2021年6月2日公開
野球界から教育の世界へ!田中賢介流大きな壁を乗り越えるコツとは
華々しく活躍した野球選手の引退後のキャリアとして思い浮かぶ職業といえば、監督やコーチ、野球解説者もしくは、経営者などだと思います。しかし、田中氏はセカンドキャリアとして小学校の理事長。それも一から個人で小学校を開校することを選びました。そこで今回は、教育に興味を持ったきっかけから、小学校の開校という大きな壁を乗り越えるまでの道のり、子供たちへの教育に対する思いなどについて根掘り葉掘り聞いてきました。
ー登場人物ー
田中賢介(たなか けんすけ)
学校法人田中学園立命館慶祥小学校理事長
小学校2年生の時に野球を始め、1999年にドラフト2位で東福岡高校から日本ハムファイターズに入団。入団後はチームの日本一に貢献し、ベストナインやゴールデングローブ賞にも選出される。2013年に渡米し、メジャーに挑戦。その後、2014年に古巣の北海道ファイターズへ復帰。復帰後はチームの中心メンバーとして活躍後。2019年に現役を引退し、2020年に北海道日本ハムファイターズのスペシャルアドバイザーに就任。現在は札幌市豊平区に学校法人田中学園立命館慶祥小学校の開校に向けて活動中。
えるビー
LB MEDIAのインタビュー記事に出没。得意技はインタビューの時に、なんで?どうして?とどんどん突っ込むこと。趣味は名言集め。今年の目標はLINEスタンプになること。
目次
教育に興味を持ったきっかけ
えるビー| 来年2020年4月に田中学園立命館慶祥小学校開校に向けて、オープンキャンパスなどをされている時期かなと思うのですが、北海道では知らない人はいないほど知名度が高いので…たくさん生徒さん集まって大変なんじゃないんですか?
田中氏| 私が有名だから集まるということはないですよ。教育内容次第だと思います。
えるビー| そうなんですね。野球界で華々しい成果をあげられていて、引退後は北海道日本ハムファイターズのスペシャルアドバイザーやNHKの野球解説者としても活躍されているのに、野球界とは全く別世界の教育の世界になぜあえて飛び込んだんですか?
田中氏| 私は昔から新しいことにどんどん挑戦したい性分で、そして天邪鬼なところもあります。だからこそみんなが無理ということにあえて取り組みたいと思ってしまうところがあって。妻を含め周りはハラハラしてみてると思いますが。
えるビー| ふむふむ。
田中氏|日本からメジャーへチャレンジした時と同じで。日本でコンスタントに結果を残せるようになった頃から、「自分の中で新しいことにチャレンジしたい!」「今までと違うところに住んでみたい!」「違うレベルの野球にチャレンジしたい!」という気持ちが大きくなっていきました。
えるビー|そうだったんですね。
田中氏| 私は一度やると決めたらやらずにはいられない性格なので。それで、メジャーにチャレンジしました。
えるビー| なるほど〜つまり、同じような感覚で野球界から教育の世界でチャレンジされたんですね。ちなみに教育に興味を持ったのはいつ頃からですか?
田中氏| メジャーに行ってからです。
えるビー| そうなんですね。
田中氏|メジャーに行ってから、アメリカだけでなく、色々な国を訪問する機会に恵まれました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| そして、色々な国の方と接する中で「どのような教育を受けたら、このような考え方になるのだろう」と疑問を持つと同時に「自分は日本でこういう教育を受けたきたんだな」とか考えるようになりました。
えるビー| 具体的には???
田中氏| ベネズエラという国に行ったのがきっかけです。ベネズエラでは当たり前に物が無くなったり、殺人率も高いという事実を目の当たりにして、なぜそのようなことが起こるのだろう?と考え、そして出た答えが教育でした。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| これまで日本で当たり前に受けていた教育が、日本以外の世界を見たことで当たり前ではなかったこと。そして改めて日本は素晴らしい国だと思ったと同時にもっといい教育ができるかもしれないと思いました。
えるビー| この時に日本と世界では、教育内容が違うし、それによって物事の捉え方が変わるということを体感したんですか?
