2022年4月5日公開
ハラスメントを防ぐために抑えておきたい!定義や種類、対策方法とは
相手に不快な感情を与えるハラスメントは、内容によって犯罪に該当する可能性もある悪質な行為です。
それゆえ、事前に下記のように考える方も多いかもしれません。
「社内でハラスメントが起きないよう取り組みたい」
「具体的にはどんな行為が当てはまるのか知っておきたい」
特に人事担当者は働きやすい職場環境の整備として、ハラスメント対策を検討している場合もあるでしょう。そこで今回はハラスメントについて以下の項目を中心に紹介します。
・ハラスメントの定義
・及ぼすリスク
・ハラスメントの種類
・対策方法
ハラスメントについて正しい知識を深めることで、効果的な対策に取り組むことが可能です。ぜひ働きやすい職場作りの参考にしてください。
目次
ハラスメントの定義
ハラスメントとはさまざまな場面における「嫌がらせ」を指し、行為によって相手に不快な感情を与えることです。
行為者の意図とは関係なく相手が不快に感じられるとハラスメントとなるため、「そんなつもりはなかった」と無意識に行われている可能性もあります。
そのためハラスメントを防ぐには、組織全体でハラスメントの正しい知識を共有し対策を行うことが重要です。場合によってはハラスメント行為が法律違反に該当することもあるため、加害者や被害者とならないよう周知徹底に取り組みましょう。
ハラスメントに関する法律
日本におけるハラスメントに関する法律は以下の3つがあります。
参考:厚生労働省「職場における 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!」
厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が 事業主の義務になりました」
2020年より施行された労働施策総合推進法は、パワーハラスメント対策について事業主が必要な措置を講じることが義務化されました。詳しい措置内容や他法律については下記の記事を参考にしてください。
さまざまな法整備が進められるほどハラスメントは深刻な社会問題であり、組織は発生への対応だけでなく予防にも取り組む必要があります。ハラスメントによる影響を肝に銘じ、組織全体で適切な取り組みを行いましょう。
ハラスメントが及ぼすリスク
ハラスメントが及ぼすリスクについて、「企業」と「職場・従業員」に分けて紹介します。双方におけるリスクを理解し、正しい知識を身につけましょう。
企業のリスク
企業のリスクとして以下2点が挙げられます。
・法的責任が問われる
・信用を失う
ハラスメントは内容によって法律違反となり、「事業の執行について」行われた場合には会社に法的責任が問われる可能性があります。また2020年に施行された労働施策総合推進法では、パワーハラスメント対策に必要な措置を取ることが事業主に義務付けられています。
このようにハラスメントは社会的にも許されざる行為であり、組織には予防や対策の取り組みが求められているのです。そのためハラスメントの横行が世間に伝わると、社会的信用が失われるリスクがあります。さらには「人を大切にしない」会社として捉えられ企業存続を脅かすほどの影響も考えられるでしょう。
参考:パワハラと会社の法的責任
職場・従業員のリスク
職場・従業員のリスクとして以下3点が挙げられます。
・職場環境の悪化
・離職率が高まる
・精神的ダメージ
ハラスメントは行為を受ける被害者はもちろん、職場全体にも悪影響を及ぼします。
例えば、相手に不快な行動を取る加害者や被害者がいる職場では、他従業員も不安や焦りを感じ職場全体のモチベーションが低下してしまいます。
さらに「次は自分が被害者になるかもしれない」といった不信感や、「被害者に何もしてあげられていない」という責任感で精神的なダメージも大きくなります。
このような環境では業務へ専念することや、やりがいを持って働くことが困難となり、離職を決める従業員も増えるでしょう。職場で横行するハラスメントは、被害者だけでなく職場全体の従業員の精神的負担を増加させ、職場から従業員が離れていくリスクが考えられます。
ハラスメントの種類
ここからはハラスメントの中でも代表的な3つのハラスメントと、その他のハラスメントについてまとめて紹介します。どのような行為がハラスメントとなるのか内容を確認しておきましょう。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントは、地位や権力の優位性で相手に不快を与える行為です。具体的には以下の行為が挙げられます。
・明らかに達成できない過剰なノルマを課す
・仕事のミスを執拗に叱る
・他社員の前で叱責される
例えば上司や管理職、先輩などの地位や権力を利用し苦痛を与える行為は、相手の心身に大きなダメージを与えます。さらに被害者は行為者の地位に萎縮し、反論や反発ができない悪循環を生み出すのです。
業務上適正な範囲を超える指導や指示はパワーハラスメントに当たり、事件や裁判に発展する事例も多い行為です。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメントは性的な嫌がらせを指します。具体的には以下の行為が挙げられます。
・性的な関係を要求し断られたことを理由に解雇する
・職場で性的なWebサイトを閲覧し周囲の従業員に苦痛を与える
・性的対象として捉えられる発言を繰り返す
セクシュアルハラスメントには大きく2つの種類があります。
