2022年3月10日公開

ウェルビーイングとは?意味や指標、企業がウェルビーイングに取り組む理由を解説

ウェルビーイングという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

 

ウェルビーイングに対する取り組みは、世界的にも注目を集め、日本の企業でも取り組みが始まっています。そこで今回は下記の項目を中心にウェルビーイングについて解説します。

 

・ウェルビーイングの意味
・注目される4つの理由
・ウェルビーイングの指標
・企業がウェルビーイングに取り組む理由
・ウェルビーイングの追求のために企業ができること
まずはウェルビーイングの意味について解説します。
 
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目次

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングとは一言でいうと『持続的な幸せ』のことです。世界保健機関(WHO)はウェルビーイングについて下記のように定義しています。

 

 

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会仮訳)

 

身体的に健康というだけでなく、精神的にも社会的にも満たされていて、かつその状態が継続的であることがポイントです。

 

ウェルビーイングと混合されやすい言葉が、ウェルフェアです。ウェルフェアは「福祉、福利、幸福」という意味です。そのためウェルビーイングを実現するために、ウェルフェアを整えると考えるとわかりやすいでしょう。

 

ウェルビーイングに対する取り組みは世界的にも注目を集めています。アメリカで2015年に行われた調査では、3年以内に従業員の健康と幸福のための投資を増額する予定だと答えた企業は38%でしたが、2018年の同調査では81%と2倍以上に増えています。

 

参照

幸福度が高まると労働者の生産性は上がるのか?-大規模実験を用いた因果関係の検証:プログレスレポート-

 

また従業員の幸福を維持・向上させるという目的に特化したCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)という役職を設置する企業も増えています。

 

このような世界的な流れから日本でもウェルビーイングに注目が集まっています。しかしながら日本人は世界的にみて幸福を感じている人が少ない状況が続いています。事実『2020年ワールドハピネスレポート』によれば、日本の幸福度は62位(153ヵ国及び地域中)で、毎年後退しています。

 

それゆえ、今後日本でもウェルビーイングへの取り組みが重要になってくるでしょう。

 

ウェルビーイングが注目される4つの理由

ここ近年、ウェルビーイングに注目が集まっている理由は4つです。ここではそれぞれの理由について解説します。

 

働く人の価値観の多様化

社会全体のグローバル化だけでなく、同じ日本人でもバブル期世代、氷河期世代、ミレニアム世代、Z世代と価値観の違う世代が一つの企業で働くことになります。

 

このように昔に比べると、一つの企業で働く人の価値観が多様化しています。それゆえさまざまな価値観を持つ人たちがスムーズにコミュニケーションを取り、パフォーマンスをするには、ウェルビーイングに基づいた取り組みが欠かせません。

 

 

労働力不足

厚生労働省の調査によれば、15~64 歳人口は1995 年の 8,716 万人をピークに減少を続け、2015 年は 7,708 万人と減少局面に入っています。そのため、少子高齢化の中で必要な人材を確保し企業が事業を継続するためには、今まで主力ではなかった、女性、高齢者、外国人を活用する必要があります。

 

さらに、育児や介護などが理由でフルタイムで働けない人たちを活用する必要もあるでしょう。このように様々なバックグランドを持った人たちが、ともに働く環境を整えるために、ウェルビーイングの考え方が必要になるでしょう。

 

SDGs(エスディージーズ)への取り組み

SDGs(エスディージーズ)の中に、「すべての人に健康と福祉を」という項目が設けられています。それゆえ企業側はSDGs(エスディージーズ)への取り組みの一環として、ウェルビーイングに関する取り組みが求められるでしょう。

 

働き方改革の推進

働き方改革の目的は、「多様な働き方を選択できる社会」「将来への展望を持って働くことができる社会」の実現です。そのために下記の3つ項目の実現を目指します。

 

・長時間労働の是正

・多様で柔軟な働き方の実現

・雇用形態に関わらない公平な待遇の確保

企業がこれらの3つの項目を実現することで、働く人にとって魅力的な職場環境になり、必要な人材の確保につながります。企業側がこれらの項目を実現する際にはウェルビーイングの観点から、制度や仕組みの検討をすることが重要です。

 

 

ウェルビーイングの指標

幸せかどうかは、個人の主観的な感情です。そのためウェルビーイングを追求するための施策の成果が出ていているかどうか計測が難しいでしょう。そこでここでは、ウェルビーイングに関する代表的な4つの指標について紹介します。

 

PERMAモデル

ウェルビーイングの指標として代表的なものがPERMAモデルで、心理学者マーティン・セリグマンが提唱しています。ポジティブ心理学では下記の5つの項目を満たし、整えることでウェルビーイングが実現すると考えます。

 

Positive Emotion(ポジティブ感情)

Positive Emotion(ポジティブ感情)とは、楽しい、嬉しい、充実感といった前向きな感情を持っている状態を指し、精神的に充実した感情が対象です。

 

Engagement(物事への積極的な関わり)

