2021年5月25日公開

デザイン思考とは?5段階プロセスや3つのポイントについて解説

「そもそもデザイン思考とは何なのか?」

「デザイン思考を活用すると、どのような利点があるのか」

 

書籍やネットで話題にあがる「デザイン思考」という言葉ですが、このような疑問に思っている方もいるでしょう。

 

そこで本記事では、以下のポイントを中心に、デザイン思考について解説します。

 

・デザイン思考の概要と導入するメリットおよびデメリット

・デザイン思考の実践に必要な「5段階プロセス」について

・デザイン思考を実践するときに注意すべき3つのポイント

デザイン思考を活かして商品開発や営業・マーケティングを行うと、市場ニーズに合った製品やサービスを提供しやすく、売上増加やブランドイメージ向上につながります。デザイン思考に興味がある人はもちろん、「商品のマーケティングを任されたけれど、何をすれば分からない」「市場ニーズに合ったモノやサービスを生み出すために、何をするべきか分からない」と悩んでいる人にも役立つ内容となっています。ぜひ最後まで読んでください。

 

デザイン思考とは?

デザイン思考と聞くと「絵を描く」方のデザインをイメージする人もいるでしょう。しかしデザイン思考とは「問題解決の思考法(フレームワーク)」のことです。

 

デザインという言葉には「(新しいモノやサービスを)設計する」「新しい可能性を発見する、問題解決のプロセス」といった意味があります。そこから、「市場ニーズに合ったモノやサービスを発見・開発するフレームワーク」のことを「デザイン思考」と呼ぶようになりました。

 

では、なぜ今「デザイン思考」が注目されているのか、背景を解説します。

 

なぜデザイン思考が重要なのか?

現代は市場が成熟し、中途半端なモノやサービスは売れにくくなりました。それにより企業が「市場ニーズに合った、確実に売れそうなモノは何か」と今まで以上に考えるようになったからです。

 

従来のビジネスでは「大量生産・大量消費」「とにかく安く、そこそこ質の良いモノ」「目新しい、意外性のある新製品」を発売すれば、それなりに売上が確保できました。

 

しかし現代では、日常生活に必要なモノが十分に安く、必要な量はほぼ確実に購入可能。さらにスマホを活用すれば、必要な知識にアクセスしたり、ネット通販で最安値を検索したりしやすくなりました。

 

このような環境になると、ありきたりな製品では売れにくくなり、売上が低迷してしまいます。それゆえ、多くの企業は生き残りをかけて市場で確実に売れるモノやサービスを開発する必要がでてきたため、デザイン思考が注目されるようになりました。

 

どのようなシーンでデザイン思考は役立つのか?

デザイン思考とは「問題解決のフレームワーク」であり、企業では「市場ニーズに合ったモノやサービスを発見・開発するため」に活用されています。

 

では具体的に、ビジネスのどのシーンでデザイン思考を役立てることが出来るのか紹介します。

 

デザイン思考が役立つ仕事・職種

・商品企画の担当者⇒市場ニーズにあった商品を開発するときに役立つ

・営業担当者⇒市場ニーズを把握して営業方法を変化させることで、売上アップが期待できる

・起業家、経営者⇒大手企業のサービスと差別化するときにデザイン思考が役に立つ

デザイン思考のポイントは「市場ニーズから考える」ことです。

 

新製品を開発するときは「そもそも市場ではどのような製品が求められているのか」、営業活動では「クライアントはどのような課題や悩みを抱えているのか」を考えることから、デザイン思考はスタートします。

 

デザイン思考を活用することで、より相手(市場)のニーズにあったサービスを提供しやすくなるでしょう。その一方でデザイン思考は、「まったく新しいサービスの開発には向かない」という点が挙げられます。

 

デザイン思考に欠点はあるのか?