1つ目は不快に感じる性的な言動を拒否した場合に不利益を受ける行為です。2つ目は性的な言動によって職場環境が不快なものとなり、業務に支障をきたす行為です。いずれも被害者にとっては他者に相談や訴えを起こしにくく、繰り返されやすいハラスメントとも捉えられます。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントは、妊娠・出産・子育てに対する嫌がらせです。女性だけでなく男性に対するパタニティハラスメント(パタハラ)もあります。具体的には以下の行為が挙げられます。
・育児休暇制度の取得を許可しない
・妊娠・出産・子育てを理由に仕事を任せない
・「男が取得するのはあり得ない」と育児休暇を取り下げざるを得ない状況にする
マタニティハラスメントには、妊娠・出産・子育ての状態に対する嫌がらせと、制度利用への嫌がらせの2つが挙げられます。
妊娠・出産・子育てはいずれも本人にとって大切なライフイベントであり、どんな人でも嫌がらせをしてはいけない行為です。
上司は本人や家族の健康や意思を第一に考えた上で業務の調整を行うことが求められます。
その他のハラスメント
その他のハラスメントについて以下3つのキーワードに分けて紹介します。
・仕事
・コミュニケーション
・環境
いずれも職場で起こり得るハラスメントであるため、あらかじめ具体例を把握しておきましょう。
仕事に関するハラスメント
仕事に関する4つのハラスメントは以下の通りです。
部下を持つ上司や管理職である場合、時短ハラスメントやリストラハラスメントを起こしてしまう恐れがあります。反対にテクノロジーハラスメントは立場に関係なく誰でも当てはまりうる行為です。
いずれも主観的な意見や要望の押し付けであり、相手にとっては理不尽な行為であるため1人ひとりが相手の立場に立った行動を取れるよう心がけましょう。
コミュニケーションに関するハラスメント
コミュニケーションに関する4つのハラスメントは以下の通りです。
活発なコミュニケーションは働きやすい職場作りにおいて重要ですが、コミュニケーションの取り方には注意が必要です。行為者にとって悪気がなくとも客観的に見るとモラルに欠けていたり、被害者にとって不快に感じるものもあるためです。
例えばアルコールハラスメントは、これまで飲酒を含む会食の場で他者とのコミュニケーションを深めてきた従業員には多く見られる行為です。行為者にとっては親睦を深める目的があったとしても、飲酒の強要はハラスメントと捉えられます。
また恋愛や結婚などプライベートに関わる話題も、場合によっては相手に不快を与えます。そのためコミュニケーションを図る際には相手との関係性やモラルを考慮することが重要です。
環境に関するハラスメント
環境に関する2つのハラスメントは以下の通りです。
働く上で多くの時間を過ごす職場の環境は、従業員のモチベーションに影響を与えます。環境が悪い職場は従業員が業務に専念しにくく働きにくいと感じられてしまうためです。
しかしエアコンハラスメントにおいては、温度の体感は人によって異なるため対策が難しい場合があります。また、スメルハラスメントは行為者が意図せず行ってしまう可能性が高く、周囲も注意をしにくい問題でしょう。
そのため職場環境で考えられるハラスメントには規則を定めることが有効です。
例えば、「夏場のエアコン温度は26度に設定する」といったように具体的な決まりがあると適切な職場環境を保ちやすいでしょう。
ハラスメントの対策
ハラスメント対策でまず重要なのは「行為の予防」です。なぜなら行為者が意図せず行ってしまう可能性があるため、あらかじめ起こさせない環境整備が必要であるためです。
もちろん起きてしまった場合の対応方法も必要であるため、予防方法と対応方法の2つを紹介します。
予防方法
予防方法として以下2つが挙げられます。
・ハラスメントに関する正しい知識の共有
・相談窓口の設置
ハラスメントの予防には正しい知識の習得が不可欠です。ハラスメントによっては無意識の内に行われるものもあるため、従業員全員が正しい知識を身につける必要があります。
知識の共有は意識の統一を図ることができ、ハラスメントの予防となるのです。また社内に相談窓口を設置するとハラスメントになり得る行為の防止に期待できます。
あくまでも行為の報告ではなく相談程度に伺える体制を整えると、ハラスメントかどうか微妙なラインの行為でも対応が可能となり発生の予防につながります。
対応方法
ハラスメント発生の際の対応方法としては以下4つの手順が挙げられます。
・事実関係を迅速かつ正確に確認する
・被害者に対し配慮の措置を行う
・行為者に対し適切な措置を行う
・再発防止に向けた取り組みを検討する
まずは行為の事実関係の確認に取り組みます。当事者だけでなく周囲の人間からも状況を伺うことでより正確な情報を把握することが可能です。
次に被害者に対する配慮を行いましょう。被害者は心身共に大きなダメージを抱えているため、適切な配慮に加えこれから会社が取り組む対応について説明しなるべく安心感を与えられるよう努めます。
行為者には会社の規則や法律に沿った適切な措置を検討し決定します。
また同様の行為の再発防止を目的とした取り組みについて話し合いましょう。今回の発生の経緯や背景を踏まえ要因を解析し、改善や解消を目指した制度や方針を定めます。
まとめ
今回はハラスメントについて以下の項目を中心に紹介しました。
・ハラスメントの定義
・及ぼすリスク
・ハラスメントの種類
・対策方法
ハラスメントは被害者だけでなく職場や組織全体にも大きな悪影響を及ぼす行為です。その一方で行為者が無意識の内に起こしてしまう可能性もあるため、1人ひとりの意識を高める必要があります。
そのためまずは組織全体で正しい知識を共有し、ハラスメントを起こさせない環境整備に努めましょう。