Engagement(物事への積極的な関わり)とは、物事に集中して取り組んでいる状態のことです。

 

Relationship(他者との良い関係性)

Relationship(他者との良い関係性)とは、周囲の人たちと良好な関係を築いている状態のことです。

 

Meaning and Purpose(仕事の意味や意義の自覚)

Meaning and Purpose(仕事の意味や意義の自覚)とは、自分の人生に対して、意味や意義を持てている状態のことです。

 

Achievement(成果・達成)

Achievement(成果・達成)とは、仕事だけでなくプライベートで、達成感を得た状態のことです。

 

上記の頭文字をとって、PERMAモデルと言われています。ポジティブ心理学では、この5つの要素を満たすことで、人が幸福を感じるつまりウェルビーイングな状態になると考えます。

 

ギャラップ社

『2020年ワールドハピネスレポート』を発表している、アメリカのギャラップ社はウェルビーイングの構成要素として、下記の5つの項目を定義しています。

 

Career well-being(キャリア ウェルビーイング)

Career well-being(キャリア ウェルビーイング)のキャリアは、仕事だけではなく、家事、育児、ボランティア活動、趣味などのプライベートも含みます。そのためワークライフバランスが取れている状態=Career well-being(キャリア ウェルビーイング)が実現していると考えるといいでしょう。

 

 

Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)

Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)は、人間関係のことです。周囲の人たち、例えば家族や職場の人たちと信頼関係を築けている状態のことです。

 

Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)

Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)とは、報酬を得る手段があること、正当な報酬を得ていると感じていることや、資産管理ができている状態のことです。

 

Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)

Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)とは、身体的に健康で、仕事やプライベートで行動する上で充分なエネルギーがある状態のことです。

 

Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)

Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)とは、自分が住んでいる地域のコミュニティーと適切な関わりが取れている状態のことです。

 

ギャラップ社のウェルビーイングの構成要素を知ることで、ウェルビーイングを実現するためには、どのような取り組みをすればよいか見えてくるでしょう。

 

ウェルビーイングは、文化的な背景や暮らしている環境の影響を少なからず受けています。つまりアメリカ人と日本人ではウェルビーイングに対する価値観が異なります。そこで次は、日本向けのウェルビーイングの指標を紹介します。

 

科学技術振興機構社会技術研究開発センター

科学技術振興機構社会技術研究開発センターは、ウェルビーイングには3つの側面があると提唱しています。

 

医学的ウェルビーイング

心身の機能が不全でないかどうかを把握する指標です。健康診断やメンタルヘルスに関する質問票によって測定できます。

 

快楽主義的ウェルビーイング

今の気分の良し悪しといった、主観的な感情を把握する指標です。表情を心拍、ホルモンなどの生理指標によって測定できます。

 

持続的ウェルビーイング

心身の潜在能力を発揮し、意義を感じている「いきいきとした状態」のことです。

 

これらの3つの側面からウェルビーイングを考えることで、自分にとってウェルビーイングな状態をよりイメージしやすくなるでしょう。

 

参照

ウェルビーイングな暮らしのためのワークショップマニュアル|「日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」プロジェクト

 

幸せの4つの因子

幸せの4つの因子とは、慶應義塾大学大学院前野隆司教授の研究チームの行った調査結果によって導き出された幸福度を左右する4つの因子のことです。

 

自己実現と成長の因子(やってみよう因子)

夢や目標を叶えたり、それらを持ってわくわくしているかどうかは幸福度を左右します。自己実現と成長の因子(やってみよう因子)では、夢や目標を叶えたり、それらを持ってわくわくしている人は幸福度が高く、一方で、目標に対してやらされ感を感じている人は、幸福度は低いと考えます。

 

つながりと感謝の因子(ありがとう因子)

周囲の人とつながりや絆を持てるかどうかは、幸福度を左右します。つながりと感謝の因子(ありがとう因子)では、周囲の人とつながり仕事をやっている人を幸福度が高く、一方で孤独だと感じている人は幸福度が低いと考えます。

 

前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)

ポジティブで楽観的な人は、幸福度が高い傾向にあります。これからの時代先が読めないからこそ、ポジティブで楽観的かどうかは幸福度に大きく影響を与えるでしょう。前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)では、どんな時も楽観的になんとかなると考えられる人は幸福度が高く、一方で悲観的に考えてしまう人は幸福度が低いと考えます。

 

独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)

人と自分を比べすぎる人は、幸福度が低いことが分かっています。そのため、ありのままの自分を認められるかどうかは幸福度に影響を与えます。独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)では、ありのままの自分を受け入れている人は幸福度が高く、一方で人と自分を比べすぎる人は幸福度が低いと考えます。

 

参照:NEC 働き方 DX Day レポート

 

企業がウェルビーイングに取り組む理由

企業がウェルビーイングに取り組む理由は下記の3つです。

 