田中氏| そうですね。例えば、真珠湾攻撃に対しても、日本とアメリカでは教わる内容が異なります。そして教わってきた内容によって、物事に対する捉え方が変わってきます。だからこそ大切なことは、きちんと教えなければならないと思うようになりました。
えるビー| たしかに。
田中氏|それとよく説明会でも話しているんですが、僕は小さい頃から野球をしていて、その頃から練習の時に失敗すると「どんまい。どんまい」と声をかけられました。けれどアメリカでプレイしていた時に、積極的にチャレンジしてミスしたことに対しては、「ナイストライ」と声をかけられました。そして逆に何もチャレンジしないと、注意されました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 「どんまい」と「ナイストライ」は同じような言葉に感じますが、よくよく考えてみると、全然違うものだと気がつきました。なにより声をかけられた時の自分の感じ方が全然違います。
えるビー| ???
田中氏|「どんまい」と声をかけられる時よりも、「ナイストライ」と声をかけられると前向きな気持ちになりました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| トライすることを認めてもらえることで、自分自身が新しいことにどんどんチャレンジできたと思います。だからこそ、自分がアメリカで接してもらったように、子供たちには接してあげたいと思いましたね。
えるビー| なるほど。
田中氏|日本を離れて今までと全く違う環境に行ったからこそ、同じ事柄でも人によって捉え方が違うことを肌で感じることができました。そして物事に対する捉え方は子供の時の教育によって大きく変わってしまうのではと考えるようになりました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| そして子供がちょうど生まれたタイミングでもあったので、教育に関して勉強するようになり特に幼少期の教育はとても大事だと思いました。
えるビー|そうだったんですね。じゃあこの時点で日本に帰ってから小学校を作ろうというビジョンがあったんですか?
田中氏| いえ。この時はまだ教育に興味を持った段階で、まさか自分が小学校を作ろうなんて考えてもいなかったです。
北海道で小学校を作ろうと思った理由
えるビー| 賢介さんの地元は福岡ですが、なぜ生まれ故郷ではなく北海道で小学校を作ろうと思ったんですか?
田中氏|自分を育ててくれた北海道に恩を返したいと思ったからです。そして自分にとっては、北海道はもはや地元のような場所になっていました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| メジャーに行くまでの私は、自分のために野球をやってました。お金を稼ぎたい。いい車に乗りたいとか。いい服が着たいとか。
えるビー| 普通そうだと…
田中氏| けれど日本に戻ろうと思った時には、みんなのために野球をやろうと思うようになっていました。当時有難いことに他球団からもオファーがありました。中には日ハムよりもいい条件を提示してくれた球団もありました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| ただ、日本に戻って野球を続けるなら自分をプロ野球選手として育ててくれた北海道の皆さんのために野球をやりたいと思い、日ハムで5年間野球をさせていただだきました。
えるビー| そうだったんですね。
田中氏|北海道でプレーをしながら引退後のキャリアを考えた時に、小学校を作ってみたいなと考えるようになりました。
えるビー| なるほど〜
田中氏| そして、自分を育ててくれた北海道に恩を返したい気持ちもあり、北海道で日本のリーダーを育てる小学校を作ることで、恩を返せるのではと思いました。そのため自分にとって北海道で小学校を作るということはとても自然な流れでした。
えるビー| えるビーは北海道に行ったことがないのですが…ちなみに北海道の好きなところってどんなところですか?
田中氏|四季をはっきり感じることができるところが好きです。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 雪解けが始まると春がもうすぐ来るなとワクワクします。そして夏は新緑が美しく。そして秋には紅葉、冬には雪が降って、というように四季をはっきり感じることができます。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 雪が積もると大変なこともありますが、しかし雪が積もるからこそ楽しめることもあります。四季を感じることで、自分は生きていると感じられます。北海道の好きなところはたくさんありますが。特に四季をはっきり感じることができる所が一番好きですね。
えるビー| なるほど〜
田中氏| だからこそ、子供たちにも同じように四季を感じてもらいたいと思い学校の併設施設として「Forest Area」という森を作りました。
えるビー| 森の近くの小学校って、素敵ですね。
大きな壁を乗り越えるコツとは
えるビー| 今更ですが…小学校って作りたいと思って、個人が作れるようなものなんですか?
田中氏|正直なかなか難しいと思います。同じことをもう一回やれと言われたらできる自信はありません。それぐらい大変でした。ですが私の場合、小学校を作りたいとう思いだけで、あまり深く考えずに行動を起こしたからこそ、なんとか開校までこぎつけたと思います。
えるビー| ふむふむ。
田中氏|もしあれこれ深く考えていたら無理だったと思います。まず小学校を作るためには数億円の資金が必要で。
えるビー| えっっっっっ。
田中氏| それだけでなく、土地の取得に学校法人の設立と全てのハードルが高かったです。そして私の周りに小学校を作ったことがある人がいなかったので。
えるビー| えるビーの周りにもいません。
田中氏| そこで、とりあえずインターネットで学校の作り方という本を購入しました。
えるビー| えっ本???
