2022年5月11日公開
予測困難な時代を生き抜くために欠かせない!レジリエンスとは
レジリエンスとは、困難な問題、危機的な状況、ストレスといった要素に遭遇しても、すぐに立ち直ることができる力です。テクノロジーの進化や自然環境の変化、そして新型コロナウィルスといった感染症などにより予測困難な時代が到来しました。
そのためビジネスの現場だけでなく、教育現場でもレジリエンスを高めることに注目が高まっています。そこでここではレジリエンスについて下記の項目を中心に紹介します。
・レジリエンスの意味
・個人がレジリエンスを高める方法
・企業が社員のレジリエンスを高めるためにできること
個々の社員のレジリエンスを高めることは、メンタル不調を予防しウェルビーイングな状態に導くだけでなく、変化に対応できる強いチームを作ることにもつながります。ではまずレジリエンスの意味についてみていきましょう。
目次
レジリエンスとは
レジリエンスとは、「弾力性」「回復力」「しなやかさ」という意味です。近年、変化の激しい時代に突入したことで、ビジネスの現場だけでなく、教育現場でもレジリエンスの強化が必要だと考えられています。そこでここではレジリエンスのビジネスにおける意味や、注目を集める理由について解説します。
レジリエンスの意味
ビジネスにおいては、レジリエンスとは困難な問題、危機的な状況、ストレスといった要素に遭遇しても、すぐに立ち直ることができる力と捉えるといいでしょう。
レジリエンスと似た言葉に、ハーディネス(hardiness)やストレス耐性があります。それぞれの言葉の意味は下記の通りです。
このようにレジリエンスとは、立ち直る力もしくは回復力と捉えるといいでしょう。レジリエンスを鍛えることで、仕事の失敗や責任などでストレスがかかっても心の健康を保ち、ストレスを自分の成長につなげる力が身につくと考えられています。
レジリエンスを構成する6つの要素
レジリエンス研究の第一人者であるアメリカの心理学者ライビッチ博士は、レジリエンスは下記の6つの要素によって構成されると提唱しています。
これらの6つの要素を高めることで、レジリエンスの向上が期待できます。
レジリエンスが注目を集める理由
レジリエンスが注目を集める主な理由は下記の通りです。
VUCA時代の到来
VUCA(ブーカ)とは、予測困難な時代という意味で使われる言葉です。下記の4つの頭文字をとってVUCA(ブーカ)といいます。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
AIの登場によりテクノロジーが進化しただけでなく、自然環境の変化、そして新型コロナウィルスといった感染症の問題など、これからどのような社会になっていくのか?予測が困難になっています。
レジリエンスは予測困難な時代に生き抜くために、全てのビジネスパーソンに求められる力として注目を集めています。
社員のメンタルヘルス問題
仕事や職場で強いストレスを感じていることで、メンタルヘルスの不調を訴えて、休職したり、退職をしたりする人が増えています。また業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症することにより労災認定される件数も増加傾向にあります。
引用元:厚生労働省独立行政法人労働者健康安全機構『職場における心の健康づくり』
特に日本人は自己肯定感が低い人が多いと言われています。自己肯定感が低いと自分の強みに目が向きにくく、自己否定しやすい傾向があります。その結果メンタルヘルス不調に陥りやすいです。
社員のメンタルヘルス対策として、レジリエンスに関する研修を行うことで、メンタルヘルスの不調による休職者や離職者を減らすことにつながります。
個人がレジリエンスを高める方法
レジリエンスを高めることで、心の健康を保ち、ストレスと上手に付き合うことが可能になるでしょう。また困難や逆境、ストレスを自分の成長につなげることもできます。
このような理由からも、仕事をする上でレジリエンスを高めるメリットがあるといえます。次はレジリエンスを高める方法ついて解説します。
レジリエンスを築く10の方法
アメリカ精神医学会がレジリエンスを高める方法として「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しています。それは「認知行動療法(CBT)」と「理性感情行動療法(REBT)」の2つの理論をもとに構築されています。「レジリエンスを築く10の方法」は以下の通りです。
10の項目を一度に取り組むのは難しいと思います。そこでまずは睡眠時間を8時間確保する、ジムに週3回通ってみるというように、⑩(心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う)から取り組んでみるといいでしょう。
レジリエンスコンピテンシー
レジリエンスコンピテンシーとは、レジリエンスを高める際に必要となる総合的な能力のことです。これらの能力を高めることで、レジリエンスを高めることができると考えます。レジリエンスコンピテンシーは下記の通りです。
上記6つの能力に着目し、高めることを意識することでレジリエンスの向上が期待できます。
自分自身のことを深く知る
レジリエンスを構成する6つの要素の中に、自己認識力が含まれています。そのため、自分の特性や強みから思考パターンなど自分について深く知ることで、レジリエンスを高めることにつながります。
自分の特性や強みを知りたい場合は、周囲の人たちに聞いてみたり、性格診断サービスを利用するといいでしょう。
例えば、LB MEDIAの運営会社でもある株式会社ロジック・ブレインのクラウドHRシステムのTOiTOiなら10万人以上の性格情報を分析した独自の性格ビッグデータに基いたパーソナリティ分析や、ビッグファイブ診断で特性や強みを知ることができます。