・生産性や業績の向上

・従業員満足度やエンゲージメントの向上

・離職率の低下や優秀な人材を確保することが期待できる

人は幸福を感じると生産性や創造性が高まると考えられています。 米イリノイ大学心理学部名誉教授であるエド・ディーナー氏の調査によれば、自分は幸せだと感じている従業員の生産性は平均で31%、売上は37%、創造性は3倍高いという傾向があるそうです。また、幸福度を感じている従業員は、利他的で、欠勤率、離職率が低い傾向があります。

 

参照:社員の「幸福度」で変わる創造性・生産性・売り上げ

 

しかしながら、株式会社バークレーヴァウチャーズが実施した調査によると、世界15か国中、日本の職場のウェルビーイングへの満足度44%という結果で、最も低いことが分かりました。

 

引用元:バークレーヴァウチャーズ世界における職場でのウェルビーイングに関する「2016 年度 Edenred-Ipsos Barometer 調査」

 

特に「仕事へのモチベーション」に関する要素が低く、会社や組織に対する将来の不安を持つ回答者が 72% (世界平均 35%)、朝仕事に行くのが楽しく感じられない回答者が 70%(世界平均 33%)、職場が刺激的な環境ではないと考えている回答者が 67%(世界平均 39%)でした。

 

このことからも企業側がウェルビーイングへの取り組みを行うことで、仕事へのモチベーションの向上につながるでしょう。それにより従業員一人ひとりが高いモチベーションで仕事に取り組むため、生産性の向上や業績の向上が期待できます。

 

また、仕事に対するモチベーションや満足度が上がることで、離職率の低下につながります。離職率が低いと転職者から働きやすい職場と評価してもらえる可能性が高く、その結果この会社で働きたいと考える人が増え、優秀な人材の確保が期待できるでしょう。

 

しかしながら日本企業のウェルビーイングへの取り組みはまだまだ不充分です。

 

デロイトトーマツが実施した『2021年度のミレニアル・Z世代年次調査』によれば、日本のミレニアル世代の44%、Z世代の38%が「雇用主は積極的にウェルビーイングに対してサポートをしてくれなかった」と回答しています。

 

引用元:デロイトトーマツ『2021年度のミレニアル・Z世代年次調査』

 

この調査結果からもウェルビーイングに対する取り組みは、従業員にとって「この会社で働きたい」と思わせることに繋がります。このようにそこで働く人たちだけでなく、企業側にもメリットがあるといえます。

 

ウェルビーイングの追求のために企業ができること

最後に、ウェルビーイングの追求のために企業ができることについて考えていきましょう。

 

健康経営の推進

心身の健康は幸福度に影響を与えます。従業員が自分の健康状態を知る機会を設けることは、ウェルビーイングへの取り組みだといえます。

 

健康経営とは、社員の健康管理の戦略的な実施によって生産性向上を目指す取り組みです。それゆえ、ウェルビーイングに関する施策の一環として、健康経営に取り組むといいでしょう。

 

 

心理的安全性の確保

職場の人間関係は、幸福度に大きな影響を与えます。それゆえウェルビーイングに関する指標には、Relationship(他者との良い関係性)やSocial well-being(ソーシャル ウェルビーイング)など、職場の人間関係に関するものが含まれています。

 

そのため、企業側はまず職場の心理的安全性の確保に努めるといいでしょう。心理的安全性とは、「対人関係においてリスクある行動を取った時の、結果に対する個人の認知の仕方」と定義されています。

 

心理的安全性が高い職場は、メンバーのモチベーション向上や問題への積極的なコミットなど、組織全体の雰囲気が良くなります。その一方で心理的安全性が低い職場は「会議でメンバーからの意見がない」「メンバー同士の会話が極端に少ない」といった状態になりがちです。

 

心理的安全性を高める施策には、1on1ミーティングやピアボーナス制度などの施策があります。そのためまずは、自社でできるところから取り組んでみるといいでしょう。

 

 

キャリアについて考える機会を作る

仕事の意味や意義、夢や目標を持つことは幸福度に影響を与えます。結婚や妊娠出産、介護といったライフイベントによって、キャリアに対する価値観や、見直しが必要です。

 

今後のキャリアについて考える機会を設けることで、主体的に自分のキャリアについて考えるようになり、その結果、仕事の意味や意義、夢や目標を持つことにつながるでしょう。

 

正当な人事評価や報酬

正当な人事評価や報酬もウェルビーイングの追求のために企業ができることです。納得いかない評価や報酬は、幸福度の低下に直結します。そのため、定期的に人事評価制度の見直しや、適切に運用されているかどうか確認を行いましょう。

 

 

まとめ

今回は下記の項目を中心にウェルビーイングについて解説しました。

 

・ウェルビーイングの意味

・注目される4つの理由

・ウェルビーイングの指標

・企業がウェルビーイングに取り組む理由

・ウェルビーイングの追求のために企業ができること

今後、働く人の価値観が多様化し、労働力が不足していく日本では、企業が生き残るためにはウェルビーイングを追求する取り組みが欠かせません。ぜひ、この機会にできるところから取り組んでみてくださいね。

 

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