田中氏| 購入した本によれば、学校法人になることから始める必要があると分かったので、とりあえず学校法人を作ろうと。他には文部科学省に申請書を出さないといけないと分かったので、ならとりあえず行政書士に相談しようと。
えるビー| 全部とりあえずなんですね笑
田中氏| Aという課題が分かったら、とりあえずやると決めてそこまでやり切りました。そうすると次のBという課題が出てくるので。そのBの課題に対しても、とりあえずそこまでやると決めてやり切る、ということを繰り返していきました。
えるビー| 小さな目標を立ててクリアーし、次の目標を立てるということをくり返していったんですね。
田中氏| もし最初に創立に向けて綿密な計画を立てていたら、自分には無理だと思い、おそらく小学校を創立しようと思わなかったと思います。それこそやれない理由しかない状態でしたから。だからこそ今思えばその都度、その都度、目の前の目標をクリアーしていくやり方は私にあっていたと思います。
えるビー| そうだったんですね。
田中氏| そもそも計画立ててやれることは、私以外の皆さんがすでにやっているはずです。
えるビー| 無事、来年の2022年に開校ということは、ある意味順調に目標をクリアーできたってことですか?
田中氏| いや全然です。本当は今年(2021年)の4月に開校させたかったのですが、コロナの影響だけでなく、広報や建物が間に合わなかったりしたため、1年遅れました。正直なところ計画通りに上手くいかなったことの方が多かったかもしれません。
えるビー| そうなんですね。
田中氏| けれど、計画通りに上手くいかなかったことでよかったことも多々あります。
えるビー| ???
田中氏| 例えば、田中学園の目玉の場所でもあるライブラリーホールですが、もともとこの場所にはプールがありました。そのためホールを作るにはプールの穴を埋める必要がありました。しかし資金が足りなかったので、穴を埋めずに、穴を活かす設計に変更しました。
田中氏| その結果、穴を埋めた場合よりも、よりうちの学校らしい空間ができました。お金があったら、このアイディアは生まれずに、普通の体育館になってしまったと思います。
えるビー| ほんとだーーー!!!
田中氏| また校舎は築50年の建物のため、今の建物に比べると天井が低いです。資金があれば天井を高くすることもできたかもしれません。けれど低い天井はそのまま活かしています。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 天井が低い方が子供たちが安心できますよね。子供たちにとっては、子供たちサイズの空間の方が心地よく教育にもいいと言われています。
えるビー| なるほど(笑)これも捉え方ですね。
田中氏| 開校に向けて行動していく中で、ライブラリーホール以外にも、上手くいかなかったからこそ、結果的にはよかったなと思えることが多くありました。
えるビー| そうだったんですね。
田中氏| だからこそ、とりあえずやってみることは、何かに新しいこと、特に大きな目標に挑戦する時にとても大事だと思います。
えるビー| なるほど、大きな目標も、小さな目標にしてクリアーしていけば、大きな目標の達成につながるからこそ、とりあえずやるって大事ですね。
世界で戦える子供に必要な教育とは
えるビー| あえて、中学や高校ではなく小学校を選ばれていますが、小学生の時に大事なことってなんでしょうか?
田中氏| この時期は日本のリーダーになるための土台を作っていく時期だと考えています。だからこそ特定の価値観や宗教観、思想などを一方的に大人が子供に押し付けるのではなく、子供たちが選択するタイミングが来た時に、選択するために必要な知識を持たせてあげることが大事だと考えます。
えるビー|なるほど。
田中氏| 特にこれからの子供たちが大人になる頃は、もっと世界が近くなり、世界で戦っていく必要があると思います。そのためにまずは語学力はもちろんのこと、自分の意見や考えを伝えるための表現力などを身につける必要があります。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| またメジャーでプレーをしていた時に、もっとチームの仲間と仲良くなるためには政治や宗教の話をする必要があると感じました。しかし私にはそこまでの語学力や知識がなく深く話すことができず…今でもそのことは少し後悔しています。
えるビー| そうだったんですね。
田中氏|だからこそ、これから世界で戦うだろう子供たちには、自分にあった宗教観や思想、価値観などを見つけて欲しい、そして、世界に出た時に臆することなく議論して欲しいと思っています。そのためには語学力や表現力だけでは足りません。
えるビー| なるほど〜
田中氏| 土台を作る時期でもある幼少期に一通りいろんな宗教や思想、価値観などに触れることが重要です。これらに触れることができる環境を作ってあげることで、選択するタイミングが来た時に選択できる力を子供たちにつけさせてあげることができると考えています。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| このような思いもあり、田中学園の建学の精神として「学ぶを、しあわせに。」教育理念と目標として「世界に挑戦する12歳」を挙げています。そしてその理念をベースに異なる価値観や文化、ジェンダーを持つ人々を知る機会を作れるようなカリキュラムを設けています。
小学校を開校したらやりたいこと
えるビー| 開校したら、子供たちとやりたいことはありますか?
