2020年12月23日公開

【人事部向け】失業保険とは?知っておきたい雇用保険の基礎知識

失業保険とは、離職者が給付金を受け取れる仕組みを指し、「基本手当」や「失業給付」とも呼ばれています。給付金を受け取るためには離職者本人だけでなく、事業主による手続きも必要です。

 

その一方で、人事部で働く方でも、以下のような悩みを抱えた経験は少なくないかもしれません。

 

「失業保険って結局どんな内容なの?」
「失業保険や雇用保険って、いまいちよくわからない」
「人事部として必要な業務や対応を、改めて確認しておきたい」

 

組織の人材管理を行う人事部にとって、失業保険や雇用保険の手続きは不可欠な業務と言えるでしょう。そのため今回は人事部の方を対象に、失業保険について下記の項目に沿って解説します。

 

・失業保険の概要や適用範囲

・雇用保険の手続きを行うべきタイミングと方法

・失業保険給付に必要な書類や手続き

気になる項目を読んでいただければ、失業保険に関する必要な対応を把握できます。

 

注意点や具体例も解説しているため、必要な手続きのシミュレーションをあらかじめ行うことも可能です。スムーズかつ正確な業務遂行の実現にぜひお役立てください。

 

そもそも失業保険とは

失業保険の概要について、以下の3つの項目に沿って紹介します。

 

・雇用保険の加入者が受け取れる給付金
・雇用保険の給付に必要な手続き
・雇用保険の適用範囲

 

1つずつ読み進め、失業保険について理解を深めていきましょう。

 

雇用保険の加入者が受け取れる給付金

失業保険とは、正式には「雇用保険制度」における、失業後の労働者に生活の安定や再就職支援を提供する目的で設けられた給付金の仕組みを指します。

 

「基本手当」や「失業給付」とも呼ばれ、受け取りには一定の手続きが必要です。「雇用保険」は、事業主が労働者を雇う際に手続きが義務付けられている制度です。

 

事業主による手続きを通して、労働者は「雇用保険」の被保険者となります。労働者は被保険者となることで、退職時に一定の手続きを経て失業保険を受け取ることが可能です。

 

雇用保険の給付に必要な手続き

雇用保険は、労働者を1人でも雇っている事業主に対して、原則として強制的に適用される制度です。

 

労働者の生活や雇用の安定、就職の促進が、その目的として掲げられています。そのため、必要に応じて被保険者に対して給付がなされる制度です。

 

制度を適切に運用するために、事業主には、労働保険料の納付や雇用保険法の規定による各種届出等の義務が課されます。

 

人事部の担当者は、労働者の入社・退職時に、雇用保険に関する手続きを業務として担います。

 

雇用保険の手続きには、期限が定められているものもあります。そのため人事部には、速やかかつ正確な業務遂行が求められるでしょう。

 

雇用保険の適用範囲

雇用保険が適用される範囲として、主に2つの基準が定められています。さらに平成29年からは、情勢の変化に応じて適用範囲が拡大されました。そこでこの項では、2つの基準と新たに追加された適用範囲について解説します。

 

雇用保険の手続きが必要な労働者を正確に見極め、間違った対応を取らないよう、あらかじめ確認しておきましょう。

 

適用基準は2つ

雇用保険の適用基準は以下の2点です。

引用元:厚生労働省『雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!』

 

いずれにも該当する労働者が、雇用保険の被保険者となります。該当する労働者に対しては、必ず雇用保険の手続きを完了させましょう。手続きの方法は追って解説します。

 

65歳以上の労働者も適用範囲

平成29年1月より、65歳以上の労働者も高年齢被保険者として雇用保険の適用対象となりました。そのため、65歳以上の労働者が離職した場合においても、受給要件を満たしていれば給付金を受け取ることが可能です。適用拡大による注意点として、以下の2つを紹介します。自社において該当するケースがないか確認しましょう。

 

・平成29年1月1日以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合

雇用した時点より、高年齢被保険者となります。そのため雇用した日の属する月の翌月10日までに、管轄のハローワークに届出を提出する必要があります。

 

・平成29年1月1日以前より65歳以上の労働者を雇用している場合

現在も継続して雇用している場合、2つの適用基準を満たしていれば雇用保険の対象となります。平成29年1月以降に新たに雇用した65歳以上の労働者のみが対象というわけではありません。

 

参考元:厚生労働省『雇用保険の適用拡大等について』

 

雇用保険の手続きを行うべきタイミングと方法

雇用保険の手続きを行う際には、以下のように2つの主なタイミングとその他のタイミングがあります。それぞれにおける手続き方法は異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

 

・労働者の雇用時
・労働者の離職時
・その他のタイミング

 

それぞれのタイミングにおける手続き方法を、詳しく解説します。

 

労働者の雇用時の手続き方法

労働者を新たに雇用した際には、「雇用保険被保険者資格取得届」を、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

 

労働者を初めて雇い入れる場合は、保険関係成立に関する手続きを済ませた上で「事業所設置届」も提出しましょう。提出の期限は、被保険者となった日の属する月の翌月10 日までです。

