
2022年5月11日公開
従業員満足度の向上を目指す4つの方法や企業事例を解説
企業の継続的な成長には従業員満足度の向上が欠かせません。
なぜなら従業員満足度の向上によって顧客へ提供するサービスの質は高まり、結果として企業の収益につながるためです。しかし、「向上に取り組むものの、結果につながらない」「そもそも自社の従業員満足度はどれくらいなんだろう」などと悩む方も多くいるかもしれません。
そこでこの記事では、従業員満足度に関する悩みや疑問を解決できるよう、下記項目を中心に紹介します。
・従業員満足度が高い/低い企業の特徴
・向上を目指す4つの方法
・企業の成功事例3選
従業員満足度の基礎知識から丁寧に振り返るため、的を得た効果的な向上方法を学ぶことができます。自社における取り組みを検討したい方は、自社の現状と照らし合わせながら参考にしてくださいね。
従業員満足度とは
従業員満足度とは、社員が会社で働くことへの満足度を表します。
具体的には、業務内容や評価、処遇、福利厚生などさまざまな面から社員はその会社で働くことへの満足感が得られます。満足度の向上によって高いモチベーションで業務ができ、業務効率の改善やパフォーマンスの向上が可能です。
その結果、企業にとっては業績向上を目指せるため、企業成長にとって欠かせない取り組みの1つでしょう。
従業員満足度を構成する要因
満足度を構成する要因は、従業員の数だけ存在すると言っても過言ではありません。実際に、会社で働くことへの満足度は個人によって感じ方が異なるため、構成する要因も同じように多岐に渡ります
しかし、その中でも研究や分析を重ね明らかになった理論があります。そこで次は、向上を目指す際に覚えておきたい内容について解説します。
ハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)
二要因理論はアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏が提唱し、動機付け・衛生理論とも呼ばれる理論です。
この理論では、仕事における満足を引き起こす要因である「動機付け要因」、不満足を引き起こす要因である「衛生要因」、この2つの要因が仕事への満足度に関わると説かれています。
そのため従業員満足度の向上に取り組む際には、動機付け要因と衛生要因それぞれに適切な取り組みが必要であると考えられます。
具体的には、動機付け要因の増加によって満足度を高め、衛生要因の改善によって不満足度を減らす取り組み方法です。動機付け要因と衛生要因に作用する具体的な事柄は、それぞれ以下の通りです。
二要因理論に基づいた満足度向上への具体的な取り組みについては、「従業員満足度を向上させる方法」の章にて紹介します。
従業員満足度の向上がもたらす影響
従業員満足度の向上は、社員にとって高いモチベーションを持って業務に励むことができ、業務効率の改善や生産性向上に期待できます。そのため企業は適切な満足度の実現や維持によって、継続的発展を目指すことが可能です。
従業員満足度の向上によって企業成長という影響が生み出される因果関係として、サービス・プロフィット・チェーンという構造があります。
仕組みを理解することで満足度向上に取り組む目的や課題が明確になるため、今一度理解を深めておきましょう。
SPC(サービス・プロフィット・チェーン)の好循環
サービス・プロフィット・チェーン(Service Profit Chain)とは、SPCとも呼ばれ、ハーバード・ビジネススクールのヘスケット教授とサッサー教授によって提唱された概念です。
従業員満足・顧客満足・企業の利益の因果関係を示したフレームワークであり、3つが満たされている関係を示します。
具体的には、高い従業員満足度によって企業が提供するサービスの品質が向上され、顧客の満足度は高まり、最終的には企業の利益が増えていくという一連の流れです。
そして企業は増加した利益を従業員満足度の向上に充てることによって、更なる良い循環を生み出します。
このように従業員満足度の向上はSPCの好循環の起点となり、企業経営においてさまざまな良い影響を生み出します。ここからはSPCの好循環によって得られる具体的なメリットを3つ紹介します。
顧客満足度の向上
