2020年10月28日公開

1on1とは?これを読めば失敗しない進め方がわかる

「1on1をやってみたいけど、どうやったらいいかわからない」

「そもそも1on1ってなに?人事考課の面談とは違うの?」

 

このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?この記事では、下記の項目を中心に1on1について解説します。

 

1on1とはなにか
1on1の効果
1on1の進め方

これから1on1を始めたい管理職の方に向けて、基本から進め方まで、まとめて解説します。よかったらぜひ参考にしてください。

 

1on1とはなにか

1on1とは、上司と部下が1対1で行う対話を指します。つまり、1on1はコミュニケーション技法の1つです。

 

仕事の進捗状況を確認したり、課題について話し合ったりすることもあるので、人事考課の面談や部署内のミーティングと混同される方もいるかも知れません。

 

あくまでも、1on1は部下との1対1のコミュニケーションです。

 

そのため、一番忘れてはいけないことが、1on1の主役は「部下」ということです。つまり1on1とは、『部下を今以上に輝かせ、成長させるための定期的なコミュニケーション』と言えます。

 

人事考課面談との違い

1on1と人事考課面談との違いについてお伝えします。どちらも1対1で行う対話ですが、両者の目的はまったく異なります。

 

1on1の目的は『部下の成長支援』です。開催頻度は週1回程度、30分程度の実施が望ましいと言われています。

 

対して人事考課面談の目的は、成績評価を共有し給与や昇進などの処遇を決めることです。また、組織の目標を確認したり、次期に向けての課題を一緒に考えたり、評価することで部下のモチベーションを高める目的もあります。

 

どちらも1対1で行う対話ですが、1on1と人事考課面談では、以下のように目的も頻度も異なります。

 

 

1on1に期待する効果

「そんなに頻繁に1on1をして、本当に効果があるの?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。ここでは、1on1に期待する効果について、立場ごとにまとめました。

 

・部下にとって期待する効果
・上司にとって期待する効果
・チーム、組織にとって期待する効果

 

以上3つにわけてご紹介します。

 

部下にとって期待する効果

部下にとって期待する効果は、仕事での成功や失敗の経験を振り返ったり、その時の自分の感情と向き合ったりすることによる『自己成長』にあります。

 

例えば、1on1では上司が部下の話を効果的に聴くことで、部下の『内省』が深まります。

 

他者との対話から、自分だけでは気づけなかった課題の解決方法や次の行動について、気づきやヒントを得られるのです。内省が深まると、次にどうすればいいのかを自分で考えて行動し、その考えや行動をさらに振り返ることで、経験を学びに変えていきます。

 

このように、上司との対話を通して、部下の自己成長が期待できます。

 

上司にとって期待する効果

上司にとって期待する効果は、コミュニケーションスキルが向上することです。それによって、部下とのコミュニケーションが円滑になり、部下のことをより深く理解できるようになります。

 

なぜなら、1on1では『アクティブリスニング』『コーチング』『フィードバック』といった対話スキルが求められ、1on1を継続することでそれらのスキルが向上するからです。

 

例えば、アクティブリスニングにより部下は「ちゃんと話を聴いてもらえた」という満足感・安心感を得られ、それが部下との信頼関係にもつながっていきます。

 

1on1によりコミュニケーションスキルが向上し、よりよいチームマネジメントを行えるようになる点が期待できます。

 

チーム・組織にとって期待する効果

チーム・組織にとって期待する効果は、コミュニケーションが増えたり、部下が成長したりすることで、組織がよりレベルアップ・活性化することです。

 

例えば、1on1を導入したことで、チーム内の会話や部下からの提案が増えた結果、特許申請数が倍になったという事例もあります。

 

1on1により組織内のコミュニケーションや部下の成長が促進され、チーム・組織の活性化が期待できます。

 

 

失敗しない1on1の進め方

「やるからにはなるべく失敗したくない」
「早く効果を感じたい」

 

このように思われる方も少なからずいるのではないでしょうか?失敗しない1on1の進め方のポイントは3つです。

 

・心構え
・臨む姿勢
・注意点

 

それぞれのポイントについて、見ていきましょう。

 

マネージャーの心構え:1on1はお互いの信頼関係が重要

1on1では1対1で部下とコミュニケーションを取るので、お互いの信頼関係が重要になります。なぜなら「この上司は信頼できない」と思ったら、部下は決して本音を話さないからです。

 

では、どうしたら信頼関係を構築できるのでしょうか。

 

それは、上司側の対話する姿勢にかかっています。この時に有効なのが、下記の対話スキルです。

1on1で求められる3つの対話スキル

・『ありのままに受けとめ、聴く姿勢を持つ』=『アクティブリスニング』

・『効果的な質問をする』=『コーチング』

・『耳の痛いことでも伝えるべきことは伝える』=『フィードバック』

 これらのスキルをうまく取り入れながら話をすることで、部下は上司に対して「しっかり話を聴いてもらえた」と感じ、それが信頼関係につながります。

 

上司の姿勢:『対話する』スキルが求められる

1on1を実施する上でもっとも重要なのが、上司の『対話する』スキルです

 

前述の通り、1on1では、アクティブリスニング、コーチング、フィードバックといったコミュニケーションスキルが求められます。そこで、次はそれぞれの対話スキルのポイントを紹介します。

