2024年4月1日公開

人的資本って会社の役に立つの?人的資本ガイドラインISO 30414について学ぼう!第1回:人的資本とは

株式会社LBのりーくん、ひーくん、カンちゃんは、人的資本ガイドラインISO30414について勉強することになりました。3人に人的資本ガイドラインISO30414について教えるのはLB MEDIAの編集長のはやみです。第1回目のテーマは『人的資本とは?』早速授業の様子を覗いてみましょう。

ー登場人物ー

 

 はやみ

LB MEDIAの編集長

人的資本に関する情報を発信

 

りーくん(理性タイプ)

株式会社LBの社員

温和で、面倒見が良い性格

 

ひーくん(比較タイプ)

株式会社LBの社員

マイペースで、負けず嫌いな性格

 

カンちゃん(感性タイプ)

株式会社LBの社員

ムードメーカーで、立ち直りが早い性格

 

 

人的資本とは?

 はやみ|本日のテーマは『人的資本』です。そこでまず3人に質問です。もし、3人が投資家だった場合、何を基準に投資する会社を選びますか?

 

りーくん(理性タイプ)|口コミかな?他の投資家の評価が高い企業とか、あとは従業員の人たちが和気あいあいと楽しく仕事している会社かな。

 

ひーくん(比較タイプ)|売上や利益とか、具体的な数字で判断すると思うよ。

 

カンちゃん(感性タイプ)|評判だな!誰でも知っている有名な企業なら安心だし。

 

 はやみ|人によって、投資する会社を選ぶポイントはバラバラだよね。ただ、近年、会社の人に注目する投資家が増えてきました。その理由はどうしてだと思う?

 

ポイント

日本でも株主総会で人材関係の議論が増えています。経済産業省の事務局の説明資料によれば、株主総会において、人事・労務に関する質問は増加しているとされます。経営政策、配当政策、株価動向に次いで、多くの企業で人事・労務に関する質問が出ています。経済産業省の事務局説明資料(令和2年1月)

 

りーくん ひーくん カンちゃん|???

 

 はやみ|その理由は『人的資本』の価値が認識され始めたからなんだ。人的資本ってなんだと思う?

 

りーくん(理性タイプ)|従業員のスキルや能力かな?

 

ひーくん(比較タイプ)|従業員一人ひとりの生産性とか。

 

カンちゃん(感性タイプ)|やる気とか意欲!

 

 はやみ|3人とも正解!人的資本とは、従業員が持つ資質と能力を企業の付加価値を生み出す資本とみなしたものを指します。

 

 

 はやみ|例えば、企業が長期的に成長し続けるには、従業員の持つ倫理観や協調性、リーダシップなどの資質と知識やスキルなどの能力が欠かせないよね。そこで多くの投資家は、優秀な人材を確保し、その能力を最大限に発揮させることができる企業は、将来的に高い収益を上げる可能性が高いと考えるようになったんだよ。

 

ポイント

欧米の機関投資家の多くが、経営陣に対して、人的資本に関する情報の開示と説明を求めるようになりました。その要求に答えるために、2020年11月9日より米国のSEC(米国証券取引委員会)は、企業に対して人的資本情報の公開を義務化しました。またEC欧州委員会では、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を公表し、2022年4月に欧州財務報告諮問グループはCSRDの詳細な基準を定める欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の草案を公表しました。

 

人に関することを数値化するには?

 はやみ|投資をして欲しいと思っている会社の代表が、3人に対して「弊社はいい会社なんです。ベテラン社員から若手まで、自分の強みを発揮してくれています。おかげで業績も年々増えています。だから投資してください」って言われたとしたらどう?

 

ひーくん(比較タイプ)|僕は、投資しようと思わないな。いい会社=将来的に利益が上がるとは限らないし。そもそもいい会社っていう評価は主観的だと思います。

 

 はやみ|たしかに、その通りだね!逆に、人的資本に関する数字(データ)を示して、「自社はいい会社です」と言われたら投資しようと思うんじゃない。

 

ひーくん(比較タイプ)|エビデンスを示してくれるなら、少なくとも主観的にいい会社ですと言われるよりも、検討しようと思うかも…

 

 はやみ|つまり、ひーくんのような考えを持つ投資家に向けて、自社の人的資本を評価してもらうために作られたのが、人的資本ガイドラインISO 30414なんだよ。

 

ポイント

人的資本ガイドラインISO 30414は、国際規格の1つですが「社内外への人的資本のレポーティングガイドライン」として制定されています。名称にもあるように、内部及び外部のステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針で、認証のための規格ではありません。また今後、認証のための規格になるかもしれませんが、現状はまだどうなるかは不明です。

 

 

人的資本ガイドラインISO 30414で開示される情報とは?

りーくん(理性タイプ)|ISO 30414では、企業に対して、人的資本に関するどのような情報を開示するように求めているんですか?

 

 はやみ|11の領域に渡り、50の項目について、情報を開示するように求めているよ!

 

※各項目左側の番号は「規格の要求事項番号」に基づいています。

 

りーくん ひーくん カンちゃん|?すごい!

 

 

カンちゃん(感性タイプ)| ISO 30414に基づいて、数値を出した時に、結果がよくなかったら、出さない方がいいんじゃないの…

 

 はやみ|大事なことは、現状を知るために数値を出すことなんだよ。仮に数値が悪かったとしても、改善するための取り組みをしていることをアピールし、改善している状況を伝えることができればいいんだよ。

 

ただし、審査の時に、提出されたデータと実際の状況に相違がないかも審査対象になるよ。だからこそ、実際に審査を受ける時には経営者や人事担当者だけでなく、従業員全員の協力が欠かせないよね。

 

ひーくん(比較タイプ)|従業員側からすると、大変なだけな気がするな…

 

 はやみ|そんなことはないよ!人的資本への取り組みは、最終的には、働きやすい会社作りにつながっていくよ。例えば、組織文化の領域では、エンゲージメント/満足度/コミットメントに関する数値を開示する必要があるので、企業側は数値を改善するような取り組みをするようになるよね。

 

他にも、スキル及び能力の領域では、人材開発及び研修にかかる全てのコストなどの数値を開示する必要があるから、企業側は積極的に人材開発及び研修に投資するようになるよね。

 

つまり、会社が人的資本への取り組みは、その会社で働く人にとってもメリットがあるといえるよね!

 

りーくん ひーくん カンちゃん|?たしかに!そうだね。

 

 はやみ|3人とも人的資本ガイドラインに興味を持ってくれたかな?次回から、ISO 30414の11の領域の一つ目『コンプライアンス及び倫理』について解説していくので、楽しみにしててね!

 

 

 

 

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