2020年11月30日公開

インターバル制度とは?働き方改革で努力義務化に!この機会に労働環境を見直そう

働き方改革の推進によって、2019年4月より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。以前より導入する企業も見受けられたものの、次のように考える方も少なくないでしょう。

 

「制度の内容を改めて確認したい」
「導入で得られるメリットにはどのようなものがあるんだろう」
「導入や運用に失敗しないために注意点を知っておきたい」

 

そこで今回は、下記の項目を中心に解説します。

 

・インターバル制度の概要やメリット
・導入運用時のポイント

気になる項目を読み進めることで、インターバル制度に関して深い知識を得られます。

 

併せて国内企業の導入事例についてもまとめたので、導入や運用を具体的にイメージしたい方は必見です。

 

勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度の概要について、以下の2つの項目に沿って解説します。

 

・勤務間インターバル制度とは何か
・働き方改革において努力義務として規定

 

1つずつ確認しておきましょう。

 

勤務間インターバル制度とは何か

勤務間インターバル制度は、終業時間から翌日の始業時間までの間に一定以上の休息時間を確保する制度です。制度の活用により、長年にわたって日本経済の課題であった長時間労働を是正する目的があります。

 

具体的には、残業によって終業時間が遅くなった社員に対して、翌日の始業時間を遅らせるといったケースが挙げられるでしょう。

 

EU加盟国においては、対象となる企業に対して制度の設定が義務付けられており、24時間ごとに最低でも連続11時間の休息時間の確保が規定されています。

 

このように、1993年のEU労働時間指令で定められている勤務間インターバル制度は、ヨーロッパでは広く導入されている制度です。

 

働き方改革にて努力義務として規定

日本では2019年4月に労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)が改正され、勤務間インターバル制度が努力義務として規定されました。

 

休息時間は9〜11時間を目安としており、社員の生活時間や睡眠時間の確保を考慮した設定が推奨されています。

 

企業ごとに休息時間を定め、確保状況を確認することや、確保できていない社員への対応を行うことによって、社員の長時間労働の抑制を目指します。

 

勤務間インターバル制度は努力義務であるため、導入や運用がなされていなくても罰則を受けることはありません。しかし、民事上は労働契約違反となる可能性や、本来の目的である長時間労働の是正を考えると、取り組む重要性の高い制度です。

 

まずは、全社員が十分な休息時間を確保できているか、現状を確かめることも必要でしょう。

 

勤務間インターバル制度導入のメリット

制度の導入によって、企業と社員は以下の3点のメリットを得られます。

 

・生産性の向上
・ワークライフバランスの実現
・企業価値が高まる

1つずつ確認しておきましょう。

 

生産性の向上

休息時間の確保によって心身ともに健康な状態を維持でき、業務効率の向上が可能です。

 

日々の睡眠不足は身体への負担となり、蓄積された疲労は慢性化し、回復しにくくなります。疲労が原因で業務において不注意やミスが重なった場合は、精神的にも大きな負担がかかるでしょう。

 

制度の導入によって、終業から翌日の始業時間までに、プライベートの時間を十分に設けられます。そのため、社員は疲労回復に必要な睡眠時間や、モチベーション維持のためのリフレッシュ時間を確保できるのです。

 

疲労によるミスの減少も考えられるため、業務効率の向上やさらには生産性向上にも期待できるでしょう。

 

ワークライフバランスの実現

社員は個人の時間を安定的に確保できるため、仕事と私生活の両立がしやすくなります。家族と過ごす時間や、趣味、自己啓発の時間など、思い思いの過ごし方によって豊かな生活を送ることが可能です。

 

仕事以外の充実した時間はその人らしさを育み、業務においてこれまで以上に強みや能力を発揮するケースもあるでしょう。

 

また、仕事と私生活の両立が可能な企業では社員が働きがいを感じやすく、企業への貢献意欲も高まります。

 

このような理由からも、勤務間インターバル制度による社員のワークライフバランスの実現は、人材の流出防止というメリットにもつながるでしょう。

 

 

企業価値が高まる

社員にとって働きやすさを感じられる職場環境は、企業自体の魅力につながります。

 

勤務間インターバル制度は長時間労働を是正し、社員のワークライフバランスを保つ制度です。さらに十分な休息の取得はモチベーションの維持にもつながり、その企業で働く従業員の満足度を向上させます。

 

高い従業員満足度は、社員を大切にする企業文化として社外にも伝わり、高い企業価値を生み出すでしょう。

 

企業にとって重要な資源の1つである人材を守る制度は、企業自体の価値に結びつくのです。

 

 

勤務間インターバルの導入運用のポイント

勤務間インターバル制度の効果的な導入や運用にあたり、気をつけるべきポイントは以下の3点です。

 

・社員に対する目的の共有や導入・運用の周知徹底

・企業ごとに休息時間を制定する必要がある

・労働時間の正確な把握が不可欠

導入を検討する前に、あらかじめ確認しておきましょう。

 

社員へ目的の共有や導入運用の周知徹底

全社員からの理解がなければ制度が活用されない可能性があるため、社内への周知徹底に努めましょう。

 

これまで勤務間インターバル制度を導入してこなかった企業においては、職場の人間関係を気にして、制度を活用したくてもできない社員が現れる場合もあります。そのため、導入を決定した際には、運用を始める前に全社員に対し目的やルールの共有が必要です。

 

社員から目的に対する理解が得られれば、積極的な活用促進も可能になります。

 

制度を導入しても活用されなければ意味がないため、目的やルールを定める際には、共有方法も同時に検討しましょう。

 