満足感を得られながら働ける環境は社員のモチベーションを高め、業務の質や効率を高めることにつながります。その結果、顧客へ提供するサービスの品質が向上するため、高い顧客満足度を得られるでしょう。
一方で、例えば接客業においてやる気のない態度で業務を行っては、顧客の気分を害し不快な印象によって客足が遠のく可能性もあります。
高い顧客満足度を得るためには従業員の業務に対する意識が重要であり、高いモチベーションによって顧客の立場に立った質の高いパフォーマンスの発揮が可能です。
企業の業績向上
従業員満足度の向上によって生み出される高い顧客満足度は、業績向上の一因になります。なぜなら高い顧客満足度は、売上の増加や契約数の向上と業績に直接関わる成果を生み出すからです。
併せて高い満足度は評判として顧客に広まることから高いリピート率や新規顧客獲得へもつながり、将来的な成果として期待できるでしょう。
そのため、企業経営において高い顧客満足度は継続的な発展に欠かせない要因であると考えられます。
社員の定着率アップ
高い顧客満足度や業績向上を実感できる働きは、従業員にとって自らの成長を感じられ、社員の定着率を高めます。反対に、成果や達成感を得られない職場ではあまり働きがいを感じられません。
さらに、企業が業績向上で得られた利益を福利厚生や人材育成に投資することで、従業員は企業からの期待感を感じられます。
自身の成長や責任感を実感できる職場では貢献意欲が高まるため、社員の定着率は向上するでしょう。
従業員満足度が高い/低い企業の特徴
従業員満足度が高い、もしくは低い企業には、職場環境にそれぞれの特徴が現れます。この章では代表的な特徴を紹介するので、自社の職場環境と照らし合わせ従業員満足度の現状確認の1つとして参考にしてください。
従業員満足度が高い企業
従業員満足度が高い企業において、代表的な特徴が以下2つです。
・コミュニケーションが活発
社員の特徴として挙げられるのは、一人ひとりが主体的に働いているという点です。
社員は企業での働きに満足感が得られることで、自分自身の働きによって企業に貢献しようとする意識が高まります。そのため、当事者意識をもって業務に励み、課題を解決しようとする主体的な働きが見受けられます。
職場環境の特徴として挙げられるのが、コミュニケーションが活発である点です。
高い従業員満足度を生み出す職場は安心して働ける職場環境でもあるため、積極的な意見交換が行われます。そのため有意義なミーティングや議論が行われやすい環境であるとも言えるでしょう。
また、活発なコミュニケーションは互いを補い合う協力体制にもつながり、より効率的な業務や高い成果を得られる機会にもなり得ます。
従業員満足度が低い企業
従業員満足度が低い企業において、代表的な特徴が以下2つです。
・離職率が高い
社員の特徴として挙げられるのは、向上心が低い様子が見受けられる点です。
その企業での働きに満足を感じられていないことで、業務へのやる気も起きず能動的な働きになります。目の前の業務をこなすような働き方や、モチベーションの上がらない働き方では満足度が高まることもないため、引き続き従業員満足度の向上には期待できないでしょう。
また、職場環境の特徴として挙げられるのが、離職率が高い点です。能動的な働きやモチベーションの上がらない職場で働き続けることで、従業員はより良い環境を求め転職を視野に入れる可能性も高いでしょう。
その結果、離職率は高まり、優秀な人材の流出にもつながります。
離職率や人材の流出が高い職場では周囲の従業員にとっても影響を与える可能性も高いため、なるべく早く従業員満足度を高める取り組みが必要です。
従業員満足度を向上させる方法
従業員満足度を向上させる方法として、二要因理論(動機付け・衛生理論)に基づいた取り組みを紹介します。
二要因理論とは、仕事における満足度は「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因で構成されているという考え方です。より詳しい解説は「従業員満足度とは」の章を参考にしてください。
この章では具体的な取り組み方法を解説していくので、自社への導入イメージに活用してくださいね。
従業員が感じる「満足」と「不満足」へアプローチする
