2024年6月21日公開
人事担当者が知っておきたい!人的資本経営の基礎知識
組織の持続的な成長と競争力の強化を目指す上で、人材を単なる「コスト」ではなく「資本」として捉える経営手法の重要性が高まっています。人事担当者にとって、人的資本経営はもはや避けて通れないテーマです。
そこで今回は、人的資本経営に関して、人事担当者が押さえておきたいポイントについて解説します。
目次
人的資本経営とは
人的資本経営の定義と従来の経営手法との違いについて解説します。
人的資本の定義
人的資本経営は、人材を企業の「資本」として捉え、その価値を最大化することにより、企業の中長期的な価値向上を目指す経営手法です。日本では、2020年に発表された「人材版伊藤レポート」で人的資本経営の重要性が示されたことから、注目を集めるようになりました。
人的資本について、内閣官房非財務情報可視化研究会が発表した「人的資本可視化指針」では、下記のように定義しています。
「人的資本」とは、人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現である。
引用元:非財務情報可視化研究会 人的資本可視化指針
つまり人的資本経営は、従来の人材管理の枠を超え、人材を価値創造の源泉と捉えることで、企業の持続的な成長と競争力の強化を実現する経営手法です。
人的資本経営と従来の経営手法との違いとは
人的資本経営は、人材を投資対象とみなし、その成長と発展を通じて企業価値の向上を目指す新しい経営手法です。
従来の経営手法では、人材=コストもしくは資源として捉えられがちでした。それゆえ、人材への投資は短期的な効果測定に重点が置かれ、コスト削減の対象として見られていました。一方で人的資本経営では、人材を企業の長期的な成長と競争力の源泉とみなし、教育や研修、キャリア開発への投資が企業価値の向上に直結すると考えます。
人的資本経営において人事担当者が求められる役割
従来の経営手法から人的資本経営へと転換するにあたって、人事担当者に対して新たな役割が求められるようになるでしょう。
従来の人事担当者は主に、採用、教育、評価といった役割を担っていました。人的資本経営に転換すると、これらの役割に加えて、経営層と密接に連携し、人材が企業戦略の実現にどう貢献できるかを考え、有効な施策を実行するという戦略的な役割が求められます。
また、人的資本経営を実現するにあたり、人材データの分析能力やテクノロジーを活用した人材管理が重要になります。そのため、データを基に戦略的な意思決定を行い、人材のパフォーマンスと企業目標の達成度を測定する能力も必要になるでしょう。
人的資本経営を推進する上で、人事担当者には新たな役割が要求されます。経営戦略と人材戦略の橋渡し役として、より戦略的かつデータ駆動型のアプローチが求められるようになるでしょう。つまり、人的資本経営において人事担当者は、組織の成長と発展に直接的に貢献し、企業価値の向上を促すキープレーヤーとしての役割を果たす必要があるのです。
人事担当者向け人的資本経営を実践する6つのステップ
ここでは人的資本経営を実践するにあたり、人事担当者に求められる具体的な行動について解説します。
経営戦略と人材戦略の紐づけ
「人材版伊藤レポート」では「持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である」と書かれています。そのため人材戦略に関する施策を実行する役割を担う人事担当者は、自社の経営戦略を深く理解する必要があるでしょう。
しかしながら、経営戦略と人事戦略がバラバラに存在しており、それほど連動していないという企業の方が多いでしょう。それゆえ人事担当者は、人事部の枠を越え、各事業部のトップが集う会議に出席したり、人材ポートフォリオを策定したりするところから始めるといいでしょう。
人材ポートフォリオとは
人材ポートフォリオとは、経営戦略に基づいて配置された人的資本の構成内容のことです。組織が保有する人的資本を可視化して、その内容に応じて適切な投資を実行し、その投資効果を最大化することを目的として策定します。人材ポートフォリオを策定することで、組織は適材適所の人材配置を実現可能です。さらに個々の従業員の能力を最大限に活用できます。
現状把握
人的資本の現況を正確に把握することが重要です。従業員のスキル、経験、能力などを評価し、組織におけるニーズとのギャップを特定します。
KPIの設定と施策を立案
効果的な人材戦略を実行するためには、具体的な目標(KPI)の設定が必要です。人材開発、採用、生産性など多岐に渡りKPIを設定し、それを達成するための具体的な施策を立案します。
施策の実行
立案した施策を実行に移します。具体的には、新しいトレーニングプログラムの導入、採用プロセスの改善、従業員エンゲージメントの強化などが含まれます。計画通りに進行しているか定期的にモニタリングし、必要に応じて調整します。
効果検証と改善
施策の効果を検証し、目標達成度を評価します。KPIを用いて成果を測定し、結果に応じて人材戦略を継続的に改善します。効果が不十分な場合は、原因を分析し、戦略を調整します。
情報開示
人的資本経営において透明性は非常に重要です。そのため、従業員、株主、その他のステークホルダーに対して、人的資本に関する情報を開示しましょう。具体的には、人的資本の状況、実施した施策、達成した成果などです。情報開示を行うことで、ステークホルダーからの信頼の構築や組織の透明性の向上が期待できます。
人的資本経営のための情報開示
人的資本経営において、情報開示は重要な役割を果たします。そこでここでは、人的資本の情報開示に関する国内外の動きと、人的資本に関する情報開示のガイドラインである「ISO 30414」について解説します。
人的資本の情報開示の国内外の動き
米国証券取引委員会(SEC)は2020年8月26日、米国証券法に基づく「レギュレーション S-K」を改訂すると発表しました。それによって、2020年11月9日より、米国株式市場に上場する企業は人的資本に関する情報開示を義務づけられました。
日本では、2021年6月に改定された「コーポレートガバナンス・コード」において、人的資本を開示すべきだと示されました。また、翌2022年に内閣官房より発表された「人的資本可視化指針」では、人的資本の可視化の流れについて示されています。
さらに2023年には内閣府令の施行により、有価証券報告書において、上場企業は人的資本、多様性に関する開示が必須になりました。
このような国内外の動きから、今後は上場企業だけでなく中小企業においても、人的資本経営の実践や人的資本に関する情報開示が求められると予測できます。
人的資本に関する情報開示のガイドライン「ISO 30414」とは
人的資本に関する情報を開示するなら、国際的ガイドラインISO 30414に沿って行うといいでしょう。ISO 30414は、企業・組織における人的資本(Human Capital)の情報開示に特化した、世界初の国際規格です。
国際標準化機構(ISO)により、「社内外への人的資本のレポーティングガイドライン」として制定されています。名称にもあるように、社内及び社外のステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針であり、認証のための規格ではないので注意が必要です。
しかしながらISO 30414では、人的資本について「組織にとって最重要な経営資源でありリスクの1つである」と定義し、人的資本に関して11領域での情報提示を求めています。そのため、人的資本経営の導入にあたりどこから手をつけていいかわからないのであれば、参考にするといいでしょう。
まとめ
今回は人的資本経営に関して、人事担当者が知っておきたいポイントについて解説しました。人的資本経営は、従来の人材管理を超えた戦略的なアプローチを求められる経営手法です。人事担当者は、経営戦略と密接に連携した人材戦略を策定し、効果的な人材投資と適切な情報開示を通じて企業価値の向上を目指す必要があります。この機会に人的資本経営の導入に取り組んでみませんか?
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