2022年9月16日公開

従業員ロイヤルティとは?高めていくメリットや主な施策について解説

会社に対する愛着や愛社精神を示す言葉として、「従業員ロイヤルティ」が注目を集めています。社員それぞれの会社に対するロイヤルティが高まることで、離職率の低下や顧客満足度の向上が期待できます。

 

しかし、転職が当たり前になりつつある現在においては、会社に対する愛着や愛社精神を持ちづらくなっているのではないでしょうか?そこで今回は、従業員ロイヤルティについて下記の項目を中心に解説します。

 

・従業員ロイヤルティの意味や、従業員エンゲージメント・従業員満足度との違い

・従業員ロイヤルティを高める3つのメリット

・従業員ロイヤルティの4つの段階

・従業員ロイヤルティを高める主な施策やポイント

まずは従業員ロイヤルティの意味や、従業員エンゲージメント・従業員満足度との違いについて確認しましょう。

 

従業員ロイヤルティとは

ロイヤルティ(Loyalty)とは、日本語に訳すると忠誠、忠義、忠実、誠実、愛情、愛着といった意味があります。そこから派生し、組織・人事領域においては、従業員の自社に対する愛社精神や忠誠心などを指します。

 

従業員エンゲージメントと従業員満足度との違い

従業員ロイヤルティと混同されやすいのが、従業員エンゲージメントと従業員満足度です。従業員ロイヤルティは、従業員の企業や組織に対する忠誠心を指します。そのため従業員と会社との間には、主従関係が成り立ちます。

 

従業員エンゲージメントは、従業員の貢献意欲を指し、個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係を意味します。それゆえ、従業員と会社は対等な関係です。

 

このように、従業員ロイヤルティと従業員エンゲージメントでは、従業員と会社との関係性が異なります。

 

 

また従業員満足度は、社員が会社で働くことへの満足度を表します。

 

 

具体的には、業務内容や評価、処遇、福利厚生などに対する、従業員の評価や満足度のことです。従業員ロイヤルティは、企業に対する愛社精神や忠誠心というように、企業全体に対する評価です。一方で、従業員満足度は待遇・環境・報酬といった、一部の施策に対する評価に過ぎません。

 

 

このように、従業員ロイヤルティは、従業員エンゲージメントや従業員満足度とは違う概念のため、注意しましょう。

 

今後の日本で求められるロイヤルティとは

バブル期世代、氷河期世代、ミレニアム世代、Z世代と価値観の異なる世代が、一つの企業で働くことが当たり前になりつつあります。そのため、愛社精神と一言でいっても時代や世代によって意味が異なります。

リクルートワークス研究所主幹研究員の豊田義博氏は『戦略的「愛社精神」のススメ』の中で、「愛社精神」には3種類あると述べています。

 

 

バブル以前の終身雇用制度や年功序列の家族主義の時代において、愛社精神とは奉社精神を意味していました。しかしながら、終身雇用制度や年功序列が当たり前でなくなりつつある昨今は、社員に奉社精神を求めるのは無理があるでしょう。

 

また、憧れる気持ちから生まれる恋社精神は、恋愛と同じように長く続きません。それゆえ、理想と現実のギャップから、入社後に仕事に対する熱意や情熱、モチベーションを維持できないでしょう。

 

そのゆえ企業は奉社精神や恋社精神ではなく、愛社精神が生まれるような従業員ロイヤルティを高める施策を行う必要があります。

 

従業員ロイヤルティを高める3つのメリット

従業員ロイヤルティを高めるメリットは3つです。ここではそれぞれのメリットについて解説します。

 

人材の確保

従業員ロイヤルティが高い社員は、企業に対する感謝の気持ちや忠誠心を持ちます。また帰属意識も高いため、長く働いてくれる可能性が高いでしょう。

 

それだけでなく、求職・転職活動をしている友人や知人を紹介してくれるなど、リファラル採用にも積極的に取り組んでくれるでしょう。このように従業員ロイヤルティを高めることで、離職率の低下だけでなく、リファラル採用の増加も期待でき、その結果として人材の確保につながります。

 

社員や組織の成長が促進される

仕事や会社に対してロイヤルティが高い社員は、仕事に対して充実感があり、意欲や情熱を持って取り組んでいるケースが多いものです。このようなポジティブな感情は、ワークエンゲージメントの向上にも良い影響を与えます。

 