仕事における満足度は「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)で構成されているため、満足度の向上にはそれぞれへのアプローチが必要です。それぞれへのアプローチをまとめると以下の通りになります。
ここからは上記に表したアプローチ方法を具体的に4つ紹介します。
企業ビジョンへの共感
企業の方向性を示す経営方針や企業理念、ビジョンなどに共感を示す従業員は、業務への責任感が強く、高いモチベーションで業務に取り組みます。一方で、企業の方向性に関心がない場合や不満がある場合は能動的な働きとなり、満足度は向上されないでしょう。
そのため、企業は、目指す姿や方向性に従業員から共感を得られるような工夫が必要です。
具体的には、直接経営陣から従業員にビジョンを伝達する機会を定期的に設けることや、評価項目において企業理念を反映させる取り組みなどが挙げられます。
単にビジョンを伝えるだけでなく、従業員を巻き込んだ共有となるよう自社に合った方法を検討しましょう。
人事評価制度の見直し
公平な評価を実現する人事評価制度は、従業員のモチベーションを高め継続的に満足度を向上させることが可能です。
従業員は自らの努力や成果の承認によって気持ちが満たされ、次なる目標へのやる気や企業への貢献意欲の向上につながります。
評価によって満足度を向上させるために最も重要なのは、公平な評価項目の設定です。
具体的には、評価項目の達成度合いに応じた報酬を明確に提示し周知させることや、単独ではなく多面的な評価者を設けることが挙げられます。
また、従業員が抱える不満を明確に改善させるために、評価制度に関するアンケート調査を行い結果を反映させることも1つの方法として考えられるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化
活発なコミュニケーションが行われる職場は風通しがよく、従業員の帰属意識が高まります。なぜなら挨拶や雑談など活発な交流が行われる環境は、従業員にとって安心感や安全感が得られ職場での居場所を感じられるためです。
そのため、業務で困った場合に気軽に相談ができることや、会議においても発言がしやすく、互いにとって新たな学びや気づきが得られるでしょう。
このような職場では従業員は働きがいや帰属意識の高まりを感じられるため、満足度は向上します。
企業の取り組みとしては、コミュニケーションが活性化される仕組みの導入がおすすめです。
具体的には、ランチミーティングなど従業員同士の交流の場を設けることや、従業員同士で表彰し合う制度によって互いに認め合う風土を築くことなどが考えられます。
福利厚生の整備
福利厚生の整備によって、従業員のワークライフバランスを保つことは満足度の向上に近づきます。
休息時間やプライベート時間の確保ができない環境では、高いモチベーションで業務に励み続けることは困難でしょう。そのため具体的な整備内容としては、育児や介護休暇など休暇制度の設立や、通勤や住宅への手当の充足などが挙げられます。
同時に、福利厚生は導入だけでなく活用されやすい環境を整えることも重要です。
活用されなければ従業員のワークライフバランスを保つことは実現されないため、導入と同時に活用しやすいシステムの構築や風土づくりを目指しましょう。
従業員満足度を計測する調査方法
従業員満足度の向上には、現状の課題特定と取り組み前後の変化を把握することが重要です。なぜなら、課題の特定は明確な施策を打ち立てられ、変化の把握は更なる効果的な施策を検討できるためです。
そのためこの章では満足度を可視化できる以下2つの指標と調査方法を紹介します。
・従業員満足度(ES)調査
・eNPS調査
従業員満足度(ES)調査
質問項目を自ら設定し従業員に答えてもらう調査方法です。
回答を集計し分析することによって、満足度向上における課題を見出し改善策を検討できます。改善策の実施後に同じ項目で調査を行うことで、満足度の変化を伺うことも可能です。
調査における重要なポイントとして、明確な質問項目を設定することが挙げられます。
曖昧な項目では調査を行っても課題が見えにくくなるため、予測される課題や問題点に焦点を当て改善すべき点が明らかになるような項目を設定しましょう。
eNPS調査
eNPS(Employee Net Promoter Score)調査は、潜在的な満足度を図る指標として、近年注目を集めています。