企業ごとに休息時間を制定する必要がある

制度において確保する休息時間は明確に規定されていないため、導入の際には適切な時間を検討しなければなりません。検討する際には、必要な労働時間だけでなく、睡眠や通勤時間などの生活時間に関しても考慮が必要です。

 

また、企業によっては時間を明確に定めるのではなく、「最低限確保が必要なのは9時間、望ましいのは11時間」と時間に幅を持たせている場合もあります。

 

柔軟な制度内容は社員にとっても利便性が高いため、制度の活用促進につながるでしょう。

 

労働時間の正確な把握が不可欠

一定の休息時間を確実に付与するためには、労働時間の正確な把握が必要です。

 

例えば、制度の導入によって、前日の勤務終了時刻に応じて翌日の始業時刻が定刻より遅れる場合があります。

 

始業時刻の遅れによって終業時間や休憩時間も異なってくるため、労働時間を正確に把握し記録しなければなりません。一人ひとりに記録を委ねるとバラつきも生じやすく管理が難しいため、勤怠管理システムの導入がおすすめです。

 

休息時間の確保の度合いや、休息時間が一定以下の社員の有無を一覧で確認できると、適切な制度運用に近づきます。

 

注意点としては、勤怠管理システムにはさまざまな種類があり、導入には費用や時間がかかる場合もあるため、自社に最適なシステムを選択するよう心がけましょう。

 

勤務間インターバル制度の導入事例

国内企業における勤務間インターバル制度の導入や成果について、以下の3つの事例を紹介します。

 

・株式会社スナップショット「時間外労働を約30%減少」
・株式会社山陽新聞社「高い企業価値の実現」
・株式会社岩田屋三越「制度を通し社員の意識改革に取り組む」

 

実際の事例を、自社における導入の参考にしましょう。

 

株式会社スナップショット「時間外労働を約30%減少」

株式会社スナップショットでは、制度の導入によって時間外労働を約30%減少させる成果が現れました。

 

成果が得られたポイントとして、制度の利用しやすさが挙げられます。

 

まずは意識の統一を図るために、全社員を集めて制度について説明を行ったそうです。時間をかけて周知を行うことで、制度内容を社員が理解しやすくなり、具体的なメリットを感じられるでしょう。

 

また、運用は社員本人に任せ、制度を利用する際の申請手続きや上長の承認などは設けませんでした。そのため、社員は気軽に制度を活用し、上司にとっても新たな業務が増えることなく、導入後もトラブルのないスムーズな運用を実現できました。

 

このように全社員が制度を受け入れて積極的に利用することによって制度が適切に運用され、結果として目的を達成することが可能なのです。

 

株式会社山陽新聞社「高い企業価値の実現」

制度の取り組みに対して就職活動中の学生から「魅力的」という声が多数上がるなど、企業としての高い価値を生み出しているのが株式会社山陽新聞社です。

 

新聞社にとって長時間労働は大きな課題であり、長年にわたりなかなか改善されてこなかったという現状がありました。

 

しかし、2017年を働き方改革元年として改革を推進し、長時間労働に対する具体的な改善策に取り組みました。具体的には、勤怠システムの導入で社員の出退勤を細かに把握することや、20時以降の残業を原則禁止とする取り組みを始めたそうです。

 

その中でも、長時間労働是正の取り組みを加速させる制度として勤務間インターバル制度の導入を進め、結果として時間外労働時間に減少傾向が見られました。

 

また、子育て支援に積極的に取り組む企業として、厚生労働省から「くるみんマーク」の認定を受けるなど、ワークライフバランスに励む企業イメージが社外にも広がりつつあることがうかがえます。

 

労働時間の積算が難しい職場でありながらも、長時間労働是正という目的に沿って取り組みを進める姿勢は、企業価値を高める上で大事なポイントといえるでしょう。

 

 

株式会社岩田屋三越「制度を通し社員の意識改革に取り組む」

株式会社岩田屋三越では、社員の意識を変えるという目的に向かって制度の活用を進めています。

 

制度導入の際には「目的は社員の健康であり、笑顔で元気に働いてもらいたい」と社員に伝えたことで、社員は会社への安心感を得られたようです。さらに、インターバル時間を11時間と設定することで、十分な休息時間の確保を促進しました。

 

社員の変化として、顧客対応や付き合い残業など長時間労働がまん延していた現場から一変し、「休息時間確保のためにどうすればよいのか」という前向きな問い合わせが増えていったことが挙げられます。

 

労働時間への意識を変化させることによって制度の利用も促進され、長時間労働の是正が当たり前という意識改革の実現に近づくでしょう。

 

まとめ

今回はインターバル制度について、下記の項目を中心に紹介しました。

 

・勤務間インターバル制度とは

・勤務間インターバル制度導入のメリット

・勤務間インターバル制度の導入や運用のポイント

・勤務間インターバル制度の導入事例

長時間労働の是正を目的とし、努力義務として国も推進する勤務間インターバル制度は、これまでの働き方に変化をもたらす制度です。労働人口の減少や生産性向上といった課題を考えると、これからの日本社会に欠かせない制度ともいえるでしょう。

 

しかし、これまでとは異なる働き方であるために、スムーズな導入や運用が難しい場合も考えられます。

 

そのため、導入の際にはあらかじめ徹底した目的や内容の共有が、運用する上では現場の社員の声を汲み取る努力が必要です。

 

今回紹介した制度の目的やメリットを自社の現状と照らし合わせ、社員の立場に立って伝えていくことで、適切な制度の活用に近づきます。

 

まずは自社における課題を特定し、制度によって社員が得られるメリットについて検討してみましょう。

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