ワークエンゲージメントの高い社員は自主的に仕事に取り組むことができ、生産性の向上だけでなく、成長も期待できます。また、他の従業員に対する積極的な支援(役割外のパフォーマンス)を行う傾向も高いのです。そのため、個人だけでなく組織全体の成長も期待できます。

 

 

顧客満足度の向上

ある調査によれば、従業員ロイヤルティのスコアが上位25%の支店は、下位25%の支店に比べて、顧客満足度のスコアが2.5倍ほど高いことが分かりました。また、売上トップの店舗の従業員ロイヤルティのスコアは、それ以外の店舗よりも30%ほど高かったという調査結果もあります。

 

参考元:社員の会社に対するロイヤルティ向上は誰の仕事か?(P2)

 

このように従業員ロイヤルティを高めることは、顧客満足度の向上につながります。つまり、従業員ロイヤルティの向上は、業績向上の手段ともいえるでしょう。

 

従業員ロイヤルティの4つの段階

ロイヤルティには4つの段階があります。そのため社員がどの段階のロイヤルティに該当するのかを判断した上で、施策や対策を検討する必要があります。4つの段階とは下記の通りです。

 

心理的ロイヤルティとは、企業に対して愛着や信頼を感じている状態です。心理的ロイヤルティが高いほど、愛着や信頼を感じます。一方で心理的ロイヤルティが低いほど、愛着や信頼を感じていません。

 

行動ロイヤルティとは、行動面から捉えたロイヤルティのことです。行動ロイヤルティが高いほど、会社に対して貢献しようという姿勢や、積極的に業務に取り組むといった行動が現れます。一方で行動ロイヤルティが低いほど、企業に貢献しようと努力する様子が感じられず、転職や退職を考えている可能性が高いでしょう。

 

このように心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティの2軸によって、従業員ロイヤルティの段階を把握できます。

 

真のロイヤルティ

心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方が高い状態です。従業員ロイヤルティを高める施策を実施する際には、社員が真のロイヤルティの状態になることを目指します。またこの状態にある社員に対しては、ロイヤルティが下がらないような施策を打つ必要があります。

 

見せかけのロイヤルティ

心理的ロイヤルティが低く、行動ロイヤルティが高い状態です。このような状態の場合、一見まじめに業務に取り組んでいるように見えますが、会社に対する忠誠心や帰属意識が低いため、何かしらのきっかけがあれば、退職や転職に至る恐れがあります。

 

そのため見せかけのロイヤルティの段階にある社員に対しては、業務に対するやりがいを生み出したり、上司や同僚との対話の機会を設けたりするなど心理的アプローチが効果的です。

 

潜在的なロイヤルティ

心理的ロイヤルティが高く、行動ロイヤルティが低い状態です。この段階の社員は、企業に対して忠誠心や好意的な意見を持っています。貢献したいという意識も高いものの、行動が伴わず、実力が発揮できない状態です。

 

このような状態の場合、スキル不足や業務内容が本人のスキルや特性に合っていない可能性が考えられます。そのため、実力を発揮できるようにサポートすることで、従業員ロイヤルティの向上が期待できます。

 

ロイヤルティなし

心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方が低い状態です。そのため、貢献意識も低く、業務に対して自主的に行動する様子も見られないでしょう。また、自社よりも有利な条件を提示する企業があれば、転職に踏み切りやすいといえます。

 

このような状態の社員に対しては、心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方にアプローチする施策が求められます。ただし、ロイヤルティがない段階の社員のロイヤルティを高めることは、思っている以上に困難です。そのため、このような段階に至ってしまう前に対策を講じたり、採用の段階で見抜く必要があります。

 

従業員ロイヤルティを高める主な施

従業員ロイヤルティを高めるための主な施策について解説します。施策を実施する際には、心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティのどちらにアプローチしていくのかを意識した上で取り組みます。

 

企業の理念やパーパスなどの共有

企業の理念やパーパスなどを共有し、共感することで、愛社精神や忠誠心が生まれます。具体的には下記のような施策です。

 

・企業の理念やパーパスなどについて学ぶ研修を実施する

・社内報で創業時のエピソードや理念に対する思いなどを継続的に発信する

・社会貢献活動の実施や活動内容を内外に発信する

これらの取り組みによって、企業の理念やパーパスなどを共有し、心理的ロイヤルティにアプローチしていきましょう。

 

適切な人事評価が実施できる環境を整える

社員が「会社が自分をきちんと認め、評価してくれている」と感じることは、ロイヤルティの向上につながります。

 