 

アクティブリスニング

アクティブリスニングは、受容的態度・共感的理解を示しながら話を聴く技法です。

 

「あなたの話をわたしは聴いていますよ」という姿勢を見せることだとも言いかえられ、日本語では『傾聴』と呼ばれる技法です。アクティブリスニングの技法として、主に以下の3つが挙げられます。

 

 

コーチング

コーチングは、質問を活用しながら部下自身に考えてもらい、部下の課題を部下自身が解決するよう手助けする技法です。コーチングの技法は、主に次の3つです。

 

 

コーチングに関しては、下記の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。

 

 

フィードバック

フィードバックは、「部下の成長を促すために、耳に痛いことを部下にしっかりと伝えること」です。

 

より具体的には、フィードバックは、次の2つの働きかけを通して、問題を抱えた部下や、能力・成果に課題のある部下の成長を促すことを目指します。

 

・情報通知:たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)

 

・立て直し:部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)

 

 

(中原敦著「フィードバック入門」より引用)

 

フィードバックに関しては、下記の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。

 

 

1on1の具体的な進め方

では1on1の具体的な進め方を確認しましょう。以下の4つのステップで進めていきますが、1on1は事前の準備が大切です。

 

ステップ1:1on1をする目的を周知・共有

1on1を導入する前に、部下に対して目的を周知し、共有しておくことが大切です。

 

「なぜ1on1をやるのか」という目的を部下に事前に伝えて理解してもらい、話し合う「テーマ」も前もって決めておくほうが有意義な時間になります。

 

ステップ2:1on1の時間や場所の設定

1on1を行う時間や場所の設定も重要です。

 

毎週決まった時間に行う企業もあれば、お互いのスケジュールの空き状況に応じて不定期に決める企業もあります。1回の対話時間はヤフー株式会社では「30分」としているそうです。他の企業では15分としているケースもあります。1つの目安にしてください。

 

場所は、落ち着いて静かに話せる会議室や個室などが望ましいです。事前に会議室の予約をしておくと安心でしょう。

 

ステップ3:1on1の実施と記録

1on1の実施では、前述した対話スキル「アクティブリスニング」「コーチング」「フィードバック」を活用しながら、部下が「話しやすい環境」を作って進めていきます。話しやすい環境作りのポイントは2つです。

 

話しやすい環境作りの2つのポイント

①座る位置
真正面に座ると人は話しにくいと感じます。L字型に椅子を配置するのがおすすめです。

 

②視線
人はじっと見つめられると話しにくいので、視線は相手の目を見るのではなく「眉間」や「鼻すじ」辺りを見るようにします。

どんな話をしたのか記録することも大切なので、対話中はメモをとるようにしましょう。

 

ステップ4:1on1の開催頻度と次回に向けた準備

開催頻度は1週間に1回、少なくとも3週間に1回程度で、定期的に行います。

 

人事考課面談のように半年に1回では、部下の悩みを把握するのは難しく、なにか問題が生じていても対応が遅れてしまう恐れがあります。

 

1on1は部下を成長させるための定期的なコミュニケーションなので、間隔が空きすぎないようにしましょう。1on1の終わりには、次回話すテーマを決めたり、開催日を確認したりと、次につながるようにして終了します。

 

1on1を実施する注意点

ここまで読んで「実際に1on1をするときにどんなことに注意すればいいの?」と思った方もいるのではないでしょうか?1on1で注意するポイントは2つあります。

1on1を実施する際の注意点

・1on1の目的は「部下の成長」なので、上司ばかりが話さない

・経験の浅い若手社員との1on1では、「教える」こともある程度必要

 それぞれの注意点について、解説します。

 

1on1の目的は「部下の成長」なので、上司ばかりが話さない

上司ばかりが話して1on1が終わってしまうと、部下の成長につながりません。

 

よくある失敗として、上司が部下の発言に対してアドバイスや指示ばかりをしてしまうことが挙げられます。自分の経験や知識から、ついついアドバイスをしたくなる気持ちはわかりますが、部下が自分で考えて行動し成長するための1on1です。

 

まずは、アクティブリスニングで「しっかり話を聴く」姿勢を忘れないようにしましょう。

 

経験の浅い若手社員との1on1では「教える」こともある程度必要

前述した内容と矛盾するようですが、経験の浅い若手社員には「教える」ことも必要です。まったく経験のないことに対して部下の気づきや答えを待っても、自己解決が難しい場合もあるからです。

 

そのような場合は、アドバイスを適宜行い、情報を伝達することが必要といえます。

 

まとめ

1on1とは、部下を今以上に輝かせ成長させるための、定期的なコミュニケーション技法です。今まで会社で行われていた面談とは違うため、難しいと思っている方も多いと思います。そこで今回は、下記の項目について解説しました。

 

1on1とはなにか
1on1の効果
1on1の進め方

1on1は基本を押さえれば難しいものではありません。1on1の効果を高めるためには、1on1の「目的」を忘れず、コミュニケーションスキルを向上させながら部下と向き合う姿勢が重要です。

 

最初はうまくいかない場面もあると思いますが、「定期的」に実施することで1on1の効果を徐々に実感できるようになるでしょう。記事の内容を参考に、ぜひ1on1を効果的に活用してくださいね!