2022年7月22日公開
HPIをより効果的に行うための「4つのフレームワーク」とは?
「従業員が期待しているほどのパフォーマンスを発揮できていない」
「社内・社外問わず社員研修には積極的に参加させているのに、なぜか仕事のパフォーマンスに反映されない」
このように悩んでいる方も多いでしょう。近年ではこのような状況を解決すべく、HPI(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)という概念が登場しました。
HPIとは、「人間が原因となって発生している、予想と実際の成績の差(パフォーマンス・ギャップ)を解消するためのアプローチ方法」のことです。簡単に言い換えると、「こちらが期待しているパフォーマンスを発揮してもらうため、何が原因でパフォーマンスが落ちているのか明確にする」のがHPIの役割です。
例えばパソコン作業が遅い従業員がいた場合、パフォーマンスギャップとして「本人のスキル不足」「パソコンの不具合」「仕事環境」など、複数考えられます。HPIを活用したアプローチでは、具体的に何が本人の仕事のパフォーマンスを低下させるのか、システマチックにアプローチします。今回は下記の項目について解説します。
・HPIとは
・HPIのフレームワークを活用するメリット
・HPIを考えるうえで重要な4つのフレームワーク
「HPIについて、より実践的な内容について学びたい」という方は、ぜひ最後まで見てください。
目次
HPIとは?フレームワークを活用すべき?
HPIとは、「人間が原因となって発生している、予想と実際の成績の差(パフォーマンス・ギャップ)を解消するためのアプローチ方法」のことです。例えば「研修を行ったのに成果がでてこない」なんて経験をした人もいるでしょう。
このアプローチの場合、パフォーマンス・ギャップの原因は「本人のスキル不足」で、対処法として「研修」を行っています。しかし実際に研修を行い、それでも成果が上がらない場合は、パフォーマンス・ギャップの発生源が別にあると考えられます。
ところが多くの場合、期待していたほどの成果が出ないと「本人のスキル不足」「やる気がないのが問題」など誤った対処法をしてしまうことはよくあることです。HPIは、こうした問題を解決するための考え方です。
根本的なパフォーマンス・ギャップの原因を発見するため
HPIのフレームワークを活用するメリットは、パフォーマンス・ギャップの発生原因を早く正確に特定しやすいことです。
そもそもHPIの目的は、パフォーマンス・ギャップの原因を発見し改善することです。しかし実際には「何が原因でパフォーマンスが向上しないのか分からない」とクライアント自身が悩んでいたり、もしくは「社員研修を徹底すればパフォーマンスは向上する」など誤った思い込みをしたりしているケースも多々あります。
パフォーマンス・ギャップの発生原因を正確に発見・解消するには、フレームワークを活用してシステマチックにアプローチするのがいいでしょう。
このような理由からHPIを活用して社員の生産性向上を目指すなら、フレームワーク活用は必須といえます。
費用対効果を高めるため
HPIのフレームワークを活用するメリットは、解決策の費用対効果を高めるためです。
パフォーマンス・ギャップの原因を特定しても、例えば解決に多額の投資が必要になると、「投資しても期待しているだけのリターンを得られるのか」
「本当に問題は解決するのか」と二の足を踏んでしまうものですよね。
そこで活用したいのがフレームワークです。フレームワークを使うことで、どの解決策が最もコスパが良い(投資や費用を押さえつつ、最大限に効果を得る)のか判断できます。パフォーマンス・ギャップの原因を特定しても、解決に多額の投資が必要になると「本当に効果があるのか」「他に良い方法があるのでは?」と、上司を説得しにくいですよね。
そこでフレームワークを活用すれば、複数の解決案をリストアップしたり費用対効果を予測したりできます。それにより、解決に向けた具体的な行動を起こしやすいです。
次は、パフォーマンス・ギャップの原因を特定・改善するために役立つフレームワークを4つ紹介します。
HPIを考えるうえで重要な4つのフレームワーク
HPIを活用する上でおすすめの「4つのフレームワーク」について解説します。
・フロントエンド分析
・ホワイ・ツリー
・イシカワダイアグラム
・ROIの算出
目的によって活用するフレームワークが異なるため、目的に合わせて最適なフレームワークを選びましょう。
1.フロントエンド分析
フロントエンド分析とは、「本来あるべき理想の状態(ゴール)」を明確にするためのフレームワークです。
通常、仕事を行う場合は、仕事環境が整っており、そして先輩や上司からの適切なサポートを得られる状態で、本人がタスクを実行するという流れで行われてます。
しかしフロントエンド分析では、「理想の状態や目指すべき目標(ビジネスゴール)」から逆算して、「ゴールに到達するには何をするべきなのか」そして、「どの要素がゴール達成の可否を大きく左右するのか」を明らかにします。
フロントエンド分析が重要な理由
フロントエンド分析は、HPIを活用してパフォーマンス・ギャップを特定・解消するために一番重要なフレームワークといっても過言ではありません。なぜかというと、目指すべき目標(ゴール)が不明瞭だと、実行すべき施策を誤る可能性が高くなるからです。
例えば「営業部が社内にいる時間が長いこと」に対して問題だと感じており、「少しでも長く営業部を外回りさせる」ことを目標として設定したとします。しかしヒアリングを重ねてみると、「営業部の社内滞在時間」が問題ではなく「売上の増加」が真に達成したい目標であることが判明しました。
