2026年8月10日公開
研究から考える ビッグファイブシリーズ第4回創造性は性格と関係するのか?〜開放特性とイノベーションの関係〜
はやみ|「新しいアイデアを出せる人がほしい」
企画職や新規事業の採用で、こうした声を聞くことがあります。市場の変化が速くなり、これまでの成功パターンだけでは通用しにくくなっている今、「新しい発想ができる人材」はますます重要になっています。
では、創造性とは一部の人だけが持つ特別な才能なのでしょうか。それとも、性格の傾向と関係しているのでしょうか。
この問いを考えるうえで注目されるのが、ビッグファイブのひとつである「開放特性」です※。
※学術文献では「開放性」「経験への開放性」などと訳されることもありますが、LB MEDIAでは統一して「開放特性」と表記しています。
開放特性とは、新しい経験・考え方・価値観に対して、どれだけ興味を持ち、受け入れようとするかを表す性格特性です。開放特性が高い人は、未知のものに対して前向きで、これまでにない組み合わせや可能性を考えることを好みます。一方、開放特性が低い人は、実績のある方法や安定した環境を重視しやすい傾向があります。
ここで大切なのは「高い方が良い」「低い方が悪い」という話ではないことです。組織には、新しい可能性を広げる人も必要ですし、決まった手順を守り、安定して運用する人も必要です。
今回は、開放特性と創造性の関係を研究の視点から考えながら、企画職採用や新規事業人材の見極めにどう活かせるのかを見ていきます。
目次
開放特性とは何か
開放特性は、ビッグファイブの中でも「知的な好奇心」や「新しい経験への関心」と深く関わる特性です。

開放特性が高い人は、たとえば次のような傾向を持ちます。
・新しい知識を学ぶことが好き
・これまでにない考え方に興味を持つ
・異なる価値観を受け入れやすい
・抽象的なテーマや未来の可能性について考える
・既存のやり方に対して「本当にこれでよいのか」と問い直す
こうした特徴は、企画・マーケティング・研究開発・新規事業・デザインなど、答えが一つに決まっていない仕事と相性が良い場合があります。なぜなら、創造的な仕事では、正解を覚える力だけでなく、まだ形になっていないものを考える力が求められるからです。
一方で、開放特性が低い人は、現実的で、安定した手順や実績のある方法を重視しやすい傾向があります。これは決してマイナスではありません。品質管理・経理・法務・運用管理など、正確性や再現性が求められる仕事では、むしろ大きな強みになることがあります。
つまり、開放特性は「優劣」ではなく「どのような仕事環境で力を発揮しやすいか」を考えるための視点なのです。
はやみ|開放特性は「自由な人」「変わった人」という単純な話ではありません。新しいものを受け入れる力として見ると、採用や配置でもかなり使いやすい視点になります。
開放特性を細かく見る「ファセット」とは
ここからは、開放特性をもう少し細かく見ていきます。ビッグファイブでは、開放特性、外向特性、調和特性、誠実特性、情緒特性といった大きな性格特性を、さらに細かい要素に分けて考えることがあります。
この細かい要素を「ファセット」と呼びます。
NEO-PI-Rなどの代表的な性格検査では、開放特性は主に以下の6つのファセットで捉えられます。
同じように開放特性が高い人でも、空想やアイデアを広げることが得意な人もいれば、新しい知識を学び続けることに強みがある人もいます。そのため、人材理解では「開放特性が高いか低いか」だけでなく、どのファセットが強く表れているのかを見ることが大切です。
今回は、創造性やイノベーションと関係しやすい要素として「想像力」と「知的好奇心」に注目します。
はやみ|大きな性格特性だけを見ると、その人の特徴を少し大ざっぱに捉えてしまうことがあります。ファセットまで見ることで、「どんな場面で力を発揮しやすいのか」がより具体的に見えてきます。
ファセット① 想像力
開放特性を考えるうえで、まず注目したいのが「想像力」です。想像力とは、目の前にないものを頭の中で描く力です。