それゆえ、評価に対して納得感があり、適切に評価されていると感じられる人事評価を行う必要があります。そのためには、どのような基準で評価がなされたのかを可視化することで、評価基準がブラックボックス化しないようにするといいでしょう。

 

例えば人事評価には、コンピテンシー評価やMBO(目標管理制度)など複数の評価方法が存在します。自社の状況に合った評価方法を定期的に見直すのもいいでしょう。

 

人事評価制度を整えても、適切に運用されなければ意味がありません。人事評価制度の見直しに加え、評価者に対する研修や評価エラーに対する施策を実施し、適正な人事評価が行われるように環境を整えましょう。

 

 

 

1on1ミーティングの実施

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う対話形式で実施するミーティングです。部下の成長を支援するために実施します。

 

1on1ミーティングにおいて、仕事での成功や失敗の経験を振り返ったり、その時の自分の感情と向き合うことにより自己成長を促します。また、1on1ミーティングの中で業務に関する悩みや困っていることを聞き出すことで、今の業務が本人のスキルや特性に合っているか見抜くことが可能です。

 

このように1on1ミーティングの実施は、心理的ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方にアプローチできます。

 

 

従業員ロイヤルティの施策を成功させる4つのポイント

従業員ロイヤルティの施策を成功させる上で、押さえておきたいポイントを解説します。

 

人事部主導から現場の管理職主導で実施

上司との関係が上手くいっていないのに、従業員ロイヤルティだけが高くなるとは考えにくいでしょう。ある調査によれば、従業員ロイヤルティが高い社員は、直属の上司に対する評価が高いことが分かりました。

 

参考元:社員の会社に対するロイヤルティ向上は誰の仕事か?(P3)

 

また現場の管理職に部下の従業員ロイヤルティを高める責任を持たせることで、管理職自身が主体的な行動を起こすようになるでしょう。それによって、従業員ロイヤルティが高まる土台が作られます。

 

これらの理由からも、従業員ロイヤルティを高めるための施策を行う際は、現場の管理職主導で実施するのが望ましいでしょう。

 

ニーズや状況に応じてセグメント化して実施する

全社員に対して一律に施策を実施するだけでなく、対象者のニーズや状況に応じてセグメント化して実施しましょう。

 

例えば、新入社員と入社3年目の社員では、業務に関する悩みや問題が異なるでしょう。また、見せかけのロイヤルティの段階にある社員と潜在的なロイヤルティの段階にある社員では、実施すべき施策が異なるでしょう。

 

今後、人材の多様化が予測されるからこそ、ニーズや状況に応じてセグメント化して実施する必要があります。

 

社内でのコミュニケーションの機会を増やす

従業員のロイヤルティを高める上で、社内の心理的安全性の確保が欠かせません。心理的安全性を確保することで、社内の人間関係も改善するでしょう。また上司に対する信頼関係の構築にもつながります。

 

悩みを引き出しやすくなるでしょう。

 

定期的に施策の成果が出しているか調査する

施策を実施した際には、成果が出ているかどうか調査を行いましょう。「eNPS」を実施することで職場への愛着・信頼の度合いを数値化できます。eNPSとは、「Employee Net Promoter Score (エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略で、米大手企業のApple社が顧客向けのNPS調査を社員向けに転用して開発しました。今では多くの企業でも活用されています。

 

eNPSでは、社員に対して「あなたの会社を、働く場所として知人や友人にどの程度すすめますか?」と質問し、0から10点で評価してもらいます。そして、点数によって以下の3つのグループに分けます。

 

参考元:社員の会社に対するロイヤルティ向上は誰の仕事か?(P5)

 

推奨者から批判者の割合を引いた数値が高ければ高いほど、従業員ロイヤルティが高いといえます。施策を実施する前だけでなく、実施後にも定期的に調査することで、成果が出ているかどうかを把握し、次の施策へ活かしていきましょう。

 

まとめ

今回は下記の項目を中心に、従業員ロイヤルティについて解説しました。

 

・従業員ロイヤルティの意味や、従業員エンゲージメント・従業員満足度との違い

・従業員ロイヤルティを高める3つのメリット

・従業員ロイヤルティの4つの段階

・従業員ロイヤルティを高める主な施策やポイント

終身雇用制度や年功序列が当たり前ではなくなりつつある今、以前に比べて、社員が会社に対して愛着心や愛社精神を持ちづらくなっています。この傾向はますます強くなっていくでしょう。だからこそこの機会に、従業員ロイヤルティを高める施策を検討してみるといいでしょう。

 

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