フロントエンド分析をはじめに実行しておけば、最終的な真の目標は「大切なのは外回りの時間ではなく、売上の増加」であることだと共有できます。もし、フロントエンド分析を行わず、対策案を実施した場合、真の目標は解決されないでしょう。
HPIの目的は「パフォーマンス・ギャップを解消する」ことです。そのためには、達成すべき目標(ゴール)を明確かつ正しいものにしなければなりません。フロントエンド分析を活用することで、結果に繋がる真の目標を発見できます。
2.ホワイ・ツリー(Why Tree)
ホワイツリーは、「原因の分析」をするときに活用できるフレームワークです。問題が発生している原因を徹底的に掘り下げることで、本質的な問題点を発見します。
ホワイツリーを活用することで、複数の問題点を洗い出し、本質的に何が問題になっているのか見極めることが出来ます。これによって、HPIの「問題の分析」工程で、より深い原因分析を行えるでしょう。
ホワイ・ツリーの実行手順
ホワイ・ツリーが重要な理由
「問題の分析」工程でうまくいかない場合、下記の原因が考えられます。
そこでホワイツリーを活用すれば、一つの問題に対して、問題を発生させている様々な可能性を発見できます。
原因分析に失敗すると、後に実行する「手段の選択・実施」といったプロセスにも大きな悪影響を与える可能性があるものです。HPIを活用するときは、ホワイツリーを活用して、根本原因の分析を徹底しましょう。
また、ホワイツリーと同じくらい重要なフレームワークに「イシカワダイアグラム」が挙げられます。
3.イシカワダイアグラム
ホワイツリーと同様におすすめのフレームワークが「イシカワダイアグラム(別名:特性要因図)」です。
イシカワダイアグラムでは、問題に対して「リソース・知識・情報・プロセス」の4つの観点から原因分析を行うフレームワークです。ホワイツリーは「なぜ」をひたすら突き詰める原因分析の方法でしたが、イシカワダイアグラムでは4つの観点から問題の根本原因を洗い出します。下記の手順で行います。
イシカワダイアグラムの実行手順
イシカワダイアグラムを活用するメリット2つです。
・原因と結果を、視覚的に分かりやすく把握できる
・4つの観点から問題分析するため、抜け漏れが発生しにくい
イシカワダイアグラムが重要な理由
パフォーマンス・ギャップの特定をしていると、「問題に対して原因が多すぎる」というケースに直面することもあります。原因が多すぎる問題に対してホワイツリーで対応すると、記載内容が多くなりすぎて返って分かりにくくなるもの。
しかしイシカワダイアグラムを活用すれば、「リソース・知識・情報・プロセス」という4つの観点から原因分析を行うため、本当に解決すべき問題点を発見しやすくなります。「原因の分析」を行うときは、ホワイツリーと併用して活用したいフレームワークです。
4.ROIの算出
「解決策はいくつか挙がったけれど、費用対効果が一番良い施策がどれか分からない」
「パフォーマンス・ギャップ解消には多額の設備投資が必要だが、上司を納得させれるだけの根拠に乏しい」
このように悩んでいる方は、ROIを活用してソリューションの費用対効果を計算してみてはいかがでしょうか。
ROIの計算式
例えば営業マンにタブレットを持たせることで利益が年間で100万円アップし、かつタブレットの導入費および通信費に年間で50万円発生した場合、下記の計算式で計算できます。
複数の施策が挙がった際に、どのソリューションを実行すべきか迷ったときは、ROIを算出して比較検討してみてはいかがでしょうか。
ROIが重要な理由
パフォーマンス・ギャップ発生の原因が1つとは限らないように、問題を解決するための方法が1つとも限りません。私たちは限られたリソースの中から、選択肢を取捨選択して実行しなければなりません。
複数の選択肢の中から1つ選ぶ場合、もっとも費用対効果が高い(いわゆる“コスパが良い”)選択をするのが最も合理的です。しかしパフォーマンス・ギャップ解消の施策となると、一つの指標で比較しにくいでしょう。
そこでROIを算出すれば、費用対効果がどれぐらい良いのか見積もって、選択肢を比較検討できます。またROIで算出した数字を活用すれば、上司や決裁者を説得するための材料にもなるでしょう。
パフォーマンス・ギャップ解消のソリューションが複数ある状態になったら、ROIの算出を行ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は下記のポイントを中心に、HPIにおすすめのフレームワークについて解説しました。
・HPIのフレームワークを活用する重要性
・フレームワークの概要と重要性
・フレームワークを活用するイメージ
「思っていたように生産性が上がらない」
「成果が思うように挙がらない」
このようなお悩みを持つことは、仕事をしていれば誰でも直面することがあります。しかし多くの場合、「個人のスキルアップ」や「モチベーション向上」などの手段で解決するケースが多いのではないでしょうか。
もちろんスキルアップやモチベーションは重要ですが、パフォーマンス向上を阻害している要因は、もしかするとまったく別のところにあるのかもしれません。そして、パフォーマンスを阻害する要因を確実に、かつ効率的に見つけ出す手段がHPIです。
「生産性を上げたい」
「業務効率化を阻害している要因を発見・排除したい」
このように考えているなら、この機会にHPIのフレームワークを活用してみてはいかがでしょうか?