「もし、このサービスを別の業界に応用したらどうなるだろう」
「この課題を、違う角度から見たら何が見えるだろう」
「今は存在しないけれど、将来こういうニーズが生まれるのではないか」
このように、現実にある情報をもとに、まだ見えていない可能性を考える力が想像力です。
企画職や新規事業では、この想像力が重要になります。なぜなら、新しい企画は、過去のデータだけを見ていても生まれにくいからです。データ分析や市場調査は欠かせませんが、それだけでは「今すでに起きていること」は見えても「これから起きるかもしれないこと」は見えにくい場合があります。
開放特性が高い人は、既存の枠組みにとらわれず、複数の可能性を考えることが得意な傾向があります。そのため、新しいサービスのアイデアを出す場面や、これまでとは異なる顧客層を考える場面で力を発揮しやすいのです。
はやみ|企画職で見たいのは、ただ奇抜なことを言えるかではなく「まだ見えていない可能性を考えられるか」なのだと思います。
※学術的には、NEO-PI-RのファセットではIdeas(アイデア)にあたります。
ファセット② 知的好奇心
もう一つ重要なのが「知的好奇心」です。知的好奇心とは、新しい知識を得たい、理解したい、学びたいという傾向です。※。

創造性というと、突然ひらめく力のように思われがちです。しかし実際には、何もないところからアイデアが生まれるわけではありません。多くの場合、アイデアは、これまでに得た知識や経験の組み合わせから生まれます。
たとえば、ある業界の常識と、別の業界の成功事例を組み合わせる。顧客の声と、技術の変化を結び付ける。心理学の知見を、採用や育成の仕組みに応用する。このように、異なる情報をつなげることで、新しい発想が生まれます。
その土台になるのが、知的好奇心です。知的好奇心が高い人は、必要に迫られていなくても学びます。本を読む、人の話を聞く、新しいサービスを試す、知らない分野について調べる。こうした日々の行動が、企画や新規事業の場面で「引き出しの多さ」として表れるのです。
はやみ|アイデアは、突然空から降ってくるものではなく、日々のインプットの組み合わせから生まれるもの。知的好奇心は、その土台をつくる力です。
研究から見る、開放特性と創造性の関係
心理学者の Robert R. McCrae※は、1987年の研究で、創造性や拡散的思考と開放特性の関係について検討しました。
※ McCrae(1987)は、創造性・拡散的思考と開放特性(原論文ではOpenness to Experience)の関係を検討した代表的研究です。拡散的思考は、多様なアイデアを広げて考える力を指し、同研究では開放特性との関連が示されました。

拡散的思考とは、一つの正解に向かって考えるのではなく、複数の可能性やアイデアを広げて考える思考のことです。たとえば「この商品の使い道をできるだけ多く考えてください」という課題では、正解は一つではなく、多様な発想を出せるかどうかが重要になります。
McCrae の研究では、拡散的思考はビッグファイブの中でも特に開放特性と関連しやすいことが示されました。これは、創造性が単なる才能や偶然のひらめきだけではなく、パーソナリティ特性とも関係している可能性を示しています。
つまり「アイデアが出る人」は、単に頭の回転が速いだけではありません。新しい経験を受け入れる姿勢、未知のものに興味を持つ力、異なる考え方を楽しめる柔軟性。こうした性格傾向が、創造的な発想を支えていると考えられるのです。
はやみ|創造性を「才能」で片づけてしまうと、採用でも育成でも見落としが出ます。性格特性として見れば、もっと具体的に理解できるようになります。
イノベーション人材に必要なもの
イノベーションという言葉は、少し大きく聞こえるかもしれません。しかし、実際の職場で求められるイノベーションは、必ずしも世界を変えるような発明だけではありません。
業務のやり方を少し変える。顧客への伝え方を工夫する。別の部署の方法を自分の仕事に取り入れる。既存の商品に新しい見せ方を加える。こうした小さな変化の積み重ねも、組織にとっては大切なイノベーションです。
開放特性が高い人は、変化に対して比較的前向きな傾向があります。「前例がないから無理」と考える前に「試してみたらどうなるだろう」と考えやすく「今までこうだったから」と決めつける前に「別の方法もあるのではないか」と問い直しやすい。この姿勢は、新規事業や企画開発において大きな強みになります。
特に、変化の激しい市場では、過去の成功パターンだけに頼ることがリスクになる場合があります。その意味で、開放特性の高い人材は、組織に新しい視点を持ち込む存在になり得ます。
はやみ|イノベーションは、大きな発明だけではありません。日々の仕事の中で「少し変えてみる」ことも、立派な変化への一歩。開放特性の高い人は、その一歩を踏み出しやすい傾向があります。
開放特性が高ければよいわけではない
ここで重要なことは、開放特性が高ければそれだけでよい、ということではないということです。

