に「質問」する
- ・相手の許容量を見極め、情報を伝えすぎない
- ・伝える内容を小さな塊に分けて伝える
- ・伝えっぱなしにせず、必ず理解度を確認する
- それぞれ具体的に説明します。
教える前に相手に「質問」する
まずは教える前に相手に質問をします。一方的に情報を伝えるのではなく、部下や後輩の持つ知識や経験の度合いを確認することで、相手の学びや経験を尊重している姿勢が相手に伝わります。
この方法は中途採用者や新卒で高学歴の社員に有効です。
教える前に相手に質問するコミュニケーション例
上司| これからうちの部署の顧客管理の方法を伝えようと思うんだけど、前の会社でもやっていたかな。
部下|はい、前職では5年ほど〇〇というソフトを使って顧客管理をしていました。
上司|そうなんだ。うちは〇〇は使ってないんだけど、代わりに××を利用していて…
このように教えたい内容について、どれくらいの経験があるか質問しています。
相手の許容量を見極め、情報を伝えすぎない
ティーチングする際は相手の許容量を見極め、情報を伝えすぎないことも大切です。
自分の持っている知識を全て伝えよう!と意気込み、1から10まで一気に教えたとします。相手がすべて理解できるレベルであれば問題ありませんが、1から3までしか覚えられないレベルなら、相手の許容量を超えます。
一気に教えると内容を理解できないだけでなく、情報が整理されず1から3の内容も抜け落ちたり、誤って覚えてしまう可能性もあります。そうなると結局もう一度最初から教えなくてはいけない、という事態になりかねません。
情報を伝えすぎないこともティーチングでは重要です。
伝える内容を小さな塊に分けて伝える
部下や後輩に内容を理解してもらうには、伝える内容を小さな塊に分けて伝えます。
豚の角煮を丸ごとお皿に盛りつけてしまうと食べにくいですが、適当な大きさにカットしておけば食べやすくなりますよね。最初に伝える内容の要点や、なぜやるのかという理由や根拠も説明すると、相手はより納得して仕事に取り組めます。
伝える内容を小さな塊に分けて伝える例
上司| これから経費の精算について教えるよ。
部下|よろしくお願いします。
上司|うちの会社はその都度自分で精算する方法を取っているからね。忘れちゃうと精算できないから気を付けてね。経費の精算で注意することは3つあって、1つ目は〇〇、2つ目は〇〇、3つ目は〇〇。ではまずは1つ目から説明するよ。
このようになぜ教えるのかの根拠とポイントを小さなまとまりに分けてから伝えます。
伝えっぱなしにせず、必ず理解度を確認する
教えたらそれで終わりではありません。伝えっぱなしにせず、必ず相手の理解度を確認します。その際のポイントは「言葉」「文字」「行動」の3つです。この3つの視点で理解度を確認します。
また、理解度を確認する際に「わかった?」と聞くのは避けます。YESかNOかで答える質問では、部下や後輩も教えてもらった手前NOとは言いにくいですね。理解できていなくても「全然わかりませんでした」とは中々言えず「はい、わかりました」と答えてしまうものです。
どのくらいわかったかを確認するために、「言葉」「文字」「行動」の3つのポイントで質問しましょう。
まとめ
今回は、ティーチングについて下記の項目を中心に解説しました。
・ティーチングとはなにか
・ティーチングの効果
・ティーチング力をアップさせる方法
・ティーチングの実践方法
ティーチングは単に知識や技術を教えるだけではなく、ティーチングする側・される側のコミュニケーションの1つです。相手との信頼関係を構築でき、お互いの仕事もうまくいく素晴らしいスキルといえます。
記事の内容を参考に、ぜひティーチングを効果的に活用してくださいね!