2021年6月24日公開

ナレッジマネジメントとは?導入すべき理由や運用方法、注意点を解説

ナレッジマネジメントとはどういうものか、理解を深めたいと考えている方もいるでしょう。そこで本記事では、ナレッジマネジメントの概要や実行手順、注意すべき3つのポイントについてご紹介します。

 

ナレッジマネジメントは一言で目的を説明すると「社内に蓄積しているノウハウを言語化して共有し、業務の標準化と効率化を目指す」という手法です。

 

雇用の流動性が上がり、スマホやタブレットといった情報端末が充実した現代において、ナレッジマネジメントの考え方は企業経営に役立ちます。

 

「従業員の離職が多くて、社内に業務ノウハウが蓄積しない」

「組織が大きくなりすぎて、情報共有がうまくいっていない」

 

もしこのように考えているなら、ぜひご一読ください。

 

ナレッジマネジメントとは?なぜ今注目されているのか

ナレッジマネジメントとは、業務を円滑に進めるために必要な知識やノウハウを共有するマネジメント手法です。

 

「A支店では当たり前に使われていたノウハウが、B支店では伝わっていない」

「一部社員にのみノウハウが蓄積し、会社全体で共有できていない」

 

このような状況を防ぎ、ノウハウの共有による業務効率化を目指すことが、ナレッジマネジメントの導入目的です。

 

ここでは、ナレッジマネジメントが注目される理由についてみていきましょう。

 

情報化社会の到来

ナレッジマネジメントの重要性が上がってきている背景に、スマホやタブレットといった情報機器の進化が挙げられます。

 

従来は電話やFAX、郵便などで行われていた情報のやりとりが、現代ではインターネットを通じて一瞬で手軽に共有できるようになりました。

 

これにより業務が急速に効率化し、全国に支店があるような大きな企業でも、全社一律に同じ情報やノウハウを共有できるようになりました。

 

このように昔に比べるとノウハウの共有が容易になったことから、各支店や各従業員の能力による仕事のばらつきを解消するための手段としてナレッジマネジメントが注目を集めています。

 

働き方改革の促進

働き方改革の進展により、ナレッジマネジメントが再注目されています。

 

働き方改革が進むにつれて、時差出勤やテレワーク、サテライトオフィスといった、働き方の多様化・柔軟化が進みました。

 

これらは従業員満足度を上げるためにも重要な取り組みですが、一方で出勤時間がバラバラになったり出社せず仕事ができたりするため、ノウハウを共有する時間が無くなってしまうという課題点もあります。

 

そこでナレッジマネジメントの考え方を活用すれば、専用のITツールを活用するなどして、テレワーク中の従業員でもノウハウを共有することが可能です。これによって働き方改革を推進しても、生産性が低下しない(むしろ向上する)といった効果が期待できます。

 

雇用情勢の変化

ナレッジマネジメントが注目されている背景には、日本の雇用慣行が変化している点も見逃せません。

 

従来の日本企業は「終身雇用」「年功序列」など、従業員を採用したら原則として定年まで雇用し続けることが前提となっていました。しかし昨今は転職が当たり前になり、企業側も早期退職者の募集や解雇、最悪の場合は倒産といったケースも珍しくはありません。

 

定年まで従業員が辞めない・解雇する必要が無い場合において、ナレッジマネジメントを活用したノウハウの共有は、必ずしも必須のものではありません。なぜなら先輩や上司はずっと会社にいる可能性が極めて高く、その都度本人から指導を受ければ、業務が滞ることはありません。

 

しかし転職の一般化によって、上司や先輩がいなくなることも珍しくありません。よって会社としては、特定の個人に業務ノウハウが独占されるのは経営上のリスクになります。仮にノウハウを蓄積した社員が転職した場合、既存の業務がうまく回らず、生産性の低下や一部業務が滞るといった可能性があるからです。

 

このような理由からも、ナレッジマネジメントを活用する企業が増えています。

 

まとめると、ナレッジマネジメントが注目されている背景は下記の3つが挙げられます。

 

・情報化社会の到来

 ⇒ITツールを活用した業務効率化を積極的に行わないと、同業他社に負けやすい

・働き方改革の促進

 ⇒時差出勤やテレワークを導入しても、ノウハウを共有・蓄積するための仕組みが必要

・雇用情勢の変化

 ⇒社員が突然辞めても業務を続行できるよう、ノウハウの独占(業務の属人化)を防ぐ必要がある

「仕事の進め方やノウハウを理解している従業員が突然会社を辞めた。引き継ぎがうまく出来ておらず、業務遅延を起こしている」なんてケースは避けたいですよね。そこで次の見出しでは、ナレッジマネジメントを導入する手順を解説します。

 

ナレッジマネジメントの運用手順

ここからは、ナレッジマネジメントの導入・運用方法について解説します。

 

1.目的を明確化する

ナレッジマネジメントの導入を行う前に、まずは「なぜナレッジマネジメントを導入する必要があるのか」を明確にしましょう。

■ナレッジマネジメント導入の目的例

・日本全国に支店があり、情報共有がうまくできていない

 ⇒全支店で情報や業務ノウハウを共有したい

・特定の従業員が退職すると、業務に大きな悪影響が出る

 ⇒仕事の進め方や細かいノウハウなどを明文化したい

・従業員によって仕事の成果やプロセスにムラがある

 ⇒業務プロセスを標準化しつつ、適宜プロセスのアップデートを行いたい

ナレッジマネジメントをこれから導入しようと考えている方は、まず「どの情報を共有すべきか」「そもそもナレッジマネジメントを導入してどのような成果を得たいか」を明確にしましょう。