開放特性が高い人は、アイデアを広げることが得意な一方で、実行や継続が課題になる場合があります。新しいことに関心が向きやすい分、一つのことを地道に続けるのが苦手な場合もあります。また、既存のルールや手順に対して疑問を持ちやすいため、安定運用が求められる環境では、周囲とのズレが生じることもあります。
たとえば、新規事業の立ち上げでは、最初の構想段階では開放特性の高さが強みになります。しかし、事業化の段階では、計画性・調整力・粘り強さ・数字管理も必要になります。アイデアを出す人だけでは、事業は形になりません。それを実行する人、改善する人、運用する人がいて、初めて成果につながります。
そのため、採用や配置では「開放特性が高い人を採ればよい」と単純に考えるのではなく、その人がどのフェーズで力を発揮しやすいのかを見ることが大切です。
はやみ|「アイデアが出る人」と「形にできる人」は、必ずしも同じではありません。だからこそ、チームで補い合う設計が大切です。
採用・配置で見るべきポイント
企画職や新規事業人材を採用する際には、スキルや経験だけでなく、開放特性の観点から候補者を見ることが有効です。

たとえば面接では、次のような問いが参考になります。
・これまでに、自分から新しい方法を試した経験はありますか
・前例がない状況で、どのように考えて行動しましたか
・最近、自分で興味を持って学んだことは何ですか
・異なる意見を聞いたとき、どのように受け止めますか
・新しいアイデアを形にするとき、どのように周囲を巻き込みますか
ここで見たいのは、単に「面白いアイデアを言えるか」だけではありません。新しい情報にどれだけ関心を持っているか、異なる視点を取り入れられるか、変化に対して前向きに向き合えるか、アイデアを実行につなげる意識があるか。こうした点を見ることで、候補者をより立体的に理解できます。
また、開放特性が高い人材を採用した後は、自由に発想できる余白を与えることも重要です。細かく管理しすぎると創造性が発揮されにくくなる一方、完全に任せきりにするとアイデアが広がりすぎて実行に移りにくくなることもあります。
「何を実現したいのか」は明確にする。「どう進めるか」には一定の裁量を持たせる。定期的に壁打ちを行い、アイデアを整理する。実行力の高いメンバーと組ませる。こうした環境づくりによって、創造性は組織の成果につながりやすくなります。
はやみ|採用では、アイデアの面白さだけでなく「その人がどんな環境なら発想を成果に変えられるのか」まで見たいところです。
TOiTOiで、創造性を組織の成果につなげる!
はやみ|創造性は、特別な才能だけで説明できるものではありません。McCrae(1987)の研究では、ビッグファイブの中でも開放特性が創造性や拡散的思考と関係することが示されています。
開放特性が高い人は、新しい経験を受け入れ、未知のものに興味を持ち、異なる考え方を組み合わせることが得意な傾向があります。そのため、企画・新規事業・研究開発・マーケティングなど、変化や発想が求められる仕事で力を発揮しやすい可能性があります。
一方で、開放特性が高いだけでは成果にはつながりません。アイデアを形にするには、実行力・継続力・調整力・現実的な判断も必要です。だからこそ、性格特性を単独で見るのではなく、職務内容や組織のフェーズと合わせて理解する視点が求められます。
組織のコミュニケーション改善クラウド「TOiTOi」では、社員一人ひとりのパーソナリティや行動傾向を可視化し、採用・配置・育成の判断材料として活用できます。

「この人は、どのフェーズで創造性を発揮しやすいのか」
「アイデアを形にするために、どんなメンバーと組ませると機能するのか」
「開放特性の高い人材が、この環境で力を発揮できる余白があるのか」
こうした視点を持つことで、企画職採用や新規事業人材の見極めは、より精度の高いものになっていきます。
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参考文献
McCrae, R. R.(1987). Creativity, divergent thinking, and openness to experience. Journal of Personality and Social Psychology, 52(6), 1258–1265.
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