引用元:株式会社ロジック・ブレイン TOiTOi公式ホームページ
レジリエンスを強化する最初の一歩として自分自身のことを深く知ることから始めるのもいいでしょう。
自己効力感を高めるために小さな成功体験を積み重ねる
自己効力感を高めることも、レジリエンスの向上に繋がります。自己効力感は、自分なら困難や問題を解決できると思える力です。
目標を達成したり、やると決めたことを最後までやり遂げる経験をすることで、自己効力感が高まります。その一方で、目標を達成できなかったり、最後までやり遂げなかったりした場合は、自己効力感が低くなってしまう恐れがあります。
自己効力感を高めたい場合は、最初から大きな目標を立てるのではなく、大きな目標を細分化して、小さな目標をクリアーすることで最終目標を達成できるよう計画を立てましょう。ただし目標が簡単過ぎると自己効力感が高まりません。そのため自分にとって少し頑張ればクリアーできる目標を設定するのがポイントです。
自分の思考をコントロールする
自分の思考をコントロールできるようになると、レジリエンスの向上が期待できます。思考をコントロールできるようになるトレーニングには下記の2つがあります。
ABCDE理論
ABCDE理論とは、臨床心理学の博士でもあるアルバート・エリス博士が提唱した、カウンセリング理論です。実践することで、ある出来事に対するネガティブな思い込みを、ポジティブなものに変換できます。
下記のように、A(出来事)とC(結果)の間に、B(思い込み)が発生していることに気がつき、D(反論)によって、新たなE(効果)を創り出します。
何かが起こった時に、無意識に発生するB(思い込み)が、ネガティブなものだった場合、必要以上に落ち込んだり、怒ったりと非生産的な気持ちや行動をとってしまいがちです。その行動の原因が、A(出来事)ではなく、B(思い込み)が原因だと気がつくことで、ポジティブな気持ちや行動につながります。
ABCDE理論を活用することで、自分の思い込みに気がつき、自分の思考や感情をコントロールできるようになります。
スイッチ&フォーカス法
スイッチ&フォーカス法は、物事や出来事に対する視点や見方を変える方法です。スイッチ法では、別の視点から今の状況を見直します。
このように別の視点から、今の状況を捉え直すことで、新しい発見を促します。フォーカス法とは、焦点を別の場所に合わせる方法です。
このように焦点を変えることで、新たなチャンスやリスクに目を向けることが可能です。スイッチ&フォーカス法を活用することで、思考の切り替えがスムーズにできるようになります。
企業が社員のレジリエンスを高めるためにできること
ここでは企業にとって個々の社員のレジリエンスを高めるメリットと、企業側が社員のためにできることについて解説します。
企業が社員のレジリエンスを高めるメリット
企業が個々の社員のレジリエンスを高めることで下記のメリットが期待できます。
・メンタルヘルス不調の社員を減らす
・変化に臨機応変に対応できる
個々の社員のレジリエンスが高まることで、メンタルヘルス不調の社員を減らすことが期待できます。また仕事のストレスを上手くコントロールしながら業務に取り組むため、ストレスによるミスやトラブルも減り、その結果生産性の向上につながります。
レジリエンスが高い社員は、仕事の課題や問題に対してチャレンジする傾向があります。また変化にも柔軟に対応できるため、転勤や配置転換などによる環境の変化を受け入れやすいでしょう。
つまり予測困難で変化の激しい時代において、社員のレジリエンスを高めておくことは、長期的に企業が存続する上でリスク対策につながります。
このような理由からも社員一人一人のレジリエンスが高まる施策を実施することは、企業にとってもメリットがあるといえます。
レジリエンスについて学ぶ場を作る
レジリエンスについて学ぶ場として、社員研修の場を活用するといいでしょう。自社のリソースだけで実施が難しいなら、レジリエンスについて学ぶ研修を提供する企業もあるため、依頼してみるのもいいでしょう。
社内でのコミュニケーションの機会を増やす
トラブルや困難に直面して時に、一人で抱え込まずにサポートをお願いできる人間関係を築くことも、レジリエンスを高めることに繋がります。そのため他部署含めて交流する場を作ることで、社員同士をつなげる機会を設けるのもおすすめです。
特に、コロナ禍においてリモートワークを実施している場合、仕事の合間に雑談をしたり、飲み会を実施したりするのが難しくなっています。それゆえ、社員同士のコミュニケーションが減ってしまい、社内での人間関係を構築するのが難しくなっています。
このような理由から、企業側は個々の社員のレジリエンスを高めるためにも、社内SNSを活用したり、イベントを実施したりと社員同士でコミュニケーションが取れる機会を増やしていく必要があるでしょう。
1on1を定期的に実施する
1on1とは、上司と部下が1対1でおこなう対話のことです。1on1を実施することで、部下側は定期的に仕事での成功や失敗の経験を振り返ったり、その時の自分の感情と向き合ったりできます。そしてそれにより自己理解が深まります。
また、定期的に話す機会を設けることにもつながるため、人間関係を構築する機会にもなるでしょう。このような理由から1on1を定期的に実施することで、個々の社員のレジリエンスの向上が期待できます。
まとめ
今回は下記の項目を中心にレジリエンスについて解説しました。
・レジリエンスの意味
・個人がレジリエンスを高める方法
・企業が社員のレジリエンスを高めるためにできること
レジリエンスを高めることは、個々の社員のウェルビーイングにつながるだけでなく、変化に強いチームを作ることにもつながります!ぜひこの機会に、自社でもレジリエンスに関する取り組みをスタートしてみませんか?