田中氏| まずは、子供たちと一緒に色々なことに挑戦したいと思っています。私はメジャーでプレーをしていた時に、「ナイストライ」という挑戦による失敗を認める文化に出会いました。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 私は「ナイストライ」のいう一言のおかげで、色々なことに対して前向きに捉え、挑戦することができました。だからこそ子供たちに「ナイストライ」という文化を伝えていきたいと思っています。
えるビー| ふむふむ。
田中氏|もしたった一人でも、「ほらみたことか」「やっぱりミスしたよね」と言い出すと、周りに影響を与えてしまうので。先生たちにも、子供達に失敗する姿を見せて欲しいと伝えています。
えるビー| たしかにその通りですね。他に来年開校したらやってみたいことってありますか?
田中氏| 子供たちに無駄なことをさせたいと思っています。
えるビー| 無駄なこと???
田中氏| そのために月に1回、賢介の時間ということでKタイムという時間をとってもらうようにしています。
えるビー| ふむふむ。
田中氏|Kタイムでは、私や私の知人に講師になってもらって話をするだけでなく、この時間を使って、子供たちと一緒に無駄なことをしようと考えています。
えるビー| ふむふむ。
田中氏| 子供たちは世界に挑戦できる人間になるために計算されたカリキュラムの中で学んでいくことになってしまうからこそ、無駄なことをやる時間を作ってあげようと思っています。
えるビー| そうなんですね。
田中氏| 私は子供の頃から野球を始めたのですが、なんでこんな無駄な練習やる必要があるのかと思ったことが結構ありました。
えるビー| えっ???
田中氏| でも今となっては、笑い話やいい思い出になっています。だからこそ、私に与えられた月1回、1時間のKタイムではとことん無駄なことを子供たちと一緒にやりたいと思ってます。やっている側はその時はつまらないと思うかもしれませんが笑
えるビー| めっちゃ面白そうですね。
田中氏| とにかくなんか変なこと、無駄なことを子供たちとしたいですね。
えるビー| 最後に、これから田中学園で学びたい、学ぶ子供たちにメッセージはありますか?
田中氏| 北海道から日本のリーダーになれる子供たちを育てたいと思い、田中学園を作りました。だからこそ、これから田中学園で学ぶ子供たちには、リーダーにとって必要な基礎をこの学校で身につけてもらいたいと思っています。入学したらみんなと一緒に失敗を恐れずに色々なことにチャレンジしていきましょう!
えるビー|本日お話を聞いて、北海道から未来のリーダーがたくさん生まれる予感しかありません。そして、えるビーも田中学園に入学したくなりました。本日はありがとうございます。
田中氏とのインタビューを終えて
えるビー| 自分にとってあまりに大きな目標だと、スタートする前に挫けて、諦めてしまいそうですが…今回お話を伺って、とりあえずやる精神はとっても大事だと思いました。どんなに大きな目標でも、今の自分でなんとかやり切れる目標にして、取り組んでいけば、誰でもどんな目標でもクリアーしていけそうですね!
えるビーもどんなことでも諦める前に、とりあえずやる!で色々なことにチャレンジしていきたいと思います。皆さんもぜひ、えるビーと一緒に色々なことにチャレンジしていきましょう!
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学校法人田中学園立命館慶祥小学校とは
建学の精神に「学ぶを、しあわせに。」教育理念・目標に「世界に挑戦する12歳」を挙げ、2020年4月に北海道札幌市豊平区に開校予定。理事長でもある田中賢介氏の思いから挑戦Challenge・協働Collaboration・貢献Contributionの3つのCを持つ児童を育てるための多彩なカリキュラムが特徴。また一定の基準をクリアーすれば提携校でもある立命館慶祥中学校・高等学校への進学が可能。
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