 

また、労働者が被保険者となった際には、ハローワークの長による確認を受けなければなりません。確認がなされると「雇用保険被保険者証」と併せて「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。

 

これは、労働者自身が雇用保険の加入手続き等の完了を確認するために必要な書類です。事業主は、この通知書を被保険者本人に確実に渡すよう努めましょう。

 

労働者の離職時の手続き方法

労働者が離職する際には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。提出の期限は、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内です。

 

離職証明書を提出すると、ハローワークから「離職票」が発行されます。事業主は郵送などにより、「離職票」を離職者に渡しましょう。「離職票」は、失業保険の給付の受け取りに必要であり、離職者にとって離職を証明する大切な書類です。

 

そのため労働者の離職時には、ハローワークへの書類提出と離職者への「離職票」送付のどちらも、欠かさず行いましょう。

 

その他のタイミング

雇用保険の手続きを行うタイミングは、雇用時と離職時のほかに6つあります。具体的には以下の通りです。

 

・同一の法人内で転勤する場合

・高年齢雇用継続給付を受けようとする場合

・雇用する被保険者が育児休業を開始する場合

・育児休業給付金を受けようとする場合

・雇用する被保険者が介護休業を開始する場合

・介護休業給付金を受けようとする場合

これらのタイミングにおいて、雇用保険の受給が可能です。そのため、該当する労働者の雇用保険の手続き対応が、事業主には求められます。

 

企業によっては、事業所間での転勤や育児・介護休業の開始はよくあるケースかもしれません。しかしそれぞれの場合によって、提出書類や期限は異なります。誤りがないようにあらかじめ把握しておくのに加え、その都度しっかり確認するよう心がけましょう。

 

参考元:厚生労働省「手続き一覧」

 

失業保険給付に必要な手続き

離職した際に労働者が給付金を受け取れる雇用保険の仕組みは、「失業保険給付」や「基本手当」「失業給付」とも呼ばれます。給付金を受け取るためには、離職者本人だけでなく事業主にも求められる手続きがあります。事業主に必要な手続きについて、以下の3つの項目を中心に紹介します。

 

・手続きの流れ
・手続きに必要な書類
・雇用保険被保険者離職証明書が作成不要なケース

 

労働者の離職時にスムーズに対応できるよう、確認しておきましょう。

 

手続きの流れ

労働者が離職した際に、事業主に求められる手続きの流れは以下の通りです。

 

 

手続きにおいて、気をつけたい注意点が以下の2点です。それぞれ事前に確認しておきましょう。

 

②ハローワークにて資格喪失手続き

手続きは、従業員の退職日の翌日から10日以内に行う必要があります。離職が決定した際には、早急な対応を心がけましょう。

 

④離職者へ離職票を送付
離職者が失業保険の給付を受けるためには、離職票が必要です。離職票の送付は忘れずに行うよう注意しましょう。

 

手続きに必要な書類

事業主が行う雇用保険の資格喪失手続きにおいては、以下の2つの書類作成が必要になります。

 

・雇用保険被保険者資格喪失届

・雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書を提出する場合には、ハローワークに以下の4つの書類を持参しなければなりません。

 

・出勤簿

・労働者名簿

・賃金台帳

・退職理由が確認できる書類

また、雇用保険被保険者離職証明書に関しては、作成が不要な場合もあります。そのようなケースについて、次に具体的に紹介します。

 

雇用保険被保険者離職証明書が作成不要な場合がある

離職者の離職理由によっては、雇用保険被保険者離職証明書が不要な場合があります。それが以下の2つのパターンです。

 

・離職者が離職票を必要としない場合
・労働者が死亡した場合

 

それぞれについて確認しておきましょう。

 

離職者が離職票を必要としない

離職者が離職後すぐに働ける転職先が決まっている場合、離職票は不要です。それゆえ、事業主は離職証明書を作成する必要がありません。

 

次の転職先が決定している場合は、失業給付の対象ではないため離職票は不要です。そのため労働者の離職が決まった際には、次の転職先が決まっているかを確認した上で、書類作成に取り組みましょう。

 

労働者が死亡した場合

労働者が死亡した場合には離職票が不要となるため、離職証明書の作成も必要ありません。ただし、雇用保険被保険者資格喪失届は提出する必要があります。忘れずに作成・提出の対応を行いましょう。

 

まとめ

今回は人事部の方向けに、失業保険について下記の項目を中心に解説しました。

 

・失業保険の概要

・雇用保険の手続きを行うべきタイミングと方法

・失業保険給付に必要な手続き

失業保険の手続きは、人事部において不可欠な業務であり、正確な手続きが求められます。さらにケースごとに提出期限が定められているため、スピーディーな対応も求められるでしょう。

 

そのため、初めて担当する方にとっては、複雑で取り組みにくく感じる可能性もあるかもしれません。しかし、手続きの流れや必要性を理解できれば、スムーズかつ正確に対応することが可能です。

 

対応が必要な際にすぐに取り組めるよう、あらかじめ業務の流れをシミュレーションすることや、パターン別に必要な対応を確認しておきましょう。

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