 

2.何をどのように管理・共有するか決める

ナレッジマネジメント導入前に、どの情報をどのように共有するか検討しましょう。

 

情報やノウハウは共有するほど便利になるように思えます。しかし「とにかく情報をシステム上で共有しよう」とすると、下記のような弊害が起こってしまう恐れがあります。

 

・ノウハウを明文化するだけで、多大な時間と人的コストがかかる

・情報が多すぎるとどの情報が重要か分からず、だれもチェックしなくなる

ナレッジマネジメントを導入するまえに「どの情報を」「どのような方法で」共有するか、よく検討しましょう。

 

3.業務プロセスに落とし込む

ナレッジマネジメント導入の目的と共有方法が明確になったら、次は実際の業務プロセスまで仕組みを落とし込みましょう。

 

例えば営業ノウハウをナレッジマネジメントで管理・共有する場合、退勤前に「本日の営業活動中に発見した知見を一つ以上、グループウェアで共有する」など、業務の一部にナレッジマネジメントを落とし込みます。

 

ナレッジマネジメントをいきなり導入しても、現場は意図をうまく理解できず、ナレッジマネジメントがうまく運用されないリスクがあります。

 

よって事前に業務プロセスへ組み込み、ナレッジマネジメントがうまく運用されるよう環境やルールを整備しましょう。

 

4.定期的にプロセスを見直す

最後に、ナレッジマネジメントは導入して終わり、という性質のものではありません。定期的にうまく運用されているか見直しを行い、直すべき点は改善する必要があります。

■ナレッジマネジメント運用のチェックポイント

・従業員はノウハウの共有を正確に行っているか

・ノウハウ共有をサボっていないか

・共有したノウハウが活用され。業務に活かされているか

もし上記のいずれかのポイントが守れていない場合は、運用プロセスに改善の余地があります。定期的にプロセスの見直しを行うことで、より効率的なナレッジマネジメントを行えるでしょう。

 

ナレッジマネジメント導入時に意識すべき3つのポイント

最後に、ナレッジマネジメント導入前に意識しておきたい3つのポイントを紹介します。成果を出すためには導入前にあらかじめ注意すべきポイントを把握し、対策を知っておくことが大切です。

 

ナレッジマネジメントにおいて意識すべきポイントは、以下の3つです。

 

・ノウハウの蓄積を目指す

・あくまで業務効率化が目的

・必要に応じてツール導入がおすすめ

具体的にどういうことなのか、以下で解説します。

 

1.ノウハウの蓄積を目指す

ナレッジマネジメントを導入するメリットは、ノウハウの“共有”の他に“蓄積”することも挙げられます。

 

従来は従業員個人の勘や経験に頼っていた部分を、ノウハウとして会社全体として共有することで業務効率化が期待できるのは、これまで説明したとおりです。しかし、さらに一歩踏み込んで「共有したノウハウを、会社が管理して蓄積する」するようにしましょう。

 

これによって従業員の急な離職があっても、ノウハウは会社に蓄積されているので、大きな問題もなく既存業務を回せます。またノウハウが蓄積して充実しているほど、現場に負担をかけずに新人教育を行うことも可能です。

 

ナレッジマネジメント導入を考えている方は、ノウハウの共有だけでなく蓄積にも目を向けることで、業務の効率化に大いに役立ちます。

 

2.業務の効率化を目指す

ナレッジマネジメントの導入目的はあくまで“業務の効率化”です。以下のサイクルを回して、より効率的な事業運営をするよう心がけましょう。

■ナレッジマネジメントを活用した業務効率化のサイクル

1.ナレッジの蓄積と共有を行う

2.メンバー全員が知識を共有する

3.業務のやり方のばらつきが抑えられる

4.業務フローが標準化されるため、作業効率が底上げされる

5.より効率的な方法がないか、定期的に業務プロセスを見直す

6.1~5を繰り返す

くどいようですが、ナレッジマネジメントの目的は「業務を効率化して、会社の業績を改善すること」です。

 

よくある失敗例として「情報を共有すること」そのものが目的となってしまい、業務改善につながっていないというケースがあります。手段と目的が逆転してしまわないよう、改めて注意しましょう。

 

3.必要に応じてツールを導入する

情報やノウハウの共有に必須ともいえるITツール。ナレッジマネジメントを導入・運営する上で、システムや通信機器の導入は欠かせません。

 

コストを抑えてナレッジマネジメントを導入するのであれば、メールでエクセルのデータを逐次共有したり、無料のオンラインストレージでデータ共有を行うといった方法もあります。

 

しかし本格的にナレッジマネジメントを導入するのであれば、専用のツールを導入した方が良いでしょう。ナレッジマネジメントに活用できるツールには、以下のようなサービスがあります。

 

・グループウェア

・SFAやCRMといった業務支援システム

・有料のオンラインストレージ

ナレッジマネジメント導入にはITツールが欠かせません。必要に応じて有料ツールを導入したり、既存のシステムを活用したりしましょう。

 

まとめ

今回は下記のポイントを中心に、ナレッジマネジメントについて解説しました。

 

・ナレッジマネジメントの概要と必要性

・ナレッジマネジメントの導入手順

・ナレッジマネジメントを導入するときに注意すべき3点

 

効率的な組織運営が求められたり従業員の転職が活発になっている昨今、ナレッジマネジメントの考え方は企業運営において大切なものとなっています。

 

自社へのノウハウ蓄積や仕事の属人化を予防したい方は、この機会にナレッジマネジメントを導入してみてはいかがでしょうか。

この記事のすべてのタグ