デザイン思考を活用すると、「相手(市場)のニーズに対応したサービスを提供しやすい」というメリットがあります。しかしながらその一方で、「まったく新しい挑戦には向かない」というデメリットも存在します。

 

デザイン思考のポイントは「相手が何を求めているか、を考えること」です。しかし新しいチャレンジをするときは「そもそも市場があるのか分からない」「顧客が必要性に気づいていない」というケースがほとんどでしょう。

 

よって「市場がニーズに気づいていないような、あたらしい商品を開発する」というシーンでは、デザイン思考は活用しにくいです。

 

ここまで、デザイン思考の概要とメリット・デメリットについてご紹介しました。デメリットもありますが、汎用的で使いやすいフレームワークではないでしょうか。

 

そこで次は、ここまで読んで「さっそくデザイン思考を実践してみたい」と思った方に向けて、実際にフレームワークを活用する手順をご紹介します。

 

デザイン思考の5段階プロセス

デザイン思考は、市場ニーズにあったサービスを発見するフレームワークのこと。「売上を伸ばすため、デザイン思考を活かして新サービスを開発したい」と考えている方もいるでしょう。

 

そこで以下では、ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授が提唱する、デザイン思考の実践手順である「デザイン思考の5段階」について解説します。

 

■デザイン思考の実行プロセス

1.共感

2.定義

3.概念化

4.試作

5.テスト

各工程で具体的にどのような事をするのか、以下で詳しく解説します。

 

1.共感

「共感」では、解決すべき問題に対して共感・理解するプロセスです。

 

■「共感」で実行すべき主なプロセス

・アンケートやインタビューによる市場調査

・専門家に相談する

・ユーザーの行動調査

情報収集やインタビューなどを実行することで、「思い込み」や「固定概念」を取り払うよう意識することがこのプロセスでは重要になります。思い込みを捨てるには、専門家と話したり実地調査をしたりすることで、問題に対して「共感」することが欠かせません。

 

例えば、あなたは新しい洗濯機を開発する必要があると仮定します。

 

デザイン思考を活用する場合、まずはユーザーへのアンケート実施やインタビュー実施します。このとき、「本当にユーザーが求めている洗濯機は何なのか」を調査し、ユーザーの求めているものを理解するには、実際に洗濯機を利用している人の気持ちに「共感」する必要があります。

 

「市場のニーズにあったサービスを提供する」フレームワークであるデザイン思考において、ユーザーの気持ちに「共感」できないことは致命的です。デザイン思考をこれから実践する場合は、まずはユーザーの気持ちに「共感」することを心がけましょう。

 

2.定義

ユーザーの気持ちに「共感」できたら、次は顧客が何を求めているのか、問題を定義してみましょう。

 

「定義」のプロセスでは、ユーザーの抱えている問題点を具体的に明文化することが大切です。

 

例えばリサーチした情報をもとに分析した結果、「洗濯機に求めているのは多機能ではなく、シンプルなデザインと操作の分かりやすさではないだろうか?」と仮説を立てて、具体的な問題点として定義しましょう。

 

ユーザーの悩みを明確に定義できたら、次は解決策の概念化が必要です。

 

3.概念化

「定義」プロセスを通じてユーザーの悩みが明確にした後は、悩みを解決するためのアイデアを考えましょう。このプロセスを「概念化」と呼びます。

 

たとえば「シンプルで使いやすい洗濯機が求められている」という問題があった場合、下記のような解決策が考えられます。

 

・洗濯機のボタン数をできるだけ減らす

・直感的に操作しやすいデザインを考える

・そもそも機能を絞った洗濯機を開発する

たくさんアイデアを出すことが重要になるので、ブレインストーミングを活用するのもおすすめです。ブレインストーミングのやり方に関しては『ブレインストーミングとは?ルールやメリット・デメリットについて徹底解説』参考にしてください。

 

ユーザーの悩みを解決するアイデアが集まったら、次はアイデアを具体的な製品やサービスとして、形にしていきましょう。

 

4.試作

「概念化」でアイデアを集めたら、次は試作品を作りましょう。

 

市場ニーズを満たすためのアイデアを盛り込んだ試作品を作成し、本当に問題が解決できるのか、ユーザーニーズを満たすことができるか、検証します。

 

このとき重要なのが「とにかく試作品を完成させる」ことです。実際に試作品を作ってみると、新たな問題点がでることも。しかし、ここではまず「アイデアを形にする」ことを最優先で実行します。