調査方法として「自社で働くことを人に勧められるか」という点を軸に、従業員が0~10の11段階で採点することで、従業員の正直な心情が反映される調査と考えられています。
満足か不満足かという2つの選択肢ではなく11段階から満足度を図る測定方法は、より具体的な調査結果が得られることにも期待できるでしょう。
例えば、不満が特に高い職種や部署なども特定できるため、効果的な対策を立てやすいメリットが得られます。
eNPS調査は満足度をより細かに可視化できることから特におすすめの調査方法です。
従業員満足度を高めている企業事例3選
独自の取り組みによって従業員満足度を高めている企業事例3つを紹介します。
・シスコシステムズ合同会社「3つの要素変革による企業風土の醸成」
・サイボウズ株式会社「従業員一人ひとりの働き方を支援」
・株式会社サイバーエージェント「有形無実化しない福利厚生を実現」
それぞれ具体的な取り組みや成果についてまとめたので、1つずつ参考にしてください。
シスコシステムズ合同会社「3つの要素変革による企業風土の醸成」
シスコシステムズ合同会社では、従業員を巻き込んだ企業全体の働き方改革によって満足度の向上を実現しました。
具体的には、カルチャー(企業価値)、プロセス(人事評価制度)、テクノロジー(IT活用)の3つに注力し新たな働き方を企業文化として根づかせています。在宅勤務の推奨や、ITツールを活用した交流機会の導入など、柔軟で多様な働き方を企業の制度として支え満足度向上に励みました。
いずれの取り組みにおいても導入だけでなく従業員からの理解と広まりを重視し取り組んだことで、企業の風土として根付いていったことが伺えます。
その結果、社内意識調査において80%が「自社で働くことを誇りに思う」と回答しており、数値としても明確に満足度の向上が現れています。
参照:ワークスタイル百科『ワークスタイル20 シスコシステムズ合同会社』
サイボウズ株式会社「従業員一人ひとりの働き方を支援」
サイボウズ株式会社は、「従業員のため」という目的を徹底し満足度の向上に取り組み始めました。
具体的な流れとしてまず初めに従業員が困っていることに焦点を当て、多様な働き方を推奨する新たな人事制度を開始します。
この制度の設立によって、育児やプライベートの時間を確保しつつ働き続けることを望む従業員から大きな満足度が得られました。
その後も従業員の不満やニーズを叶える制度を次々と導入し、最終的には「100人100通りの働き方」を支援する企業となっています。
結果として離職率が20%以上減少しましたことから、従業員の立場に立った職場環境を実現していることが伺えます。
株式会社サイバーエージェント「有形無実化しない福利厚生を実現」
有形無実化しない合理的な福利厚生の実現によって従業員満足度の向上に取り組むのが、株式会社サイバーエージェントです。
企業文化として人材が安心して挑戦を続けられる環境づくりを目指し、独自の人事制度を数多く取り入れました。その中でも福利厚生は、設立するだけでなく従業員が活用しやすく合理的な内容を重視することで、ワークライフを充実させた働きやすい環境を実現しています。
例えば、家賃補助制度としてオフィスの最寄駅から2駅以内に住む社員には月3万円の補助を支給する「2駅ルール」があります。この制度はどんな従業員でも活用しやすく、仕事とプライベートの両立が叶えやすい合理的な福利厚生です。
常に従業員からも福利厚生のアイデアを求めるサイバーエージェントは、働きがいのある会社ランキングにこれまで計10回の選出という経歴を誇っています。
まとめ
今回は従業員満足度について、以下の項目を中心に紹介しました。
・向上によってSPCの好循環が生まれる
・従業員満足度が高い/低い企業の特徴
・向上を目指す4つの方法
・企業の成功事例3選
従業員満足度の向上は、企業の継続的発展につながる重要な取り組みです。その一方で可視化が難しいため明確な課題や変化が捉えにくい場合もあるかもしれません。
しかし今回紹介した従業員満足度を構成する要因を理解し、自社に適切な向上方法や測定方法を取り入れることによって、従業員満足度の向上は徐々に成果として現れます。
ぜひこの機会に自社の課題に合わせた向上方法や測定方法を検討してみましょう。