 

こうしてアイデアを活かしたサービスや製品が出来たら、次は実際に市場へ出して、アイデアのフィードバックをもらいましょう。

 

5.テスト

市場ニーズを満たすアイデアを盛り込んだ試作品が完成したら、次は実際に試作品を市場に出して、マーケットからのフィードバックを得ましょう。

 

もしここで評価が芳しくなかったら、必要に応じて(1)~(4)のプロセスに戻って改善を行います。5段階プロセスは何度も繰り返し行うことで、より市場から評価されるモノを発明可能。5段階プロセスを何度も繰り返して、より良いモノを作りましょう。

 

ここまで、「5段階プロセス」について解説しました。実際にデザイン思考を実行するイメージができたかと思います。

 

しかしデザイン思考をいざ実施してみると、思わぬ障害にぶつかることもあるでしょう。そこで次の見出しでは、デザイン思考を行うときに重視すべき3つのポイントについて解説します。

 

デザイン思考を活用する際に重視すべき3つのポイント

ユーザーニーズに寄り添ったモノを発見するのフレームワークである「デザイン思考」。売上やマーケットシェアを伸ばすため、これから自社でもデザイン思考を活かした企画・開発をしようと考えている方もいるでしょう。

 

しかし実際に「5段階プロセス」を参考にデザイン思考をしてみると、様々な疑問や課題にぶつかって迷うもの。そこでここでは、デザイン思考を実行するときに重視すべき3つのポイントについて解説します。

 

1.ユーザー目線を最重要視する

デザイン思考でもっとも重視すべき点は、「ユーザー目線」です。

 

「共感」プロセスでも述べたとおり、「実際に市場のリサーチを行い、利用者の気持ちに共感する」ことが、デザイン思考の成否を分けます。

 

インタビューやアンケートの実施、有識者や利用者へのインタビューなどを行い、ユーザー目線に立った商品開発を行うことを常に意識しましょう。

 

2.まずは作ってみる

次に大切なのが、「まずはアイデアを形にする」こと。

 

実際に試作品を作ってみると、「本当にこの製品は売れるのか?」「今までの製品の方が良いのでは?」といった疑問や不安を覚えることもあるでしょう。しかし、試作品が優れているかどうかを判断するのは、開発者ではなく利用者(ユーザー)です。

 

開発途中では不安になって、試作品の開発中止をしたり改善点をすべて盛り込もうと修正ばかりになってしまったり、なかなかアイデアが形になりにくいもの。

 

そこでまずは「とにかく試作品を作る。市場に出してフィードバックを受け、改良品を作る」ということを意識しましょう。

 

3.アイデアはたくさんあるほど良い

最後に大切なのが、「アイデアはたくさんあるほど良い」ということ。

 

市場環境は常に移り変わるもので、最近は流行り廃りのサイクルが早くなっています。このような変化の激しい環境でマーケットニーズに合ったものを提供するには、柔軟なアイデアが必要です。

 

アイデアが少ないと柔軟性が無くなったり変化に対応しにくくなったりするもの。「概念化」の段階で、できるだけアイデアを集めるよう心がけましょう。

 

またアイデアを出すには「ブレインストーミング」がおすすめです。詳しいやり方についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひご一読ください。

 

まとめ

今回は下記のポイントを中心に、デザイン思考について解説しました。

 

・デザイン思考とは、ユーザー目線で物事を考えるフレームワーク

・デザイン思考を活用すれば、市場ニーズに合ったモノやサービスを開発しやすい

・デザイン思考を実践するなら、ユーザー目線が一番大切

 

「安くてそこそこ」のモノやサービスでは売れにくくなった現代において、ユーザーの需要にあったモノを開発することは重要になっています。そして、ユーザー目線でモノやサービスを開発するために役立つフレームワークこそが「デザイン思考」です。

 

商品企画や営業活動に、デザイン思考の考え方は役立ちます。ぜひデザイン思考を実行し、売上増加や市場シェアの獲得を目指しましょう。